ようこそ雪のいる教室へ 作:きーちゃん
鬱蒼とした森を抜けた先に見えてきた光景に俺たちは呆気に取られた。
砂浜ではビーチバレーのコートやバーベキューセット、寛ぐためのチェアやパラソルなどが無数に存在し生徒たちは思い思いに楽しんでいた。海ではアルベルトといういかついやつが水上バイクで爆走していた。
「こんなのって、あり……?」
「意図が読めないな」
困惑している一之瀬に同意する。正直俺もCクラスのやり方はいまいち理解できなかった。
「よぉ。雪に一之瀬。Bクラスのリーダー二人が揃い踏みとはな。無事に俺の招待に応じてくれたわけか」
冷たそうな水を持ちながら龍園の登場だ。水着姿で彼もこの状況を楽しんでいるようだった。
「お前らも遊んでったらどうだ? 予備の水着はあるぜ。楽しんでけよ」
「折角のお誘いだけど遠慮しておくよ。私たちは偵察に来ただけだから」
「クク。馬鹿正直だぜ。ま、気が変わったら言うんだな。歓迎するぜ」
やけに気前がいいな。こいつは楽しみをみんなで共有しようみたいなスタンスなのか? だったら意外と可愛いとこがあるが。まぁ十中八九裏があるだろうな。
「私たちはCクラスを脅威と感じていたんだけど、この様子を見たらそうでもないのかな?」
「さぁな? ひとつ言っとくと俺らはポイントを全消費したぜ」
「なるほど」
立てていた予想は当たってたわけだ。だから金田がいなくとも何も痛くないと。
ただ、こんな豪遊生活いつまでも続くことはないだろう。もってあと一日。そうなると一気に貧乏生活を送ることになる。その落差に精神的な苦痛は大きそうだが。いや試験を放棄すればいいのか。
そもそも7日間を見ていない。だからこんなやり方を選んだのか。
「龍園くんたちは試験に真剣に取り組んでないんだね。大きく
「はっ、笑わせんなよ。たかが100や200のために汗水垂らして我慢するなんざ馬鹿のすることだ」
「私たちとは相いれないみたいだね」
一之瀬は既にCクラスを試験中脅威でないと認識している。だが俺は何かを見落としているような錯覚に陥った。
ここで100でもポイントを稼がないでどうするのか。今後これだけのポイントを得られる保障なんてどこにもないのに。
「最後に聞いていいかな。きみのクラスに金田くんて子いるよね」
「あ? あぁ。いたなそんな男。昨日俺に反逆してきたからボコして追い出したが、なんだそっちに匿われたのか。クク、笑えるな」
「笑いごとじゃない。クラスメイトに、そもそも人に暴力を振るうなんて普通じゃない。きみは、おかしいよ」
一之瀬が畏怖するように言った。およそ今までの人生でこの手の人間と関わったことがないから理解できないのだろう。
「甘ちゃんな一之瀬には俺のことなんざ一生わからねぇだろうな。てめぇは大人しくクラスでごっこ遊びでもしてな」
「雪ちゃん、帰ろう」
龍園の挑発には耳も貸さず一之瀬は去ることを決めたようだ。
俺としてはもう少し見ておきたい気持ちはあったが、あまり一之瀬をここにいさせても良いことはないと思い戻ることにした。
帰り道、一之瀬は口数が少なかった。龍園のやり方に思うところでもあるんだろう。確かに龍園の言う通り一之瀬は甘いところがある。散々迷惑かけられといてCクラスの金田を匿うことにしたのも甘いと言わざるを得ない。それが彼女の長所でもあり弱点でもある。
龍園の言うことを信じるなら金田は本当にクラスから離反したということになる。だがあの男がこんな呆気なく終わるとは思えなかった。まさか外で寝るのが大嫌いという筈もないだろう。何かしら手を打っていると考えていい。それが今はわからないがいずれわかると思う。だからその時まで金田を見張る必要がある。