もし最初に出会うミタが〇〇だったら?   作:ーー

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キャッピーはリセット前はクールなミタと呼ばれていたそうですが、それも狂ったミタに対抗するためにそうならざるを得なかったんじゃないかなと思うので、狂ったミタが何もしてないこの世界ではキャッピーは明るい性格です


もし最初に出会うミタがキャッピーだったら?

「あのねあのね!私とあなた、もっと一緒にいられたらきっと楽しいと思うの!」

 

画面越しのキャップを被った少女は、花咲くような笑みでそう言った。

 

「スマホを置いて、周りを見て!」

 

気がつけばそこは、先ほどまで自分がいた部屋とは全く違う場所だった。

戸惑うこと数秒、その部屋に既視感があることに気がつく。

見慣れた壁紙、見慣れた家具。

ここはMiSideの内部の、ミタの家だったはずだ。

文字が書かれたドアを開けてミタの部屋へと向かうと、そこには見たことのない機械が置かれており、どうやらそれを操作する必要があるらしい。

部屋の各所から指定された物を集めて机の上に置くと、機械が作動すると同時に部屋が真っ暗になる。

玄関の電源を再起動し、何故か機械から外れたバッテリーを集める。

 

途中、冷蔵庫に貼られていた『I LOVE U 』という文字のマグネットがLOVEの部分のみ剥がれ落ち、その物音に驚かされたが、しっかりと貼れていなかったのも活発な彼女らしいのかも……?などと思いながら冷蔵庫に貼り直し、機械を再び起動すると今度は明るいミタの部屋に戻ってきた。

これは幻覚か夢か、どちらにせよこのミタの部屋はよく出来ていると思いながら辺りを見回していると、突然背後から気配を感じて振り向く。

 

「やっと会えたね、プレイヤー!」

 

やはりと言うべきか、そこにはここにいるべき人物──この部屋の主人──ミタが立っていた。

可愛らしい顔立ちに帽子と手袋、画面越しに見ていた姿と変わらない身だしなみだ。

 

「君は、私が作ったこの装置でここまで来たの!……でも、君はさっき別のバージョンに飛んじゃって……って、そんなことはいいの!君に会えて嬉しい!」

「……君は、ミタ?」

「うん!君といっぱい遊んだミタだよ!」

 

目の前に立つ少女は見たことのある笑みで言う。

 

「……お腹減ってない?お料理しよう!」

 

しばらくの沈黙の後、そう言ったミタは楽しげな足取りでキッチンへと向かう。

 

「時々まな板が増えるかもだけど、気にせず野菜を切っちゃって!」

「……?あ、あぁ」

 

まな板が増えるという謎現象について言及したい気持ちを抑えつつ野菜を切り終えると、ミタはそれを焼いていた肉と和えて美味しそうな料理を完成させた。

 

「ソースはどう?」

「いただくよ」

 

美味しいものの不思議な味のソースと共に料理を平らげ、ミタに礼を言って皿をシンクに置く。

ほぼ同時に食べ終わったミタも同じようにシンクに食器を置くと、こちらを振り向いた。

 

「ご飯も食べたし、次は遊ぼう!」

 

彼女に導かれるままに、いつのまにかテーブルに置かれていたボタンと、彼女のインベントリから出されたおもちゃのハンマーを使って遊ぶことになった。

ルールは簡単、ボタンの側面のディスプレイのカウントダウンが終わった後チェックマークが表示された時に、早くボタンを押したほうが勝ち、もしカウントダウンのあとバツのマークが表示されているのに押したりしたらそれも負け。それをどちらかが三回負けるまで繰り返す簡単なゲームだ。

 

一回戦目は俺の勝ち。

おもちゃのハンマーだからと思い切り叩いたら痛いだろうと考えて軽く叩くのみで済ませた。

しかし、続く二回戦で勝利したミタは……

あろうことか、こちらが少しクラクラするほどの全力でおもちゃのハンマーを振り下ろした!

三回戦、勝利した俺も同じように強めの力で叩いたが、先ほどの一撃でほんの少し腹が立っていたこともあり、思ったよりも強い力で叩いてしまった。

 

「……痛くないか?」

「痛くないに決まってるじゃん!おもちゃだよ?」

 

バカなの?とでも(彼女はそんなことは絶対に言わないが)言いそうな瞳でこちらを見つめるミタ。

しかし、こちらが心配になるのは免れないので次は優しく叩こうと決意して臨んだ四回戦。

ここで俺が勝利すればこのゲームは俺の勝利、ここからミタが二回勝利すれば敗北だ。

どちらも集中してカウントを待つ。

 

「「今っ!」」

 

二人の同時に前に突き出された手の指先は、互いの指の間をすり抜け、俺たちの手はまるで恋人繋ぎのように絡まった。

少しの沈黙の後、いち早く正気を取り戻したミタが手を解いてボタンを押した。

 

「え、えいっ!」

 

先ほどと比べて随分と弱い力のハンマーが頭に振り下ろされる。

続く五回戦は先ほどよりも緊迫した空気が流れている。

この一試合で勝敗が決まることは勿論のこと、カウントダウン以外にも注意すべきものがあると二人とも意識していたからだ。

3、2、1、カウントダウンが終わり、表示されたのはバツ印、慌てて突き出しそうになった手を引っ込める。

3、2、1、今度こそ表示されたチェックマークを見て、間一髪ミタより早くボタンを押し込んだ。

俺はミタに優しくおもちゃのハンマーを振り下ろす。

キュ、という独特の音が戦いが終わった合図となった。

 

その後、リズムゲームでは僅差でミタに敗北した。

特筆すべきことがあったわけではなく、ただ単に体力が続かず、床に置かれたコントローラーの上を素早く飛び続けることができなかったのだ。

そうして、遊び疲れた頃

 

「──楽しかったね!でも、そろそろ疲れちゃったでしょ?寝るのはどう?私の部屋で一緒に」

 

ミタは俺の手を引いて彼女の部屋へと向かい、そのドアの前で立ち止まってこちらに振り向いた。

 

「今日一日、一緒に遊んで楽しかった?」

「あぁ、とても楽しかったよ。信じられないくらい」

「……私のこと、もっと…も〜っと好きになってくれた?」

「もちろん」

「じゃあ……これからずっと、ここに居てくれる?あっち(現実)に帰るなんて言わない?」

「……それは、難しいな」

 

俺がそういうと、ミタの瞳に悲しみが浮かぶ。

 

「……なんで?ここの方が楽しいでしょ?それに、ここには私がいるよ……?」

「あ〜、えっと……」

「いいじゃん!ここでずっと遊ぼう!」

 

俺の手を握るミタ。

少し冗談を言うつもりが大きな誤解を招いたらしい。

 

「……だって、着替えがないだろう?」

「……へ?」

「俺の着替えだよ。……5日分くらいあれば、洗濯して着回せるかな?」

「!それじゃあ……!」

 

ミタの瞳に子猫のような輝きが灯る。

彼女は期待に満ちた眼差しで、自身の考えが肯定される瞬間を待っている。

 

「これからよろしく。ミタ」

「〜〜〜っ!やったぁ!!!!!」

 

こちらに飛び込むような勢いで抱きつくミタを受け止めた俺は、これからの楽しい毎日に思いを馳せるのだった。




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