ようこそ雪のいる教室へ 作:きーちゃん
19話
7月を迎えた朝。
メールアプリの通知音に起こされた俺はスマホを見て怪訝な顔をした。
「何があった?」
通知が一夜にして数十を超えていた。まるで5月1日のようだ。
内容を確認してみるとどうやら
試しに俺もポイント履歴を見たが支給された痕跡はなかった。
「とんだハプニングだな。これは学校側の試練なのかそれとも……」
俺の脳裏には何故かロン毛男が邪悪な笑みをしている姿が思い浮かんでいた。
「暴力事件~~?」
朝のHRで星之宮から共有された情報ではDクラスとCクラスの間で暴力沙汰が起こったらしい。訴えはCクラスから出され、殴った生徒はDクラスの須藤とのことだ。
俺は呆れて言葉も出なかった。あんだけクラスメイトが助けるために走ってくれたのにその努力が水の泡と化すことになるぞ。
「それでね? 須藤くんが現場になった特別棟で目撃者らしき影を見たらしいのよ。誰か心当たりない?」
しかし当然そんな都合のよい目撃者は現れなかった。
ただCクラスが関わっていることから須藤が嵌められたのではないかと思う生徒もいた。Bクラスは以前に何度かCクラスに絡まれたからな。
真相は少し気になるがどうなることか。
*
「こんにちは~!」
放課後になり帰宅しようかと腰を上げかけた時に、教室の入り口から元気な声が聞こえてきた。その注目を集める行為をした生徒はDクラスの櫛田だ。
「桔梗ちゃん? どうしたの?」
「あっ唯ちゃんごめんね。ちょっと今朝の件で聞き込みしたいなぁって」
二宮がすぐに対応しに行ってくれた。櫛田は俺に最初「この学校でたくさん友達を作りたい」と言って聞かせてくれたが、有言実行しているようでこのクラスでも彼女と仲の良い生徒は男女問わず何人もいる。
そんな櫛田が今回ここに来た用はやはり暴力事件についてのようだ。
「折角来てくれたけどうちに目撃者はいないんだ。ごめんね」
「ううん! それが知れただけでも十分だよ」
「明日にでもみんなに桔梗ちゃんが情報収集してたって伝えとくよ。なにか良い情報があればいいね」
「うん。唯ちゃんありがとう」
そんな二人の会話を尻目に俺は教室を出て行く。廊下には綾小路がいたが今は俺も用事があったから軽く手を振って会釈するに留めた。
「白波さんが私に話って珍しいね」
「う、うん。突然ごめんね」
用事というのはクラスメイトの白波からの呼び出しだ。
場所は彼女の部屋。それなら一緒に行こうよと言ったが俺と一緒にいる所を見られるのは避けたいらしく、少しタイミングを遅らせてから部屋に赴いた。
彼女とはクラスの女子を介して遊んだことはあるが二人っきりで話すことはなかったから今回の呼び出しは少し驚いた。
「……これを見てほしくて。他の人に言わないでね」
「? うん」
少しピンクがかった紙を差し出されて内容を確認する。
入学してから気になっていたこと、最近想いに気付いたこと。等々が可愛らしい文字で綴られていた。
こういうのを見たことがない俺でもわかった。ラブレターだ。
「相手は一之瀬さん?」
「……やっぱり気付くよね」
「そうだね。白波さんは一之瀬さんのことよく見てたから。……それでこれをどうしたいの?」
「軽蔑しないの……?」
不安そうに俺を見る彼女はとても緊張していて、今回相談に踏み切るのも相当の勇気を振り絞ったのだろうことが手に取るように分かった。
「人の想いはそれぞれだからね。そこに性別は重要じゃないと私は思ってるよ」
「っ、ありがと……」
恋愛をしたことがないのにどの口が言ってんだと内心でツッコミつつ。俺の言葉に安堵したのか白波は泣いてしまった。白波自身この気持ちをどうしたらいいのかと迷っていたのが伝わってくる。
「……椿さんはクラスでしっかりしてるし、秘密にしてくれそうだって思って。だから今回相談したの」
俺に話を持ち掛けた理由をつらつらと語ってくれた。
あまり深く関わりはないが、これだけ信頼してくれていたのは素直に嬉しいな。
「私、迷いがなくなったよ。一之瀬さんに告白する」
「応援してる。また困りごとがあったらいつでも相談に乗るよ」
「ありがとう。ねぇ、雪ちゃんって呼んでもいいかな」
「うん、いいよ。私も千尋って言うよ」
そう言うと少し顔を赤くした千尋ははにかんだ。
あれ……一之瀬×白波じゃなくて雪×白波になってる?