遠坂桜が『鋼の精神(メンタル)』持ちでヤバい女な模様 作:恐るべきサクラ
遠坂邸のとある一室にて、一つの魔境が完成していた。
「ふっ……我ながら、完璧な出来栄えだ」
かつての空虚さは何処へ行ったのか、言峰綺礼はとても満足そうに室内を眺めながらそう評する。
「一ヶ月前には、遠坂邸で借り受けたこの部屋がこのような変貌を遂げるなど、全く想像もしなかった……無事に完成して、我ながら感動に打ち震えている」
そのようにご機嫌な綺礼だが、その場にいるもう一人の男──遠坂時臣は、全く異なる反応を見せた。
「つ、ついに……
苦悩と絶望に満ちた時臣の声。やはり、そこには優雅さの欠けらも無い。
よもや遠坂邸にこのような現代科学の魔境が誕生するなど、一ヶ月前は想像もしていなかった。
そんな魔術の師の姿を見た綺礼は、フッと笑みを漏らしながら師に話しかける。
「時臣師がそこまで感嘆に打ち震えて下さるとは……『神と麻婆のデジタル館』を作り上げた甲斐があるというものです」
「今の私をどう見たら、感嘆に打ち震えているように見えるのだね!?」
思わず盛大に突っ込む時臣。まるで血の涙を流さんばかりだ。
そんな師に対して、綺礼は白々しい問いを口にする。
「では、何故この部屋に訪れたのですかな?見たくないのであれば、足を運ばなければ良いのでは」
「遠坂の当主として、我が家に作られた魔境を把握しておかない訳にはいかないだろう!?当主の責務を抜きにしたら、このような場所は絶対に訪れたくなかった!!」
たとえ機械音痴であろうと、当主という立場が現実からの逃避を許さなかった。
彼はとても嫌々ながら、綺礼に貸した部屋を眺める。
この部屋には、先日の家電専門店で購入した各メーカーのパソコンがずらりと並べられていた。
N●Cの『P●-9●』シリーズ、エ●ソンの『P●-●86』シリーズ、富●通の『F●-TO●NS』、シ●ープの『X6●0●0』シリーズ、A●pl●の『M●cin●osh』、世界標準の『D●S/V機(P●/A●互換機)』とバリエーション豊かだ。
そして、単に買ったままのデザインで置くような
各パソコンはそれぞれ電飾がされており、よりテクノロジー感が強調されていた。また、パソコンの筐体そのものも、色合いに手が加えられていた。
その電飾と筐体の色彩は『神と麻婆のデジタル館』に相応しいもので、とあるパソコンは神を讃える神々しい白や青、または別のパソコンは麻婆を讃える紅蓮の赤だ。
綺礼の作業に手抜きなど全く無い。異なる二系統の色彩によって、言葉に言い表せない空間を作り上げていた。
それらは、機械音痴のメンタルを破壊すべく、圧倒的なオーラを放っている。
「が────あ─────っ」
その光景に、時臣の意識が事象の彼方へ飛びそうになる。
同時に、体の全細胞が『逃げろ、にげろ、ニゲロ!』と激しく警鐘を鳴らす。
だが……彼はなんとか堪えて、使命感で観察を続ける。
圧倒的なオーラを放つパソコン達だが、よく見てみると、その配置はただ並べられた訳ではなく、二つのエリアに分かれていた。
大別すると、神を信仰するエリア、そして麻婆を讃えるエリアだ。
そのエリア分けは、綺礼にとって重要な拘りのようだ。
神妙な表情で、神の信徒は語る。
「神と麻婆は全く別の存在。両者を混同するのは、まさに許されざる大罪と言えるでしょう。そのような愚行を犯すわけにはいきませんので、神を信仰するパソコン達と麻婆を讃えるパソコン達は、明確に分けました」
「お、同じ部屋で扱うのは……なぜ問題無いと思うのかね……?」
先日の家電専門店でも似たような事を口にした時臣だが、綺礼にはスルーされた。
「外観だけでなく、コンテンツも豊富に揃えました。信仰に関する絵画や讃美歌や音楽、そして麻婆の偉大さを表現するイラストや応援歌や詩の類など、
あいにく未来と違って、高精細な画像・高音質な音源は扱うことが出来ない。動画再生などお察しのレベルだ───A●pl●の『Qu●ckt●me』等があったので、かなり低画素ならそれなりに再生出来た───。
そのため、コンテンツに関しては『パソコンの処理能力が許す限り』となっている。
「き、綺礼……君は私と同様、パソコンの使用経験は無かった筈だ……そ、それだけのコンテンツを、一体どうやって……この短期間で、作成したというのだ……?」
至極もっともな疑問を口にする時臣だが、なんとなくその答えは予想がついていた。
そして、彼の予想は外れていなかった。
「コンテンツの作成は、愛歌嬢へ外注しました。私の期待通り、短い納期で全て作成してくれました」
「やはり、愛歌嬢が関わっていたのか!?」
その自由っぷりに、『彼女は本当にうちの客人なのか!?本当に魔術師なのか!?』と頭を抱える時臣。
残念ながら、そのどちらも事実であった。現に時臣は、魔術の腕で完敗した訳だし。
そんな感じで、時臣が『神と麻婆のデジタル館』の前で悶絶していると……次の被害者がやってきた。
「う、うちの家に、何て部屋を作っているの!?綺礼!」
恐怖に満ちた叫びをあげたのは、遠坂の長女たる凛だ。
眼前に広がる光景に、7才の幼女は絶望の表情を浮かべる。
父と同じ機械音痴の彼女からすれば、目の前の光景は、我が家に魔界が出現したも同然であった。
「おや、凛。君も私が作った『神と麻婆のデジタル館』に興味があって来たのかい?」
「そんな訳ないでしょ!?こんな部屋を作るだなんて、初耳だわ!」
凛の叫びを聞いた綺礼は、キョトンとした表情を浮かべる。
「初耳?それはおかしい。私が遠坂邸に『神と麻婆のデジタル館』を作り上げるのは、先日に家電専門店で買い物をしたとき、ハッキリと宣言したのだが」
不思議そうにする綺礼の疑問に、時臣は当時の凛について説明する。
「凛は、そのとき意識を朦朧とさせていた……記憶に残らなかったのも、無理はないだろう……」
なお、デジタルに関する情報は脳が拒絶していたが、体はしっかりと動いていた。中々に器用な事をする凛であった。
時臣から説明を聞いた綺礼は、少し呆れたような表情を見せて指摘する。
「師よ。『神と麻婆のデジタル館』については、凛が意識を回復してから伝えておけば良かったのでは?ひょっとして、それをしていなかったのでしょうか」
「………私も、動揺していたんだ……」
「お父様!?」
ばつが悪そうにする時臣に、若干非難じみた悲鳴をあげる凛。彼女からしてみれば、『ちゃんと話してくれよ』という事だろう。
そんな彼女へ、綺礼は口元をニヤリとする。
「凛、君は果たして偉そうな事を言えるのかな?時臣師は苦手なデジタル機器から逃げず、果敢に立ち向かい続けたが、君は早々に屈して現実を拒絶した。自分の未熟を棚に上げるのは、感心しないな」
「───!?う、うぅぅぅっ!き、綺礼ぃ!!やっぱりあなた、とっても嫌な奴ね!」
盛大に煽られ、凛は涙目で咆哮する。7歳の幼女にとって、だいぶ覚醒して遠慮が無くなった綺礼は、もはや天敵であった。
なお、彼は時臣がデジタル機器へ『果敢に立ち向かい続けた』と述べたが、実際は単に翻弄されていただけである。
綺礼と凛のやり取りを目にした時臣は、猛烈な不安に襲われる。
(わ、私達は……これから、大丈夫なのだろうか……?まさか、綺礼に……このような恐るべき本性があったとは……)
9ヶ月後に第四次聖杯戦争を控え、こんな状況で良いのかと思ってしまう。
割と、いや、本当に切実に。
(璃正殿……あなたのご子息は、とんでもない男でした……)
なお先日に、父親の璃正にこの件を話したのだが……彼は最初に愕然とし、しばらくの間は茫然自失に陥っていた。
その後……璃正は悔いるような表情を見せ、時臣にこう漏らした。
『私は……息子の悩みに対して、しっかりと向き合えていなかったのか……』
それは、親としての至らなさを悔いる言葉だった。
璃正がどれだけ人格者であるか、分かるというものだろう。
……その高潔さは、賞賛に値する。
賞賛に値する、のだが。
時臣としてはまず、綺礼の恐るべき計画を阻止して欲しい気持ちでいっぱいだった。
第四次聖杯戦争に向けて協力してもらっている立場上、時臣としてはこれ以上要求できなかったが。
「と、とりあえず……君がこの部屋を、どのように変貌させたかは、理解した……私と凛は、これにて失礼させてもらおう………」
一刻も早くデジタルの魔境から離れたいので、時臣はそう切り出す。もちろん、それを聞いた凛は首を激しく縦に振る。
そんな機械音痴二人に、綺礼は善意百パーセントの表情(意味深)で素晴らしき提案(意味深)をする。
「もしよろしければ、コンテンツをご覧になられては?きっと時臣師と凛も、その内容に感動して病みつきになると思われますが」
「け、結構だ!私達には、魔術の研鑽があるっ!と、とにかく……私達はこれにて、失礼させてもらおう……!」
「そ、そうよ!私達には、魔術があるんだからっ!一刻も早くそちらに力を入れないと!」
めっちゃビビリながら、時臣と凛はまくし立て、その部屋を後にした。
戦略的撤退をした機械音痴二人組を眺めながら、綺礼は笑みを深める。
「やはり、私の選択は正しかった。この調子でいけば、自ずと人生の答えを見つけられるだろう。今後、『神と麻婆のデジタル館』をさらに発展させねば。
そうと決まれば、すぐに次なるアイデアを練るとしようか。そして、それを実現するためにも、愛歌嬢とはさらなる協力体制を築いていかなければな」
言峰綺礼の愉悦は、誠に健全(?)な開花を果たしていた。
ああ、良きことかな良きことかな。
……その副作用で、遠坂家から『優雅』という言葉が、どんどん駆逐されていたが。
まあ、それは……些細な事だろう。
「り、凛……大丈夫か……?」
「は、はい……なんとか……」
戦略的撤退を図り、なんとかメンタル破壊は免れた時臣と凛。疲労困憊しているが、余力はまだ残している。
改めて先程の光景を思い返したのか、凛が憤懣やるかたないといった表情で声を上げる。
「ううっ……!うちの家で、綺礼に部屋を持たせるのはともかく、あんな恐ろしい空間があるのは納得できない……!
お父様、アレ何とかならないんですか!?冬木教会の璃正神父に綺礼をしばらく引き取ってもらって、アイツを反省させるとか!」
凛は割と本気で訴えるも、時臣は沈痛な表情で──本人的にかなりマジで──首を横に振る。
「凛……残念ながら、そういう訳にはいかないのだ……我が遠坂は、今から9ヶ月後に聖杯戦争へ挑まねばならない。そのために、璃正殿とは密接な協力関係を築いている。
この大事な時期に、余計な問題を作る訳にはいかないのだ」
実に苦悩に満ちた表情でそう述べる時臣。その判断は現実的で、まだ幼い凛との思考能力の違いを見せていた。
「その璃正殿も、随分と頭を悩ませておられた……まさか綺礼にあのような性分があるなど、父親たる彼も想定外だったのだろう」
「そ、そうですか………」
当人の父親が頭を悩ませていると聞けば、凛としては同情せざるを得なかった。
「本当に理解不能だわ……なんであんな良い人の息子が、ああなるのよ……」
凛が頭を抱えて憂鬱な呟きを漏らすが、それを聞いた時臣はなんとなく思う。
(……存外それは、綺礼自身が思っているのかもしれないな……)
空虚さを抱えていたとはいえ、綺礼が主の教えに従って誠実に生きようとしてきたのは間違いない。それは、璃正の証言から明らかであった。
にも関わらず、あのようにハッチャケているのだから、本人なりに思うところがあってもおかしくはないだろう。
「こ、こうなったら……あのデジタルなんとかを、強制的に撤去するとか……!」
凛が何やら物騒な事を言い始めるが、時臣は改めて首を横に振る。それは現実的に無理だからだ。
「強制的に撤去など、以ての外だろう……今の綺礼なら、何の遠慮もなく我らを叩きのめしてくるに違いない……」
相手が師だからとか、その娘だからとか、そういった理由で手心を加えてくれるとは思えない。
そして、時臣がどれだけ全力を尽くしても、今の綺礼には勝てないだろう。我が世の春を謳歌している神の使徒は、恐るべき強敵なのだ。
「……その光景が、簡単に想像出来ます……」
凛にもその光景が想像出来たのだろう。ガックリと首を垂れる。
つまり凛のアイデアは、『完璧な作戦っすねー!
そして……二人にとって悩ましいのが、
「綺礼を完封させられる愛歌嬢は、その……どちらかといえば、
「むしろ、事態を悪化させそう……」
ドンヨリした気配を漂わせる時臣と凛。
圧倒的な強者である沙条愛歌だが、魔道の家門の長女──つまり次期当主だ──でありながら、実にゴーイングマイウェイだ。
そして、我が家にて頼みの綱である桜だが……
「桜もなんか、この件は
「………恐らく、何か考えがあるのだろう……私たちには、苦しい限りだが……」
そう……遠坂家の次女は、頑なに静観の姿勢を保っていた。
メンタル鋼で覚悟ガンギマリの桜だが、その性格は基本的に常識人だ。本来なら、綺礼のストッパーになってくれる筈の幼女であった。
だが、今回に限って彼女は
そこにどんな思惑があるのかは定かでない。『今は話すべき時ではありません』といった感じで、桜は未だ口を噤んでいるから。
ただ、どんな思惑があるにせよ、桜が動く事は無いというのは、厳然たる事実であった。
そんな桜の姿勢を思い出し、さらにドンヨリとする時臣と凛。頼れる存在が実質的にいないのは、マジで辛かった。
そもそもの話、桜は自室に『M●-D●S 6.2 + W●n●ow● 3.1』搭載のノート型『P●-9●』を導入しており、愛歌は借りてる部屋に『W●n●ow● NT 3.1』搭載のデスクトップ型ワークステーションを導入している。愛歌は自発的ではなく綺礼からの贈呈だったが。
彼女らは彼女らで、遠坂邸へのデジタル侵食を行っているのだ。まあ綺礼ほどではないが。
「まさか……この家に三人もパソコンを導入する者が現れるとは……!」
「遠坂は……魔術師の家系なのに……!」
頭を抱える、機械音痴の二人組。『どうしてこうなった!』と思わずにはいられない。
ここまでの流れを目にして、『じゃあ、葵はどうなんだ?』と疑問に思いそうだが……
残念ながら、遠坂家の奥方も頼ることは出来なかった。
何故ならば───
「~~~♪」
廊下を歩いている二人の耳に……上機嫌な女性の鼻歌が聞こえてくる。
「……………………」
「……………………」
沈痛な表情を浮かべる時臣と凛。
二人に、希望は残されていなかった。
無言で廊下を歩いていく父と娘。
程なくして、鼻歌の発生源に辿り着く。
そこにいたのは、ご機嫌な様子の葵だった。
彼女は今、
「……………………」
「……………………」
ゴウンゴウンと稼働音を鳴らす最新の洗濯機の前で、表情により沈痛さを深める時臣と凛。
そんな二人に気付き、上機嫌な葵は声をかけてくる。
「あら、あなた。それに凛。一体どうしたんですか?そんなこの世の終わりのような顔をして」
不思議そうな様子の葵。時臣と凛の様子に自分が関係しているとは、欠片も思っていなかった。
トドメを刺してきたのは貴女ですよ、などという訳にもいかず、二人はお茶を濁す。
「いや……綺礼の部屋を視察して、少し気が滅入ったのでね……」
「そ、そうなのよ、お母様……」
実際にその通りなので、嘘は全くついていない。
「そうなんですか……言峰さん、あんなに生き生きしていますからね。私も初めて見ました」
「やはり、葵もそうか………ああ、私が初めてなのだから、君がそうであるのは当然だな……」
魔術の師である時臣がそうなのだから、彼の妻たる葵が初見なのは当然だった。
我が家を侵食するテクノロジーの波にやられた時臣と凛を見て流石に不憫に思ったのか、葵は慰めの言葉を掛けてくる。
「あなた、凛。たとえ言峰さんが大量のパソコンを扱ったとしても、部屋に近づかなければ大丈夫なのでは?流石にあの人も、ご自分からあなた達の探求を邪魔したりはしないでしょうし」
「お母様……」
「君はそうは言うが、葵……」
「そんなに心配なさらずとも、あなたや凛が魔術に専念できるよう、これからも私が手助けしていきます」
柔らかい表情を浮かべ、葵は時臣の手を両手で握りしめる。
彼女の手には、深い愛情が込められていた。
「遠坂に嫁いできた時から、魔道の探求を陰ながら支えると決めて今日に至りました。その想いは、今も全く変わりありません。
だから、どうか安心してください」
「お、おおっ……葵……!」
慈愛に満ちた妻の言葉に、時臣は感動に打ち震える。
テクノロジーの波に翻弄された時臣にとって、妻の愛はまさに救いだった。
ああ、自分はなんて素晴らしい伴侶を得たのだろうか。改めてその幸福を噛み締めずにはいられない。
そして凛も、その光景に感動していた。
ああ、なんて理想的な夫婦なのか。なんて理想的な家族なのか。遠坂という家に、改めて誇りを抱かずにはいられない。
二人がそのように感動していると……
近くでパサリと音を立てて、ナニカが床に落ちた。
「あ"」
「む……?」
「あれ?なんだろう」
葵は何故か『しまった』というような声を上げ、時臣と凛は音の発生源が気になりそちらに視線を向ける。
床に落ちていたのは、商品のパンフレットだ。どうやら洗濯機の上に置かれていたようで、振動で位置がズレて落下したようだ。
そのパンフレットには……
「…………………」
「…………………………」
「…………………………………」
沈黙が、三人を包む。
ダラダラと汗を流し始める時臣と凛。心なしか、二人とも顔色が青くなっていくように見える。
そして、そのパンフレットを貰ってきたであろう葵だが……視線を逸らしながら、頬に一筋の汗を垂らしていた。
しばしの時間が過ぎ去り……口を開いたのは、葵だった。
「………私の役目は、この家の生活レベルを向上させる事です……」
ポツリといった、静かな口調の葵。
時臣と凛は反射的に、ビクッと震える。
「あなた達が魔術に専念できるよう、家の雑事を済ませるのが、この私に与えられた責務……いえ、私が成し遂げたい事……
そのために作業の効率化と質の向上は、必須と言っても過言ではありません………」
葵の言葉を聞いていくうちに、動悸が激しくなる機械音痴の二人。逃げ道が無くなっていくのを実感する。
「そう、作業の効率化と質の向上は、必須条件……!そのためには、ただタスク管理を工夫するだけでは足りない……!抜本的な改革が、必要なんです!」
話しているうちに、声に力が入ってくる葵。その声量と比例して、時臣と凛の顔色と汗の量が悪化していく。
「抜本的な改革を成し遂げるためなら、手段は選んでいられない!そのためなら、私は何だって出来るし、なんだってやるわ!
だから、だから───
我が家への
「あ、葵ぃぃぃぃぃぃ!!??」
「お、お母様ぁぁぁぁぁぁ!!??」
最先端テクノロジーを搭載した洗濯機の前で……時臣と凛の絶望に満ちた叫びが、響き渡った………
その後、『神と麻婆のデジタル館』の新アイデアを考えた綺礼は、上機嫌な様子でリビングに訪れたのだが。
そのとき彼は、ソファーで横になってうなされる、時臣と凛の姿を目にする事になる。
それを見た綺礼が、愉悦を覚えたのは……敢えて詳しく語るまでもないだろう。
機械音痴二人にトドメを刺したのは葵だった件。