ようこそ雪のいる教室へ   作:きーちゃん

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29話

 その後は洞窟前で待ちぼうけをくらいつつも契約書にサインして戻ることになった。

 

「勝手に決めてごめんね、二人とも」

「いや、ナイスだぜ。俺なんてそもそも葛城がキーカード持ってたなんて気付かなかったからな」

「俺もだ」

 

 後半置いてけぼりだった二人だが契約に関しては気にしてなさそうだ。寧ろこちら側のポイントが浮くことに嬉しがっていた。

 

「まぁ契約書にもサインしたからリーダー情報については他言無用で頼むよ」

「おう」

 

 

 

 

 結局俺たちはスポットを確保することができなかったが、どうやら別の人たちが森の中を散策中スポットを見つけたようだ。俺たちが開始地点に引き返したら少し残っていた生徒の先導のもと案内された。

 

「三人ともお疲れ様!」

 

 一之瀬たちの出迎えを受けつつそのスポットを見ていく。俺たちの様子がわからなかったからまだ占有はしていないようで、これからリーダー決めをしていくことになった。

 

「リーダーはどうしようか」

「そりゃ一之瀬か椿なんじゃないのか? それか神崎?」

 

 意見が出てきたがそれは安直すぎる。一之瀬も同じ考えでいい顔をしなかった。

 

「私たちは他のクラスにもそれなりに知られてるからリスクは高いかな。同じ理由で柴田くんもね」

「マジか」

 

 柴田がショックを受けた顔をする。持ち前の運動神経を活かしてスポット占有を行う算段だったようだ。

 

「……あの、私やりたい」

 

 控えめに手が挙がった。千尋だ。

 

「……千尋ちゃん大丈夫?」

 

 一之瀬が気を遣うように問いかける。普段千尋は積極的に自己主張する性格じゃないから無理してるんじゃないかと心配している。

 

「リーダーになったら徹底的にバレないようにしないといけない。それでもスポット占有はしてもらうことになるから体力もいる。本当にやる?」

 

 俺からも脅すように確認する。彼女は運動もあまりできる方じゃないから途中でダウンする可能性も拭えない。

 だが俺たちの心配を跳ね除けて千尋は力強く頷いた。

 

「私もみんなの役に立ちたい。やらせてほしいの」

「……わかったよ。みんなもいいかな?」

 

 ここまでの覚悟を見せられて反対はなかった。これでBクラスのリーダーが決まった。

 

 その後星之宮から千尋の名前が刻印されたキーカードを受け取りスポットを占有。これからはここがキャンプ地になった。

 

「次に問題なのは……この井戸かな」

 

 木の桶が取り付けられた井戸がこのスポットの大きな目印だろう。これをどう使うかでポイント節約に関わってくる。水もちゃんと汲めて利用することは可能だ。

 

「ここに来る途中に野菜が栽培されているのを見たからこれも整備された井戸なのは想像できるけど飲み水として使うかと言われたら判断が難しいよね」

 

 一之瀬の言う通り考えなしに使うのは避けた方が良いだろう。それに俺含めても全員都会っ子だから井戸を使うというのも初めてで恐怖心がどうしてもある。

 

「誰か一人だけ試しに飲んでみるのはどうだ? それで明日まで待って大丈夫なら利用すればいい」

「確かにそれなら万が一の場合の被害も最小限で済むか……」

 

 神崎の案は最適解だろう。ただ問題なのが誰がその一人になるかだ。明日の今頃に腹を壊してトイレに籠ることになるのは誰しもが避けたいし、そうなればリタイアも視野だろう。

 

「言い出しっぺの俺がやろう」

 

 俺が名乗り出ようとしたがその前に神崎が自ら申し出た。正直俺もどんなリスクがあるかわからないものに手を出すのは避けたい所だったからありがたい申し出だ。

 

「なら申し訳ないけど神崎くんお願いね」

「ああ」

 

 全員が見守る中神崎は井戸水を飲んだ。後はこれから変化が現れるかどうかだ。

 

 

 

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