コンビニの肉まんというのは、この世の中でも有数のエンターテイメントだ。このツンと冷たい空気の中頬張る肉まんの熱。香り。食感。味わい……二学期が始まるか始まらないかのうだるような暑さの中食べても素晴らしいが、やはり寒空の下で食べるコンビニまんは格別だ。旨味が口いっぱいに広がり、そしてヤケドする口腔内……うーん、エンターテイメント。いや、ヤケドはしないように精進したいね。味わえる割合が減るからな。
今日は肉まんを最も美味しく食べるために放課後頑張って時間を潰したんだ(帰宅部)。薄暗くなってきた空と冷たい空気、程よく空いた腹の具合! これだよこれ。分かってるね僕。
さあ準備は万全だ。いつものコンビニを巡り、愛するコンビニまんを買い込んで来たばかり。一番手はやはり原点にして頂点、スタンダード肉まん。キミに決めた!ウオオオ食うぜ!ほっかほか!たまんないね!このね、包装紙! 包装紙をペロッとめくってね、更に
ああ素晴らしい、皮の香り餡の味湯気と外気のコントラストもう最高だ頭の中いっぱいに歓喜が溢れてああ美味しいうれしいたのしい鼻と舌と記憶のよろこびが駆け巡るにくまんさいこううまれてきてよかっ
「あ?」
ちょっと待て空気が違う。肉まんの香気と混ざるためにあるはずの、寒い季節しか味わえない澄んだ硬質なニオイがない。どことなく甘いニオイ。けれどなんの甘さか全く分からない、鼻の奥をぬるりとなでる、快か不快かだとなんとなく不快に振れる妙なニオイだ。少なくとも僕のコンビニまんタイムに相応しいニオイではなく――――。
森だ。薄いピンクや黄色の綿菓子みたいな色をしているが、そうとしか形容出来ない。顔を上げて眼前に広がる景色は明らかに住宅街ではない。パステルカラーの木々にはたくさんの丸い実が付いているが、クリスマスツリーのオーナメントのような、自然物とは思えない模様があった。
ふと風が吹く。それに合わせてチリンと音を立てているのは――ベル? オレンジ色の鐘が、まるで自分が花であるかのように、草から生えて音楽を奏でている。ヒソヒソと、噂話でも歌うように。
「どこだ、ここ…………」
肉まんに夢中になりすぎたか? それはまあそうなんだけれど、いくらなんでもこれはおかしい。そもそもさっきまで夜になりかけの時間だったはずなのに、綿菓子色の木の隙間から見えるのは明らかに昼の空。そもそもなんだこの木は。こんなメルヘン樹木、近所にあったら絶対話題になってただろ。映えスポットとして有名になって、そして観光客のマナーに辟易するタイプの観光地になるやつ。
思わず一歩下がると、ポペ、と間抜けな音が響く。
下を見ると、これまたパステルカラーに淡く光る……星だ。星マークが地面に埋まっていて、踏む度珍妙な音が鳴る。ポペ、ピキ、ポコ、実に間抜けだ。
まさかなあ。いや本当にまさかなあ。なんてファンシー。現実とはとても思えないのに、夢にしては触覚も嗅覚も鮮明に反応を返してくる。これはまさか。でもなあ。まだ違うって可能性も……
「あ、アナタ……なにしてるの?」
「ウーン。なんだか嫌な予感がするからとりあえず遊んでる」
「そ、そうなの? あっ灰色の星は踏まない方が……踏んじゃったわね」
「アッ不味かった?」
「えっと、今すぐ走って!」
慌てて走ると、爆発音と熱を持った追い風が背中に衝撃を与えた。
振り返って見ると地面が見事に焦げている。これは、逃げなかったらどうなっていたんだろう。
「……やー、危ないねここ! ありがとう教えてくれて」
「ありっ!? え、ええ、エヘヘ、べっ、別に、大したこと……ないわよ」
僕のあっさりした感謝に過剰に照れる少女。……少女、のはずだ。ただちょっと、髪の毛の色がピンク混じりの水色で、眼の色もウチで咲く濃い方の芝桜みたいなピンクで、身長が自販機のペットボトルサイズで……ヘンな形の翅のようなものを生やして、宙に浮かんでいるだけで。
普通に話しかけられたから普通に会話してしまったがなんだこれ。翅、透き通っててよく見えないけれど動いてないな? 羽ばたきもせずどうやって空を飛んでいるんだ?
「うん、本当ありがとう。それでさ、ちょっと訊きたいことが……」
「えっ? あっ、なにかしら、なんでも訊いて! アタシここ長いからなんでも――やっぱり遊び場かしら! えっと、うーんと! オススメの遊び場は向こうの河原よ! いろんな色に光る石を意識の続く限り積み上げるの。楽しいわよ!」
「メルヘン賽の河原……。ちょっと気になるけど」
「それともピョンキチでも見に行く? すぐ溶けて消えちゃうけどそこも含めて可愛いわ!」
「何者だぴょん吉……? えーと、そうじゃなくて」
なんて元気よく喋り続けるんだ。質問する隙がない。
「あとはあとは! そうだアナタの好きな色はある? アタシはオレンジ色なんだけど! あと――あっ、アナタ名前はなんて言うの?」
「ウーン、僕の好きな色は青色でェ……名前は、
「ミモリアオイ! そうなんだ! ミモリアオイ! あっ! アタシはえっとる!よろしくねミモリアオイ!」
「エットルサン……ヨロシク……」
「えっとるでいいわよミモリアオイ! でね!青色が好きなのよね?! だったらこっちの方に行くと青い木が多いの! こっち! ほら来て来て!」
「ウン……イイネ……アッ…………」
「あれっ? 道、間違えちゃった」
「河原だ……」
「え、えっと……あっ!でも見て!これアタシが積み上げた石!色ごとに分けたの、結構綺麗でしょ!ミモリアオイもやる?!やりましょ!!」
「アッウン……」
「クソッ意外と難しいなこれ!」
「そうなのよ、平べったいと思ったら案外斜めになってたりして……ああー惜しい!」
「もう一回ッ!」
「ワーッ!! やってられるかー!!」
「ああミモリアオイ! どうして石を投げちゃうの!? ……あっすごい! 石が跳ねてる! えっえっなにこれっ、わあすごーい! すごっ……」
「ワーハハハ舐めるなよ石どもが石投げキングだぜ僕ァ!!」
「……う、ううん、やっぱぜんぜん気にならない」
「なんで!?」
「あっ見て見てミモリアオイ! 金魚よ! 光っててかわいいでしょ」
「ワァー、ピカピカ……なんで落書きみたいな魚が光って泳いでるんだろ……」
「――――で、結局ここ、どこ?」
「え? 河原よミモリアオイ。どうしたの?」
「そうじゃなくてッ……!」
うっかり流されて遊んでしまったが僕は迷子なのだ。ちょっと遊び過ぎて着けていたマフラーも放り投げてしまったが、それでも僕は迷子なのだ。ここがどこかを把握して、早いところ家に帰らねばならない。
えっとるに事情を話し、帰り道を知らないかを尋ねる。
「ミモリアオイ……アナタ、ここに送られて来た新しい精霊じゃ、ないの?」
「え? 精霊? 僕は人間だし……あとごめん、言うタイミング逃しちゃってたんだけど、僕の名前ってミモリかアオイどっちかで分けて呼ぶタイプのやつで……」
「…………ああ、そうなのね……ううん、そうよね…………そっか、そう……あは…………」
おっと、急に黙った。表情が曇っていく。名前の呼び方間違えたことハチャメチャに気に病むタイプ?
「……ウン、文化は色々だし! 大丈夫大丈夫! ミモリアオイでも問題ナシナシ!」
「…………」
「あー、それで結局ここってどこか分かる? 本当に気がついたらここにいてさー、柳合町って分かる? そこへ帰る方角だけでも分かれば嬉しいなって感じなんだけど……ウン……」
「…………」
ワッ気まずい。もしかして逆? 逆になにか失礼なこと言ってしまったのだろうか。
「……え、えっとる?」
「………………………………。ここはね、ふわふわ森。ふわふわ森の、第三層。そしてアタシは、第三層管理者、えっとる。……ミモリ。アナタ、自分のこと、ニンゲンって言ったわよね」
「そうだと思ってるけど……」
「だとしたら――アタシ、アナタを殺さなくちゃいけない」
おっ?
「そ、そうなんだ……?」
「そう。『ふわふわ森第三層に侵入したニンゲンは例外なく殺すこと』。それがアタシの役割」
「そうなんだ……」
「そうなの! アタシはアナタを今から殺すの。分かる?!」
「そっかぁ……」
「そ……本当に分かってる? 大丈夫?」
大丈夫だよ、分かってない。いや、あまりにシチュエーションに現実感がなさすぎるし……。なんだろう。知らない場所に気付かない間に居て、よく分からないままさっきまで一緒にたのしく遊んでたヒトにそう言われてもそりゃあ……そもそもふわふわ森ってなんなんだその名称。おっしゃる内容から浮いてるせいでなんも頭に入ってこない。
「え、えーっと……アタシ、いくらだってアナタを殺せるのよ! ホラッ」
「っ!」
えっとるがこちらに手をかざすと、僕の身体が勝手に動き、その辺に落ちてたパステル色の枝を拾い上げる。そしてそれをそのまま自分の首に向かって突き――――
「痛っ」
「わーっ!? ちょ、ちょっと!なんで抵抗しないの! あああ血が、血が出てる!」
「ワッ本当だ」
「なんでそんな他人事なのよ!」
だって自分の身体が勝手に動くってなかなか得難い経験だよ……。とても現実とは思えない。そもそも抵抗出来たんだ。
寸止めのつもりだったのにどうして、とえっとるが半泣きになりながら何故か地面を掘る。その間も傷は熱く痛みを発し血は流れて――取り敢えず流石に止めねば――ああ血の鉄っぽいニオイがするなあとぼんやり思った瞬間、それを掻き消すようにむせ返るような甘いニオイが広がった。
「ッ!? シュークリームのニオイ……?」
「当たり前でしょそんな血が出てるんだから! じっとしてて!」
なんだこれ。さっきまで鉄臭かったはずなのに、それがすべて甘いニオイに変わっている。しかもそれが「シュークリーム」のニオイだと、無理矢理分からされているような、ひどく不快な感覚。帰りたい。
僕が困惑している間に、えっとるは地面から踏むと変な音の鳴る星を取り出していた。そのままそれを僕の首に押し当ててくる。
「よし! これで止血はカンペキよ!」
止血用だったのかコレ。確かに止まってるけどなんかやだな。シリコンみたいな触感。帰りたい。いや便利だけれど。さっきまでのニオイもしない。……でもやっぱなんかやだな。マフラーで隠しとこ。
「それでえっとる、僕を殺す予定は?」
「あっ……。 えっと、そうよ……アタシ、アナタを殺さなくちゃいけないの! 侵入者は皆殺し!」
「ウーン、それなんだけど――――」
そもそも侵入者と言われても、僕はここにくる予定が全くなかった。出て行けるなら今すぐにでも出たい。本当に帰りたい。そのことを伝えるが、えっとる曰くここにはよっぽど頑張って手順を踏まない限り来れないらしく、侵入する気のない侵入者などというものは想定されていないらしい。どうしてそんなひどいことを。僕がいるだろう僕が。そもそもなんだよふわふわ森って。柳合町はどこだよ。柳合町上連二丁目三十六番地。知らないのか柳合町。そうか……。
「精霊なら言い切れないけど……ミモリ、ニンゲンなんでしょ? ふわふわ森の一層も二層も通ってないなんて……気がついたら
「そう言われてもなぁ……僕としてもあり得ないことが起きてるんだよ。僕だってふわふわ森なんて聞いたことないし、そもそもキミみたいな生き物を見たこともなかったし」
「うーん? ニンゲンって大体みんな私たちを捕まえるのが趣味って聞いたのに……どういうことなのかしら……ニンゲンは平気で嘘をつくっても言うけど……でも…………う、嘘ついてるの?」
「ついてないよォ……」
ついてないけどそれ訊かない方がいいよ、嘘ついてるやつもついてないって言っちゃうから。そう指摘するとものすごく衝撃を受けた顔でそうなの!?などと言われたのでちょっと色々心配になった。人間に精霊を捕まえる趣味があるのかどうかは知らないけれど、人間が平気で嘘をつくっていうのはまあ、一定数いるからね。……僕も必要に応じてつくときはある。今はついてないだけで。悲しいね。かえりたい。
えっとるが難しい顔でじっとこちらを見つめている。僕に手を伸ばし、かと思うと頭を左右に振って手を引っ込める。そんな動作を何度も。随分なにかを思い悩んでいるようだ。
なんだろう、僕になにか――おっと大切なカバンが開いている。いつからだろう。えー、もしやコンビニを出てコンビニまんを入れたあとからずっとか?これはうっかりだ。ありがとうえっとる気付かせてくれて……ハッ、もしや!?
「えっとる、まさか僕のコンビニまんに興味が……?」
「えっ? とんじるばん? なあに、それ」
違ったか。あとコンビニまんだよ。でもそういえばお腹空いたな。結局肉まん一個しか食べてないからな。冷えてしまったけれどどれか食べたい。カバンの中のレジ袋から適当にひとつ取り出す。
「こういうの。これはあんまんだな。よく見るこしあん……ごま餡のやつ。結構美味しいから僕は好きだよ。普通のあんこのもあった方が嬉しいけど。ちなみに中はこうなって――――」
「へー! 真っ黒! 甘そうなのにいいニオイがする……!? へえーっ、これがにくまん! ふ、ふーん……」
「……………………半分なら食べてもイイヨ」
「えっいいの!? ……あ、でもやっぱり……いやでも…………も、もらえるなら、もらうわ!少しだけっ」
うぐぐ、僕のごまあんまん……。でもいいんだ、コンビニまんの良さが分かってくれるヒトが増えるのはいいことだ。ほら食べるがいい、受け取れ!
「あっごめん地面に置いて、その草のとこ、そう、あといいって言うまで後ろ向いてて」
なんか急に野生動物みたいなこと要求してきた……。
まあいいや、僕もその間に食べよう。口に入れると口内から元気に唾液が分泌される感覚がした。やさしい甘さが染み渡る。それにしてもここはどこなんだろう。さっきからなにもかもが元の場所と違う。これ、帰れるのかな。帰れる場所、なのかな。このごまあんまんが最後のコンビニまんになったらどうしよう。帰りたい。帰らないといけない。帰りたい――――
結局いいと言われるまで待つと、ごまあんまんは消えていて、複雑そうな笑顔のえっとるだけがそこにいた。
「美味かっただろ」
「あ、えっと、う、うん……多分、おいしかった……んだと、思う」
コンビニまんを食べておいてなんだその反応は……!? いやしかし精霊は文化が違うのかもしれない。ゴマがよくなかったかな。それとも甘いものが好きではないのだろうか? 血がシュークリームのニオイとか確かに甘いものが嫌いにもなるかもしれない。はやく帰りたい。それならピザまんとか食べる? いらない?あ、そう……。
「…………ミモリ。アナタは本当に、いつの間にかここに居たのね?」
「そうだよ。証拠を見せれないのは残念だけど」
「うん。大丈夫。――あのね、ごまあんまん、ありがとう。アタシ、ここで過ごしてこんなに楽しくて嬉しかったの、三回目」
「ま、ごまあんまんは人生の最良の一つになるポテンシャル、あるからね」
「――――少しの間だけ、じっとしててくれる? 『アタシに決して触らないようにしてね』」
なにかを決心したようなえっとる。花よりも鮮やかにきらめく瞳。思わず見惚れて、なにも考えられないまま彼女の言葉に従う。
「『思い浮かべて、アナタがここまで来た道のり』」
ほとんど透明なえっとるの翅が大きくなり広がって、僕を包んでいく。目が離せない。言われたのだから、思い浮かべなくては。ぼくの、ここまできた、きょうのきおくを。かえりたい。こえがとおい。かえりたい。
「…………ッ!! あ、ありがとう。うん、本当なのね。ううっでも駄目ね、これがニンゲンの世界っ、気になる…………っこ、これ以上はいいわ!『思い浮かべるのやめて』!」
なにもきこえなくなってくる。おもいうかべる。かえりたい。みせなくては。かえりたい。そうだ。それならぜんぶ、みせなくては。かえりたい。そうしよう。そうしたらわかってくれる。かえりたい。そうしたらかえりかたがわかるにちがいない。かえりたい。ぜんぶ、おもいうかべなくては、ぜんぶみて、はやくぼくを、ぜんぶ、かえりたい、ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶ
「……うぐっ!? や、『止め』、あ、なん、で、効かなッ、これ以上は、やだ、きにな、やめて」
ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ
「あ、ああ、やめ、ぼくはかえりた、ちが、あたし、いや、まだ、わけには、でもぼくは、あたし、ぼく、ちが、きにならな、きに、あ、あ、あ、ア、――――――」
ぜん――――
「――――――――ッ」
――――今なにが起きていた? なんだか僕、おかしくなかったか? そうだ、えっとるの眼を見た後――――って
「ウワーーーーッ!?!?!?」
え、えっとるが……溶けてる!? えっとるー! どうしたえっとるー!!
皮膚も髪も、まるで粘土細工のよう。存在自体がドロドロと溶けていく。なにごとかを呻いて、残っている眼だけがまるで泣いているようで――クソッなにが起きたんだ。かえりたい。まさかあんまんは精霊に毒だったのか? なんてことだ。それなら吐き出させないと――――!
えっとるに触れる。その瞬間、この世の終わりみたいな顔をするえっとる。彼女がやめてと言い切る前に彼女は完全に溶けて――僕の中に、入ってしまった。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。あなた、なにがたのしくてまだいきてるのぉ?きょうもひとりであそんだ。よるがきた。
瞬間、えっとるの思考のような、人生のような、「えっとる」すべてが流れ込んでくるような感覚に襲われた。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。きまりですから。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。きょうもひとりであそんだ。よるがきた。さあえっとる、わたしがほんとうのおしゃべりってもんをみせてやるです!こうごきたいですよ!きょうはいっしょに――――
僕とアタシの境界をなくすような、溶け合うような、不愉快で、とんでもなく恍惚感のある、この感覚は――――まあなんか、すごい得難い体験しちゃったなぁ。
「はぎゃっ!?」
次の瞬間、えっとるが僕から吐き出されるように出て来た。
まだ少しベトついているが、「えっとる」だと分かる程度だ。錯乱もしていないが、ジトっとした目でこちらを見ている。
「アナタ、なんなの……?」
「……深森 葵、十六歳! イェーイピースピース」
たいそう抽象的な質問だった為、僕はそうとしか答えられなかった。