血に交われば薔薇になる   作:サンオツボンプ

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イドリーの武器のハンマー、モンハン派とゴッドイーター派で分かれてるようですね。
私は断然、ゴッドイーター派です。

ナナプレッシャー!



ホロウの中心で「ごめんなさ~い」と叫ぶ。

一方、その頃。 リンダ(負け犬)はと言うと。

 

 

 

 メイドカフェで暴れた後始末をエレン...もといヴィクトリア家政に任せ、治安官が来ないうちにそそくさと退散したリンダ。

 デッドエンドホロウへ通じる裂け目に向かう道中、エレンに持たされた通信機へヴィクトリア家政を名乗る執(・)事(・)から通信が入り、カリンとはぐれた大まかな位置と経過時間を把握。

 

 

 先に脱出した同行者と裂け目で合流しキャロットを受け取って、バックパック型複合モジュールと共にレミントンに持たせる。

 自分も四肢に装着している戦闘用外骨格 “パルヴァライザー” を起動すると、穏便かつ迅速に...波風立てずにカリンを回収する為、デッドエンドホロウへと入る。

 

 

 程なくして、カリンがはぐれたとされる位置までやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────さて、やって参りました。 ここはデッドエンドホロウ、カリンちゃん紛失(?)地点でございます」

 

 「ンナ(はい)」

 

 「エーテル活性が予想より高いです。 よって、このクラスの通信機は送受信可能距離が大きく低下します、ノイズだらけです」

 

 「...ンナ(...はい)」

 

 「エーテリアス共が活性化しています。 よって、あちこち破壊痕だらけです、痕跡が消えててオブジェクトの向かった方角が分かりません」

 

 「......ンナ(......はい)」

 

 「どう捜すよ?」

 

 「知らね」

 

 「喋ったっ!?」

 

 「ンナンナナー(僕は帰り道しか分からないよー)」

 

 「お、おう、だよな...(気のせいか...)」

 

 

 同行者から聞いたカリンとはぐれた地点へと来たものの......通信は通じるがノイズだらけ。

 カリンの残した足跡や戦闘などの痕跡を辿ろうにも、活性化により攻撃性を増したエーテリアスによる破壊行動によりそれも掻き消えている。

 義妹(エレン)の色香に惑わされ安請け合いしたものの、早くも行き詰ってしまったリンダ。

 

 正攻法では厳しいと悟り奥(・)の(・)手(・)を使おうかと考えていると、レミントンが小言と共に後押しする。

 

 

 「ンナナ...ワタンナ(絆されて安請け合いするから...サ(・)ー(・)チ(・)したら?)」

 

 「っぱ、それっきゃねーよなぁ......見られませんように、っと────」

 

 

 そう言った途端、リンダを中心に辺り一帯のエーテルが可視化できるまで瞬時に活性化する。

 雄牛の血の様な色(オックスブラッド)に発光し漂うそれらはリンダの身体に幾分か吸収された後に輝きを失い、同時に当たり一帯も元の様相へと戻った。

 

 ────エーテル波、というものがある。

 エーテリアスを含め、あらゆる生物が生まれながらに宿すエーテル......そこから発せられる波動で、指紋や声紋の様にそれぞれ固有の形があるとされる。

 ホロウに充満するエーテルは発せられたエーテル波が干渉するとほんの僅かな変質を起こし、人間とエーテリアスのソレには明らかな差異がある。

 カリンという人(・)間(・)により変質したエーテルを判別すれば、自ずと行く先も示される...という寸法である。

 

 リンダは過去に受けた『親和型異化統制計画(プロジェクト・ヘーミテオス)』というエーテリアス人間をつくる人体実験の副産物として、ある程度エーテルに干渉して操る能力を獲得していた。

 

 

 「明らかに私がヤベー事してる絵面になるから、あんま使いたくねーんだよなぁ...」

 

 「ンナ、ンナーナ(大丈夫、僕ら以外は誰も居ないよ)」

 

 「寧ろ、誰か居たらホラーだわ」

 

 

 あっちだな...行くぞレミー、おいで。

 そう言って相棒を胸に抱えたリンダはカリンらしき人物を追って瓦礫を砕き、列車を越え、建物を飛び、軽く200㎞/h超えでホロウを駆け抜けていった。

 ちなみに、後頭部に豊満でハリのある柔らかみを感じているレミーは、200㎞/h超えが生む暴力的なまでの風の圧力に晒されて(呼吸が不要な体でよかった...)としみじみ思うのであった。

 

 程なくして、通信がまともに入る距離まで近づき停止、カリンに通信を飛ばして経緯を説明し現在地を送信。

 少し待っていると、申し訳なさと安堵が半々...といった表情のカリンがパタパタと小走りでやってきた。

 

 

 「リ、リンダ様っ! それに、レミントン様! ...で、お間違いありません、よね...?」

 

 「ンナナ! ンナ―!(そうだよ! 初めましてー!)」

 

 「うん、あってるよー。 初めましてカリンちゃん、大丈夫だった?」

 

 「はい! 親切なボンp────あ、わ、っと...し、親切な調査員の方々に助けて頂きましたので...へ、平気でした!」

 

 「ヘー、ソレハラッキーダッタネー、ヨカッタヨカッタ」

 

 「そ、それよりも、えっと...エレンさんから話は聞きました。 態々、お手を煩わせてしまって済みません...」

 

 「ナンナ、ワタタンナァ(いいのいいの、メイドさんにダル絡みして長居するよりよっぽど建設的だよ)」

 

 「あ~ん? ダル絡みを捌くのも接客の内だと思いま~す」

 

 「ンナナ(客が神様だと思ってそう)」

 

 「美と闘争と快楽の女神、それが私だ」

 

 「ンーナナ(血と怠慢と暴言の馬鹿、の間違いでしょ)」

 

 「お前は人の悪い面しか見ない」

 

 「ワァタンナァ(ハハッ、目立ってるモノが目に付くのは自明の理ってもんさ)」

 

 「コ、コイツ...どうしてくれよう...!」

 

 

 無事に迷子になっていたカリンと合流した2人。

 手を煩わせたことに対し申し訳なさそうにする彼女を気遣う有能ボンプ、レミントン。

 そんな相棒からの思わぬ攻撃にタジタジの脳筋お姉さん、リンダ。

 挨拶もそこそこに繰り広げられるプロレスに、カリンは思わず笑ってしまう。

 

 

 「っふふ、ふへへ...」

 

 「あー! カリンちゃんまでー!」

 

 「はっ! す、済みません! 私、つい...!」

 

 「あっはっは! 冗談!怒ってなんてないって!」

 

 「ンナナ? ンナワタタ!(ホント、気に病まなくて大丈夫だよ? 嫌々来たワケじゃないからさ!)」

 

 「そゆこと、報酬貰ってカリンちゃんみたいな可愛い子とデートできるなんて、最高でしかないから」

 

 「あ...ふふっ、お気遣いありがとうございます! カリン、謹んでお相手させていただきます!」

 

 「よろしく! じゃ、帰るかー」

 

 「ンナ―、ンナタ!(こっちだよー、着いて来て!)」

 

 

 3人の仲が少し深まったところで、長居は無用と帰りの途につく。

裂け目からここまではリンダが飛んだり跳ねたり壊したりして脳筋ショートカットした為もちろん同じ道は使えない、レミントンがキャロットで先導し3人仲良く徒歩で裂け目まで向かう。

 

 道中、ちょっかいを掛けてくるエーテリアス達は例外なくリンダにワンパンされている、そこには「折角のデート邪魔されてたまるか」という強い意志が込められていた。

 代わりにカリンは自慢のチェーンソーを使って道を塞ぐ車両や障害物を断裁する。

 さしあたって、脱出行路(デート)は順調であった。

 

 

 「流石は『虚殺し(HollowSlayer)』さま...! メトロゴブリンまで一撃で...とってもお強いのですね!」

 

 「ンナンナ、ンナナ(アーマーハティなんてアーマーごと粉砕するからね、カリンちゃんもメイド服気を付けて)」

 

 「脱がすのが性癖みたいに言うんじゃねぇ」

 

 「ふふふっ...お二人は、とても仲がよろしいのですね」

 

 「ンナッ! ナンナ!(うん! でも、たまに本気で鬱陶しいけどね!)」

 

 「なら、私達は健全で正常ってこった。 大切な家族兼相b────っと、障害物(車両)だ、頼んだぜカリンちゃん」

 

 

 レミントンがリンダの脳筋っぷりを茶化していると、再び目の前に車両が横たわっており行く手を遮っていた。

 出番が来たカリンは車両を断裁し道を作る為に前に出るが、刃を突き立てる前にふとした疑問を投げ掛ける。

 

 

 「あの...リンダ様? 気になっていたのですが...わ、私がやるよりも、リンダ様がやる方が手っ取り早いのでは...?」

 

 「いやいや、私がやるとあちこちブッ壊し過ぎるからさぁ。 カリンちゃんの丸ノコに任せた方が安全なのよ」

 

 「な、なるほど...そうでしたか。 カリンの思慮が足りないばかりに、疑ってしまいました...」

 

 「いいのいいの、許す許す、頼りにしてるよーカリンちゃーん」

 

 「は、はい! カリン、頑張ります!」

 

 「ンナ、ンナンナァ(リンダってば、自分が平気だからって破片や瓦礫が飛び散ってもお構い無しなんだ)」

 

 「だから、ボディ傷付かねぇように抱いてやったんじゃねーか」

 

 「ンナンーナ(埃っぽくはなったもーん)」

 

 「へーへー、悪ぅござんしたー」

 

 

 そんな風に軽口を叩きながら、カリンの仕事が終わるのを待つリンダ。

 あたかも二次被害を憂慮しているように見えるが、その実はもうこれ以上原作チャートの中で目立ちたくないだけであった。

 

 程なくして道が開けて先に進んで行くと、電車の車両基地と建屋らしき場所が見下ろせる高台に出た。

 脱出に使う裂け目は車両基地を突っ切った向こうの駅構内、しかし...

 

 

 「あれは...エ、エーテリアスが屋根の上にまで、たくさん...!」

 

 「ここに来てモンスターハウスかよ、ツイてねぇな」

 

 「ンナナ...ワタタ?(避けられそうに無いね...寄ってくる前に一掃する?)」

 

 「それが良いな、中にも居そうだけど...時間かけてもアレだし、上だけ掃除して屋根突っ切るか。 ちっと行ってくるわ」

 

 

 雑魚ばかりではあるが、エーテリアスがそこら中にうじゃうじゃといる。

 普通は身構えるレベルだが「ちょっとコンビニ」くらいの気軽さで向っていくリンダ。

 すると、少しだけ何かを考え込んだカリンが、顔を上げてその背中を呼び止めた。

 

 

 「リンダ様っ」

 

 「どしたのカリンちゃん」

 

 「あ、あの...ここはカリンにお任せくださいっ!」

 

 「と言うと?」

 

 「気持ちは嬉しいのですけど...や、やっぱり、リンダ様に戦わせてばかりでは私の気が収まらなくて... あ、あのエーテリアスたちは私、カリンにお掃除させてください!」

 

 「なんていい子なんだカリンちゃん......」ムギュ

 

 「わぷっ! り、リンダ様? す、少し、恥ずかしいです...!」ワタワタ

 

 「...ンナ(...事案発生)」ボソッ

 

 「お前がどういう目で見てるか良く解ったわ」

 

 

 仕事に真面目で健気なカリンは、堪らず抱きしめて可愛がるリンダに少しだけ驚いて照れくさそうにする。

 そして相棒の悪癖にワリと冷やかな目を向けるレミントン。

 「女の子同士だからいいんですー」と開き直るリンダは、最後にもう一度ギュッとしてからカリンを離しエーテリアスの処理を任せる事を伝えた。

 

 

 「ありがとう、カリンちゃん。 そんじゃあ、アイツら頼むよ!」

 

 「...! は、はいっ! カリンにお任せあれっ!」

 

 「ンナナ!(気を付けてね!)」

 

 「はいっ! ありがとうございます、レミントン様!」

 

 

 そう言ってやる気に満ち満ちた表情で眼下のエーテリアス達に向き直るカリン。

 元来、何かと自己評価を低く見積もりがちな気弱な彼女...日々の仕事においてもドジばかりで上司からも度々お叱りを受けている、今回のように迷子になったことも一度や二度ではない。

 心根が優しく他者を傷つける事を嫌う彼女は、戦闘においてすら時折半泣き気味で戦っているほどだ。

 

 しかし、今日の彼女は一味違った。

 また迷子になったことはお叱りポイントだが、その後に運良く出会った心優しい調査員達に同行して自分が道を切り開き、戦闘においても大いに助けになれたこと。

 同年代の仕事仲間兼気心の知れた友人であるエレンが嬉(・)し(・)そ(・)う(・)に(・)話してくれる(義)姉、“九分街の英雄” のリンダが「会いたかったから」と気前よく自分を助けに来てくれたこと。

 何より、リンダの裏表のない性格と親しみやすい雰囲気が『美人で優しくて気の良い、友達のお姉さん』感をカリンに抱かせていた。

 

 実はこのカリン...自身の性格も相まって、リンダの様な強くて優しい(?)年上女性には内心憧れがあったりする。

 憧れの女性像そのもの(?)なリンダが、自分を好意的に思っていて頼ってさえくれている。

 普段自己評価が低めな反動もあり、今のカリンはかなりヤル気に満ちていた。

 

 

 「そ、それでは、行って参りますっ!」

 

 「行ってら」

 「ンナ(行ってら)」

 

 

 リンダは原作回避こそ微妙に失敗したものの、何とか波風立てずにカリンを回収できそうで安堵していた。

 しかし、友情や信頼、想いや紡いだ絆の中にすら、忘れてはならないことや用心すべきことがある。

 さしあたってリカバリー成功の安堵で、リンダは重要なことを失念した。

 

 

 「よいしょ...っと───」ガシャン

 

 「......ンナ?(......んん?)」

 

 「カリンちゃん......? 丸ノコのモーター、キックスタートだっけ......?」

 

 「ふふふ...! お2人共、見守っていてください...! このカリン、頑張ってまいりますから...!」ブルゥオオンッ!

 

 

 そう、彼女......カリン・ウィクスは “ドジっ子” なのである。

 

 丸ノコを地面に突き立て足を掛けたかと思えば、そのままモーターを始動させて完全に丸ノコにライドオン、スロットルを全開にして猛スピードですっ飛んでいった。

 

 

 「────いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

 「はあっ!?」

 「ンナッ!?(はあっ!?)」

 

 

 ギャリギャリギャリギャリギャリィィィィ!!!!!! と凶暴な音を立てて爆走するカリン on the 丸ノコ。

 高台から眼下のエーテリアスたちへと勢いよく飛び出してくと、舗装路や階段を割りながら爆走してエーテリアスを次々に切り裂いていく。

 人となりからは想像もつかない奇行に走るカリンを見て、大いにパニくるリンダとレミントン。

 

 

 「ン、ンナワタァァァァ!?!?(カ、カリンチャァァァァン!?!?)」

 

 「ちょ、ちょっと何してんのぉ!? 刃物で遊ぶんじゃありませんっ!?」

 

 「Take this , baby!!(これでも喰らいな、ベイベー!!)」

 

 「聞いてる!?」

 

 

 呼びかけも空しく、丸ノコメイドの爆走は留まるところを知らない。

 あまりのシュールな絵ズラに動揺してしまうエーテリアス達を次々に轢殺していくその様は、まるで “殺戮セグウェイ” といったところ。

 

 それは前世のリンダが無念にも亡くなった後に配信されたアップデート内容の一つであった。

 無論、そんなこと当人が知る由は無い。

 見る見るうちにあちこちがズッタズタになっていく様に「修繕費請求されたらヤバイ」と絶賛大慌て中である。

 

 

 「No way back(後戻りなんてしねーよなぁ!!)!!」

 

 「おい!? 急になんだコイツ!? こち亀の本田ばりに人が変わりやがった!?」

 

 【Ghiiiyaaaaaaa!!】

 

 「I'm sorry man!!(お気の毒に!!)」 

 

 「か、カリンちゃぁぁぁぁぁぁん!? 止まってぇぇぇぇぇぇ!? 300ディニーあげるからぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 「Whatever!!(どうでもいいわ!!)」

 

 「ン、ンナ...! ンナンナ...!(ま、まずいよ...! ホントにそろそろ止まらないと...!)」

 

 

 富裕層向け家政サービス会社の主力従業員がたかだか300ディニ―に耳を貸すわけもなく......というか、今のカリンには何を言っても暖簾に腕押し、糠に釘、馬の耳に念仏といったところである。

 殺戮セグウェイ爆走メイドは、たまらず逃げ出すエーテリアス達を追って車両基地建屋を垂直に駆け上り屋上にでると、逃げ惑うお客様方を轢き裂いていく。

 

 そう...屋(・)根(・)ご(・)と(・)、である。

 

 

 「......んん? これ、って...マズいんじゃね?」

 

 「ンナワタ! ンナナ!(早く止めないと崩落しかねないよ! リンダ止めに行って!)」

 

 「あ"あ"!? あんなバーサーカーどうやって止めろってんだよ! 私まで轢き殺されるわ!」

 

 「ンナンナナ!(雅さんには喧嘩腰でいけるのに何でカリンちゃんがダメなのさ!)」

 

 「アイツの名前出すなや!」

 

 「ンナワタ!(どっちもバーサーカーじゃないか!)」

 

 「あのボケは四六時中バーサーカーだけどなぁ! カリンちゃんは普段かわいい乙女なのぉ! ギャップが怖いのぉ! なんで急に英語話者なのぉ!」

 

 「ナンナ!? ンナーンナ!(知らないよ!? 情けないこと言ってないで早く!)」

 

 

 いや怖すぎるわ行けるわけねーだろ、と駄々をこねる情けない女、リンダ。

 崩落して大惨事になるから早く行け、と急かすキレたボンプ、レミントン。

 あーだこーだと口論している内にいよいよ車両基地建屋の屋根が耐え切れなくなり崩落、轢殺待ちの数体のエーテリアスと共にカリンが重力のままに落下していく。

 

 

 「───っ!? ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

 「カリンッ!!」

 「ンナッ!?(カリンちゃん!?)」

 

 

 崩落の悲鳴を耳にしてようやく口論を止めたバカ2人。

 リンダは足元を大きく陥没させるほどの脚力で一直線に屋上へ空いた穴へと跳躍...一瞬で真上に到達すると身を翻し、デッドエンドホロウを満たすエ(・)ー(・)テ(・)ル(・)に(・)感(・)応(・)し(・)空(・)中(・)で(・)エ(・)ー(・)テ(・)ル(・)を(・)足(・)場(・)に(・)し(・)て(・)真下へ飛ぶ。

 エーテリアスを砕きつつ急降下すると半べそかきながら落下するカリンを胸に抱いて確保、車両基地建屋内に崩落した屋上が降り注ぎ粉塵が巻き上がる。

 飛行モジュールで飛んできたレミントンがあたりを見渡すと、そこには “雄牛の血の様な色(オックスブラッド)のオーラ” を薄く纏ったリンダとすっかり元のオドオドしたメイドに戻ったカリンがいた。

 

 

 「────カリン、無事か?」

 

 「は...はい、怪我はございません...ありがとうございました...」

 

 「ンナ、ンナ!?(2人とも、平気!?)」

 

 「平気だ、レミー。 周りスキャンしてくれ」

 

 「ンナ! ナンナ、ンナ!(了解! 今の騒音で寄って来てるかもしれないし、ちょっと行ってくるね!)」

 

 

 そう言ってレミントンはエーテリアスの反応を念入りにスキャンする為に再び飛んでいった。

 残された2人、リンダの腕の中にいるカリンはや(・)ら(・)か(・)し(・)た(・)自責の念からすっかりショボくれてしまっている。

 リンダは「そうそう、これこれ、カリンちゃんはこうなきゃな...」と安心しつつも、やらかしたものは大人として叱らなければならない、と危険そっちのけで口論していたことは伏せつつカリンを宥める。

 

 

 「おんやぁ? さっきまでのはっちゃけっぷりが嘘みたいだな~?」

 

 「ぅぅ......本当にぃ...申し訳ございませぇぇぇん.........」

 

 「ビックリしたよもー、テンション上がるのはいいけど箍外したらただの暴走だからね? あと、刃物で遊んじゃいけません」

 

 「カリンわぁ......カリンわぁ...駄目なメイドですぅぅぅ.........」

 

 「“駄目な子ほど可愛い” って言うじゃん。 それに、ここまでたくさん助けてもらったし...エーテリアスだって皆やっつけてくれたしさ。 十二分に大活躍だよ、カリンちゃん」

 

 「そうでしょうか......ひどいドジでこんな大惨事に...私なんて.........」

 

 「そうだよ! ただでさえ可愛いのに更に可愛いなんて、カリンちゃんはスーパー愛されメイドだよ。 皆、カリンちゃんのことが大好き、大丈夫」

 

 「ぅぅ......リ、リンダさぁ~ん...!」

 

 「おー、よしよし」

 

 

 ヒシッと抱き着くカリン、撫でて慰めるリンダ。

 (絵面がロリメイド誑かすチ〇ポ野郎...あ、私今は女だった、セーフ)などと謎の危機感を感じていると、なんとか持ち直したカリンが軽く泣き腫らした後の赤みの残る顔で見上げて、リンダに話しかける。

 

 

 「...あ、あの、リンダ様...?」ウワメヅカイ

 

 「んん? どしたん?」アッ、コレスキ

 

 「その......この...赤い光のようなものは、一体...?」

 

 「.........えっ、とぉ...(やっべ、解除(しま)い忘れた)」

 

 

 赤い光、つまりリンダがエーテルを足場にする際に纏った “雄牛の血の様な色(オックスブラッド)のオーラ” のことであり、ドジったリンダはこれを纏いっぱなしにしていた。

 普段ならいざ知らず、カリンの唐突な豹変を目にしたリンダは見た目の平静さとは裏腹に結構動揺しているのであった。

 これは『親和型異化統制計画(プロジェクト・ヘーミテオス)』により獲得した能力、バレたとしてもおいそれと話せることではない。

 

 

 「まぁ...五感で接触したからって、否応なく影響を受けるものじゃないから...」

 

 「は、はぁ...そうなのですか...?」

 

 「そうなのです。 ぶっちゃけ...おいそれと話せる事じゃないからさ、今はカリンちゃんの胸にしまっといて欲しいな」

 

 「事情が、お有りなのですね...? 分かりました、これ以上はお聞きしませんっ」

 

 「ありがとカリンちゃん。 ま、そのうち全部話せる日は来ると思うからさ」

 

 

 この世界において、私が “エージェント” 扱いなら...な。

 リンダは内心そうぼやく。

 本編が始まりエレンのエピソード「お願いエレン様!」まで確認した以上は他のコンテンツも全てこの世界(現実)に存在するとみていい。

 その上で自分────〈リンダ・ブラッド〉が “エージェント” として此処に在るのなら......エピソードやエキシビジョン、秘話に相当するものもまた在る筈。

 自分の過去や目的が露わになり、キャラクターの掘り下げが主人公勢にされる日が、もしかしたら来るのかもしれない...

 それを回避せんとする者として自分の存在そのものが悩みの種であることに、心の奥底にはほんの少しの諦観を抱えているのであった。

 

 オーラを仕舞いカリンを何とか煙に巻いたリンダは、そろそろレミントンが戻る頃だと言ってカリンを離し立ち上がると建屋内を見渡した。

 

 

 「にしても、全っ然晴れねーな粉塵(これ)、どんだけ放置されてたんだよ」

 

 「が、外観もそこそこ侵食が進んでいるようでしたし...もう、使われていない場所なのかもしれませんね」

 

 「だなぁ...煙いし、髪汚れるし、鬱陶しいな......カリンちゃん、もっかいおいで、抱き着いてな。 周りの吹っ飛ばすから」

 

 「は、はいっ、では......し、失礼m────」

 

ブゥオォォォンッ!!!!!!

 

 「うおっ!?」

 「ひゃっ!?」

 

 

 リンダが粉塵を吹き飛ばそうとしたその時、突如として強い風が巻き起こった。

 舞い上がっていた粉塵が屋根の破片と共に一瞬で吹き飛ばされる。

 突然のことに2人は顔を見合わせ驚いた。

 

 

 「なんだ今の...?」

 

 「......リ、リンダ様...! お、脅かさないでくださいっ...!」

 

 「えっ...いやいや! 私じゃないって! そんな仕返しみたいな事するワケないじゃん!」

 

 「で、では...今の強風は一体...?」

 

 「......そういやぁ、煙たさは晴れたのに、まだ......暗い......?」

 

 

 謎の強風で粉塵は晴れた、にも拘らず辺りは暗いまま。

 具体的には、リンダとカリンの周りだけが暗い。

 まるで、凸(・)凹(・)し(・)た(・)大(・)き(・)な(・)人(・)型(・)の(・)よ(・)う(・)な(・)影(・)が(・)、彼女たちを覆っていた。

 

 

 【Ghurrrrrth】

 

 「...あっ......」

 

 「......えっ...?」

 

 

 妙な声が背後から聞こえて振り返ると、そこには自分たちが悠々入るほど大きな影の持ち主が佇んでいた。

 大きな脚と腕、厚みのある身体、黒い体表に奔る緑のエーテル光、右手に携えた大きな槍か斧の様な獲物がキラリと輝く。

 それはまるで、マッシブな異形の巨人の様。

 

 

 

 このホロウの主、高危険度エーテリアス[デッドエンドブッチャー]が、そこに居た。

 

 

 【Gheer】

 

 「......えっとぉ.........」 

 

 「......うそ.........デッドエンド、ブッチャー...!?」

 

 【Ghiiiiigh】

 

 「.........リ、リンダ、さま......っ!?」

 

 「......いや、分かってるよ...? ......分かってるけど...」

 

 

 仁王立ちのブッチャー、ガクブルのカリン、ゲンナリするリンダ。

 本来ならカリンのように恐怖し焦って身構えるのが正しい反応だが、この時のリンダは違った。

 あまりにも原作回避が出来無さ過ぎてもはや激萎え、明らかな脅威を前にしても全く危機感を持てずにいた。

 

 そしてブッチャーはブッチャーで、リンダが持つ人間の範疇を逸脱した部分......エーテルないしエーテリアスのような気配を感じ取り、どうしたものかと困惑していた。

 

 数瞬の沈黙の後に、リンダがエレンに借りた通信機から呼び出し音が鳴る。

 偵察に出たレミントンからだ。

 

 

 〚Prr Prr Prr〛

 

 【Ghruoooooo!!!!!!】

 

 「っ!? リ、リンダ様!? 」

 

 「...あ...すんません、ちょっと.........電話、だけ...いいっすか......」

 

 【Ghuoh】コクリ

 

 「...すんませんね......」

 

 「...............いま...リンダ、さま...話し、通じて......?」

 

 「......はい、リンダ...」

 

 〚ン、ンナッ!? ナンナ、ワタタ...ワタンナ!(あっ、リンダッ!? スキャン終わって、大方問題無いんだけど...一つだけ大問題だよ!)〛

 

 「はい...」

 

 〚ナンナワタタ! ンナタ...ンナナ!(お(・)っ(・)き(・)な(・)エ(・)ー(・)テ(・)リ(・)ア(・)ス(・)の反応が急に建屋近くへ現れたんだ! リンダなら問題なく倒せると思うけど...今はカリンちゃんがいるし、気を付けて!)〛

 

 

 今、目の前に居ます。

 心の中でそうボヤいて、リンダは目の前のエーテリアスの処遇を考える。

 適当にあしらって脱出しようか、それとも処すか。

 気分的には処すところだが自暴自棄になってはいけない、原作の流れを考慮すればあしらう選択肢一択である。

 問題は行き場のない怒りの矛先をどこに向けるかだ...そんなことを考えていた。

 

 

 〚ナンナ...ンナ? ンンナ? ンナ?(リンダ...聞いてる? 大丈夫なの? わかった?)〛

 

 「...うん...わかった......」

 

 〚ナン? ンナ、ンナナ!(そう? じゃあ、ボク今から戻るから!)〛

 

 「まあ...なんだ...気を付けて、戻ってこいよ......じゃ...」

 

 

 レミントンの言う反応が急に現れた、とは恐らくリンダがオーラをしまったからである。

 強力かつ特異なシグナルであるリンダのエーテル反応がブッチャーのそれを覆い隠してしまっていたのだ。

 

 プツッ、と通信が切れて再び数瞬の沈黙が訪れる。

 

 

 「.........ふぅ...」ゲンナリ

 

 「.........っ...」プルプル

 

 【Ghueeth...】

 

 「...あ、もう、結構です......お待たせしました...」

 

 「───リ、リンダ様。 私...もう、ドジはしません......っ!」

 

 「えっ...」

 

 「カリンは...! もう足手まといは、嫌なんです...っ!」

 

 「か、カリンちゃん...? 早まんないでね? 逃げたっていいんだk「カリン......がんばって、やっつけます...!」聞いてる?」

 

 

 通信の間にカリンはカリンで腹を括ったのか、スチャッ! ブロロォォン! ギュイィィーン!と丸ノコを始動させ決意と共に臨戦態勢をとる。

 ケツまくって逃げる気満々だったリンダは、気弱なドジっ子メイドが発揮した思わぬ胆力に動揺して軌道修正を試みるも失敗する。

 

 

 「ねぇ、何で聞いてくんないの? 正気だよねぇ? もう正気だよねぇ? 今もうバーサーカーじゃないよねぇ?」

 

 「一人だったら、どうなっていたか......でも、私は一人じゃありません...!」

 

 「そのカンジ私も頭数に入ってない? 逃げるよ? 私全然ケツまくるよ?」

 

 「ンナ―! ンナ―!(リンダ―! カリンちゃーん!)」

 

 「戻ったかレミィー! さっさと逃げるぞ! お前からも何とか言っt「ンナ! ナンナ!(間に合った! ボクも戦うよ!)」オメーもかよっ!?」

 

 

 頼みの綱(レミントン)が戻ったものの、残念ながらやる気満々であった。

 ボンプ用オートショットガンを取り出しマガジンを宙に放るとハウジングを叩きつけて豪快に装填、初弾をコッキングで薬室に送るとキリッとした目で構えて銃口をブッチャーへと向けた。

 

 自分へと向いた明らかな害意と敵意を前にしてとうとうブッチャーが牙をむく。

 

 

 【Gyiiaaa!!】

 

 「き、来ます!」

 「ナン!(来るよ!)」

 「はぁ...」

 

 

 ブッチャーが獲物を突き立てて蹲るとエーテル反応が急激に増大、視認できる程の密度のエーテㇽが奔流となって集まり吸収されると新たに体から一(・)対(・)の(・)腕(・)が(・)生(・)え(・)る(・)。

 体のあちこちに高密度エーテル物質の白い外殻が現れて、輝く光も緑色から妖しい紫色へと変わる。

 攻撃的で凶悪な姿へ変貌し、極めて高い活性状態へと移行したブッチャー.........それは想像していた姿、1章ラストで戦う個体ではなかった。

 

 

 「────ンナ...?(は...?)」

 

 

 それは本来、ゲームにおいて『危局強襲戦』というエンドコンテンツにて実装される個体。

 

 

 「────......ぁ...ぇぇ...?」

 

 

 通常のものとは一線を隔す特別強力な個体、ホロウ内で偶発的に確認される強力な高活性個体。

 

 

 「────うーわ.........マジでよぉ.........っ」

 

 

 リンダ達の前に現れたのは、本編に出現する個体ではない────

 

 

 要警戒・デッドエンドブッチャー

 

 

 エンドコンテンツ級の強敵が、目の前に立ちふさがった。

 

 

 

 【Gxiiieeaaaaaaaaaaaaght!!!!!!】

       

「カァァァァリィィィィンちゃぁぁぁぁぁぁんんん!?!?!?」

 

「ごっ、ごご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃ!?!?!?」

 

 

 

 

 

 怒りと悔恨、ほんのちょっぴりの哀しみ。

 弱音と罪悪感、色んな意味での恐怖。

 車両基地建屋内に響き渡る叫び声へ込められた感情は様々であった。

 

 

 [要警戒・デッドエンドブッチャー]はすっかり臨戦態勢、不幸中の幸いにも本編の個体ではないが...もはやリンダにそんなことは関係なかった。

 原作回避で穏やかなゼンゼロライフを送るはずが次から次へと降りかかる災難に辟易、要警戒ブッチャーが最後の一押しとなってストレスが限界突破。

 今のリンダはそれはもう激おこプンプンなのであった。

 因みに “丸” じゃなくて “ドリーム” である。

 

 

 最上級に激おこのリンダは戦闘用の外骨格 “パルヴァライザー” を展開し、頬をピクつかせ鬼の形相でブッチャーを睥睨する。

 すっかり元のオドオド系ドジっ子メイドに戻ったカリンと、マガジンが接触不良で短い手で四苦八苦しているレミントンを侍らせて。

 本編で語られるワケがない、強敵との戦いが始まった。

 

 

 




 少し時間が巻き戻り エレンのバ先 喫茶店前



 なんやかんやあった結果、原作回避に逆転失敗したリンダは怒りと悲しみのダークサイドパワーでキャラエピ「お願いエレン様!」のチンピラどもをお掃除。
 ワンパンで転がされたチンピラは喫茶店前に山をつくり、騒動のお詫びとして客にはクーポンが配られ、店内が平静を取り戻した頃。


 ヴィクトリア家政の通報によって到着した治安官たちによってチンピラたちは全員御用。
 店内の一席で1人ずつ事情聴取が行われ、やがてエピソードの主役であるエレンの番がやってきた。


 気だるげな表情でめんどくさそうな雰囲気をバンバン発しながら、ダウナー鮫イド・エレンちゃんは事情聴取の行われるテーブルへとついた。



 「...来たけど」

 「はい! お仕事中すみません、エレン・ジョーさん...ですね? 事情聴取を担当します治安官の朱鳶です。 よろしくお願いしますね」

 「......よろしく」

 「では、座っていただいて大丈夫ですよ」

 「直ぐ終わるんでしょ? 立ったままでいいから、早くして欲しいんだけど...」

 「容疑者は全員捕まってますし、そちらの会社の協力もありましたので、確かに時間は掛かりませんが......2~3言話して終わりというわけにも行きませんので...疲れちゃいますよ?」

 「あたしもう上がりなんだけど.........はぁ、めんど...」

 「すみません、ご協力有難うございます。 では...早速ですがお名前とご職業、それと身分証明書を見せていただけますか?」

 「...エレン・ジョー、この店のバイト......これ、学生証」


 エレンはめんどくさそうにしながら対面に座り質問に答え始めた。
 朱鳶は手元の資料やここまでの客の証言と照らし合わせ、エレンの表情や仕草等を観察しつつ聴取を続けた。
 そのまま順調に進み、20分弱ほど経過した頃あらかた聴取を終える。


 「────以上で事情聴取は終わりです、ご協力ありがとうございました、エ(・)レ(・)ン(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)」

 「......その呼び方、なに」

 「あっ...! す、すみませんでした! 馴れ馴れしかったですね...知り合いがよく自慢する妹さんにそっくりだったもので、つい...」

 「.........朱鳶さんさぁ。 その知り合いって...リンダ・ブラッドって名前じゃない...?」

 「そうです! やっぱり...あ(・)の(・)エ(・)レ(・)ン(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)だったんですね」

 「...あ(・)の(・)って...なんかヤな予感するし......アイツ、なんか変な事言ってない?」

 「変な事...ですか? いえ、特には...」


 アイツの事だ適当なことを吹聴していてもおかしくない。
 エレンはそう疑って聞いてみたものの朱鳶は良い所ばかりで特にないという。

 治安官の価値観で “無い” というなら本当にそうなのかもしれない。
 幼い頃に出会って以来、何かと気にかけてくるお節介でアウトローな自称姉にも余所行き用のまともな一面があったようだ。

 そんな風にリンダをちょっとだけ見直したエレン。


 「そう、なんだ......意外とマトモなとこあんじゃん」

 「そう言えば、直してほしい所がある...とは言っていましたよ」

 「は...? なにそれ」

 「なんでも......就寝中に人の温もりを感じると噛み癖が出て痛いとか」

 「はぁっ!? そんな訳無いしっ...! アイツなに話してんの...!」

 「後は...プリンお願いしたらパンナコッタ買ってきたとか」

 「な、なんっ...!? ...おしゃれなヤツが良いって言うから...!」

 「...あ、ウィンナーコーヒー頼んだらカフェオレ出てきてさ、ホイップクリームと生クリームを同じだと思ってるとも言ってましたよ?」

 「そ、それは小さい頃の話でっ...! ~っアイツ...! 次会ったらただじゃおかない...!」


 前言撤回、やっぱり変な事言ってるじゃん...!? 
 と、一度は見直してしまった事を大いに後悔するエレン。
 どうやら、朱鳶の価値観では変な事ではなく可愛いエピソードくらいの認識だった模様。
 思わぬ形で赤っ恥をかかされたエレンはすっかり “おこ” であった。

 そんなエレンの反応を前に(あ、余計な事言ったかな...)と少し後悔、リンダに内心謝りかけるが自分も会う度にちょっかいをかけられている事を思い出し即座に撤回。
 次に会ったら青衣先輩とセスくんにジェーンも呼んで4人分奢らせよう。
 朱鳶はそう心に決めた。


 「...で、では、少し話は逸れましたが...これで事情聴取は終わりです。 ご協力ありがとうございました、エレンさん」

 「......これなら、あたしが迎えに行くんだったっ...!」

 「あ、あはは......お気を付けて...」


 めんどくさそうにしていたエレンは打って変わって、顔を赤らめプリプリと腹を立て去っていく。
 そんな彼女を最後に一通りの事情聴取を終えた朱鳶。
 局に戻るべくパトカーに乗りこむとふと何かに思い至り、事情聴取の内容を見比べて容(・)疑(・)者(・)た(・)ち(・)を(・)捕(・)ま(・)え(・)て(・)颯(・)爽(・)と(・)消(・)え(・)た(・)女(・)の人物像をつくってみた。

 どの内容にも共通して登場する “人間の友達の様にボンプと話す、タトゥーがある赤髪セミロングの長身美女” という人物。
 ボンプを片手に抱えたまま腕一本で容疑者たちを伸してしまう強さ、店員(エレン)と親し気に話していたという証言。
 極めつけはボンプは「レミー」、女は「リンダ」と呼ばれていたこと。
 
 そうして浮かび上がった人物像、それはもう役満である。


 「これリンダじゃないっ!?」



 容疑者たちを「“美味しくなる魔法” がオミットされた」とかいうしょうもない理由で蹂躙した挙句、現場からそそくさと去った謎の女。
 容疑者たちの太ももの付け根(大腿骨頚部)、すねの下側(脛骨遠位)、手首に足首と、治りにくい部位の骨を的確に狙って粉砕したヤバ気な女。
 ボンプと当然のように会話し、軽口を言い合い、喧嘩をし、対等に接する少し変わった価値観の女。
 というか、リンダだった。


 彼女の持つ『公的機関代行戦闘許可証』はあくまでも九分街内でのホロウ災害における武装・戦闘を治安局とH.A.N.D.の監督下において許可する、というもの。
 決して、街中での私人逮捕や私刑じみた行為を許容する免罪符ではないのである。


 自分は勿論、H.A.N.D.六課の月城隊員からも口酸っぱく注意されているにも関わらず懲りていない様子のリンダ。
 店内の客に被害が出かねなかった状況を考えれば情状酌量の余地はある...とはいえお灸は据えるべき。
 どうしたものか...と頭を悩ませる朱鳶は、とりあえず旧知の友である虚狩りに連絡を取るのであった。


 「────朱鳶か、私だ」

 「突然ごめんね、雅────とっておきの修行があるの」


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