ようこそ雪のいる教室へ   作:きーちゃん

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27話

「なぁ椿」

「ん?」

「さっき言ってた、船の上から見えたのってどんな感じなんだ?」

 

 俺たち三人で森に入りスポットに向かっていると柴田が聞いてきた。その横では渡辺も気になるといった顔をしている。

 

「洞窟だよ。スポットの場所はわからないけどそれっぽくない?」

「確かにそうだな。しかもさ、洞窟で過ごせたら雨とか怖くないよな!」

「うん」

 

 そうなのだ。洞窟の利点としてはそれが挙げられる。島にはスマホを持ち込めなかったから降りる前に天気を確認したら後半辺りに雨が降る予報になっていた。また、にわか雨などを考えれば天候の懸念は尽きない。

 

「それに付近に塔や小屋があったんだ。それもスポットと仮して、占有できたらボーナスポイントを取れる」

「上手くやれば一日に三回占有できてそれが三つで9ポイントだから……最終日を除いても54ポイントか? やば!」

 

 勿論リーダーを隠すために慎重にやらないといけないが、理想を突き詰めればそれだけいける可能性はある。スポットを占有するだけでリーダー当てと同等の価値があるといえば非常に魅力的だろう。

 それでいて普通に暮らす分には天候に左右されないことも加味して最高のスポットといえた。

 

「……すげえな」

 

 黙って聞いていた渡辺が静かに呟いた。

 

「ん?」

「一之瀬はみんなをまとめてくれるしさ、椿はいつも良い案とか出してくれるしさ。今回だって俺なんてそんな注意深く見てなくて、ただただ船からの景色凄いなって思ってたのに」

 

 渡辺は自分にできないことをやる俺や一之瀬に感心しているようだ。それで、心のどこかで自分がいなくてもいいんじゃないかと疑問に思っている風にも感じた。

 

「人には得意不得意、向き不向きがあるから」

「え?」

「渡辺くんは普段クラスで柴田くんたち明るくわいわいやってるよね。きみたちがいるからクラスは雰囲気良いし私は過ごしやすいよ。私はそんな性格じゃないから誰かを明るくとか雰囲気良くとかはできない」

 

 こればかりは雪のハイスペックな身体でもできない。中身が俺だからだ。

 この学校に入ってから一之瀬や麻子といった女子たちからフレンドリーに接してもらったことで前世では考えられないほど喋っているし交友関係は広がった。そしてクラスの全体会議とかでも意見を発せられるようになったのはクラスの雰囲気にもよるものだ。

 笑顔は絶えないし見ていてバカ騒ぎしてるなぁと微笑ましくなるクラス模様は純粋に楽しい。学校でもプライベートでも結構友達同士集まるからたまに一人になりたいこともあるが、総じて過ごしやすいクラスだ。

 その雰囲気づくりに渡辺は大きく貢献していると俺は考えてる。

 

 そんな感じのことを伝えたら渡辺は顔を覆ってうずくまった。

 

「渡辺くん?」

「いや、そっとしておいてあげてくれ。今あいつは自分自身と戦ってるから」

 

 意味不明なことを言う柴田に思う所はあったが助言通りにした。

 暫くすると渡辺は顔を上げたが赤くなっていて少し心配になる。

 

「大丈夫?」

「あ、ああ。ごめん何でもない」

 

 心配だが体調が悪いようでもないから移動を再開しようとしたら、後ろから謎の高笑いが響いてきた。

 

「な、なんだ!?」

 

 二人が混乱している中俺は嫌な予感がした。

 声はどんどん近づいてきて、男たちは恐怖で震えている。

 そして声の主は姿を現した。太い木の枝を猿のように飛びながら。

 

「ひ、人!?」

 

 渡辺が恐怖のあまりそんなことを言った。確かにあいつは人に見えない時はあるがさっきから聞こえてきた声は人のものだったぞ。

 

「はっはーー! やはり私は美しい!!」

 

 俺たちの上を颯爽と通り抜けた高円寺はやはり意味のわからないことを叫びながら消えていった。

 

「な、なんだったんだ?」

「さぁ? ていうかあいつDクラスの高円寺だよな。自由人って噂の。人間の動きじゃないだろ」

 

 高円寺が消えた方を見上げる二人は唖然としている。

 場がすっかり白けてしまった。

 

「……行こうか」

 

 俺はあんな化け物を抱えるDクラスに同情しながら前に進んだ。

 

 




 しんみりとした空気を吹き飛ばし更にはオチ担当になってくれる彼はやはり偉大で美しいです。
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