ようこそ雪のいる教室へ 作:きーちゃん
あれから歩き続けると開けた道に出た。明らかに人の手が入った道に二人の表情は明るくなる。暫く開けた道を歩くと、俺の目的の場所に着いた。
「おっ! 洞窟だ!」
待ちくたびれたといった様子の柴田が声を上げた。
「あれがスポットなら占有は中でするのか?」
念願のスポットに渡辺の歩みが早まる。しかしその瞬間洞窟から人が出てきた。
「むっ」
「うわあ!」
ばったり鉢会う形になり渡辺は尻もちをついた。
出てきた人は俺たちと一緒のジャージをまとっているから生徒だと思うが、同学年にしては珍しくスキンヘッドの頭をしている。
「どうしたんですかー葛城さん?」
渡辺の声に反応して洞窟の中から更に緑髪の男が出てきた。スキンヘッドの彼は葛城というらしい。
しかし葛城の手の中にはキーカードのような緑色のカードを持っていた。すぐにしまったが、状況から察するに彼等も上陸前にここに目星をつけて先に占有をしたのか。
「ってお前ら誰だ!」
緑髪の彼は俺たちに気付いて過剰に警戒した。
「おいおい。そこまで大袈裟にしなくていいだろ。俺たちはBクラスだ。ちなみに俺は柴田な」
敵を見るような目にたまらず柴田が静まるように声をかけた。が、依然警戒を解かれない。
「なるほど。Bクラスの柴田と言えば1年の中でもトップクラスの身体能力を誇る生徒だと専ら噂だ」
「え? いやぁそれほどでも」
「つまりお前たちBクラスもここに当たりをつけて最速の移動をしてきたわけだ」
正解だ。ただ今回は相手の方が一枚上手だった。
この葛城という男は中々の洞察力の持ち主のようだ。恐らく船からここに気付いたのも葛城だろう。洞窟の中からもう人気がないことからこの二人で急いで来たと見える。
「そうだね。まぁきみたちに先を越されたようだけど。でもそのおかげでリーダーはわかったかな」
「なにぃ!?」
「……それはどういう意味だ?」
下っ端っぽい男はわかりやすく反応したが葛城は冷静に俺の発言を見定めようとしている。ブラフかどうか測りかねているのだろう。
「さっきまで手に持ってたもの、キーカードだよね? ということはきみたち二人のどちらかがリーダーというわけだ」
「なっ、お前見たのか!? ずるだぞ!」
あんまりな言い分に呆れそうになる。彼はリーダー当てのルールを知らないのか。
「弥彦、落ち着け」
葛城も呆れを滲ませながら宥めた。
ただ、弥彦のおかげであれがキーカードという確証は得られた。俺たちはまだ実物を見たことが無かったからな。弥彦に感謝だ。
「きみは我々に嘘を言って動揺させリーダーを当てようとしているが無駄だ。そんな子供騙しに引っ掛かる筈がない」
「そ、そうだぞ! 俺たちはAクラスのエリートなんだからな」
なるほど。葛城たちはAクラスなのか。正直今見てきた中で葛城はともかく弥彦にAクラスの素質が感じられない。ま、だが弥彦がいてくれたおかげでこっちに有利に働く。
「そうか。なら私たちは最終日にそこの、弥彦くんの名前を指名しよう。楽しみだ」
「なっ!?」
核心を突くことを言ったら弥彦は誰が見てもわかるくらい取り乱した。葛城もすぐに取り繕ったが表情を変えていた。
「な、なんで……」
「わざわざ洞窟の外に出てキーカードを晒すなんて愚かな行為普通しないよね。Aクラスならなおさらな。つまり別の誰かが占有をしてしまって、葛城くんは万が一を考えてそれを誤魔化そうとしたんだろ? だがそんな子供騙しはやめたほうがいい」
葛城の言葉をそのまま返せば弥彦は顔を真っ赤にして俺に飛び掛かってきそうな勢いだが葛城が肩を掴んで止めていた。
「落ち着けと言っている。弥彦」
「でも葛城さん!」
「お前は一旦黙ってくれ」
「うっ……わかりました」
葛城は上手くやっているようだが些か弥彦が足を引っ張っているように見える。何か光るものを持っているのだろうか。現状弥彦がAクラスと言われても疑問視してしまう。
「名前を教えてもらえないだろうか」
「Bクラスの椿雪」
「そうか。椿、それからそこの二人もだが今知ったことは口外しないでもらいたい。当然リーダー指名もな。虫の良い話だがな」
「ほんとにね」
誰がそんなお願いに乗るのか。葛城もわかってるだろうに、焦ってるのか?
「勿論こちら側もBクラスのリーダー指名は行わないと約束する」
「話にならない。なんでそんなので釣り合うと思った? 第一きみたちはこっちのリーダーを知らないでしょ。言うなれば私たちはAクラスの心臓を握ってるんだ。いっそ他クラスにも言いふらしてもいいんだよ」
「お前っ――」
「……何が望みだ」
口を開きかけた弥彦を黙らせながら聞いてくる。やはり葛城は頭が回る。
「50ポイント分の物資をBクラスに無償で渡してもらおうか。それとこっちのリーダー指名をしないという条件をつけてくれるならこちらは指名も口外もしない」
「くっ……」
Aクラスは欠席者が1名いるから270スタート、そこから更に50取られるのは痛手だろう。だがこのスポットを取れてる時点でポイント消費は抑えられるし、尚且つ周辺に2つのスポットがある筈だからボーナスポイントだけでも50は取り返せる。最終的なプラスは少ないだろうが失態は覆い隠せる筈だ。
「……わかった。その条件で契約成立だ」
それらを天秤にかけた葛城は承諾した。
現状不利なのはAクラス側。契約書で縛り付けないと俺たちの誰かが口を開いてしまう恐れがあるからすぐに契約書を用意するようだ。
さて。ボーナスポイントありきで葛城は何とか飲み込んだが、もしAクラスのリーダーが的中させられたらどうなるだろうな。
俺はチラッと後ろを確認しながら悪い笑みを浮かべた。