僕がVRの姫プと女装にのめり込んでリアルでメス堕ちして男装女子に喰われるまで。~男がことごとく女の子になるVRなチャットという魔境~   作:あずももも

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32話 美容院

「玲? 出かける用意してちょうだい?」

 

ある休日、母さんが部屋に来たかと思うと、急にそう言った。

 

「? 母さん、『今日はどっか出かけるから家にいてくれ』って……」

 

言ってたよね?

 

「荷物の受け取りがあるからどうとか」って。

 

「あ、ごめんね、それ嘘なの」

「え?」

 

「今日は美容院に行きましょう?」

「? 行ってくれば?」

 

「違うの、玲のよ」

 

「……え?」

 

「え?」

 

 

 

 

「なるほど、校則に引っかからない程度に髪を伸ばしたくって、後ろで結えるくらいにしたいと」

 

「将来的にもっと伸ばす予定で……こういう髪型とかどうかしら」

「ほうほう……」

 

「え、あの」

 

「……分かりました! かわいい感じにしますね!」

「ええ! 数ヶ月後、玲が、ぱっと見で女の子に見えるようになるように!」

 

「いや、その」

 

「あと、化粧水とかスキンケアとかも教えてあげてくれるかしら? 女の子だったら素直なんだけど、男の子だし……こういうの、母親から言うと抵抗しちゃって。本人は望んでるみたいなんですけど」

 

「おまかせください!」

 

「えっと」

 

「そういうわけで、玲?」

「か、母さん……」

 

――僕は有無を言わさずに引っ張ってこられ――明らかに場違いな、女性しかいない美容院のイスに座らされ、すでに首から下を覆うあのシートを被せられている。

 

「イヤなら普通に切ってもらうけど」

 

「なら――」

「でも、玲?」

 

母さんは――じっ、と、僕を見る。

 

「……素直になりなさい? 青春は1回きりなのよ?」

 

「母さん……」

 

「数年経ってから『やっぱりあのときに、笑われたとしてもやってみたかった』……って後悔しても、もう遅いの。若さは、高校生活は、努力しても取り戻せないものだから」

 

「………………………………」

 

「それに、学校の友達なんて9割以上とは疎遠になるわ。社会人になったら、もうほとんどの人が忘れてるわよ」

 

――拒否しようと思えば、いくらでも言える。

 

ああ言えばこう言うし、放っておけば確実に何かをしでかす。

そんなヒカリに鍛えられた僕としては、言おうと思えばやめさせられる。

 

「……お母さんも、したかったけど周りの目を気にしてやめたこと……いっぱい、あるから」

 

「母さん……」

 

「人目をね、気にしちゃって。噂とか、私のキャラとかで、目を付けられたくないからって。女子はいろいろと制約があるから……大人になったら2度と会わない子がほとんどなのにね。でも、男の子ならそこまで厳しくないわ、きっと」

 

明るい母さんが見せたことのない、切ない顔。

 

「………………………………」

「………………………………」

 

「……分かった。すみません、さっきのでお願いします」

 

「玲……!」

「分かりました! ばっちりかわいくしちゃいますね!」

 

――そうだ。

 

僕なんて、そもそも誰にも覚えられないほど影の薄い男だ。

 

別に僕が女みたいな髪型してたとしても、せいぜいが「気持ち悪いよな」って言われる程度だろう。

 

それに今は――僕は、まだ違うって信じたいけども――女装とか男装に対しては偏見が薄いし、表立ってはやし立てるのははばかられる時代だ。

 

さらにうちのクラスは、今年、なぜかノリが良くってほぼ全員が異性のコスプレをする催しをやるってのは、隣のクラスの人たちも知っているほどで。

 

そうだ、強制なんだ。

 

厳密には強制じゃなかったとしても、クラスの空気――「目に見えないけども逆らったら村八分」っていう、この国独特の事実上の強勢な事象なんだ。

 

だからきっと、そうしたとしても哀れまれるだけ。

 

きっとそうだ。

 

「ではではー、息子さん……娘さん?」

「息子でお願いします……」

 

さすがに今の姿で女の子扱いされたくはない気がする……VRなチャットのアバターならともかく……。

 

「はいー、じゃあ、1年後くらいまで髪の毛伸ばしたときの理想の髪型とかありますかー? 今でも男子としてはちょっとあるので、いろいろできそうですよ?」

 

「……じゃあ、えっと……」

 

そうして僕は、鏡の前に置いてあったタブレット――床屋とは違って使い古されたマンガじゃなく、いろんな雑誌とかが読めるタブレットが常備されているらしい、さすがは美容院だ――を手渡され。

 

女性用のファッション雑誌の、髪型のところをぱらぱらとスワイプされながらおすすめを聞いたりして。

 

「……!」

 

「あら、これが良いでしょうか?」

「はい。……ここまで伸ばすかは、分かりませんけど……」

 

たまたま。

ぐうぜん。

 

僕の目にぴたりと留まったのは、美しいロングヘアーの――そうだ。

 

いつもの美少女アバターの、美しい銀髪にそっくりな髪型の女性を見つけ。

 

「このくらい伸びるには2年くらい掛かりそうですけど……途中でも充分かわいくなるようにしていきますね!」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

こうなったらもう、恥は捨てよう。

 

何、僕みたいな男が中途半端に女みたいだったといっても、大したことはないだろう。

 

どうしても絡まれるようなら「中村に無理やりされたんだ……」ってしょげてみせれば、少なくともうちの学年の大半は哀れんでくれるはず。

 

そうだ、アイツだ。

 

アイツのせいで、僕はメス堕ちすることになったんだから――責任は取ってくれるよな?

 

 

 

 

「……というわけで、玲くん、とうとううなずいてくれたの!」

 

『おー! さすがはお母様! レイきゅんの扱いに慣れてますね!』

 

佐々木玲が、髪をカットするためにシャンプーをかけられているのを見ながら――彼の母親は、彼の学友と話し込んでいた。

 

「でも、まさか玲がねぇ……中村さんに先に聞いてなかったら、ちゃんとあの子が納得できる話し方とかできなかったわ。ありがとう」

 

『いえいえ! すべては親友たるレイきゅんのためですから!』

 

電話口からは、それはもう小躍りしそうなテンションの声。

 

「ところで中村さんも、コスプレするのよね?」

 

『当然です! もちろんレイきゅんに合わせます! お揃いで、ぴったりのを!』

「そう! 楽しみね!」

 

『はい! ――――とっっっても、楽しみです!』

 

2人は、玲の意思を優先するようでいてそうでもない会話を――結果的には最大限に尊重している気分になっているそれを――彼のカットが終わるまで続けていた。

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