後ろの席の美少女(プレデター)に恋をする   作:はるゆめ

17 / 42
第十七話 フラッシュバック

 昭和のいつか。どこかにある高校。季節は冬(僕らは冬休み)

 

「山本君から電話よ! ほら早く起きなさい」

 

 いきなり母親に叩き起こされた。

 時計を見ると九時。

 ちくしょう、山本め。ゆっくり寝かせてくれりゃいいのに。

 

 夢を見たはずなのに覚えていないなと思いながら階段を降り、電話の受話器を掴んだ。

 

「なんなんだよ、朝っぱらから」

 

 わざと不機嫌に言ってみる。

 

「冬休みだからって寝すぎだろ」

 

 電話の向こうの山本は悪びれてない。

 

「それよりさ、河野と付き合うようになったことを教えろよ」

「はぁ?」

 

 何を今更と思った僕はハッと気がつく。異界へ飛ばされ、数日過ごしてから帰ってきたから随分と前に感じるけど、山本にしてみれば僕と河野が山本の家を訪ねたのは“昨夜”のことだ。

 

「だから偶々だって。途中で会っちゃって」

「それがなんで俺の家に一緒に来ることになるんだよ」

 

 痛いとこついてくる。

 

「それは、まぁ、あれだ。夜道を女子ひとりにできないだろう? だからお前ん()の後、彼女を家まで送ったんだよ」

「お前さ、そんなに河野のこと気にかけてたのか?」

「夜道だぞ」

「霧丘らしくないが、一応筋は通ってるな」

 

 ぐっ。

 

「だ、だってさ、前にもうちの高校の女子が変質者に襲われたことがあっただろ」

「そういやあったな、そんなこと。三年の女子だったか」

 

 ホームルームで女子生徒に注意喚起がされた。

 

「だから一緒にって言ったんだよ」

「霧丘の方から?」

「そうだよ」

「へぇ。河野に惚れてるのか?」

「ちっ、違うって」

「あいつ可愛いもんな。お前よく河野のこと見てるし」

 

 なに?

 

「べ、別に見てないって」

「そうかぁ? 良い雰囲気だったぞ、お前ら」

「山本が想像力豊かなだけだ」

 

 山本、結構色々と見てるな。

 

「で、そんなこと聞きたいから電話してしてきたの?」

「そりゃ気になるよ、霧丘。そろそろ忘れることができたか?」

 

 思わず受話器を持つ手に力が入る。

 今の今まで忘れていた“あのこと”。

 心の奥底から這いずり上がってくる記憶。

 

 

 ───俺を囲む女子達。

 

 

 ───『霧丘君、あの子のこと好きなんだ?』

 

 

 ───そんな顔して俺を見るな。

 

 

 胸の痛みとセットの思い出。

 今の僕なら平気なんだ。

 中学生の頃とは違う。

 もう彼女らはいない。

 いない。

 

 よし。もう平気だ。

 

「おい、やっぱり……」

「……ううん。もう大丈夫だ」

「そうか。まっ、新しい恋頑張れよ。相談からいつでも乗るぞ」

「だから河野はそうじゃないって」

「そうかそうか。じゃあな」

 

 受話器を置くと同時に玄関のチャイムが鳴る。

 

「おはようございます。河野です」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。