僕がVRの姫プと女装にのめり込んでリアルでメス堕ちして男装女子に喰われるまで。~男がことごとく女の子になるVRなチャットという魔境~ 作:あずももも
「……なぁ、母さん」
「……なにかしら?」
僕は、学校に出る直前に……さりげなく、ふとした思いつきで、特に理由も無い風を装って言ってみる。
「……今どきは、さ」
「……ええ」
「ヒゲ脱毛とか全身脱毛とか……男でもするんだって、クラスで言ってたんだ」
ウソじゃない。
……正確には中村が言ってたんだけど、クラスでクラスメイトが言っていた発言だからウソじゃないんだ。
けど、こういう話を母親とするのは――父親はお金を出し渋るものだから、まずは母さんとって思ったけども――気恥ずかしいのが普通。
だから、そっけないそぶりもまたおかしくないはずだ。
「……そうねぇ。将来、おひげとか体毛が濃い男が好きって子が現れるかもしれないけど……玲はそもそも薄い方だし、筋肉もつきにくいし」
「うん」
「電車とかの広告でもよく見るものねぇ」
「うん」
「この前、テレビでもそういう特集やっていたわ」
「うん」
「………………………………」
「………………………………」
とんとん。
靴を履いて、立ち上がる。
「ヒゲだけでも高いし、全身とかになるともっと高いからやっぱり――」
「良いんじゃない? 今夜、お父さんに話しておくわよ?」
「……え?」
思わずで――まさか1発で通るとは思っていなかった僕は、玄関まで見送りに来ていた――真意を読み取れない顔つきをしている母親を見る。
「女の子も、早いと小学生からそういうのするって話、聞いたもの。玲には言ってないけど、知り合いの同級生の子たちも何人かそういう子が居てね」
「……そう」
「男子でもおかしくないし、それで玲がモテるんなら良いかなって」
「……そう」
僕は、ちょっとお高い美容院とか服とかのお金を出してくれるときの程度の喜び具合を演じてから足早に家を出る。
「…………玲も、いよいよ…………やっぱり…………」
ドアが閉まる直前。
何かをつぶやいていた声は聞こえたけど、内容は聞き取れなかった。
◇
「というわけで、圧倒的多数の投票の結果、うちのクラスはコスプレ喫茶になりましたー!」
「できれば男子は女子に、女子は男子になってねー! 強制じゃないけど楽しいからやろうねー!」
「たぶん男子から女子の方が大変だから、女装したい男子は後で私たちのとこ来てねー!」
「たーっぷりかわいくしたげる!」
「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
どうやら――クラス替え初日に中村という悪友に捕まっていた僕は知らなかったけど、このクラスは仲が良かったらしい。
なんだかすごい盛り上がり具合だ。
僕みたいな陰の気を持つ人間にとっては、いたたまれないことこの上ない。
……僕、クラス替えで変な人たちとセットにされたんじゃないだろうか……無難な生徒枠で。
「おいおいおいおい……! 何おもしろそうなことになってるのさ玲きゅん……!」
「知らないよ……てか文化祭ってまだ相当先の話なのに」
「こんなにみんながノリ良かっただなんて……俺ちゃん感激! やっぱ言ってみるもんだねぇ」
「元凶はお前か……」
「そういうことになるんかねぇ」
じとっと抗議の目を向けてみるけど、一切気にしないさすがの悪友。
そんな、クラスの盛り上がりに予想通りの反応をしている馬鹿が後ろの席に1人。
そして……以前、今教卓の方に立ってる、文化祭の指揮をしてるらしい女子へ適当な返事したばっかりに、女装することになった馬鹿がここに1人。
いや、まあ、嫌だって言えばしなくて良いらしいし……しないつもりだし。
いや、するわけないじゃん……女装だぞ?
まだ宅コスってのもしてないのに、いきなり公共の場、それも学校だぞ?
似合ってなかったら絶対に卒業するまで弄られ続けること間違いなしだぞ?
……いじめのターゲットにする可能性すらあるんだ。
絶対に僕は女装なんてしない。
「てことは……玲ちゃんが!?」
「しない」
がたたっ、と席を立つ中村。
うるさい。
ほら、みんなが見てくるじゃないか。
「でも」
「しない」
「えー」
「しない」
コイツに対してどうしてもっていう意見を通したい場合、こうして抵抗するしかない。
コイツはおもしろがっているだけなんだ。
経験的に、こうしてつまらない反応していればそのうちに折れてくれるはずで――
「――かわいい格好、合法的にできるよ……?」
「っ!」
びくっ、と、体が跳ねる。
「――そうそう、同調圧力。クラスの女子に無理やりって言い訳できるよ……?」
「……それは」
「――みんなに、かわいいかわいいって、リアルでも褒めてもらえるよ……?」
「………………………………」
気がついたら、心臓がうるさい。
気のせいか、クラスがしんと静まりかえっていて、まるで僕たちの会話だけが数十人に聞かれている気がしている。
ううん、きっと気のせいだ。
そうに決まっている。
「――そうだよ? 『文化祭で強制されてるから仕方ない、みんながやってるから仕方ない、女子に着せられたからしょうがない』。バカにされようと、堂々と反論できるよ……? そうだよ、『文句はうちの女子たちに言ってくれ……』ってうなだれながら言えば、きっと同情してくれるよ……?」
「………………………………それは」
後ろから、ひたすらにささやいてくる悪魔。
僕には、やつの声しか聞こえない。
「そうだよぉ? 『うちのクラスは厳しくて、当日までに完璧な異性になりきらなきゃいけないんだ』って言って、なんなら今日からでも……ねぇ?」
そう、僕の隣に座っていた男子に会話を振り出しやがるこの野郎。
「あ、ああ! そうだな、どうせ女子には勝てないんだしな!」
「そ、そうそう! せっかくやらされるんなら、男子みんなで団結しないとな!」
「女子にも責任取らせないとな! なぁ?」
「だよな? 俺たち全員がそこそこ以上に見れる姿に……な?」
「が、がんばろうな! 佐々木! 女子には逆らえないからな!」
「………………………………? う、うん……」
……なんだか思ったよりも、男子たちのノリも良いらしい。
みんな、そんな非日常を楽しみたかったのか?
それともここまで陽の気を持つ同級生だらけだったのか?
……どうしよう。
これ、みんなでやる流れになっていて、僕1人……ってのが。
「………………………………」
――女装。
みんなの、前で。
「………………………………」