怪異・亡霊捜査部活動記録   作:水無月(ハニャミィ)

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怪異No.1「貴方が忘れる頃に」

 

「…」サラサラサラ…

 

私は才羽モモイ。今絶賛シナリオの執筆中である。黙々と。

なぜかというと、ミドリはシャーレの当番。ユズとアリスはネル先輩によってゲーセンに拉致…もとい連れて行かれてしまった。

つまり1人である。本当は私もゲーセン行きたいけど、私の進行が遅すぎて期限までの提出が危ういので泣く泣く断念した。

 

ピタッ「よし!終わった!」

 

そうして睨めっこすること4時間。全体が完成したというわけである。…この言い回しはやっぱり慣れない。ちょっと番組っぽさを出してやる気を出したかった。

 

さて、時間的にユズ達に合流するには遅いしどうしよっかなぁ。

 

コンコン

 

悩んでいるとドアから礼儀正しくノックの音がした。普段そんなことするのはノア先輩くらいだけど、声がセットで聞こえないということはノア先輩でもない。じゃあ誰?

 

「ここってゲーム開発部で合って…ますか?」

 

「そうだけど、誰?」

 

聞いたことない声だ。少なくともミレニアムの生徒じゃなさそう。

 

「ここに“お客様”として来たと言えばわかるって言われて…」

 

なるほど。そういうことか。

私は急いで無意識で取り出したゲーム機を片付けてお客様を向かい入れる。

 

「どうぞどうぞ!ちょっと汚いけどごめんね。今私一人しか居なくてさー」

 

「そう…なんだ…?」

 

明らかな疑問と疑惑の視線。

それはそうだろうね。ヴェリタスかエンジニアかセミナーか…。主要組織で解決できない事案をここに行けば解決と言われて出て来たのが私なんだから。

 

「まずは自己紹介しよっか!私は怪異・亡霊捜査部長のモモイだよ。1年生!」

 

「トリニティ学園放課後スイーツ部、1年。杏山カズサ。よろしく…?」

 

「うんうんカズサさんね!よろしくっ」

 

「カズサでいいよ。同い年だし」

 

トリニティかぁ。見た目は私たちと変わらずお嬢様って感じはないけど、所々なんか高級物の片鱗が見えるものがある。

 

「じゃあ…カズサ!よろしくね!」

 

「それで、ゲーム部だって紹介されて来たんだけど、怪異・亡霊捜査部って何?」

 

「そこなんだよ!カズサはどこからウチを紹介されたの?」

 

「えっと…セイアさん経由でここに来て、セミナーのユウカさんから…」

 

セイアさんか。以前セイアさんの依頼を受けたこともあるし、それからもちょくちょくお世話になってる。これは張り切らないと。

 

「そう!そのユウカに騙されたんだよー!ちょっとでいいからってやってみたらいつの間にか部の名前にされてたんだよ!?」

 

「…ふふっ」

 

「え、なんで笑ったの!?」

 

「いや、ユウカさんが言ってた通りだなって。報酬に釣られて始めたのはそっちでしょって」

 

「ウグゥ…!確かに最初はそうだったけど…。でも部活にするなんて聞いてない!!」

 

「モモイ、完全に手のひらじゃん」

 

「納得いかないー!」

 

カズサがケラケラと笑う。なんか不服!

 

「あとちょっと気になったんだけど、その猫耳ってアクセサリー?」

 

「そう。私と妹のトレードマーク!しかもこの尻尾は感情を読み取って動く機能付き!」

 

「だからさっきから尻尾が動いてたんだ。モモイ感情豊かだね」

 

「よく言われる」

 

「それに妹もいるんだ?」

 

「うん!自慢の妹だよー!」

 

場の空気がいい感じになったので本題に行く。

 

「ってそれはよくて。話がそれちゃった。それで、カズサはどんなことで困ってるの?」

 

「えっと…何言ってんのって思うかもだけど」

 

「大丈夫!意味わかんないことを担当する場所だから。むしろ意味わかったら別の場所紹介するよ」

 

「そう、なんだ。それじゃあ…」

 

あまり自分でも飲み込めてないのかポツポツと話し出す。

 

「夢が終わらない、んだけど」

 

「終わらない?」

 

どうやらここ2週間、毎日見る夢がひたすらチンピラを相手に銃撃戦をしている夢を見ている、らしい。それを友達の愚痴ってたところにセイアさんが通りかかって…って流れ。

 

「どうして終わらないって思ったの?」

 

「目が覚める前の状態そのままだから、かな。残弾数も日に日に減っていくし、チンピラを倒した道に行くとちゃんと倒れたままになってる。傷もそのまま」

 

「確かにそれは終わってないかも」

 

「…わかることはこれだけ」

 

多分私の分野かな。ミドリ担当だったら今日はどうにもできないし、基本時間もかかるしでよかったよかった。

 

「いくつか質問していい?」

 

「もちろん」

 

「夢を見てる間は夢って認識してる?」

 

「してないかな。いや、どうだろう…。夢か現実か曖昧…って感じかな。起きてから夢だったって確信する的な」

 

「夢の見始めはいつも同じ場所から始まってる?」

 

「目が覚める直前の場所からまた始まるかな。…何かわかる感じ?」

 

「似てる事象としては“猿夢”って言うのがあるかな」

 

「猿夢?」

 

「そう。だけど似てる部分は同じ夢を見るってところだけかな。あとはあまり似てないかも」

 

「その猿夢ってどんなものなの?」

 

「んー。簡単にいうと、今カズサが見てる夢が、同じ場所から始まって、チンピラにやられる直前で起きる夢を何回も見る感じかな」

 

「…それは気分悪いね」

 

それだけじゃないけど、特に言う必要もないよね。仮定の話だし後味悪いし。

 

「そうだね。その夢を見始めてから寝不足だったりする?」

 

「いつもよりは…?試験前で少し徹夜してる程度かな」

 

「ふんふん。夜以外で寝てみたりした?」

 

「してない」

 

「チンピラって強い?」

 

「いや、全然。まとめてかかって来ても対処できるレベル」

 

「そっか。ちょっと考える時間頂戴」

 

「わかった」

 

さて、情報的には今すぐ危険が迫ってくるって感じじゃないし、感情が強く動いてないからほぼ怪異と言って間違いない。

チンピラが強くなってる感じでもないし、イタズラ型の怪異か?計画性のある怪異だったら実害が出てるはず。

 

「ちなみに残弾数的にあと何日持ちそう?」

 

「んーー…節約して1週間ってところ?」

 

今日は様子を見て明日対処する…って感じが丸いかな。夢に干渉するのは簡単だけどリスクを考えると簡単じゃない。

 

「とりあえず、夜以外にも夢を見るのか確認したいんだけど、今眠い?」

 

「まあ、なんとか眠るくらいなら」

 

「時間的には…1時間くらいかぁ。チャレンジするだけしてみよう!」

 

帰る時間も考えるとあまり時間がない。明日は休みだから最悪大丈夫だろうけど。

 

「じゃあベッド綺麗にするからちょっと待ってて」

 

「…どこの部活にもベッドが置いてあるのってなんで?」

 

「え、2徹3徹するから?」

 

確かセミナーにはベッドは置いてない。最初にセミナーを見てから他の部活に行ったのなら違和感も生まれるかな?

 

「トリニティとは違うね…」

 

「トリニティでも徹夜とかしないの?」

 

「普通しても帰るから!」

 

そうだったかなぁ…。そうだったかも…?

予備で置いておいたオーバーサイズの寝巻きを渡して着替えてもらってる間にシーツを変える。シーツを新しく取り替えるのにも時間がかかる。ユズがいればこの間に準備をしてくれているかカズサの相手ができるのにー!

 

「よし!できた!いつものベッドよりは質は悪いかもだけどどうぞどうぞ」

 

「そんな気にしないって。ありがとう」

 

渡したのは猫の寝巻き。なんかすごい似合ってる!

 

「カズサ可愛い!」

 

「猫に猫ってなんか変じゃない…?」

 

「全然そんなことないよ。あ、そうだ。もし夢の中で私のことを思い出したら空に向かって3発撃ってほしいんだ」

 

「理由がわからないけど…。わかった。やってみる」

 

「よろしく!じゃあ私ソファーにいるから何かあったら言ってね」

 

「ん」

 

とりあえずひと段落かな。あ、ユズとアリスに連絡しておかないと勢いよく入って来て起こす可能性がある。一応ミドリにも連絡を…。よし。オッケー。

 

カズサはすでに寝てしまっている。…ん?もう寝てる?メッセージ送った時間だけで?寝付きいいのかな?

 

「カズサさーん…」ユサユサ

 

揺すっても起きない。おっとこれは…。

真偽を確かめるために近くの適当な機械類、なぜかあるメトロノームを集める。突貫工事だけどただ寝てるだけならこれで大丈夫なはず。

 

「カズサ聞こえる?起きて」カチカチカチ…

 

2分ほど待ってみたけど反応がない。ダメそう。これ思ったより厄介なやつか。

これは日常にも変化があった可能性も考えないといけなくなった。まずは依頼主のセイアさんに聞いてみるか…。

 

ピッッ「もしもしユウカ?」

 

「モモイ?どうかしたの?」

 

「いまカズサが来てるんだけど、ちょっと確認してほしいことがあって」

 

「何かしら?」

 

ある程度察してくれて理解より処理を優先してくれる。こういう時のユウカはすごく頼りになる。絶対本人には言わないけど!

 

「依頼主ってセイアさんなんだよね」

 

「そうね」

 

「どの程度内容とか聞いてる?」

 

「いえ、殆ど聞いてないわね。お客様として診て欲しい人がいるくらい」

 

「それ依頼しようとした経緯も含めて詳しく聞いてくれないかな?多分本人が気付いてない異変があるはず」

 

「ええ。わかったわ。他に聞くことはある?」

 

「んー…。友人のこととか?」

 

「友人?…聞いておくわ」

 

「よろしくね」ピッ

 

さて、ユウカの返しが来るまでにできることやっておこうかな

 

ピッッ「もしもしウタハ先輩?」

 

「モモイじゃないか。電話なんて珍しいな」

 

まずは深い夢にも干渉できるアイテムの調達。アリスがエンジニア部に返してたはずだから何もなければあるはず。

 

「ちょっと急用なんだ。波波音波くんはそっちにある?」

 

「もちろんだとも。丁寧に保管しているよ」

 

「それ今からこっちに持って来てほしいな?」

 

「ちょうど試作品の運ぶんです4号が完成したところだ。持っていかせよう」

 

「ありがとう。…だけど爆発しないよね?」

 

「そこは安心して欲しい。転んで1回転した後に荷物を安全圏に置いてから爆発するようになっている」

 

「それじゃあこっちに荷物届かないじゃん!?」

 

「では起動準備を急ぐからこれd」プツッ

 

…心配だ。まあ来ると信じて次の人に。

 

ピッ「もしもしユズ?今大丈夫?」

 

「モモイちゃん?うん。大丈夫」

 

「今からミドリと合流してトリニティに行って欲しいんだけど…」

 

「さっきの件かな?」

 

「そう。思ったより厄介そうだから助っ人が必要で」

 

「わ、わかった。アリスちゃんは?」

 

「大丈夫。ネル先輩の機嫌が悪くなる方が大変だもん」

 

「そうだね…あと2時間はかかるかな」

 

「ミドリのモモトークに詳細は送ってるから、合流して事情を説明すれば先生も協力してくれるはず。よろしくね」ピッ

 

 

一通り連絡は終わった。あとできることはユウカの折り返しが来るまでにカズサの容体を特定しないと。

 

「カズサ!起きて!」

 

ここまで深い眠りにいるのは、相当強い妨害が働いている状態じゃないとありえない。

夢かどうか起きないとわからないって言ってたけど、自由に動けてリアルだから曖昧なんじゃなくて、認識阻害があったからわからなかったんだ。

これだと夢の内容すら正しいかどうか判断が難しくなる。それこそ猿夢に近い怪異の可能性も…。

 

思考がまとまる前に電話がなる。ユウカの折り返しのようだ。

 

「もしもし?」

 

「モモイ?セイアさんに聞いてきたわよ」

 

「どうだった?」

 

「思ってた通りよ。ここ最近急に様子がおかしくなったって友人経由で聞いたらしいわ」

 

「セイアさん自身はどう感じたか聞いた?」

 

「ええ。セイアさん目線だと、“まるで全てが無になったように生気がない”そうよ」

 

「頻度は?」

 

「詳しくはわからないけど…部活中だけでも2、3回あるらしいから実際はもっとあるんじゃないかって」

 

その情報は最初に欲しかったなぁ。寝かせたのは大失敗だった。

…カズサが単独で相談に来たのは偶然?もしこの状況が狙ったものだったら。

 

「ありがとう。ちなみに今日の相談に友達が付いて行くみたいな話はあったの?」

 

「あったらしいけど、そこまで大事にしなくてもって断ったらしいわ」

 

「わかった。ありがとうユウカ」ピッ

 

…きっと、たまたまだろうけどカズサの友人は覚醒させるトリガーを引き当てた。だから友人から引き離すために過激なことをし始めた。

で今日は引き剥がした待望の日…。仮の話だけど、怪異の動機によっては間に合うかわからないな。

寝る前にした約束でなんとかならないか願いつつ今度はミドリに電話をかける。

 

「もしもしお姉ちゃん?」

 

「ユズってもうそっちいる?」

 

「いないけど…どうしたの?」

 

その様子だと私が送ったメッセージは見てないようだ。

 

「久々にやらかした。結構いまピンチなの」

 

その一言で色々と察してくれたようで。流石妹。

 

「…どうすれば良い?」

 

「先生経由で今すぐカズサの友人にミレニアムに来てもらうように話してくれる?」

 

「カズサさんね。わかった。その友人とユズとは後で合流すれば良い?」

 

「そうだねこっちに来る前に合流できれば良いかな。じゃあよろしくね」ピッ

 

どんなに早くても1時間はかかる。それまでなるべく進行は遅くしておかないと。

 

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