インフィニット・ストラトス‐Across the Universe‐ 作:譲葉松風
無人機騒動から一夜明け、学園の運営に支障がないことが分かったため平常通りに授業を行うことになったその日。全く進展がないなぁ、と半ば諦めかけていた篠ノ之と一夏の関係だったが、鈴の存在――話によると二人目の幼馴染、セカンド幼馴染とかいうやつらしい――によって発破をかけられたのか篠ノ之がとうとう一夏に告白をしたのだった。これにはさすがに俺も驚いた。公衆の面前で「私と付き合ってもらう!」と言い放ったから大したものだ。
「でもさ、篠ノ之」
「箒と呼べと言っているだろう」
「名字嫌いなんだっけ。じゃあ箒」
「なんだ?」
昼食の時間に一夏が席を外した隙を狙い、篠ノ之改め箒に件の告白に関して問い詰めてみることにした。
「一夏に告白したじゃん。学年別トーナメントで優勝したら云々みたいな感じで」
「う、うむ」
「あのせいで何故か優勝したら男子生徒、つまりは俺とも付き合えるとかいうデマが出回ってるんだよね」
「なんだと」
「いや、そのことはどうでもいいや。勝つのは俺だし。それよりも問題は一夏だ。あいつはその、なんだ、うまい言葉が見つからないんだが――」
「はっきり言え。男だろうが」
お前が男らしすぎる。もとい武士道精神にあふれすぎている。
「誤解を恐れずに言えば、一夏は鈍感だろ?露骨に好きなオーラを出している奴がいるのにも拘らず全く気付かない」
「鈍感に関して人のこと言えるのか、と言いたいところだが、何も言い返す言葉が見つからない……」
「だから付き合うって男女交際の事じゃなくて、槍か剣で突きあうとか精々買い物に付き合う位の意味で取ってると思う」
意見を口に出して説明しながら、全く話に加わってこないセシリアに意見を聞こうと思ったところで鈴を引き連れた一夏が席に戻ってきた。話は打ち切りだな。
「だからストレートに好きって言ったほうがよかっただろ、って」
「す、すすす、好きじゃありません!」
真っ赤になって否定する箒。うわさに聞く素直に慣れない系女子、ツンデレってやつか。
先に教室に行く旨を伝えて食器を手に立ち上がる。箒には悪いが既に色恋沙汰などは眼中になく、学年別トーナメントへの懸念のみが残っていた。
出場は強制的にさせられると聞いている。だがスノーが手元にない今、俺の機体は学園の貸出機体であるラファール・リヴァイヴか打鉄で出場することになるだろう。
トーナメントへの出場自体に文句はないが、正直なところ勝てる気がしない。ラファール・リヴァイヴなんかに乗ったら、初戦のトラウマでも込み上げてきて体が竦むんじゃないかってレベルだ。最悪の場合は2:2の戦いという今回のルールに甘え、相方に主戦力という役割を押し付けると言うのも一考か。
兎にも角にも避けなければならないのは、無様に負けて今まで地道にあげてきた評価を無に帰すことだ。そんなことは価値以前に俺のプライドが許さない。
この学園に来て初めてともいえる自らへの宣誓を胸に抱き、誰もいない廊下を歩き続けた。
「今日はなんと、転校生を紹介します!」
ホームルームが始まるかと思われて早々、山田先生はそんな言葉を口にした。昨日の騒ぎから一夜しか明けていないにも拘らず、何事もなかったかのように日常が進むことに違和感を覚えるべきか、それともそんな事件があった場所に――前もって予定されていたとしても――転入させるような国に違和感を覚えるべきか悩み、考えることを止めた。思考停止。
教室内がざわつく中、扉が開きセシリアとはまた違った育ちの良さを感じさせる転入生が歩みを進める。
「フランスから来ました、シャルル・デュノアです。皆さんよろしくお願いします」
箒とはまた違ったポニーテール(呼び方が分からないのは内緒)で束ねられた金髪に碧眼、柔和な微笑みと声。それだけ見ればまた女子生徒が転入してきただろうと思うところだが、転入生の着る服装がその思い込みを否定する。
「お……男?」
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を──」
この後の展開は何となく予測でき、人差し指を耳の奥深くまで差し込んで外界の音を拒絶。したのだけれど、類まれなる団結力を誇る我がクラスの女子が織り成す黄色いシャウトは、多少の小細工を弄したところで意味がなかった。相棒がグレネードでスイカみたいに吹っ飛ばされた時よりヤバいってことだ。
「えっ?」
「男子! 三人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形! 守ってあげたくなる系の!」
しかも耳を塞いでいるのに鮮明に聞こえる台詞。よく通る声なのだから女優よりオペラ歌手とかを今度おすすめしよう。
「静かに! 紹介はまだ終わっていない。――いいぞ、入ってこい」
織斑先生の一喝と共に静かになる教室。そして再び扉が開き、まさかの二人目の転入性が教室に足を踏み入れる。
小柄な体躯と不釣り合いな長い銀髪、左目を覆い隠す眼帯。いつか出会ったその少女は、戦場で見たときよりも遥かに近寄りがたい雰囲気を発散していた。
「挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
教官て。俺以外の奴が教官とか言い出すとは思わなかった。人に謎のあだ名をつける趣味でもあるのかと勘繰り始めた俺を余所に、ラウラは背をピッと伸ばして口を開く。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
ただ一言だけ言うと、それきり何も言わずに黙りこくる。次なる一手を期待するクラスメイトと、大仏の様に黙り続けるラウラ。サッカーのフェイント、もしくは街中で正面から来た人と道を譲りあうような膠着状態に耐えきれなかったらしい山田先生がおずおずと言う。
「あ、あの……以上ですか?」
「以上だ」
会話終了。きっぱりと言い放ったラウラはスタスタと歩き始める。もしかして俺の存在に気づいてくれたのかと、少しばかり心の準備をする。
「貴様が……」
だがその目が捕えているのはどう見ても俺では無くて。事実に気づいたその瞬間、俺の体は反射的に動いていた。
――バシッ。
一夏に向けて放たれたビンタを、寸での所で阻止する。親と子ほどに体格が離れたラウラが、子供とは程遠い敵意を持った目で俺を見上げる。
「――何のつもりだ?」
「こっちの台詞だ。ドイツがどうだが知らないが、日本で挨拶するときに殴る文化はねえぞ」
「……ふん」
興が削がれたとでも言いたげな様子で腕を振りほどき、織斑先生に無礼を詫びるラウラ。何が起きたか分からないという様子の一夏を、肩を叩くことで励まし席に戻る。
とりあえず何の問題も起きなかったことで、織斑先生は授業の指示を出す。
「……今日は二組と合同でIS実習を行う。各人、着替えて第二グラウンドに集合するように。……織斑、鳴海。デュノアの面倒を見てやれ。以上だ、解散!」
その掛け声と共にトレーニングウェアを取りに行く女子生徒たち。統率のとれたその動きに反して、ラウラの動向を伺いながらデュノアの元へ歩み寄る。
「君が紫苑君? 初めまして、よろしくね」
「あぁ、よろしく。シャルルって呼べばいいか?」
「うん、僕も紫苑って呼ばせてもらおうかな」
すでに一夏とは挨拶を済ませたらしく、シャルルは朗らかな笑顔で挨拶してきた。
「早速で悪いがそろそろ教室を出たほうがいい」
「そうだな。女子が着替え始めるから、俺たちはアリーナの更衣室で着替えるんだ」
俺の言に補足するように一夏が言い、ドアへと歩きながらシャルルを案内する。
「毎回の事だから覚えるより慣れた方が良い」
「うん、わかったよ」
シャルルはその雰囲気に違い無く、素直に返事を返す。その姿は男というよりむしろ女に見えるが――
「あ、噂の転校生発見!」
「しかも織斑君と鳴海君も一緒!」
「聞いた!? こっちよ!」
「者ども出会え出会え~!」
「二人の黒髪もいいけど、金髪もいいわね!」
突如、先輩後輩をも巻き込んだ女子生徒の壁が前方と後方に立ちふさがる。だがあくまでも前方と後方のみ、素直に横に逃げさせてもらおう。
「こっちだ、ついてこい。少し走るぞ」
「あ、うん!」
「ちょっ、待ってくれよ紫苑!」
この状況に不慣れであるシャルルの手首を掴み、人垣を避けるように横道の廊下を突っ走る。一夏が抗議の声を上げるが、走るのは何時もの事。きっとノリで抗議しているだけだ。
「なんでみんな騒いでるの?」
俺の全力ダッシュに音を上げることなく手を引かれ続け、息切れ一つせずにシャルルがそう問いかける。フランスから来た転入生、男性というだけで転入してきたと思っていたが、それなりの基礎訓練は詰んでいるらしい。
「俺たちはピラニアの水槽に放られた金魚みたいなもんだからな」
「どういうこと?」
「紫苑は俺たちが男で珍しいから追いかけられるんだ、って言ってるんだよ」
「あっ……ああ。うん、そうだね」
シャルルは奇妙な間をおいて答えた。表面上は疲れていないように見えても、やはり疲れているのだろうか。
全力疾走の勢いを殺さずに更衣室へと飛び込み、軽く息を整える。
「はぁー……。いつものことだけど速すぎるぜ紫苑……」
「あいつらが速いんだ、そりゃ逃げる。――にしても、よく疲れないもんだ、あの女共も」
「いつもこんな感じなの!?」
一夏とのやり取りに目を見開いて驚愕の声を漏らすシャルル。
「シャルルがいるから、いつもより多めだけどな。一応覚えておくと良い。ここでの戒めはたったの2つ。1つ目は救いはないって事」
「2つ目は?」
「1つ目を忘れるな」
学園で得た戒めを伝えると、シャルルは得心の言った表情で頷いた。
「もう時間もないし、さっさと着替えようぜ」
「え……う、うわぁ!?」
裏声のような高い奇妙な声を上げながら、シャルルは顔を覆い隠して体の向きを変えた。一夏が素肌に謎のドッキリグッズでも仕掛けているのかと思ったがそうでもないようだ。
「どうしたシャルル」
「うっ、うん、着替えるよ?着替えるから、その、二人ともあっち向いてて?」
個人的事情なのかあからさまに狼狽えるシャルルに俺たちは頷くしかなかった。予め制服の下にISスーツを着ておいた俺は適当に脱ぎ散らかす。
「じゃあ俺は先に外で待ってる――」
言葉の途中で構内アナウンスの前兆を知らせる音が更衣室に鳴り響き中断された。何事かと耳を傾けると、呼び出されたのはまさかの俺。
「――俺か。ちょっと行ってくる」
一言そう言い残して更衣室から出て、俺を呼び出した人物が待つ応接間へと駆け足で向かう。このタイミングで俺を呼び出す人物としてまず考えられるのは綾乃くらいのものだが……。
一抹の不安を抱えて応接間の扉を開け、俺を待つ人物を目視で確認すると、男は素早く立ち上がった。
「鳴海紫苑さんですね。汐澄社長からのお届け物です」
直立の不動の体制でそういうと男は傍にあったジェラルミンケースの中から、厳重に鍵のかけられた箱と封筒を取り出す。
「こちらの箱です。封筒のほうに注意事項を纏めてあると、社長から伝言が」
「あぁ、ありがとう」
礼を言うと、男は荷物を纏めてすぐに部屋を去る。
このタイミングで綾乃から贈り物があるということは、恐らく修理済みのISだろう。そう当たりをつけて箱に掛けられた暗証番号を入力すると、中から待機状態のISが現れる。つまり一時的にも修理を施し終わったということだ。
昔から綾乃の傍にいるが、まさか一日足らずでブラックボックス内部の修理をこなしてしまうとは思っていなかった。
封筒の中にある手紙を読み上げると、箇条書きでいくつか注意点が纏めてあった。
・機体出力はせいぜい80%が限度。
・高速戦闘では出力が80%を超えていなくても反応が鈍る場合がある。
・空間転移の使用は出力を可能な限り控えるように変更済。移動距離に制限あり。
完全な修理には至らなかったようだが、ISを再び戦闘可能な状態に持って行けたという事はコア内部のブラックボックスの解析もある程度完了したという事。これは世界に例のない快挙、自称「天才」を侮りすぎていた。
さまざまなハンデを背負う復活となったが、腐っても第三世代機。学園の訓練機でトーナメントに出場する有象無象に負けるつもりはないが、問題はやはり専用機持ちだ。
手紙には注意事項以外にも、トーナメントに関して一つだけ書かれていた。その唯一の命令を実行する手筈を考えながら応接間を出る。腕時計で確認すると授業の時間はとっくに過ぎていたが、手元に戻ってきた愛機の乗り心地を確かめるためにも再びアリーナへと向かった。
愛機がこの手にあるからか心なしか足取りも軽やかにアリーナへたどり着いたが、既に誰かが使用しているようだ。明らかに出力の下がったスノーを公開するのは早すぎると判断して、先人の動きでも茶化しに行ってやろうかと観客席へと駆ける。
だが俺の期待は裏切られることとなった。
観客席からまず最初に目に入ったのはISを装着したまま伏しているセシリアと鈴。そしてそれを見下ろすように君臨している黒いIS――
「なるほど、相手はラウラか」
彼女が圧倒的な性能を有するISと技量を持つことは、この俺自身が身を持って知っている。それでも候補生二人を相手に優位に立ちまわれるとは、俺と戦ったときは手を抜いていたのか、ロールアウト直後で完全なものではなかったのか。
顎に手を当てて状況を観察していると、鈴が青龍刀を支えに立ち上がり何かを放つモーションを取る。衝撃砲を放ったのだと一度見た事のある俺は察したが、目に見えぬ砲弾はラウラの眼前30cmほど前に起きた爆発から判断して防がれたようだ。ドイツで戦ったとき、運動エネルギーが失われたかのようにあらゆる攻撃を防いだあの兵器だろうか。盾としてはあれには勝る兵器は見た事がない。
そしてその盾の存在は鈴の不利を揺ぎ無いものにする。トリッキーな戦術を取るタイプではない鈴の機体、甲龍では勝ち目はゼロに近いだろう。それを鈴も分かっているのだろうが、青龍刀を構え直して衝撃砲を連射しているようだ。
だが幾ら足掻こうとも、ラウラの実力はそれを上回る。肩の装甲から龍のようにしなりながらワイヤーのような4本の武装が鈴に襲い掛かる。龍が龍に牙を剥いてるよ、等とよく分からないことを考えている中で鈴は必死になってその攻撃を避けるが、数の利に負けて右足を捕らわれてしまった。
まるで赤子と遊んでいるかのような含み笑いをするラウラを、無数のビットが取り囲み掃射を開始する――が、彼女は地を滑るように回避して上空へと飛翔した。そんなラウラをセシリアはミサイルで追撃をかける。その軌道から回避するために大きく旋回するラウラだったが、その動きを予測したセシリアは未来位置にビットを配置していた。再び放たれる閃光を右手から放たれる虹色の膜で受け止めるラウラに、セシリアがレーザーライフルで照準を合わせる。
――無敵の盾と言えども、弱点はある。その一つが同時実行不能。
一瞬生まれた隙を狙いライフルから放たれる必殺の一撃を、肩部装甲がスライドし現れたレールカノンで撃墜。炸裂した閃光の中でワイヤーを操作して鈴をセシリアに激突させると言う暴挙に出た。
一転攻勢の機を失い再び地に伏すこととなった二人に、残酷な笑みを浮かべたままレールカノンの照準を合わせる。これで終わりだろうと思った――俺も、恐らくラウラも――が、セシリアがその油断を狙って超至近距離でミサイルを発射。三人ともが巨大な爆炎に包まれた。
一陣の風が炎も砂埃もまとめて掻き消し、現れたのは三人。多少のダメージは負っているものの全員健在だった。
その中でも最もダメージの少なかったラウラは涼しい顔をしたまま、今度は8本のワイヤーで鈴とセシリアを追い詰める。数が増えたことで囮と本命が一斉に襲い掛かり、いとも容易く二人は首を絡め取られた。
シールドエネルギーを削ることのない、操縦者への直接攻撃。シールドを当てにして操縦者を露出していたツケが回ってきたという事だろうか。息継ぎさえままならない二人へ急速接近したラウラは、この上なく単純な暴力で持って制圧を開始した。
流石にそろそろ止めたほうがよさそうだと、スノーを展開しようとしたその時だった。丁度反対側で観戦していたらしく、その瞬間まで存在に気付かなかったが観客席を保護するシールドを一夏が白式の一撃で持って破壊、戦闘へ介入した。
「その手を離せぇぇぇぇ!」
猛々しく叫びながら特攻する一夏を、驚いたような表情を見せながら悠々と静止させるラウラ。初戦の思い出が蘇り、苦笑いが漏れる。静止に集中したことで鈴とセシリアが解放され、代わりに一夏へレールカノンが向けられた。
動けずにただ一撃を喰らうのを待つだけの一夏を救ったのはシャルルだった。両手に持ったアサルトライフルで実弾の雨を降らせ襲い掛かるシャルルを忌々しげに一瞥して照準を変更するラウラ。
その一瞬で一夏は倒れ伏している二人の元に向かい、ラウラはそれを止めようとするがシャルルが銃撃を繰り返してそれを妨害する。
シャルル対ラウラ。どうなることかと思ったが、ISの世代差故か一瞬で勝負の行方が見えた。シャルルの左手に巻きついたワイヤーをじりじりと引き寄せるラウラに、せめてもの抵抗か空いている右手でアサルトライフルを乱射。だが当然の如く、その弾丸がラウラに届くことはなかった。
相も変わらず口元に冷たい笑みを浮かべたまま、左手にブレードを展開。その輝きが妖しく煌めきシャルルへ襲い掛かるその瞬間を狙い、スノーを展開した俺は空間転移を実行し高周波ブレードで受け止める。
「なんだ、またお前か」
「悪いな。一体多数とは言え、弱いもの虐めは嫌いなんだ」
「ならお前ごとでも始末する」
ブレードを再び振り上げるラウラに対し、防御体制のまま空いた手でサブマシンガンを構え、ラウラをロックする。攻撃の瞬間、防御の瞬間、僅かな衝撃が走る瞬間に引き金を引く――
一際甲高い金属音がアリーナに鳴り響く。俺ではない、届く前に誰かが受け止めた。
受け止めたものの正体を確かめるべく、ビームブレードと打ち合っている黒い影を凝視する。
「教官……!?」
ラウラが驚きの声を上げるが、無理も無い。そこに立っていたのはIS用の実体剣を手にした――生身の織斑千冬だった。
生身の体でIS用の武器を操り、ISの攻撃を防ぎ切った最強の女は無言で武装を解除しろと睨みつける。それを前にラウラですら、ISを解除して大人しく従う。
同様に俺も武装を解除するが、散っていく影の中で目当ての人物を視線で追いかけ、その行く先を予測して先回りするように走る。
夕焼けの焼け爛れた光の差し込む廊下で独り闊歩する少女の前に立ちふさがり、怪訝な顔で見上げる彼女へと言い放った。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。お前に話がある」
しばらく時が流れ、学年別トーナメント当日。
アリーナには第三世界のデモ鎮圧を思い出させる程の人が詰めかけていた。その雑踏の中で一夏たちが電光掲示板の前を陣取り、トーナメント表の発表を待っている。一夏がシャルルと組んでいることは彼らから聞いた。手ごわいペアの一つと言えるだろう。
対策を反芻する中で雑踏が俄かにざわめき始め、トーナメント表が発表されたのだろうと顔を上げて表を確認する。その中で最初に目に入った名前の主が声を上げる。
「な、なんで……なんでだよ!?」
驚愕の声を上げたのは織斑一夏とシャルル・デュノア。その対戦相手はラウラ・ボーデヴィッヒと――
「お前たちの相手は俺らしい。宜しく頼むぜ、二人とも」
この俺だ。
『Heatless Colleague』;冷酷な同僚=ラウラ。