後ろの席の美少女(プレデター)に恋をする   作:はるゆめ

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第四十八話 山本からの話

 

 昭和のいつか。どこかにある街。季節は冬。

 前回のあらすじ。

 人生初体験の告白は終わって河野と山田そんの家にていろいろ教えてもらう。

 

「そう。柚木が生み出した地球上でも上位に入る生き物なんだ、捕食という点でね」

 

 僕は山田さんを思わず見つめてしまう。地球上でも上位に入る捕食者……ってなんだ?!

 

「あいつらってさ、小さな肉片になっても意思を持って行動できるんだよ」

「え?」

「元々がすごぉく小さい生き物の集合体ってわけ。最初の頃、行動不能に倒しても細々と分裂したモノを外に放出して逃げ延びてたんだよねぇ」

「それはどういうものなんですか?」

 

 山田さんは河野を一瞥する。

 

「文香ちゃん、筆箱貸して」

「うん」

 

 河野は立ち上がり、彼女のカバンから可愛らしい筆箱を取り出して山田さんへと渡す。

 

「ほら、これの半分ぐらいのサイズ」

 

 山田さんの指はシャーペンの芯を摘んでいた。

 

「もっと細いけどね。私たちは分裂体と呼んでる。これが大量に逃げ出して、しばらく潜伏して次の人間へと侵入していたんだ」

「こんな小さなものがですか?」

「そうだよ。私たちがあいつらの処理に手こずってるのもこの分裂体を追うのが大変だったから。───喉乾いちゃったね、ちょっと待ってて」

 

 立ち上がった山田さんは階下へと向かい、ジュースとコップを持って戻ってきた。

 

「さ、霧丘君も飲んで」

「い、いただきます」

「さらに性質(たち)悪いことに、そんなサイズになっても本体、つまり異界の神本体と意思疎通できるから後始末が大変だったんだよ」

 

 すっと河野が右手を挙げる。

 

「はい! 続きは私が」

「わぷっ」

 

 勢いよく河野が立ち上がったもんだから、彼女のスカートが僕の顔を撫でる。

 

「あ! ごめんなさい」

「いいよ、続けて」

「ではお言葉に甘えまして。お母さんはとある生物の遺伝子と人間の遺伝子を組み合わせて私を産んでくれたんです」

 

 すごく誇らしげな河野に僕は呆気にとられてしまう。

 

「ある生物?」

「うん。あのね地球からは遠く遠く離れた銀河団に生息する生き物で、それはあらゆるものを完全に消化するんだって」

「消化……」

「人間の消化する速度の何倍も速いの」

「そうなんだ。宇宙生物か」

「そうだよ。私のこと、気味が悪くなった?」

 

 首を傾げて僕を見下ろす河野の顔には不安の色が浮かんでいる。

 

「ははっ! 何を今更だよ。あの異界で巨人になって海蜘蛛と格闘してた河野らしくないな」

「あっ」

 

 頬が紅くなる河野。

 

「あの時……霧丘君からはっきり見えてたの?」

「遠くだし、裸だってことしかわからなかったよ」

 

 帝国の軍港で特撮ヒーローみたいなサイズになり、海蜘蛛を海中より引き上げた彼女の活躍はすごかったけど、遠過ぎてそれぐらいしかわからなかった。それは本当だ。

 

「でもさ、今まで聞けなかったけど、あの巨人になるのってどういう原理なんだ?」

「私の体内にエネルギーとして蓄えてて……霧丘君が理解できるように説明すると長くなっちゃうから、今度でいい?」

「河野がそう言うなら……」

 

 SF好きな僕としてはずっと気になっていたことだから、落ち着いた時に詳しく教えてほしいな。

 山田さんがいたずらっ子みたいな顔して河野を問いただす。

 

「文香ちゃん、話は聞いたけど思い切ったんだねぇ」

「こっちでは大騒ぎになるけど、あの世界だと大丈夫かなって思ったから……」

「そうだね。こっちだとテレビの緊急速報、新聞の一面記事になっちゃうよ」

「は、話は逸れたけど、とにかくそういうわけであいつらにとって私は天敵になるの」

「う〜ん、いまひとつわからないけど」

「私が補足するよ、さ、文香ちゃんも座って。あのね、霧丘君、あいつらって身の危険を感じたらすぐに分裂体を体外へ逃すんだ」

「あ……」

 

 あの夜をまた思い出す。

 河野が北尾を駆除した夜の教室。

 北尾はあくまでも河野を次の獲物として襲いかかっていた。

 

「覚えています、あの夜を。河野はただの生徒として北尾と話していたことを」

「もうあの手は使えないけどね。だからあいつらは文香ちゃんを狙うんだよ」

「校内に北尾みたいなのや、分裂体がいると?」

「それはしばらくしないとわからないかな。手駒にする子を慎重に選んでるみたいだから、数は多くないと思うけどね」

「慎重に?」

「そうだよ。何らかの条件があるみたい。もし無差別だったら、あいつらだけの世界にするのに日数はかからないよ」

 

 それもそうか。そこらにいる人間に片っ端から取り憑けばいいんだからな。

 

「だから霧丘君は高校生活を過ごしてほしいんだ。君の護衛はさらに増えてるから、心配はないよ」

「そうなんですか?」

「私のような狐だけじゃなくて他の種族の応援も入ってるからね?」

「あ、はぁ。あ、王戸さんみたいなイタチとか?」

「もっと色々いるから」

「そうですか…… 」

 

 その後、山田さんに夕食、水炊きをご馳走になって帰宅する。あまりの美味しさに驚いてしまった。山田さん曰く『野菜がね、特別なんだよ』ということらしい。

 

 翌朝。

 昼休みに珍しく悪友山本が訪ねてきた。

 

「霧丘、ちょっといいか?」

「お、山本か。いいぞ」

 

 二人で自販機が置いてある体育館横へ行き、コーラを買ってから植え込みの陰へと向かった。

 何やら少し深刻そうだな。

 

「霧丘、お前に言っておくことがある」

 

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