遠坂桜が『鋼の精神(メンタル)』持ちでヤバい女な模様   作:恐るべきサクラ

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 <まずはお知らせ>
 時系列の情報を見直したので、過去に投稿した話の『何ヶ月』とか『いつ頃』といった情報を修正(第四次聖杯戦争が1994年11月に開催なので、それに合わせた)
 その結果、第5話の小ネタ(PCネタ)もちょっと矛盾が生じたので、内容をほんの少しだけ変更することに。

 ややこしいけれど、我ながら細かい性格なので、どうかご容赦を。
 (後で時系列の説明を投稿するかもしれない)


 そして……
 今回は、()()()()()()()でござる。
 


鋼の幼女と全能だった少女の出会い(後編)

 

「私の名前は、愛歌(まなか)……沙条(さじょう)愛歌(まなか)よ。

 そちらの当主のおじ様なら、この名前は聞いた事があるんじゃない?」

 

 少女が明かした名に、時臣は驚愕する。

 

「沙条……愛歌……!

 あの、沙条家の長女か!」

 

 遠坂家当主の反応に、その少女──沙条愛歌は、肯定の仕草を返す。

 桜の方は、少女の名はともかくその家系には聞き覚えがあったので、時臣に確認する。

 

「沙条家って……確か東京に拠点を置く魔術師の家系でしたよね?」

「ああ。その通りだ、桜……そんな沙条家に生まれた魔術の天才が、この愛歌嬢だ……」

 

 沙条家自体は、欧州のエーデルフェルトなどの名門に到底及ばないが、愛歌については別格だ。

 魔道に人生を捧げる時臣にとって、この少女の名を知らない事などあり得なかった。

 

「8歳の時点で2()()()()()()()()()()()()()()し、それ以後は()()()()()()()()()()()()()()()()()少女だ。凄まじい才能の持ち主だと聞いていたが……実際にその力と相対してみると、想像の遥か上だった……」

 

 畏怖を込めて語る時臣だが、そこには先程と異なり魔術師としての敬意が込められていた。

 父の言葉を聞いた凛が、呆気に取られる。

 

「は、8歳で……2つの系統の魔術を完璧に修得って……」

 

 魔術系統を一つ極めるため、並の魔術師は一生をかけなければならないのに。

 自分よりたった1歳上の時に、そこまでの使い手になっていただなんて……

 

 7歳になったばかりの凛にとって、それは驚愕すべき事だった。

 

 そんな長女の驚きに時臣は共感しながら、同時に納得の表情を見せる。

 

「なるほど……()()()()()ならば、この圧倒的な力量に説明がつく」

 

 相手が魔道の家系たる沙条の者である事から、納得の表情を見せる時臣。

 

「きっと、その素晴らしき才能と先祖達の積み重ねが合わさり、これほど桁外れの使い手が誕生したのだろう。

 沙条の家は、魔道の本分を忘れる事なく、文字通り血の滲むような研鑽を積み重ねてきたのだな……」

 

 感嘆の言葉を口にしながら、時臣は魔術師的な考えでそう結論付けたが……

 ダメージから回復し、ようやく起き上がった綺礼は、師が導き出した結論に納得出来ずにいた。

 

(……本当に時臣師が言う通り、沙条愛歌の力は、魔術の才と先祖達の積み重ねによって実現したものなのだろうか……?

 あれほど容易く空間転移を行使するなど、まともに考えたらあり得ない事だ。時臣師の推論で結論づけるには、些か早計なのでは……)

 

 綺礼はそのように考えていたが、凛と桜も程度に大きな差はあれ、納得感が伴わなかった。

 

(確かに、お父様の説明は筋道だっているけど……それで本当に、あんなとんでもない女になるの?なんか、無理があるような……でも、お父様がそう言っている訳だし………

 うーん…………やっぱり、どこか腑に落ちない……)

 

(あれほどの力をお父様の推論で片付けるのは、流石に無理がある。そんな魔術師の常識的な考察ではなく、もっと想像も付かないような、突然変異的な要素がある筈……)

 

 そんな3人の思索を別に、時臣は愛歌と会話を続ける。

 

「沙条のご息女と知らず、我ながらみっともない対応をしてしまった。先ほどの愛歌嬢の行為は、魔術師として趣向を凝らした挨拶のようなものだったのだろう。その事に思い至らず、我ながら慚愧の念に堪えない。誠に申し訳なかった」

「そんなに畏まらなくて大丈夫だけれど、せっかくの謝罪だものね。そのお気遣い、受け入れさせて貰うわ」

 

 両者のその言葉でもって、『先程の件はこれでお終い』と暗黙の了解が出来上がる。

 そして、時臣はこれを機会に、愛歌の過去の出来事について話を振ってみる。

 

「確か愛歌嬢は……6年少々前に、儀式の事故でしばらく昏睡状態になっていたと聞いたが……」

 

「ええ、それであっているわ。正確には6年3ヶ月前になるけど。

 儀式の事故に遭ってから、2年間は昏睡状態が続いたの。だから、生まれた年から数えると16歳なんだけど、昏睡が続いている間は()()()()()()()()()()()()()()()から、実質的な肉体年齢は14歳ね」

 

 だから今は中学2年生なのよ、と言う愛歌。

 さらりと語られた内容に、凛は内心で驚いていた。

 

(『無意識に肉体の成長を止めていた』って、そんな事まで……)

 

 つくづく出鱈目な女だと、凛は思わずにはいられなかった。

 そして桜だが、彼女は別の感想を抱く。

 

(6年3ヶ月前の事故……私が生まれる4ヶ月前に、そんな事があったんだ)

 

 今は1994年2月で、桜は来月に6歳になるから、そういう事になる──『5年11ヶ月+4ヶ月』という計算だ──。

 

 まだ自分がこの世に誕生してない段階で愛歌に苦難が訪れたと聞くと、神妙な気持ちになる桜。これほどの使い手が儀式の事故でそうなるという事は、よほど大規模なものだったのだろうか。

 

「肉体年齢は14歳だから、学校生活に支障はないわね。クラスメイトとは上手くやっている。

 まあ、過去に難癖つけて嫌がらせしてくるいじめっ子はいたけど、その際は()()()()()()()()()()()()

 

「なるほど。愛歌嬢は随分と逞しい」

 

 愛歌のどこか物騒な発言に時臣は関心するような返答をするが、桜は内心で突っ込む。

 

(いや、お父様。今の言い方はサラッと流すところじゃないですよ……相手のやらかしレベルが高い場合、かなりエグい報復をしているだろうし……社会的に抹殺するレベルとか。

 まあ、いじめっ子への報復行為自体は、私も否定しないけれど)

 

 魔術師的な価値観が強いせいか、時臣の感性はどこかズレていた。

 

 なお、愛歌の匂わせ発言に、凛は共感するよう頷いていたりする。

 姉の『そうよね。そんな奴らは思い知らせてあげなくちゃ!』という思考が伝わってくるようだ。誠に武闘派である。

 

 

 

「それで、愛歌嬢は一体、どのようなご用件で来られたのだろうか。ぜひ、その考えをお聞かせ願いたい」

 

 

 

 どこか和やかな雰囲気の会話になっているが……時臣は魔術師だ。

 そして、愛歌も魔術師である。

 

 ゆえに、時臣の彼女への警戒心は決して無くなっていない。

 魔術師がなんの目的も無く、単なる戯れで訪れたと考えるほど、彼は能天気ではないのだ。

 

 沙条愛歌は、遠坂桜が間桐臓硯を打ち倒したと知った上で、遠坂の屋敷に訪れた。

 ならば、その目的は桜である可能性が考えられる。

 

 

 

 もし、桜に対して良からぬ事を企んでいるなら。

 時臣は改めて、愛歌と戦わなければならないだろう。

 

 今度は、決死の覚悟で。

 

 

 

 すでに力の差が圧倒的である事は承知しており、勝率がゼロに近い事も承知していた。

 そして当然ながら、相手は目的を果たすまで自分達を逃してはくれないだろう。

 

(容易く空間転移を行使出来る相手から逃げるなど、この場の誰にも不可能だろう。

 ならば、覚悟を決めるしか……私に残された選択肢は無い)

 

 とある人物から『つまらない男だ』と評されるであろう時臣が、誠に()()()()()()()を決めているのは……そういう事だ。

 

 時臣がそのような感じで、密かに覚悟を固めていると───

 

「そんなに思い詰める必要はないわ。先程ちゃんと言ったでしょう?あなた達をどうこうするつもりは全くないって」

 

 困ったような表情を浮かべ、嗜めるような口調で言う愛歌。

 彼女からしてみれば、今の時臣がどんな心境であるかなど、手に取るように分かった。

 

 驚きの表情を見せる遠坂家当主に、沙条家の長女は労りの笑みを見せる。

 

「私はただ、5歳という幼さで間桐の当主を打ち倒したそちらの子──桜に()()()()()()()()()()()()()()なの。

 そこには、なんの企みもない。不穏な事は一切考えていないと断言するわ」

 

 愛歌の言葉を聞いて、やはりといった表情をする時臣と桜。もちろん、時臣の方はより警戒心を顔に出していたが。

 そして、綺礼は「なるほど……」と冷静に頷いているが、葵と凛は時臣以上に警戒心を露わにしていた。それはかなり露骨で、凛などは愛歌に対する怯えが無ければ突っかかっていただろう。

 

 この反応も予想していたので、愛歌はより周囲を納得させる言葉を口にする。

 

「ただ『不穏な事は一切考えていない』と言っても安心出来ないでしょうね。ええ、その気持ちはよくわかるわ。私だって、逆の立場なら警戒心を捨てられなかったでしょうから。

 なので、私からはこう言わせて貰うわ。

 

 

 ()()()()()()()()、遠坂の者達には絶対に敵対しないと」

 

 

 その言葉は。

 とても、愛歌らしくない言い方であり。

 

 そして……時臣がこれ以上ないほど、説得力を感じさせる言い方であった。

 

 

「……『沙条の家に誓って』とまで言われれば、信用しない訳にはいかないだろう」

 

 家門の名誉を持ち出された以上、相手の意思を無下にする訳にはいかない。

 それが、当主としての彼の判断だった。

 

 時臣の判断に、桜は異論を唱えなかった。

 

(まあ……完全にとはいかなくても、ある程度なら信用して良さそう)

 

 沙条の家云々を抜きにしても、愛歌から虚言の気配など全く感じられないからだ。

 本当に邪悪な存在を知っている分、目の前の少女がそうではない事を、桜は理解出来た。

 

「話を交える事ぐらいなら問題ないでしょう。ずっと観察させてもらいましたが、一度も悪気は感じられなかったですし」

 

 そう桜は語るが、葵と凜は心配を完全にはぬぐい切れなかった。なので、懸念の声をあげる。

 

「あなた、桜……本当に大丈夫なの?」

「そ、そうよ。なんか怪しい感じの女だし……」

 

 特に凜の方は、愛歌に対して警戒心が強い。先ほど時臣と綺礼を圧倒した光景が、地味にトラウマになっているのだろう。

 

 もっとも、そんな凜の警戒心は愛歌にとって可愛らしいものだった。軽く冗談じみた口調で言葉を返す。

 

「む?失礼ね。こう見えて、淑女の嗜みを忘れないよう気を遣っているわ。常識だって、かなり大切にしているし」

「こ、これまでの行動のどこに、淑女の嗜みや常識があったって言うのよ……!」

 

 打てば響くような反応を返す凜。

 生憎ここにいるのは未だ()()()()でないため、口で対抗する事さえ出来ない。圧倒的な才を持つ少女に翻弄されるばかりであった。

 

 姉が困っていたので、桜はさり気なく助け船を出す。

 

「わかりました、愛歌さんのお相手をさせていただきます。まだ齢5でしかない幼女ですが……ご期待に応えられれば幸いです」

 

 鋼の幼女の言葉を聞いて……()()()()()()()()少女は、花が咲くような笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ようやく会えた。この時を、ずっと楽しみにしていたわ)

 

 もし別の世界の沙条愛歌であれば、ここで狂喜乱舞して羽目を外していたかもしれない。

 だが、この場にいる彼女は、あちらと違ってそれなりに常識を弁えている。だから、みっともない有様を晒すつもりはなかった。

 

(5年前の儀式の事故……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思い付いて試したら、接続が暴走して昏睡状態に陥ってしまったけど……

 その副作用で、こんな事が起きるだなんてね)

 

 目の前の5歳児とは思えない幼女──遠坂桜。

 その在り方を見て、愛歌は感嘆せずにはいられない。

 

(根源との()()()()()。接続が暴走して不安定化してしまった事により、ちょうど東京圏内に訪れていた遠坂夫婦───厳密には遠坂葵の方のお腹の中にいた桜に影響し、根源と一時的に繋がった。

 あくまで混線でしかなかったから、すぐにその繋がりは消えたけれど……この子が受け取った()()()()()()は、無くならない。

 

 その結果が、私の目の前にある)

 

 ただ強力な力を宿しただけなら、愛歌は桜に対してほとんど興味を持つ事はなかっただろう。与えられた力の上に胡坐をかくような者に、惹かれる筈がない。

 それは、単なる自身の劣化コピーだから。

 

 けれど……桜の持つ可能性は、単なる潜在能力ではない。

 その、心の在り方だ。

 

(もちろん、年齢離れした知性には感心させられるけど……

 何よりも引き付けられるのが、この子の目──揺るがない強さを宿した目ね)

 

 きっとこの子は、どんな困難が舞い降りても前を真っすぐ見据えて歩むだろう。そう思わせてくれる目であった。

 これからの時間を共に過ごしていけたら、人生がもっと色づいて見えるのは間違いなかった。

 

(うん。そういう訳だから、色々と成長するためのサポートをしてあげたくなってしまったの)

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()が故に、世界が色づいて見えるようになった沙条愛歌。

 その上で、彼女は大きな可能性を宿した女の子とこうして出会う事が出来た。

 

(この子に影響を与えた責任もあるけど……何より、()()()()()()()()()()()()()()()と思っている。

 せっかく出来たこの繋がりを、無下にはしたくないわ)

 

 

 ……並行世界の自分(どこぞのバカ女)のような醜態を晒すつもりはない、と思っていた愛歌だけれど。

 テンションが上がっていたのは、間違いなかった。

 

 

(……うん。サイコパスになったりしなければ、何も問題ないわよね。

 ええ、そうよ。良識の範囲内で、良識の範囲内で!

 

 少しは、()()()()()()()()()()()()!)

 

 

 そう……

 たとえ良識を備えていようと。

 

 彼女は、沙条愛歌だった。

 

 

 

 

 

「大丈夫。きっと、いや必ず仲良くできるわ。

 なにせ、あなたは───

 

 

 

 

 

 私と人生を共にする、()()()()()()()()()なのだから!!」

 

「───ふぁ!?」

 

 

 

 

 

 予想だにしていなかった、愛歌のぶっ飛んだ宣言に。

 桜は思わず、変な声をあげてしまう。

 

 その光景を見た他の者達は、皆ポカンとした顔になっていた………あの綺礼ですら。

 

 

 

 

 

 

 遠坂桜と、沙条愛歌。

 

 後に魔術社会で恐れられる最強タッグの、記念すべき出会いであった。

 

 

 

 




 うん、そうなんだ。
 当作品の愛歌お姉ちゃん、敵じゃなくて味方なんだわ。


 根源との接続が無くなって弱体化したけれど、魔術の習得度や肉体の耐久性は維持しているので、相変わらずサーヴァントを圧倒できる実力を有している。
 実は昏睡から目覚めた後、根源と繋がっていた名残を活用して()()()()()()()ので、今でも空間転移を普通に連発できる。

 精神面では真っ当な感性を持っているが、その頭の良さは健在。
 なので、謀略も普通に出来るため、敵からしてみれば厄介極まりない。



 ……第四次聖杯戦争におけるケリィの明日は、果たして何処に()



 
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