アダー・ハァイフェナス   作:ニズヘグ

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設定を練るだけ練って満足する可能性ありけり


第一話/不審者?

 この世界を一身に担うシステム。その中枢はエルロー大迷宮の最下層の更に地下に存在している。地形による物理的防護、蜘蛛と龍による妨害、さらには魔術的保護も重なり、この惑星で最も安全な場所と言えるだろう。

 

 故に私の拠点はそこにある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エルロー大迷宮、その中層で火竜の死亡が確認された。

 

 死亡したものが、中位や下位の竜種ならばそれは珍しいことではない。原生生物たちと交わった結果として、星に生きる種として強固にはなったが、システム下においていえば虚弱になった。時間をかけて着実に成長していくことこそ龍種の特徴であるとはいえ、生まれたばかりの者は弱く、斃されるのは自然のことだ。だが、当該の火竜は違う。感覚からしてまっとうに竜として経験を積んできた個体である。名を与えられるまで50年とかからない段階であり、原生生物の生存できない環境下で生育している純粋な竜であるためレンドの後釜に収まるはずであったのだがな。しかし既に下位龍程度の実力を発揮できるはずだが...。

 

 これは、明らかに異常事態である。誰が殺した?

 

 アリエルの影響でクイーンでも出てきたか?...違うな、それだと被害がなさすぎる。あの巨体が動くのだ、私が気が付かない理由はない。何よりあの常に人の顔を窺っているような臆病者が意図的に龍と敵対するとは考えにくい。アークのが来た場合火龍を出す手はずとなっているし、グレーターは役不足だ。しかし、迷宮において蜘蛛以外が上位竜を殺すことができるとは考えにくい。

 

 だが、態々表に出てきたことを考えると思考ルーチンが変化した可能性は考えられる。あれもまたポティマスの実験体である以上どんな変化が起こってもおかしくはない。...ギュリエディストディエスと既に話がついている可能性があるのか。古傷の舐め合いばかりしている愚か者どもめ...。

 

 ...だめだ。あれのことを考えている場合ではない。サリエルと出会って変化したように見せかけているが、あれはどこまでいっても傲慢な龍であり、弱者の言うことなどに耳を傾けるはずはない。結局私にはどうすることもできないことだ。

 

 ポティマスが重い腰を上げた可能性や、単に異常個体が現れただけの可能性もあるが...仕方ない。結局、私が直接動くのが一番早いことなど分かり切ったことだ。レンドに配下をどかせるように伝えなけれ...

 

 

 

 ガシャン

 

 

 

 

 背後で通信機が落ちる音がした。

 

 振り返るとともに腰に手をやる。規定の位置にある通信機の冷えた金属の感触が伝わってくる。

 

 冷や汗が噴き出してくる。

 

 寒気がする。

 

 なぜ、音が聞こえてすぐに気が付かなかったのだろうか。片手に収まるような小さな機械から、一度経験したのならば決して間違えることのない圧倒的な存在感を感じる。

 

 何を間違えた。どこで間違えた。頭を回せ。今何ができるか考えろ.........

 

 

 

 今まで聞いたことがないような電子音が鳴り響く。タイムリミットだ。この焦りすら、かの大神には想定通りなのだろう。

 

 「...何か御用でしょうか。我が主人ギュリエディストディエスにお伝えすることがございますれば何なりと承りますが。」

 

 「思ってもないことをいうものではありませんよ。一度言葉にしてしまったら、それは真実になってしまうかもしれません。あなたがいつも思っていることでしょう?」

 

 我ながら失策だ。焦りと緊張が思考を縛る。決して見透かされてはならない。ここでの一挙手一投足が私の未来を左右することを自覚しろ。

 

 「...私に御用でしたか。」

 

 「一言だけ。あなたが気にしているあれは私の新しいおもちゃです。」

 

 おもちゃだと?この惑星であれが愉快と感じるものが生まれることなどあるのか?摩耗しきったこの惑星には価値などなく、ただ惰性で存在しているだけだろうに。ここはおもちゃ箱どころかゴミ箱にすらならなれなかった場所だ。

 

 「...失礼ながら、この箱庭に興味を引くようなものが存在するとは考えられず。」

 

 「一言だけといったはずですが。ですがそうですね、敢えて言うならゴミ箱に格上げというところですか。」

 

 「...承知いたしました。」

 

 その返事に満足したかのように押しつぶすかのような圧迫感は消え去った。時間にすれば高々数分の出来事ではあるが、消耗は甚大だ。あのように気配をまき散らすのならば少しばかり配慮を賜りたいものだ。

 

 まぁそんなことはどうでもいい、いや何事もないように結界を抜けられたのはどうでもいいわけではないが想定内だ。

 

 今回の仕事はゴミ処理。システム始まって以来初の真っ当な、本来想定されていたはずの仕事だ。他の惑星で要らなくなったゴミをこの惑星の燃料として再利用するという、なんともエコロジカルで環境に優しい行為であることか。

 

 しかしこれは本来ギュリエディストディエスに割り当てられる仕事ではあるが......模範的龍種である故に相性が悪いらしい。いや、杜撰な管理人に仕事が割り当てられないことなど当たり前か。

 

 ひとまず確かめなければならない。この惑星に生まれた新たな存在価値を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地形を無視して一直線に該当個体のもとに向かう。中層に明らかに竜の密度が低い箇所が存在している事から、場所の把握がしやすい。

 

  ノルマはステータスと魂の確認だ。可能ならばサンプルも回収したいがあの入れ込み方だと他の個体から回収すべきか。

 

  ...[探知]とはまたらしいスキルを使うな。最低でもヒト種の魂を流用しているのか。しかし、逃げられては困る。

 

 魔術中和結界起動。

 

 ふむ、問題なく発動はしているな。それならば今はこれで良い。高く見積もっても中位龍程度、動くことなどできまい。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 ...やばい!何かが爆速でこっち来てる!

 全力で避けて体担当!マグマ以外ならどこでもいい!

【おし、任せ...は?】

 

 弾ける地面。

 地面から細身の男が生えてきていた。

 片手には鮮赤色の槍を持ち、もう片方の手には辞書のような分厚い本を手にしている。

 研究者のような白衣を身に纏っており、整った外見をしている。

 そんな不気味な男がこちらを見ている。

 命の危険は感じない。

 強者特有のオーラも感じない。

 けれど、その感覚こそが不自然な気がして

 

 『鑑定が妨害されました』

 

 鑑定を妨害?そんなことできるの?

 

 ここで初めて男が驚いた表情をした。次の瞬間、体を不愉快な感覚が包む。

 受鑑定中?

 ステータスに突然そんなメッセージが表示される。

 

 急いで確認するより先にメッセージも嫌な感覚も消え去った。

 

 そして、一瞬そらした視線を男に戻すと男は笑っているように見えた。

 

 「✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱」

 

 何か喋っている。

 言語が違うのか何を言っているか分からないが、男が喜んでいることは伝わってくる。

 どうして?

 

 「✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱」

 

 私をちらっと見て何か喋って、掘ってきた穴から帰っていった。

 

 【...情報担当ちょっといいか?】

 どうかした?体担当。

 【鑑定についてなんだが...】

 妨害されたよね。私たちもできるのかなぁ。

 【[叡智]を使えば鑑定できたんじゃないか?】

 あっ

 【...】

 ...何しに来たんだろうねあの男の人。

 【露骨に話しかえたな】

 過ぎちゃったことだし仕方ない!

 【はぁ...まぁ俺等も人のこと言えないんだけどな】

 どういうこと?

 【序盤から消されちゃった(?)んだよな】

 ???

 【集中すると俺と魔法担当は情報担当と一つになるのはいいな?】

 さっきの戦闘もそうだったよね。

 今回はなにか違うの?

 【今回は存在をかき消されたって感じなんだ。自分でも言っててわけわからないんだけどな。】

 あれじゃあ魔法担当は?

 【まだちゃんと戻ってきてない感じだな。まぁ数分で戻ると思うぞ。】

 う〜ん。

 ということはあの男は敵なのか?

 【そういうわけじゃないとは思うな。実際何か悪影響があったかと言われると微妙だし。倒した竜のとこ見てみろよ。】

 ん?

 なんか増えてない?

 パット見、中層ってより下層の魔物な気がするけど。

 【な?...けど今思い返すと男の顔が思い出せないんだよな。】

 ...確かに。

 金髪で整った外見ってことだけ覚えてるけど細かな特徴思い出せない。

 【狐に化かされたような感じだな。それが夢か。】

 ...何だったんだあの不審者。




あるあるネタだけど
七つの大罪に憂鬱と虚飾を加えるの好きなんや
語感が良い
考えやすい
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