東方 聖杯異譚   作:トマト教信者

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投稿するまで時間がかかったのは、単に執筆能力が不足しているからです。御容赦を。


第五話

聖杯戦争の開始が宣言されてから、翌日──

 

人間の里は熱気に包まれていた。

広場では「誰が勝つか」と賭けが始まり、周囲には露店まで立ち並ぶ騒ぎとなっている。

 

 

「……ほんと、これが異変初日の空気なのかしら」

 

「古来より決闘は娯楽だったからな。彼らにとっては、普段の弾幕ごっこと大差ないのだろう─」

 

 

霊体化したアーチャーが淡々と告げる。

姿は見えないが、ニヒルな笑みが脳裏に浮かびあがる。

 

霊夢はため息をつき、わずかに眉をひそめる。

 

 

「少なくとも君は楽しめそうに無いみたいだ」

 

「……仕事は割り切ってこなせるタイプよ」

 

 

霊夢は、軽くため息をつきながら人混みを見下ろしていた。

 

彼女が里に足を運んだのは、ただ様子見するためでは無い。今回の騒動に乗じて悪事を働く輩がいないかを確認するためだ。

 

 

「……問題なさそうね」

 

 

里をぐるりと一周した程度ではあるものの、特別気にかかる様なものも無かった。ひと息つくため、たまたま目に入った茶屋の近くに着地する。

 

上空からでは確認できていなかったが、茶屋にいたのはよく見慣れた先客だった。

 

 

「……あら?魔理沙じゃない」

 

 

特徴的な黒い帽子を膝に置き、金髪のおさげが風鈴のように揺れた。霊夢にとってあまりにも見慣れた存在。――霧雨魔理沙は縁台に座り、神妙な表情で紙に何か書き込んでいた。

 

(付近にサーヴァントの気配がする。マスター、私の事は洩らさない様注意してくれ)

 

魔理沙は今回の聖杯戦争のマスターの一人──言ってしまえば、今の霊夢にとっては敵対者でもある。

 

ここは戦闘が禁じられている里の中、顔を合わせたところで構える必要はない。それに、アーチャーには伝え忘れていたが、そもそも友人である彼女に対して警戒する必要性もほぼ無い。

 

(するだけ無駄よ)

 

心の中で返事をしながら、霊夢は気にする様子もなく声をかける。

 

 

「こんにちは、お嬢さん。熱心に何書いてるのかしら?」

 

 

 アーチャーの心配などどこ吹く風で歩み寄る。

霊夢が問いかけると、魔理沙は動かしていた手を止め顔を上げる。

 

 

「なんだ、宿敵さんか」

 

 

明るく冗談で返す魔理沙の微笑みが油断を生むための策略などでは無いと霊夢は知っている。

魔理沙の隣に腰を下ろす霊夢に、霊体化しているアーチャーは臨戦態勢をとる。いつでもマスターを守れる様に。

 

 

「で?何なのよ、ソレ。……倍率2倍?」

 

 

魔理沙はにやりと口角を上げる。

 

 

「賭けさ、賭け。向こうで人が集まってたろ?一番人気はお前で、その次があたしと早苗で競ってるんだよ。私としては釈然としないがな」

 

 

賭博参加表と書かれた用紙には聖杯戦争参加者の一覧と参加者の大まかな情報。魔理沙が独自に書き加えたメモも見えた。

 

 

「ふぅん……あんた、自分に賭けたの?」

 

「あたりまえだろ?やるからには一等賞じゃないとな」

 

その自信満々の表情に、霊夢は呆れたように肩をすくめる。

 

「⋯⋯ちなみに予想を当てるとどのくらい貰えるの?」

 

「お前に賭けて当たった場合だと⋯⋯3日はここで一服できるくらいだな。けっこう集まってるみたいだぜ」

 

「……」

 

 

霊夢はすっと立ち上がり、茶屋の外に視線を向けた。

 

 

「⋯⋯もう一度里を見回りして来る」

 

 

賭場に向かうだろうことはその場にいた全員が予想できた。霊夢が向けた背に対し、ひらひらと手を振り魔理沙は見送る。

 

茶屋の中に残された魔理沙は、湯呑を置く。

 

傍らにいる自身のサーヴァント──白く滑らかな肌を持つ美女、ガラテアが静かに問いかける。

 

 

『……あれが、最も警戒すべき相手ですか?』

 

「⋯⋯あぁ、この幻想郷で相手したくない存在No.1だな」

 

 

一瞬陰りを見せた魔理沙の瞳は、霊夢の背中を見つめたままだった。

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