ようこそ雪のいる教室へ   作:きーちゃん

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20話

「雪ちゃん」

 

授業が終わり放課後の時間をどうしようか考えていると一之瀬に話しかけられた。

 

「どうしたの」

「ちょっと今回の事件について調べたいと思って。桔梗ちゃんの助けになりたいし」

 

 櫛田が事件について情報を探しているのは二宮からクラスに伝えられた。人の良い一之瀬は他クラスといえど友人のためにと思っているのだろう。

 

「私も一緒に行くよ。それに、相談があるんでしょ?」

「う、うん。ありがと……」

 

 白波が一之瀬にラブレターを渡す所は本人に見届けてほしいと言われ、しっかり見届けた。勿論一之瀬にバレないようにだ。

 それ以来一之瀬は悩んだ素振りを見せるようになり、今日は朝から俺に視線を何度も送ってきていた。告白の日は明日の放課後。タイムリミットは迫っており一之瀬も決断の時が近づいていた。

 

 

 

 

「いやーここ暑いね」

「そうだね」

 

 事件現場になった特別棟に来たがそれはもう暑い。この棟だけエアコンも設置されてなく、窓を開けても涼しい風どころか熱風が押し寄せてきて逆効果だった。

 

「あっつ……」

 

 汗でシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。パタパタと襟元を広げて空気を取り込んで誤魔化すがその場しのぎにしかならなかった。

 

「…………」

「どうした一之瀬さん? 大丈夫?」

「ニャッ! 雪ちゃん無防備過ぎるよ!」

 

 ぽーっと俺に視線が固定されて微動だにしないから近づいて肩を揺すってみると一之瀬は突然慌て出した。

 

「あ、そっか」

「もう気付くの遅いよ~……今の雪ちゃんえっち過ぎるよ……」

 

 つい男の時の感覚でやってしまったが今は女の身体だからまずいな。今は一之瀬しかいないからよかったが今後気を付けないとな。

 

 暫く特別棟を探ってみたが何も情報は得られず、戻ろうかと話になった時に男女の声が聞こえてきた。

 

「あれ、誰かいる?」

「そうだね」

 

 その声には聞き覚えがあった。声のする方に二人で向かうと俺の思い浮かんだ男女がいた。

 

「ねえ君たち、そこでなにしてるの?」

 

 一之瀬の問いかけに振り返った二人は綾小路と堀北だ。今回の事件でもやはりこの二人が動いているようだった。

 

「椿さんと……誰かしら」

「雪ちゃんの知り合い?」

「そうだね。何度か話したことあるよ。二人はDクラスの堀北さんと綾小路くん」

「そっか。私はBクラスの一之瀬帆波。よろしくね」

 

 和やかに自己紹介する一之瀬に綾小路は好意的だが堀北はあまりいい顔をしていない。部外者は邪魔だと言わんばかりだ。

 

「オレたちはここで暴力事件の調査をしていた」

「ちょっと……」

「少し考えればわかることだろ。それにこの時期にここにいるってことは椿たちも事件のことを知りたがってるってことだ」

「にゃはは、正解」

 

 綾小路の口振りから考えるに俺たちを今回の件に巻き込もうとしているな。少なくともBクラスを敵には回さないように立ち回ろうとしている。

 

「個人的な思いとしてはDクラスの助けになりたいんだ。だから詳細を聞かせてくれない? 私たち暴行があったことしか知らないんだ」

「信用ならないわ。何故関係のないBクラスが首を突っ込みたがるのかしら。何か裏があるんじゃない?」

 

 やはり彼女は警戒心が強いようで他クラスの介入を認めない意思が強い。まぁこの学校にいたら当然だ。寧ろ俺たちのスタンスがおかしいのだ。

 

「私たちがCクラスと共謀してDクラスを貶めようって? ないない」

「どうしてそんな強気でいられるのかしら」

「だってBクラスも前にCクラスから嫌がらせ行為は散々されたからね。だから今回はDクラスと協力して彼等に一泡吹かせたいなって」

 

 今言ったこと以外に一之瀬の思惑としては、間近に迫るCクラスを引き離したいといった考えもあるだろう。現状のDクラスは100にも満たないcp(クラスポイント)しか保有してないから、そこが追い上げた所で大したダメージにならない。

 そんな一之瀬の考えが俺からしたら透けて見えるがまぁDクラスは内包する戦力が学年随一だ。綾小路然り高円寺然り。彼等はあまりクラス競争に積極的でないから現状助かっているが、その気になったらどうなることやら。

 綾小路を見てみると、相変わらず何を考えているのかわからない顔をしながら事件に詳細を語っていた。

 

「にゃるほどね。須藤くんが呼び出されて先に殴り掛かられたと。うん、私たちも似たようなことやられたよ。あの時は大事にならなかったけど」

「……その時はどうやって対処したの?」

「私は居合わせなかったからあんまり知らないんだけど雪ちゃんが対応してたね。あの時どうしてたっけ?」

「……さぁね」

 

 俺は口を閉じた。あまり何でも教えて今後も頼られ続けても面白くないし他クラスのことだが彼女の成長に繋がらない。俺の考えを理解しているのか綾小路もひっそりと俺に頷いていた。綾小路が彼女に帯同しているのはやはりそれが狙いなのだろう。

 

「気が変わった。()()この件に口出ししない。先に持ち掛けておいて申し訳ないけどね」

「ちょちょっと雪ちゃん?」

「本当に身勝手ね」

「都合の良い時だけヒントを貰おうとする堀北さんほどじゃないよ」

 

 さっきまで邪険そうにしてたのに答えがわかりそうになったらこっちに聞いてくることを指摘したら彼女は押し黙った。

 俺は一之瀬を置いて先に帰ることにした。

 帰ってから一之瀬の相談を聞いてないことを思い出したが、まぁいいだろう。

 

 

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