後ろの席の美少女(プレデター)に恋をする   作:はるゆめ

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第十四話 日本へ帰った!

 昭和のいつか。どこかにある町。季節は冬。

 

 足の下に地面がない……と思った、その瞬間。アスファルトが勢いよく足裏を叩いた。

 

「わっ!」

 

 思わずよろめきそうになったが、河野に腕を掴まれて転ばずに済んだ。

 

「霧丘君、大丈夫? 気分は悪くない?」

「あ、ああ。何ともないよ。あれ? 黒瀬君達は?」

「私達と違う時間に向こうへ跳ばされたから、今を起点にすると過去に戻ったと思うよ」

「あっ、そういうこと?」

 

 見渡せば、さっきまでいた異界の景色と違う見慣れた夜の住宅街。街灯が、頼りなく道路を照らしている。

 頬を撫でる風が冷たくて、空気の匂いさえ違う。

 

 ───帰ってきたんだ。

 

 僕は大きなため息とともに道路へとへたり込んだ。

 

河野が慌てる。

 

「大丈夫?」

「うん。安心したら力が抜けちゃって」

「つかまって」

 

河野が差し出した手。細くて小さな手。

 

「どうしたの?」

「この手が僕を守ってくれたんだなって」

「どういたしまして。ほら立って」

 

 あの後、僕達はヒロア君の転移魔導で霊峰というところへ移動したんだ。

 古代遺跡があってそこへ入るとドラゴンに襲われて、そのドラゴンを正気に戻したりと大変だった。でもドラゴンは綺麗だったなぁ。

 

 次の日にドラゴンの力を借りたヒロア君によって僕達はこっちの世界に送り返され、こうやって帰ってくることができたんだ。

 

 ヒロア君とセルアさん、それにドラゴン、本当にありがとう。

 

 

「あ……」

 

 河野が何か思い出したように僕の顔を覗き込む。

 

「どうしたの?」

「霧丘君の自転車……」

「あっ」

「向こうに置いてきちゃったね……」

「ど、どうしよう」

 

 そうなのだ。僕の自転車はあの不思議な異界の森だ。

盗られたことにしようか? うーん、それはちょっと無理があるか。

 

 

「それは心配ないですよ」

「えっ」

 

 後ろから声をかけられ、振り向くと知らない女子が二人。よく見ると一人は河野にそっくりだ。

 

「だ、誰?」

「お母さん!」

 

 河野がそのよく似た顔の女子に飛びつく。

 

「ただいま」

「おかえり」

 

 お母さん? どう見ても二十歳そこそこ……あ、そうか。河野は普通に生まれてきたんじゃなくて、人造人間だったっけ。

 

「君が文香(ふみか)ちゃんの彼氏かな?」

 

 もう一人の女子が笑顔を僕に向けてきた。うわ、この人もかなりの美人だ。

 

「い、いえ違います……」

「そうなの? あ、私は山田みさえ。彼女は柚木(ゆずき)由香里だよ。にゃは」

「にゃは?」

 

 美人を台無しにする言葉遣いだよ。

 

「霧丘君、文香の生みの親、柚木です。この度はとんでもない目に巻き込んでしまって、ごめんなさい」

 

 頭を下げられる。

 

「そんな! 河野が悪いわけじゃないですし」

「いえ、この子の油断が招いたことなのです。君の自転車は責任持って復元しますから」

「え?」

 

復元?

 

「お母さん、霧丘君の服も」

「あ!」

 

 河野に言われて気がついた。

 マフラーと手袋は向こうで失くした上に、トレーナーとシャツに矢が刺さった穴。

 その周りには血の染みが残ってて、ジーンズとスニーカーは泥だらけ。

 

 間違いなく母親にどやされてゲンコツくらう。

 

「今夜は瑛子さんのところへ泊まりましょう。霧丘君、そこで外泊の連絡を親御さんに」

「は、はぁ」

「じゃ行くよ」

 

 山田みさえと名乗る女子がそう言った途端、また目の前の景色が一瞬で変わった。

 優子さんと同じ能力か。

 

 田舎風の大きな家、というより屋敷の前に僕たちな立っていた。林の中の一軒家なんだけど、月明かりもないのになぜかはっきり見える。

 重そうな瓦が屋根に並び、黒い焼き板と白い土壁。玄関なは障子張りの木戸。 

 母方の爺さんが住んでる屋敷にそっくりだ。

 

「霧丘君、どうぞ。中に黒瀬さん達もいますよ」

「う、うん」

 

 こうして僕は河野に手を引かれるまま、玄関に足を踏み入れた。

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