僕がVRの姫プと女装にのめり込んでリアルでメス堕ちして男装女子に喰われるまで。~男がことごとく女の子になるVRなチャットという魔境~ 作:あずももも
「はぁ……」
最近の僕は疲れている。
なんでだろう。
……いや、理由はわかっている。
メス堕ちが、とうとうリアルに侵食してきているからだ。
だからこそ――この、銀髪紅眼ケモ耳ロングで細部までいじっていて、気に入った衣装があればすぐに買って着せているこのアバターの方が安心するんだ。
VRなチャットでは、男の大半の基本装備が美少女アバター。
だから問題はなかったんだ。
……そうだ、ネカマが8割の世界だからこそ、その中に僕が溶け込んでいられていて気楽だったんだ。
「………………………………」
こうしてゴーグルを着けてバーチャルの世界に旅立っていると、リアルでのあらゆる苦難が解消される気がする。
しょせんは一時的なのにね。
そんなのは分かっているんだ。
分かっていて、そうしているんだ。
「すっかり残業とかしなくなってさぁ」
「分かる、俺も飲み会とか行かなくなっちゃったよ」
「同じ酒吞むにしても、上司とかよりフレンドさんとの方が楽しいもんなぁ」
「リアルでの利害も何も関係ないし、まるで学生時代に戻ったみたいに毎日会えるからなぁ」
「マジで沼製造機だよな」
周りでは、見知ったフレンドさんたちが酒盛りをしながら愚痴大会をしている。
――それはきっと、みんなが同じ。
きっと、この息苦しくて生きるのが大変な世界からの逃避先として、ここは優秀すぎるんだろう。
目に入るものすべてが新鮮で、美少女アバターだったり小さいデフォルメアバターだったり、小動物とか謎生物アバターとかが大半を占めている、美しい世界。
そして――元の性別を気にしなくて良い世界。
分かっていても、気にしなくて良いんだ。
ああ、なんて素敵なんだ。
ミラーに映っている僕は、やっぱり現実とは違う。
いわゆる美少女体型で美少女顔、肌も白ければ当然ながら毛も生えていなくって汚いところの一切に無い、完璧な体。
美容院で聞かされたように、髪が伸びてくると毎日のお風呂が大変になるらしいリアルのボディーも、バーチャルならメンテナンスも要らない。
「……異世界転移とか転生とかしないかなぁ……この見た目に」
そう思ってもしょうがないほどの、完璧にしてしまった僕の体。
……正直、こっち見てる方がリアルを直視するより何倍も落ち着くって時点で、もうね……。
「レイちゃん、大丈夫?」
「? はい」
「レイ殿、話せることがあれば聞くでござるよ」
「……ありがとうございます」
そういえば、最近は気がつくと僕の左右にルーチェさんとリヒターさんが居る。
それがなんだか居心地が良くって、さらにここがリアルだったらなぁって思っちゃうんだろう。
「けど気をつけてね? レイくん」
「はい?」
「そうやって、いかにも悩んでますって子。良いカモだからね? 男の」
「そうでござる。今日もさりげなく2人ほど追い返したでござる」
「えっ?」
え?
そんなに顔に――出るはずがないのに、だってアバターだから……でも、なんで?
「んー。……雰囲気?」
「別に顔トラ――顔トラッキングとかつけてないですけど」
「普段に比べて口数が少なく、うつむきがち、たまにため息が聞こえる。……レイ殿と何回か会ったことのあるフレンドさんであれば、察せてしまうでござる」
「レイくん、普段は明るいキャラしてるもんね」
「ことさらに盛り上げるタイプではないが、普通に話していて明るくなるでござる」
え?
2人とも、そんなに人のこと観察してるの?
「まぁ単純に、表情を変えたりする頻度が減ってるってのもあるわね」
「でござる」
「あと、普段より30%くらい声のトーンが低いかも」
「でござる」
「そ、そうなんですか……」
そこまで分かる2人にちょっと引きそうになったけども……確かに、電話とかで話してても、知ってる相手のことだとなんとなくテンションとか分かるもんね。
VRなチャットはコミュニケーションツール――要はアバターを被ってるAccord、あるいはMineみたいなチャットアプリと同じなんだ。
「レイくんみたいな子って、他の子に相談とかしないから」
「抱え込むタイプでござるよなぁ」
「あざとく周りに『こんなに困ってるんですぅー!』ってやればサークラの姫できそうなのにもったいないわよねぇ」
「素質と気質は必ずしも一致しないでござる」
……ああ。
友達って、良いものだね。
「……ふふっ、何言ってるんですか2人とも、もうっ」
「あ゜っ」
「ん゛っ」
「心配かけてごめんなさい。でも、もう大丈夫です」
――別に現実逃避したって、悪いことじゃない。
姿形は違っても、別の世界で別の友人関係作ったって、なんにもおかしいことなんてないんだもんね。
「2人に、こんなに心配してもらえただけで元気になれましたからっ!」
ふんっ、と、立ち上がった僕は振り返り、2人に向けて腕まくり――の動作。
「……そ、そう! 良かったわ!」
「ござるござる、でござる!」
「あははっ、リヒターさん、何言ってるかさっぱりですよー? あははっ」
そうだ、よく聞くじゃないか。
学校とか会社とかで居場所がない人でも、別のところで誰か1人でも仲が良い人が居れば、それで楽しくやってけるんだって。
「ちょっとリアルが……そうですね、騒々しくって。だから落ち着かなかっただけなんです、きっと」
どハマりしてた時期とは違って、適度に距離を保ちつつ楽しめてるじゃないか。
リアルとバーチャル――男と女、それぞれの僕を楽しめば良いんじゃないか。
「ありがとうございます。優しいですね、2人とも……ふふっ」
「 」
「 」
「……なぁ、またレイさんが……」
「まーたレイさんが誘惑してる……」
「俺も誘惑されたいけど沼りそうだし……」
「あれが天然サークラか……」
「男の娘疑惑というのが、またな……」
「あれで男なら、もう俺、男でも良いや……」
よしっ、切り替えた。
他の人とも話して、ついでで学校のことも適度にぼかして愚痴れば明日もがんばれる気がしてきた。
……あ。
笑うとき、自然に片手を口元に当てて、もう片手は胸元で握るポーズしてた。
……本当、ヒカリも演技指導だけはすごいからなぁ。
うん、アイツは性格と素行に問題がありすぎるけど、こういうとこだけは受け入れてやってもいい気がしてきた。