ようこそ雪のいる教室へ   作:きーちゃん

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12話

「これから対策会議を始めるね」

 

 一之瀬の進行からBクラスでは会議が始まった。

 朝に星之宮から伝えられた衝撃の事実は予想だにしなかったことのようで最初はクラス全員が混乱していた。だがそんな中でもクラスのリーダー的存在の一之瀬は動じることなく今後の対策会議を提案し、放課後に開催にまでこぎつけた。

 

「まずはクラスポイントだね。これ以上減らさないためにみんなには真面目に授業を受けてほしいんだけど、いいかな?」

 

 これには全員が頷いている。この中の半数近くは些細なことでも減らしたからこそ挽回の意味も込めて力強く頷いている姿が見受けられる。

 

「ありがとう。じゃあcp(クラスポイント)を増やす手段なんだけど。星之宮先生は授業態度を改善したら減らなくなるけど増えもしないって言ってたよね。これは私の個人的な考えなんだけど、次の中間テストでcpが増えると思うんだ」

 

 鋭い指摘だ。学校側はひとつしかないAクラスの座を競わせるようとしているからこの段階でクラスが確定することはまずない。そうなるとcpをどこかで増やせると考えられる。3週間後の中間テストは俺たちの最初の試練だ。cpが変動するのは当たりと見ていいだろう。

 

「私からも気になることがある。以前水泳の授業で先生が『夏までに泳げるようにしてやる』と言っていた。そのことから夏に水泳大会なり修学旅行みたいなのがあると予想できるかな」

「水泳、なるほど! 確かにそんなこと言ってたな」

 

 俺が意見したら隣の神崎が同調するように言った。他にもそういえばと言った感じの生徒が何人かいる。

 

「cpを増やす機会は何回かあると思うからその可能性は十分あり得るね。ありがとう雪ちゃん。他に何か意見ある子はいるかな?」

「はいはい! 俺あるぜ!」

 

 柴田が手をブンブンさせて声高々に言った。

 

「部活だ! 大会とかで結果を残せばpr(プライベートポイント)が貰えるって先輩が言ってた!」

 

 なるほど部活か。確かにわかりやすいな。ただこれは一朝一夕では無理だから柴田のような運動することがメインの生徒じゃないと無理だろうな。ポイント目当てで入部しても長続きしないことは目に見えている。

 

「prと言えば私散財しないか不安だな。先月結構使っちゃったし。ポイントは当たり前に貰えるものだと思ってたから」

「私もー」

 

 近くで安藤と二宮が話しているのが聞こえてきた。

 確かに卒業後ポイントは残らずここだけの代物だから使いたくなる気持ちはあるだろう。だが無意味に消費するのは危険だ。

 

「ポイントは可能な限り残しといたほうがいいよ」

「え?」

「前に星之宮先生にある制度を利用したいと言ったら私一人じゃ払えないような莫大なポイントが要求されたから。私の予想ではprって結構重要なものだと思う。それこそ退学措置を取り消せるとかね」

 

 ある制度というのはクラス移動のことだ。ただそれを正直に伝えても不信感を与えるから今は伏せておく。

 

「赤点を取るだけで即退学なのってそういうこと……?」

 

 一之瀬の呟きがクラス内に浸透していく。全員prの重要さに気付いたようだ。

 

「ひとつ提案があるのですが……」

 

 浜口という男子生徒が控えめに手を挙げて言った。

 

「椿さんの話を聞いて僕もprは残すべきだと感じました。しかし沢山あったら使ってしまうかもしれないというのは最もな懸念です。なので誰かにみんなのprを預けるというのはどうでしょうか」

「……それって銀行みたいな感じかな?」

「はい。どうしても必要になったら本来は自分のポイントなので返してもらうことはできる。けれど日常生活で散財することは避けられるかもしれません」

 

 中々いい意見だな。周囲の反応も好感触だ。

 

「確かにいいかもしれないけど、誰に預けるの?」

 

 当然そのリスクは出てくる。信頼に値すると思った人が実は預かったprを独り占めしたら目も当てられない。

 

「それは……」

 

 浜口もそれに関しては言い淀んだ。彼自身誰が信用できるのか測りかねているのだろう。

 

「私は帆波ちゃんになら預けられるよ」

 

 白波が自信満々にそう言った。確かに彼女はいつも一之瀬にべったりで付き合いはまだひと月だが信用しているのだろう。時々視線が怪しいことがあるが。

 そんな彼女に続くように生徒たちが頷いた。

 

「わ、私がそんな大役担っていいの……?」

 

 珍しく不安そうにする一之瀬はどこか危うく見えた。人のポイントを預かることが怖いのだろうか。

 不安がる一之瀬に、決めかねていた浜口など一部の生徒が本当に任せていいのだろうかといった雰囲気になった。だからここで助け船を出すことにした。

 

「預かる生徒を複数に増やすのも手だと思うよ」

「確かに……」

 

 盲点だったと言わんばかりに感嘆の声が上がる。

 金庫番を複数にすればポイントが分散するからもしもの時のダメージを減らすことができる。ただこれはこれで大量のポイントを得る生徒が増えるからリスクもあるが。それでも預かる側の負担も軽減されるだろう。

 

「なら私は雪ちゃんに預けたいな」

 

 俺に懐いてる網倉がいの一番に声を上げた。他の決めかねていた生徒も何故か俺にならといった様子だ。時々意見を言っていたから信用されているのか?

 

「みんながいいなら私も預かる側になるよ。一之瀬さんも大丈夫かな?」

「う、うん……」

 

 どこか挙動不審気味の一之瀬には不安が残るが金庫番は決まった。

 

 

 




5月1日時点生徒データベース

基本情報
名前  :椿(つばき) (ゆき)
クラス :1年B組
学籍番号:S01T004621
部活動 :無所属
誕生日 :3月29日

評価
学力  :A+
知性  :A
判断力 :A
身体能力:A
協調性 :B
面接官のコメント:
今までに類を見ないほどに優秀な生徒。筆記試験も今年度唯一の全問正解者。文句なしにAクラスの逸材だが別途資料から精神的に不安が見られることや、殆ど学校に通っていないことを懸念しBクラス配属とする。


【挿絵表示】


担当教員からの評価:
とても優秀で、私たち教員に敬意は払いつつも芯のある意見をぶつけてくれる子です。クラスメイトからの信頼は厚く、これからのクラスを引っ張っていける人材だと思います。けれど本人の上昇志向が薄いのが個人的に勿体ないでーす。



※学籍番号は一之瀬さんと神崎くんの間に入る形にしました。被っていたらすみません。
※誕生日はこの作品の初掲載日時を参照しました。
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