「お花見? 先生と?」
シャーレの当番としてお手伝いをしている際、先生からお誘いを受けた。
「そう! こないだひとけがない穴場を見つけてね、ヒナと一緒に行きたいと思ったんだけど……どうかな?」
「いっ行きたい!」
「良かった、それじゃあ明日2人で行こっか」
「うん、楽しみ」
……ん? 〝2人〟で? そ、それってデートって事じゃ!?
私は悶々としながら先生のお仕事を手伝った。
♢
翌日、待ち合わせ場所に行くと既に先生が待っていた。
「先生こんにちは、待たせてしまったかしら」
「いや、全然。それじゃあ行こっか」
「うん……言われた通り普段着で来たけど、本当によかったの? 先生」
「ん? どういう事?」
「ほら、私って良くも悪くも知名度があるから……私のせいでその穴場の場所が穴場じゃなくなったり、休日自体が無くなったりしまわないかと思って」
「なるほど、そういう事ね。ソレに関しては平気だよ」
懸念事項を伝えると、先生は胸を張りながら拳を胸に当て得意げな顔をする。
「今日は〝ヒナと過ごす〟って決めてたからね、ヒナには内緒で護衛を雇ってたんだ」
「護衛? それなら私が──」
「違うよヒナ」
「?」
「この護衛は、ヒナのゆっくりする時間を守る為の護衛だよ」
びっくりした、まさか自分が護衛の対象になっていたなんて。けど、確かに先程から感じている視線に敵意は感じない……
「ヒナに不届きな事をしようとする人達には、悪いけど今日だけは近づく前にお引取り願ってる」
「……信頼してるのね、その護衛を」
「うん、皆いい子達だからね。だから今日は2人で思いっきりリフレッシュしよ!」
先生から頼られている護衛に少し嫉妬してしまい、皮肉を飛ばしたけど打ち返されてしまった……頬が熱い、私今変な顔してないかしら。
「それじゃあ出発!」
♢
「綺麗……」
「でしょ?」
「えぇ、本当に……とっても綺麗」
街から離れた山を登った所には、小川が流れる傍に桜の木々が並び、その花びらを満開に咲かせていた。
先生はブルーシートを敷き、水筒からお茶をコップに淹れて渡してくれた。
「はい、ヒナ」
「ありがとう先生……はぁ、温かい」
「ほっとするから熱いお茶好きなんだけど、ヒナにも気に入って貰えてよかった」
「うん、とっても美味しい」
「お弁当も作ってあるから、後で一緒に食べよう」
そのまま先生と一緒にゆったりまったり、桜を見ていた。桜も川もそれ以外の山景色綺麗で、浴びる陽の光はとても暖かくて、そして何より……
「静かね……」
「そうだね……皆が居る目まぐるしい毎日も大好きだけど、たまにはこうやって静かに過ごすのも好きなんだ」
「そうなんだ」
「うん」
耳に聞こえるのは木々が風に揺られてる音や、川のせせらぎ……こんなにも静かで、穏やかな日を過ごすのはいつ以来だっただろうか。もしかして、初めてかもしれない。そう考えているとついつい瞼が重くなってくるのを感じる。
「ヒナ、もしかして眠い?」
「ごめんなさい先生、昨日はしっかりと寝たつもりだったんだけど」
「しょうがないよ、こんなにもポカポカなお昼寝日和なら。ほら、おいで。膝貸してあげるから」
「さすがにそれは、せんせいにわるいは」
「いいのいいの、タオルケット持ってきてあるからソレも使って」
「……そこまでいうのなら……あまえさせていただくわね」
わたしはおもいあたまを、せんせいにあずけてめをどじる。
せんせいのにおいが、からだのあったかさが、わたしをあんしんさせてくれる。
「すぅ……すぅ……」
「もう寝ちゃったのか、やっぱり日頃の疲れがちゃんと回復できてなかったみたいだね。誘って良かったよ」
「くぅ……くぅ……」
「いつもお疲れ様、今日はゆっくり過ごそうね。ヒナ」