銃社会の【剣聖】   作:TSUBAME

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とある小説の息抜き&勢いで書きました。後悔はないです。


剣に魅入られて

 

 

 

 

 

 ───ボクは剣に憧れた。

 

 深いキッカケはない。

 ただ、大和魂を持つ男児であれば、誰もが幼い頃に剣を持つ自分自身を想像した筈だ。

 

 しかし、幼い頃の憧れとは霜のように消え去って行くもの。

 無邪気でなにも知らない純粋無垢であった少年たちは、次第に法を、ルールを、時代を、常識を、非常識を───そして現実を知るようになるからだ。

 

 ボクはただ、その夢を諦めきれなかっただけの子どもだった。

 

 

 ───悔しいと思った。

 

 『大きな夢を持て』、『夢を追いかけろ』と大人は口にする癖に、世間一般では認められない夢は『諦めろ』と皆口を揃えて言う。

 

 あぁ、分かる。分かるとも。大人が言いたいことも、その理由も、全部分かっていた。

 

 だから、せめてもの抵抗で剣道を習わせてもらったり、居合い斬りの立ち合いを体験させてもらったり、燕を追いかけて木の棒で斬れるか試してみたり、岩を断ち斬ったり、木を断ち斬ったりした。

 ただ、ボクが求めているのはコレじゃないという漠然とした違和感はどうしようもなく拭えなかった。あと燕との追いかけっこは普通に楽しかった。

 

 

 ───そして、この世界に生まれ落ちた。

 

 高校3年生の夏───もう間も無く剣道の全国大会が控えている頃だった。

 その日の稽古を終え、部員たちと蒸し暑い日照りの中帰宅している最中に、途轍もないスピードでこちらに突っ込んでくるトラックが見えた。

 咄嗟に前にいる部員を突き飛ばしたが…………その後の記憶はない。多分痛みもなく即死だったのだろう。

 

 だけど聞いて欲しい。

 次に目が覚めたら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体が縮んでしまっていた(赤ん坊になっていた)!!(名探偵並感)

 

 ビックリだよね、目を開けたら全く知らない美男美女のカップルに上から見下ろされてんの。

 言葉も上手く聞き取れなかったし、体も自由に動かせなかったしで、恐怖で思わず咽び泣いてしまったよね。そんな情け無いボクを見た途端に周囲の人たちがこれでもかと笑顔を見せるもんだから更に泣いてしまったよね、恐怖で。

 

 それから少しずつ現実を受け入れていき、この世界のママ上にオムツを変えられるという恥辱すらも受け入れていき、約1ヶ月が経ったある日。

 ママ上とパパ上と一緒に初めての外出で外に出て───衝撃を受けた。

 

 なんせ、街中で銃撃戦が勃発しているのだから。

 銃の乱射音、弾丸が街を削る音、手榴弾の爆風、こめかみに撃たれても何故か死なないどころか流血すらしないタフな一般市民、慣れたように避難する我らが親───およそ想像だにしていなかった世紀末な世界が外の世界には広がっていたのだ。

 

 ここでボクは以前の世界とは全く違う世界───所謂、異世界に来てしまったのだと理解した。

 銃も暴力も正当化されるような、そんなイカれた世界に。

 

 そのことを痛感して僕が真っ先に考えたことは───『あれ、コレってチャンスじゃね?』だった。

 

 銃と闘争が日常の風景に混ざり合っていることに恐怖心を抱くべきだろうが、ぶっちゃけそんなことはどうでもよかった。

 関心を寄せるべきはこの社会のあり方だ。

 

 銃を常に携帯し、引き金が鴻毛より軽い世界で銃刀法違反なんてものが存在している筈がない。

 つまり、ついに念願の剣を持てるかもしれないということだ。夢にまで見た剣をこの手に掴み、自由自在に扱えてしまうということだ。

 

 そして極められる筈だ。

 何よりも美しい剣技(剣戟)の、その高み(昇華)へ。

 

 

 「バーブ(よーし)バブバブ(やったるぞ)ー!!」

 

 

 ………うん、まずは話せるようになるところからだな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────16年後

 

 

 「トウヤくん、私と一緒に連邦生徒会に所属してくれませんか?」

 

 「え、いやだ」

 

 「お稽古も好きなだけしていいですから」

 

 「よし任せて!」

 

 現在、なんやかんやあって連邦生徒会に所属しています。

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 「では、本日の定例会議を行います」

 

 AM8:30。いつもの朝の鍛錬を終えて、シャワーやら朝食やら終えて、今は会議室で座っています。

 ぶっちゃけ眠いです。ただ、寝たら確実に左隣にいるボクの秘書の雷が落ちるし、何より今回の司会である扇喜さんの怒髪天が炸裂する。

 いやだ、それだけはいやだ!!だって彼女怖いもん!

 

 「財務室長、議題を進める前に少しだけお時間よろしいでしょうか?」

 

 どうやら我が秘書が何やら物申したいことがあるらしい。

 相変わらず肝が据わっているというか、豪胆とでも言うべきか。あの凛としてクールな扇喜さんに『物申したい!』なんて豪語できるなんて。ボクにはとてもとても……

 

 「はい、三日月さん。何か問題でも?」

 「えぇ、大問題です。というか、この問題を取り上げなければ連邦生徒会の沽券に関わります」

 

 そんな重すぎる前置きをしてボクに指を指す。

 これこれ、あまり人に向かって指を指すのは良くないんだよ───って、ボク?

 

 

 「なんで会議室でお茶を点てているんですか!?!?」

 

 

 まるで一大事件のように隣で叫ぶ三日月さんの声が会議室で響き渡った。

 ……ふむ、そこまで糾弾されるようなことか?いや待て、彼女に理由をちゃんと説明すれば分かってもらえる筈だ。

 

 「ごめんね、つい癖で……」

 「あぁ、癖なら仕方ない───って何度も同じ手が通用するとは思わないで下さい!!以前も突然駄菓子を作り始めましたよね!?この問答何回目ですか!?」

 「ん〜、3回目?」

 「少なくとも10回以上です!!」

 

 おぉ、よく覚えているね。流石は我が秘書。

 

 「だって、ほら。みんな会長がいなくなって大忙しじゃない?それに気持ち的にも余裕を持てていない。だからボクがお茶を淹れて少しでもリラックスできたらって思ったんだ……」

 「えっ、そんなことまで考えていらしたんですか?す、すみません、強く言っちゃって────」

 「それが終わったら剣を振りに行くね!みんなが和めば仕事の効率も上がってハッピー、ボクも晴れて稽古に励むことができてハッピー……どう?いいこと尽くし───」

 「そんなことだろうと思いましたよ!!それにあなたには報告の仕事があるのですからどのみち無理です!!あと、やっぱりこれは没収します!!」

 「あぁ!?ボクのお茶セットが!?」

 

 慈悲も庇護もなくお茶セットは回収されてしまった。

 トホホ、自信作だったのに……

 

 「オホンッ、そろそろいいかしら、()()()()()()()()()()()()?あなたが仰ったように、今の連邦生徒会には時間も精神的にも余裕が持てていないのよ」

 「あ、うん。ボクに構わず全然進めちゃって?」

 

 こ、怖い……やっぱり扇喜さんが怖い……

 見て、あの睨み。まるで人を殺してきましたよと言わんばかりの鋭さよね。ぶっちゃけキヴォトスで一番鋭いのはボクの剣筋じゃなくて扇喜さんの睨みだと思ってる。

 ハァ、()()()()()()()()()()()()は普通に耳が長い可愛い後輩だと思っていたのに……これが職場環境のストレスってやつか?許さんぞ、生徒会長!!

 

 あ、ちなみに対キヴォトス脅威対策室長という物騒で長ったらしい肩書はボクの役職みたいなもんです。いつの間にか設立していて、いつの間にか放り込まれ───じゃなくて与えられたものだ。

 まぁ、脅威という脅威もなかったわけですし、これまでボクと秘書の2人体制でやってきたわけですけど。

 おっと、今『それってお払い箱って意味なんじゃ……』と少しでも思ったやつは今から斬りに行くので覚悟をしておいて下さい。

 

 「ところで代行官は?様子を見る限りいらっしゃらないようですが……」

 「代行官は今“先生”の対応をしているわ。サンクトゥムタワーの制御権の確保と共に、そのままシャーレの部室までご案内する予定だから、この会議の終了までには戻ってこれないと思うわ」

 

 んー、先生?あぁ、なんかそんな人が来るとか来ないとかあの子(生徒会長)から聞いていたような聞いていなかったような……

 

 「先生、ですか。本当に信用に足る人物なんでしょうか?人物も人柄も知らない相手にあの超法規的な権限を渡すなんて……。アレはキヴォトスの勢力図を揺るがしかねない代物なんですよ?」

 「それこそ今更でしょう。今日お越しになった先生は()()連邦生徒会長の置き土産です。彼女の意図は理解できませんが、何かしら意味があるものだと考えています」

 

 ほっぺに人差し指を置くピンク色の頭──脳内のことじゃないよ──の持ち主である不知火さんは扇喜さんの返答を受けて、よく分かんない笑みを浮かべて『それもそうですね』と言って引き下がった。

 どことなく含みのありそうな言い方だ。でも、多分笑っているから納得したんじゃないかな。あぁいや、不知火さんが笑ってるのってデフォルトだったわ。

 

 「ではいつも通り、ここ1週間の不法流出された戦車やヘリコプター、その他の武器の総数について───」

 「あちゃー、こりゃマズイかもねー」

 

 2度あることは3度ある。今日はひたすらに議会の出足が遅い日だった……それだけさ。

 今度はお菓子をボリボリ食べているのに何故か叱られていない由良木さんがタブレット端末を見ながら何かの感想を呟いていた。

 

 「……何か問題でも?由良木さん」

 「ん〜っとね、端的に言うなら暴動が起きてるよ。それもシャーレの建物の前で。あっ、ちょうどリン先輩から連絡来たから一旦抜けるね」

 「……分かりました、手短に要項を伝えて戻って来てください」

 「分かってるって〜」

 

 

 

 「暴動ですか……、ここ最近、やはり少しずつ綻びが生じ始めていますね、トウヤさん────っていない!?どこ行ったあの人!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話は聞かせてもらった、拙者は戦場へ向かわせてもらう!!(デデドン)

 

 いや〜、やっぱり仕事はしなくちゃね〜。うんうん、こういう争いごとはボクの役目だからね〜。

 だから決して会議室から逃げたわけではないので勘違いしないように!

 

 

 …………さて。

 

 

 「………シャーレってどこ?」

 

 

 三日月秘書!迷ったから助けてくれ!

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 ここはD.U.外郭地区。

 常であれば人の行き通いが激しい地区であるが、今は私利私欲に埋もれた不良たちが跳梁跋扈し、道端に残るのは目的を見失った銃弾と漂う微かな硝煙のみ。

 さながら魑魅魍魎とした地獄絵図であるが、この超銃社会を誇るキヴォトスでは日常風景とも言える光景であった。

 

 「ぐっ……!?いったぁ……!!」

 「だ、大丈夫!?ユウカ!?」

 「私は大丈夫です!!なので先生はもっと下がっていてください!!」

 

 さて、そんな世紀末も世紀末な場所に佇むのは各校を代表とする4人の生徒と、先生と称された1人の女性の大人。

 この大人こそ、この透き通った青春の物語(ブルーアーカイブ)を彩る主役であり、重要な役割を与えられたメシアである。

 

 そんな主演を囲むように陣形を組むのは怒髪天の不良たち。少なくない数の仲間をたった5人に撃ち負かされ、プライドも矜持もズタズタとなっていた。

 

 あまりに多勢に無勢、衆寡敵せずとはまさにこのこと。幾ら個が凄まじくとも数の前には手も足も出ないのが世の常だ。

 だが、彼女たちは地に臥していない。何故なら、この物語にはなくてならない()()()がいるのだから。

 いわば、これは彼女(先生)に対するチュートリアル。試運転もいいとこの戦闘であった───筈だった。

 

 しかし、運命とはいつも気まぐれだ。

 ほんの些細なことで何もかもが狂ってしまう。

 

 「ッ、まだ増援きますッ!!」

 「ちょっと、どれだけいるのよ!?」

 

 もし、この襲撃の計画を企てた人物が()()()を想定して本来の計画の()()も人員を増員していたら?

 もし、この襲撃が単なる暴動ではなく、()()()()()を呼び寄せるためだけに企てられたもの()だったとしたら?

 

 運命の歯車は狂いだし、その牙が主人公たる彼女(先生)らに突き刺さろうとしていた………その時。

 

 

 

 

    

 

 

 

 戦場に3本の銀閃(ぎんせん)が疾った。

 その(せん)はあまりに薄く、ただ虚空に線が引かれただけだと認識してしまうほど。されど、あまりに異物である3つの閃光は、然りと全員の目に灼きついていた。

 

 そう思いきや、今度はあたかも最初からいたかのように彼女たちの前に男児が立ちはだかる。

 まるで何物にも染まらぬ漆黒の闇のような黒髪と、それと相対するように着為す白衣が幽玄を纏っているかの如き雰囲気を演出させ、戦場とは似つかわしくない空気を保たせていた。

 そして、その手には彼の上半身以上はあるとされる刀が据えられており、キヴォトスに来て間もない彼女(先生)であっても銃を持たぬ彼の異常性を理解出来た。

 

 やがて彼女(先生)は困惑する。何があったのか、新たな襲撃か、と。

 それもそうだろう。この臨戦体制の中、突如としてまったく見知らぬ子どもがいるのだ。

 幾ら相手が生徒であるといえども、この場(戦場)ではそう考えるのが自然といえよう。

 戦場において新たな要素の介入は逆転の表裏一体を担う現象である。故に大人である彼女(先生)は状況の深刻さにいち早く気付きながも、自身を守るように囲んでいる彼女たちに警戒の呼びかけをしようとして─────言葉を詰まらせた。

 

 何故なら、先ほどまで切羽詰まった表情をしていた筈の子どもたちが、まるでヒーローを見るかのような目の輝きをもって男児を見ていたのだから。

 

 「トウヤ先輩!!」

 「……ん?君たち、こんなところで何やってるの!危ないでしょ!!」

 「言ってる場合かぁぁぁぁ!?」

 

 先ほどの雰囲気はどこへやら、随分とほんわかな雰囲気に塗り替えられたと彼女(先生)は実感する。

 しかし、彼に聞きたいことが泡のように沸々と湧き上がり、上手く思考が纏まらないままに口に出す。

 

 「き、君は一体……。それに、君こそそんなところに居たら危ないよ!?」

 「あぁ、それならもう大丈夫ですよ」

 

 ゆらりと、まるで流水の如く回され、やがて少しずつ鞘へと収まっていく剣捌きはもはや一種の芸術か。

 その場にいる者は例外なく、時も状況も忘れてその光景に見惚れていた。

 

 

 「だってもう─────()()()()()

 

 

 チン、と鯉口と鍔が重なる甲高い音が鳴り響いたと同時に、周りを囲んでいた筈の人間は地に臥せた。

 

 まるで映画のようなワンシーン、されど間違いなく現実で起こった事象に彼女(先生)は目を見開き、生徒たちは見慣れたような仕草を見せていた。それが当然であるかのように、この世の常識と言わんばかりに。

 

 

 

 「では改めて。連邦生徒会所属、名を叢雲(むらくも)トウヤと申します。以後お見知りおきを。………ところでみんな、お茶飲みたい?」

 

 

 

 彼の名は叢雲トウヤ。

 

 超銃社会であるキヴォトスにおいて剣技のみで他を圧倒し、存在するだけで抑止力となった彼に人々は───【剣聖】と、そう讃えた。

 

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