僕がVRの姫プと女装にのめり込んでリアルでメス堕ちして男装女子に喰われるまで。~男がことごとく女の子になるVRなチャットという魔境~ 作:あずももも
バレた。
……バレたバレたバレたバレた。
女装がバレた、こんな女性ばっかりのところに男が女装して入り込んでるってバレた。
……もう、終わりだ……。
「ぐすっ……」
「……ってわけで、なんだかレイくんそっく――うぇぇ!?」
あ、あ……。
涙が出てくる。
……そうだ、僕はなぜか涙もろくなっているんだ。
それがはたして女装して女の子だって気分だからなるのか、それとも――ああ、きっと心までメス堕ち。
しているから、こうなっているんだ。
「ふぇぇ……」
「――だ、大丈夫! 誰にも言わないから!」
「ふぇ……ほんとぉ?」
「う゛っ」
気がつけば両手の拳で目をこすっていた僕は、ようやく自覚する。
……なんかこれ、まずくない?
いや、泣くスイッチの入り方とか、泣き方とか……まるで小さな女の子みたいな感じだし……。
………………………………。
……メス堕ち、こわぁ。
◇
「さっきはごめんなさい……その、びっくりして」
「あー! うんうん、びっくりするとわけ分かんなくなっちゃうよね! ほんとごめんね!!」
気まずい空気が流れる中に、空気を読まない店員さんによって同じ席にさせられた僕たち。
……いや、なんで?
「混んできたからね……しかも騒ぎ起こしちゃったし。顔見知りならさっさと仲直りするか痴話喧嘩は余所でやれ……って、冗談よ」
と、目の前に座った綺麗な女の人が言う。
……声の中に、うっすらと知ってる声を混ぜて。
「……で、レイくん……で良いのよね?」
「そちらは……ルーチェさん?」
「そう! ……あんなぶりっ子してたの見られて死にそうだから詳しく追求するのは勘弁してね……中高生男子の中で姫プやってたの、リアルの知り合いにバレるのは初めてなの……」
「あ、はい」
あー、ルーチェさん、確かにモテて楽しそうだったね。
でも。
僕は女装のためにって名目でファッション雑誌――の電子版を見せられたから分かる。
この人、髪の毛からアクセサリーまでそういうのに出てくる人だって。
もう名称とかは完全に忘却の彼方だけとも、髪型とか上着とかシャツ、ブレスレットとかはその中にあるような高級品だってなんとなく覚えているから。
ちなみに顔は……うん、美人さんだけど……僕、男も女も顔はそんなに気にしないからなんとも。
ヒカリ?
あいつはなんでも持ってるくせに顔まで良いずるいやつだからどうでもいい。
「……けど、なんで分かったんですか? 僕って」
確か――いや、少なくとも僕は身バレってのには気をつけていたはず。
自撮りだって、家の特徴が分からないように壁しか映らないようにしていた。
撮るのも首から下だけ――と、顔にスマホが被るように映すテクニックで、絶対にバレないようにしていたはず。
……もし顔が映ってたら、きっとヒカリが馬鹿にしてきてすぐに消させてくるにちがいないし。
「確信したのはさっきの電話よ?」
「え、でも、声とか小さく」
「あ、私、耳が良いから……盗み聞きするつもりはなかったんだけどね」
こんなに女の人が密集して、特に近くの席のおばさ――マダムたちが大声でしゃべっているのに、聞こえるかどうかの声量でしゃべってた僕の会話を?
「けど……最初からなんとなく、ね」
「なんとなく?」
彼女は僕をじーっと見ながら言う。
「レイくんがこの席に案内されてきたばっかりのときは全然気づかなかったの。 だって、そもそも見てなかったから。けど、ふと見たらさ」
僕の手元――もこもこのセーターの袖を見ながら――ちなみに女装はごつい男の拳を隠すためにいわゆる萌え袖にするのが良いらしい――続ける。
「なんとなくシアノちゃんらしい服装だなーって。けど髪は短くて、でも雰囲気はこんな感じかなって」
「あー」
うん。
これ、そのための宅コスのだからね。
これで銀髪のウィッグとケモ耳バンド、赤のカラコンを入れたらシアノちゃんの完成だ。
「で、ふとレイくんの自撮り思いだしてSNS辿ってみて、やっぱ同じのだって。でも、それだけじゃただの偶然かもしれないし、だからそれがきっかけのひとつね」
……じ、自撮りからそこまで……!?
………………………………。
……今度から、自撮りに使った服で出歩くのはやめよう。
きっと、こういうので身バレするんだろうなって。
「自信は無かったから、ときどき見る程度にしてたんだけどね? ……でもやっぱり、顔も似てるなって」
「……アバターとは似ても似つかない顔ですよ?」
「ううん、こう……やっぱり雰囲気かな。普段はちょっとうつむきがちなところとか、ぼーっと室内観察してるところとかはVRなチャットとそっくりで」
そんな癖が僕に……?
「あと、手の動きとかもやっぱりそう。VRなチャットしながら水分補給するときとか、しゃべりながらジェスチャーするときとか、利き手が左ってのも」
「あ」
そうだった……僕はフルトラだから、そういうところも知ってる人なら分かるのか……!
しかもルーチェさんはかなりの初期から、月に10回以上は遭遇していたから。
「店員さんとの短い会話でもまだ確信はなかったんだけど……電話で、ね。ほら、レイくん、誰に対しても優しい話し方だけど『悪友』って言ってるヒカリちゃん相手だとちょっと乱暴じゃない?」
え、なんでそこまで分かるの……って、耳が良いって言ってたし、確かにヤツに対してだけは遠慮しなかったっけ。
「……で、レイくんってわけ。……合ってる?」
「はい……今後は気をつけようと思いました……」
僕はうなだれながらスイーツを咀嚼する。
ああ。
この甘味だけが、僕を現実逃避させてくれるんだ。
「……えっと、その……ひとつ、聞いても良い……?」
「良いですよ……もうなんでも聞いてください……」
この場はルーチェさんの善性に身を委ねるしかない。
いや、彼女は秘密を片手に無茶なことを要求してくるような性格じゃないとは知ってるけども。
「……ほんとうに、男の子? 女の子じゃなくて?」
ぱりんっ。
僕の――男としてのプライドは砕け散った。
「……男です……これでも……」
「……え、ウソ。ほんと!? 私、レイくんに告られてもやっぱり女の子かなって思ってたんだけどぉ!? 背が高めだけど線の細い子だなって!?」
甘味で脳がとろけてきて人心地ついた僕は、ぼんやりと目の前の残念美人さんを眺める。
……僕、本当のこと言ったのに信じてもらえてなかったんだ。
ていうか、本物の女性にまで女子認定されてた僕って……。
「……!!」
「告られた……!?」
「今、聞こえたわね」
「あの2人……百合カップル……!?」
「年下の子がさっき泣いてたみたいだけど……」
ざわざわざわと姦しすぎる空間。
そんな中、ただ1人の男として僕は――もっと居心地が悪くなった。