ドラゴンボールZ ~未来の戦士の戦いの記録~ 作:アズマオウ
未来編は好きですからね。書いちゃいました。更新すっげえ不定期になると思いますが、よろしくお願いします。
語りだされる記録
「ふう……」
エイジ786年。平和が訪れて2年後。
一人の青年が騒がしい町中のベンチで呟いた。ポケットから地図を探って、現在位置を確かめる。このあたりにある高校へといかねばならない。
「やっぱこの世界は、平和なんだな……」
青年は、町を見ながら呟いた。高層ビルや住宅、駅などもたくさんある。以前は廃墟だったのに。そう思うと、何故か懐かしく思えてきた。地獄のような日々だったのにも関わらず。
「今は……9時50分か。そろそろいこう」
青年は腕時計を見て、歩き始めた。今日、会いたいという人がいるらしい。さすがに超スピードで走るわけにはいかないので、ゆっくり歩くことにする。
この町、オレンジシティはすごく賑わっている。アイスクリーム屋にコンビニ、スーパー、ゲームセンター、住宅がたくさんあり、人が満面の笑みを浮かべて道路を歩いている。青年はその様子をちらりと横目に映し、目的の高校へと歩き始めた。
目的の高校、オレンジスターハイスクールが見えた。校舎の壁時計は10時5分前を指している。少し急ぎ足で校門を潜り、職員室の窓口へといった。
「あの、すいません」
「はい?」
女性の事務員さんが、受け答えした。青年はにこやかに訪ねる。
「ここに今日面会希望をされた先生はいらっしゃいますか?」
今日会いたいといった先生の名前はしらない。
「ええ、いますよ。職員室のすぐそばにある会議室でお待ちしておりますよ」
「そうですか、ありがとうございます」
青年はペコリとお辞儀をして、スリッパを用意して校舎へと上がる。途中、私服姿の生徒が青年とすれ違う。
「あれ? あの人どっかで見かけなかった?」
「俺もなんか見覚えあるんだよな……テレビとかで」
(面倒だなあ……)
青年は、少し下を向いて、急ぎ足で会議室へと向かう。自分で言うのもなんだが、かなり有名になってしまった。ある理由で。
どうにか青年の素性をばらさずに、会議室につくことができた。重々しいドアを控えめなノックで叩く。
「どうぞ」
柔らかく、しかししっかりとした女性の声が中から響く。まだ若いのだろう。
「失礼します」
青年は、ドアノブを捻って開けて、中へとはいる。長い楕円状のテーブルが置かれており、そこに一人の女性が座っていた。青年は、軽く礼をして、その女性へと歩み寄る。
「本日はどうもお越しくださいました。急なお願いに答えてくださって」
女性は歩み寄った青年に声をかけて握手をした。
「いえいえ、世の中平和ですから。声をかけてくれて嬉しいです」
「ありがとうございます。今お茶を用意しますので、ちょっと待っててください」
女性は席から離れて近くにある給湯室へと向かった。青年は、ふうと一息ついて外の景色を見る。特に何も感じず、ポケットにある携帯端末を取り出した。スケジュールを見るためである。
「今から彼女と話して、その後は暇だな……悟飯さんの墓参りでもいこうかな」
そう小声で呟いて、椅子に深く座る。
「お待たせしました」
するとすぐに女性がお盆にお茶をのせて帰ってきた。静かに置かれた暖かいお茶の、香ばしい臭いが鼻に入り、会釈する。
「ではいただきます」
青年はお茶を手にとってすする。とても美味しかった。お茶が当たり前のように飲めなかった時代があったことを思うと、平和になったんだなと改めて思わされる。
「美味しいです、このお茶」
「それはよかったです。あの、そろそろ本題にはいっても……」
女性が控えめな口調で青年に尋ねた。青年はにこやかに了承する。
「いいですよ。けど、今日はどんなご用件なんですか?」
「それは……昔の悟飯君のことです。孫悟飯君の」
その瞬間、青年は体を震わせる。久しぶりにその名前を聞いた。青年にとっては、かけがえのない人物。常に一緒にいてくれて、常に戦ってくれた。友達であり、師匠であり、目標でもあった。今でも青年は、彼のことを尊敬している。
「悟飯さんのことですか。俺もあまり知らないんですけど……知ってることなら教えますよ」
「ありがとうございます」
「で、あなたと悟飯さんの関係は?」
「……元、クラスメートでした。とはいっても、私しかクラスメートは生き残ってませんけど」
「……そうだったんですか」
「ええ。けど彼のこと全然知らなくて……だから今日、あなたを呼んだんです。悟飯さんと共に戦ったあなたなら何か知ってるだろうって」
「確かに戦いましたが、俺なんてあの人の足手まといでした」
青年は自虐的なことを呟く。実際足手まといになってしまった。青年のせいで、悟飯は……。
「そんなことないです。あなたが……トランクスさんが人造人間を倒したんですよ!」
つい大きな声を出してしまった女性は、はっと我に帰って謝った。
「すみません」
「いいんです。けど俺はそこまで崇められるような人じゃない。悟飯さんさえ生きていれば、もっと早く終わっていました」
「そうかもしれませんが……もう終わったんです。いいじゃないですか」
「……そういうことにしておきます。おっと、そういえばあなたの名前をまだ聞いていませんでした」
青年ーートランクスは、女性にいった。女性の名前を聞かずにここまで来たのだった。
「申し遅れました。ビーデルと申します」
「ビーデルさんですか……あの世界チャンピオン、ミスターサタンの娘さんですか?」
「ええ。とはいっても、他界しましたけどね」
「存じています」
「恐らく、今も元気にしてますよ」
しばらく沈黙が続いた。二人とも、あの時代の惨状を思い浮かべているのだ。そして、ビーデルは涙を少し垂らした。
「す、すいません……いつまでたっても立ち直れなくて……」
「いいんですよ。泣けるということは、まだその人があなたの中で生きているんだから」
「ですよね……分かりました。泣くのはやめにします。悟飯君のことについて聞きたいですから。学校外での、悟飯君のこと」
「そうですか。分かりました……」
「あと、お父さんのことも」
「その時は俺はまだ生まれてなかったので、母さんか伝えられた話になっちゃいますけど、いいですか?」
「構いませんよ」
「それではーー」
これは、孫悟空が心臓病で死に、仲間たちが人造人間17号と18号に殺された中、たった一人残された戦士トランクスが二人を倒し、すべてを終わらせて、世界を救った英雄となってから2年後の話である。
いまから英雄が語りだすのは、ドラゴンボールの本来の歴史の話ではない。トランクスが来なかった、最悪な未来の話である。
次回からは、最悪な未来の話になっていきます。原作、アニメ準拠ですので。
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