ようこそ雪のいる教室へ   作:きーちゃん

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2話

「お姉ちゃん、本当に大丈夫?」

「うん。大丈夫だから、心配しないで」

 

 心配そうに瞳を揺らして問いかけてくるのは今世の妹、桜子だ。

 今日はとうとう高校入学の日。入学したら卒業まではあっちで暮らす関係で家族とは3年間会えなくなる。

 

「来年になったら私も高育に通うから」

「あはは。まぁ一緒になれたら、嬉しいね」

 

 とは言っても桜子はこういって憚らず数年の間でも俺と離れるのが我慢ならないらしい。可愛いものだと俺は微笑ましくなる。だからこそ中身が彼女の求める椿雪じゃなくこんな俺なのが心底申し訳なくもなる。

 

「……あの日のことはずっと覚えてるから。私は綾小路清隆を許してないから」

「まだ言ってるの?」

 

 俺がこの子の身体に憑依する数日前に雪と一緒に学んでいたWR(ホワイトルーム)生の綾小路清隆が訪ねてきた。

 それ以前は雪がずっとWRに残された彼を心配していたから、父親が何とか引き合わせることに成功した。彼を求める雪だったがしかし彼は雪のことを欠片も思ってなかった。冷たくあしらわれた雪は大きなショック受けて呆然自失としていた。それから暫くして俺が憑依したわけだからその経験で椿雪という少女は一度死んだと俺は思っている。

 ちなみに俺個人は綾小路清隆を何とも思ってない。冷たい奴だとは感じるがそれはこれまでの育ちの環境のせい。彼の今までの境遇に同情こそすれど嫌う程じゃなかった。

 

 そんな俺とは違い桜子は彼にとてつもない憎しみを持ったらしい。まぁ血の繋がった姉を慰めると思った人が逆に追い打ちかけたからそう思っても仕方ないが。今では部屋の中に綾小路清隆と書かれた札を人形に貼って日夜釘打ちしていて怖い。一度夜中に釘打ちしている姿を目撃してしまったものだからトラウマだ。

 

「雪、そろそろ時間だぞ」

「あ、うん」

 

 父親の呼び出しがかかった。どうやら出発の時間のようだ。

 

「じゃあ桜子、行ってくるね」

「……いってらっしゃい」

 

 最後に別れのハグをした。

 

 

 

 

 家を出た俺は近くのバス停まで向かった。心配性の親は車で直接学校まで送る気満々だったが断った。俺としてはこの世界の街並みを少し感じたかったからだ。なにせ学校に踏み入れたら暫くは出られないからな。そんな感じのことを言ったら渋々といった様子だったが了承してくれた。

 

「これといっておかしなとこはないかな……」

 

 歩きながら周囲を観察してみるが現代日本そのものだ。WRなんていう超人作成施設があるからアニメに出る怪人とかがいるのかと少し疑っていたが影も形もない。てっきりあそこは異星人から日本を守るための最終防衛施設と勘繰っていたが流石にそんなことないか?

 馬鹿なことを考えているとバス停に着いてしまった。

 いったい俺がこの世界に迷い込んだ理由は何なんだろうな。

 

 




この世界線だと綾小路を退学させる極秘試験は椿桜子が一番乗り気だと思う。妹パワーで宝泉やら5期WR生を蹴散らして「私こそが綾小路清隆を退学させるッ!」って暴れまわって龍園におもしれー女認定される。多分。
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