昭和のいつか。どこかにある街。季節は冬。
前回のあらすじ。僕は山田さん(狐)の幻術で河野に対する気持ちを全て告白してしまう。恥ずかしくて倒れそう。
そしてここは放課後の体育館裏。
木暮に呼び出された僕は、彼女と向き合っていた。
「返事を貰えるかな?」
微笑みながら僕に答えを促す木暮に対して、僕は少しだけ恐怖する。
悪友の山本と付き合っている
その木暮が少し前、僕に渡したのは差出人不明の
河野に気後れして名前を伏せていた手紙の主が───僕と会いたいと言ってきた。木暮を通して。
「えーっと。今度の日曜に、港公園で?」
僕は確認のため問い返す。
「十時ね。ということはOKってこと?」
安堵する表情を見せる木暮の目を見て、僕は肯定の返事を告げる。
好意を伝えてきた相手に、それがNOであっても有耶無耶にするのは不誠実だと思うから。
「行くよ」
「私も同席するから」
「……そうだと思った」
「じゃ日曜にね」
去っていく木暮の後ろ姿を見送りながら、僕は
河野の影武者をしていたエミリーさんとの会話。
『木暮さんから手紙もらってたよね?』
『う……お見通し?』
『それはそうよ。アレらが背後にいるかもだし』
『そんなことっ。あ……』
『普通の便箋だね。もしも何か動きがあったら教えてくれるかな。それと一人で出かけないこと』
異界で大きな傷を負った時、河野が僕に移植した彼女の細胞。それは傷の修復をするだけに留まらず、僕の身体を作り変えつつある。
それは
急いで帰宅して、向かいの家へ行く。河野がニコニコして待っていた。
山田さんは別働隊に合流ということで、僕の護衛から外れ、今は河野ひとりだ。
「おかえりなさい。木暮さんは何て?」
「
「黒瀬さん達にも伝えるね」
「うん。そうしてほしい。もしもってことがあるから」
もう以前の生活じゃない。アイツらはどこにだっている。
テレビを使っての大規模な精神介入攻撃と、その後に現れた黒い太陽。
前者はブラウン管を凝視したことによる脳の一時的な異常ということが報道された。もちろん人々をパニックにさせないための工作だ。
それと黒い太陽。実は見えてない人の方が圧倒的に多かった。これもまた集団幻覚として片付けられ、次々とマスコミを騒がせるニュース、芸能人のスキャンダルや事件報道に埋もれていき、やがて人々は気にも留めなくなっていく。
黒瀬君にチラッとだけ聞いたけど、日本だけじゃなく数十の国の政府が共同戦線を張っていて、大抵のことなら隠し通せるらしい。
そうだよね。僕が知ってるだけでも神様、吸血鬼、狐、イタチといった“人じゃない存在”の皆さんも政府と協力関係にあって、人に紛れて暮らしている。
改めて思い返すと、不思議な気分になる。
昔話でお馴染みの存在が当たり前のようにいるんだもんなぁ。
事実は小説より奇なり───って本当だよ。
「考え事?」
「わっ!」
ほぼゼロ距離に河野の顔。
「ち、近づき過ぎだって!」
河野の細い肩を両手で優しく押し返す。ドキドキする。
「霧丘君が考え込んでる風だったから」
「あー、世の中は僕が描くマンガよりもずっと凄かったんだなって」
途端に河野が喜色満面になる。
「マンガ! ねぇ、あの続きは?」
首を傾げて上目遣いで聞いてくる河野。
「それどころじゃなかったろ? 当分描く予定はないよ」
「そうなの? でも楽しみ!」
そう言ってウキウキしている河野───僕のマンガに登場する異星人よりよほどぶっ飛んだ存在なのに、僕のマンガを読んで喜んでる。
こうも想像以上の出来事を立て続けに経験すると、創作意欲なんて家出しちゃうよ。
期待している
「ん? なぁに?」
僕の視線に河野が合わせる。心の中で謝りながら。
「何でもないよ。じゃ帰る」
「うん。おやすみ」
「あ、うん」
翌朝。
席に着くとすぐに、後ろの席の河野が耳元で小声を伝えてきた。
「放課後には山田さん達が来てくれるって」
僕は黙って頷く。取り越し苦労であってほしいと願って。
けれど、そうじゃない可能性が高い。僕が女子にラブレターなんてもらうことはあり得ない、そういう自覚はあるから。
でも。
こんな回りくどいこと、奴らはするんだろうか?
昼休み、校庭の隅っこで河野に質問してみた。
彼女は真剣な表情で教えてくれる。
「黒瀬さんから聞いたことだけど、アイツらって最初は暴れ回るだけだったって」
「暴れ回る?」
「うん。片っ端から人に取り憑いてはガソリンスタンドを襲って爆発させたり」
「うわ……」
「工業地帯のガスタンクを狙ったり」
「そんなことしてたんだ」
「だけどね、それからは霧丘君も知ってるように仲間を増やすようになったの。破壊活動はしなくなってね」
河野が“処分”した北尾。あいつは三人の女子を
「人に取り憑くことで知恵をつけた───黒瀬さん達はそう結論付けたの」
「!」
「どうしたの?」
「今更だけどさ、北尾の家族は?」
「彼には両親と妹さんがいたけれど───操り人形のようなモノに作り変えられていたの。彼の世話をするだけの存在」
「聞いたのは僕だけど、ごめん。ストップ」
胸糞悪くなってきた。そうだ。そういうヤツらじゃないか!
本当に今更だ。
放課後。
僕に告白したいという彼女はどっちだ?
昭和のいつか。どこかにある街。季節は冬。
前回のあらすじ。僕は山田さん(狐)の幻術で河野に対する気持ちを全て告白してしまう。恥ずかしくて倒れそう。
そしてここは放課後の体育館裏。
木暮に呼び出された僕は彼女と向き合っている形だ。
「返事を貰えるかな?」
微笑みながら僕に答えを促す木暮に対して、僕は少しだけ恐怖する。
悪友の山本と付き合っている
その木暮が少し前、僕に渡したのは差出人不明の
河野に気後れして名前を伏せてた手紙の主が───僕と会いたいと言ってきた、木暮という伝令役を通して。
「えーっと。今度の日曜に、港公園で?」
僕は確認のため問い返す。
「十時ね。ということはOKってこと?」
安堵する表情を見せる木暮の目を見て、僕は肯定の返事を告げる。
好意を伝えてきた相手にそれがNOであっても有耶無耶にするのは不誠実だと思うから。
「行くよ」
「私も同席するから」
「……そうだと思った」
「じゃ日曜にね」
去っていく木暮の後ろ姿を見送りながら、僕は
河野の影武者をしていたエミリーさんとの会話。
『木暮さんから手紙もらってたよね?』
『う……お見通し?』
『それはそうよ。アレらが背後にいるかもだし』
『そんなことっ。あ……』
『普通の便箋だね。もしも何か動きがあったら教えてくれるかな。それと一人で出かけないこと』
異界で大きな傷を負った時、河野が僕に移植した彼女の細胞。それは傷の修復をするだけに留まらず、僕の身体を作り変えつつある。
それは
急いで帰宅して、向かいの家へ行く。河野がニコニコして待っていた。
山田さんは別働隊に合流ということで、僕の護衛から外れ、今は河野ひとりだ。
「おかえりなさい。木暮さんは何て?」
「
「黒瀬さん達にも伝えるね」
「うん。そうしてほしい。もしもってことがあるから」
もう以前の生活じゃない。アイツらはどこにだっている。
テレビを使っての大規模な精神介入攻撃とその後に現れた黒い太陽。
前者はブラウン管を凝視したことによる脳の一時的な異常ということが報道された。もちろん人々をパニックにさせない為の工作だ。
それと黒い太陽、実は見えてない人の方が圧倒的に多かった。これもまた集団幻覚として片付けられ、次々とマスコミを騒がせるニュース、芸能人のスキャンダルや事件報道に埋もれていき、やがて人々は気にも留めなくなっていく。
黒瀬君にチラッとだけ聞いたけど、日本だけじゃなく数十の国の政府が共同戦線を張っていて大抵のことなら隠し通せるらしい。
そうだよね、僕が知ってるだけでも神様、吸血鬼、狐、イタチといった“人じゃない存在”の皆さんも政府と協力関係にあって、人に紛れて暮らしている。
改めて思い返すと、不思議な気分になる。
昔話でお馴染みの存在が当たり前のようにいるんだもんなぁ。
事実は小説より奇なり───って本当だよ。
「考え事?」
「わっ!」
ほぼゼロ距離に河野の顔。
「ち、近づき過ぎだって!」
河野の細い肩を両手で優しく押し返す。ドキドキする。
「霧丘君が考え込んでる風だったから」
「あー世の中は僕が描くマンガよりもずっと凄かったんだなって」
途端に河野が喜色満面になる。
「マンガ! ねぇあの続きは?」
首を傾げて上目遣いで聞いてくる河野。
「それどころじゃなかったろ? 当分描く予定はないよ」
「そうなの? でも楽しみ!」
そう言ってウキウキしている河野───僕のマンガに登場する異星人よりよほどぶっ飛んだ存在なのに、僕のマンガを読んで喜んでる。
こうも想像以上の出来事を立て続けに経験すると、創作意欲なんて家出しちゃうよ。
期待している
「ん? なぁに?」
僕の視線に河野が合わせる。心の中で謝りながら。
「何でもないよ。じゃ帰る」
「うん。おやすみ」
「あ、うん」
翌朝。
席に着くとすぐに耳元で後ろの席、河野が小声で伝えてきた。
「放課後には山田さん達が来てくれるって」
僕は黙って頷く、取り越し苦労であることを願って。
けれどそうじゃない可能性が高い。僕が女子にラブレターなんて貰うこと有り得ない、そういう自覚はあるから。
でも。
こんな回りくどいこと、奴らはするんだろうか?
昼休み、校庭の隅っこで河野に質問してみた。
彼女は真剣な表情で教えてくれる。
「黒瀬さんから聞いたことだけど、アイツらって最初は暴れ回るだけだったって」
「暴れ回る?」
「うん。片っ端から人に取り憑いてはガソリンスタンドを襲って爆発させたり」
「うわ……」
「工業地帯のガスタンクを狙ったり」
「そんなことしてたんだ」
「だけどね、それからは霧丘君も知ってるように仲間を増やすようになったの。破壊活動はしなくなってね」
河野が“処分”した北尾。あいつは三人の女子を
「人に取り憑くことで知恵をつけた───黒瀬さん達はそう結論付けたの」
「!」
「どうしたの?」
「今更だけどさ、北尾の家族は?」
「彼には両親と妹さんがいたけれど───操り人形のようなモノに作り変えられていたの。彼の世話をするだけの存在」
「聞いたのは僕だけど、ごめん。ストップ」
胸糞悪くなってきた。そうだ。そういうヤツらじゃないか!
本当に今更だ。
放課後。
僕に告白したいという彼女はどっちだ?