ようこそ雪のいる教室へ   作:きーちゃん

32 / 34
32話

 試験2日目。

 俺は寝づらさを感じて目覚めた。目を開けて確認すると両サイドに千尋と麻子がピッタリくっついてきていたのだ。

 

「ったく、何してんだこいつら……」

 

 ただでさえ冷房もない環境で密集して寝ているのにこんな身体をくっつかれたら暑すぎる。

 俺は二人を引きはがしてテントを脱出した。

 

「ん? 神崎くん、おはよう」

「あぁ。椿か。早いな」

 

 神崎もちょうどテントから出てきたようだ。随分早起きだと思ったがこの環境はあまり良いとは言えないから眠りが浅かったのかもな。

 

「ちょっと暑くてね」

「同感だ」

 

 神崎の首には汗が滲んでいた。やっぱ男子はきつそうだな。

 

「そういえば体調は?」

「ああ。特に異変もなく、今の所良好だ」

 

 神崎は井戸水を一人だけテストで飲んでもらったから心配していたが大丈夫なようだ。この分だと昼頃まで待って異常なければ飲み水として使えそうだな。

 

「俺はこれからDクラスの偵察をしてくるつもりだ」

 

 昨日周辺を探索した生徒たちが簡易的にだが描いた地図を片手に神崎がそう告げた。どうやら簡単に行ける範囲にDクラスの拠点らしき場所を見つけたようで神崎は見てくるらしい。

 

「そう。なら私はここに残って見てるよ」

「ああ。頼む」

 

 神崎もCクラスの金田のことは警戒している。

 昨日一之瀬が金田を保護すると報告をして、今までCクラスからの迷惑をこうむった子たちはあまりいい顔をしなかった。だが龍園に殴られてでも逆らおうとする金田の反骨精神が信用を与え、また一之瀬の必死の懇願の結果保護することに抵抗はなくなった。それでも神崎のように警戒している生徒は少なくない。

 あの時ただ眺めて一之瀬を止めなかった俺にも責任はある。だから金田に対しては俺が人一倍警戒をしていかないとな。

 

 

 

 

「何だお前ら!」

 

 朝の点呼も終わり各々作業をしていたところに柴田の声が聞こえてきた。あまり穏やかでない雰囲気にすぐ視線を向けるとCクラスの生徒二人が立っているのが見えた。

 

「おうおう。Bクラスは見事に貧乏な生活をしてるなぁ。こんなくそ暑い中ご苦労さん」

 

 Cの生徒は手に持った炭酸飲料を飲みながら嘲笑った。その挑発にBの生徒たちは怒り心頭だ。だが二人は寧ろ殴り掛かって来いよと言わんばかりにへらへらしている。一人はジュースを、もう一人はスナック菓子を貪っていた。

 

「ちょっと聞き捨てならないな。私たちは苦労しながらも楽しくこの試験に臨んでいるよ。きみたちこそ何しに来たの?」

 

 一之瀬が眉をひそめて応戦した。普段はとても温厚な彼女だが流石にCクラスには怒りを溜めている。

 

「へっ。龍園さんから伝言だ。夢の時間を堪能したい生徒は砂浜にこい、だとよ」

 

 夢の時間とは不思議な響きだ。この鬱蒼とした島でどんな時間を提供してくれるのか少々気になるな。

 

「ほらよ。ロクに朝食も食べれてなさそうなお前らに餞別だ」

 

 黙って菓子を食べていた男が菓子袋を放り投げた。

 

「それ捨てといてくれよ。あ、でも食べかすが残ってるかもな。食べたけりゃいいぜ。ぎゃはは」

「あ、環境汚染」

 

 下品に笑う彼等に水を差すように俺は呟いた。するとピタリと笑みを止めた二人は俺に視線を向けた。

 

「椿……」

「それ私たちは汚いから触れる気ないよ。でもそのままだときみたちに環境汚染をしたとしてペナルティ与えられるよ」

 

 環境汚染は20ポイントのペナルティ、決して小さくないダメージだ。

 この場にはBクラスの殆どの生徒がいるし、おまけに星之宮が自分のテントの陰からひっそり監視している。奴らがゴミを回収しないなら即刻ペナルティが下されてもおかしくない。

 だがあいつらは俺の予想に反した行動をとった。

 

「はっ。そんなペナルティなんて痛くねえよ。ポイントが減る程度いくらでもしてやるよ」

 

 何回でもルールを破ると宣言しているようなもので随分危なっかしい。ポイントが減る程度? 流石にいくらあいつらが馬鹿でもポイントの重要性は理解しているだろうに。なぜそれを軽視している。

 いや、そもそも減るポイントがないのか?だとしたら謎の自信にも説明がつく。なにより金田は朝も昨日の午後もずっとここにいた。だから点呼を受けておらずCクラスはそれだけでポイントを減らしている。

 だがこいつらが来た理由は伝言を伝えるだけで金田を連れ戻しに来たわけではない。

 ここから考えられるに現状のCクラスは0ポイント、もし残ってたとしても必要ないと思っている。

 初日の内に全ポイントを消費して思うがままにやっている。だからこいつらはお菓子やらジュースやらを好きなように口にしている。

 

「いいか、もう一度言っとくぞ。夢の時間を味わいたい奴は砂浜にこいよ」

 

 念押しして伝えると彼等は足早に去って行った。

 なんとも後味が悪く、Bクラスの雰囲気は微妙になってしまった。

 

「雪ちゃん、どこ行くの?」

 

 Cクラスのもとに行こうとしていると一之瀬が俺の方にやってきた。

 

「龍園くんの意図が気になるから砂浜見てこようかなって」

「私も一緒にいいかな?」

「そうだね。一緒に行こうか」

 

 とりあえずキャンプにいる生徒たちに金田はあまり自由にさせるなと言い含めてから俺たちはCクラスが構えているという砂浜に向けて足を進めた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。