ようこそ雪のいる教室へ   作:きーちゃん

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8話

 学校二日目。今日からいよいよ授業が始まった。とは言っても初回だから今後学ぶことの説明が殆どで本格的に授業と呼べるものはなかった。

 ただ俺には懸念があった。それは”雪”の知識量だ。

 教科書をパラパラと捲ってみて内容に軽く触れたがどれもホワイトルームで習っていて、既知のものだった。俺の感覚では既に忘れたもしくは初めて学ぶことなのに、この身体は覚えているから変な感じだ。少なくとも授業を聞かずにテストを受けても90点以上は取れる確信がある。それだけ基礎も応用もWRでは教え込まれ、雪は吸収していた。

 だからこれからの授業は少し退屈になるだろうなと思っている。

 

 

 

 

 お昼の時間になり、俺は食堂に来ていた。

 生徒数300を優に超えるだけあり中は広く、席に困ることはなさそうだ。

 俺は券売機の列を待つ間にカウンター上に表示されたメニュー表を見て食べるものを探した。

 種類は豊富でかつ日替わり定食なんかもあるから、毎日ここで食べても飽きなさそうだった。それに価格も良心的だ。一部豪華な定食は流石に値が張るが普通の定食は求めやすい。

 ただその中に異質なものがひとつあった。

 

「山菜定食、無料?」

 

 昨日の帰りスーパーに寄った際にも賞味期限が切れそうな商品がいくつか無料で置いてあった。その時は食品ロスに敏感な学校だなと思ったが、ここにも無料があるようだ。

 だけど、これは食品ロスとかそんなのではないだろう。好きなのか知らないが山菜定食を注文している人を見てみると、しっかり米と味噌汁がついている。

 

「随分優しいな」

 

 これはポイントがない生徒への救済措置だろう。

 ポイント増減は振れ幅が大きそうで、食事にポイントをかけられない程度には枯渇する可能性があるようだ。

 

「……注文してみるか」

 

 興味がひかれて食べてみることにした。それに無料だから節約になるしな。

 

 

 

 

「きみ、見ない顔だけど一年生?」

「? はい」

 

 注文した山菜定食をもらおうとカウンターに行くと、おばちゃんに声をかけられた。

 

「この時期から山菜定食を食べるなんてもの好きね。言っとくけど残すと後が怖いよ」

「ええ。幸いなことに好き嫌いはありませんから」

 

 この時期からね。やはりどこかのタイミングで山菜定食を食べざるを得ない生徒が増えるんだろうな。それが5月1日なのかもっと後なのか知らないが。

 山菜定食を受け取って、座れそうな席を探していると名前を呼ばれた。

 

「椿さーん」

 

 声がした方を見るとクラスメイトの一之瀬が手招きしていた。他にも何人か女子がいて俺に手を振っている。

 俺が近寄ると空いていた席をトントンと手で叩いた。

 

「ここ、空いてるから一緒に食べないかな」

「……ぜひご一緒させてもらうよ」

「えーなんか雰囲気硬いよー」

 

 そう茶化すように言ってきたのは確か安藤紗代だったか。他の女子ときゃっきゃと笑い合う様子は学校二日目にして仲の良さを窺える。

 一之瀬は困ったようにしながらも微笑を浮かべている。

 早くもBクラスの中心人物といっても過言ではない一之瀬を始めとしたこのグループは和やかな雰囲気している。

 

「昨日私たちはカラオケに行ってきたんだ」

 

 そんな俺の視線を察したのかコソコソッと昨日解散した後のことを教えてくれた。

 

「あっ、椿さんといえば、昨日のあれかっこよかったよ~!」

「え?」

 

 網倉が目を輝かせて言ってくる。あれ?

 

「ね。知恵ちゃん先生にピシャリと言ったあれねー」

「うんうん。あの時はちょっと空気気まずかったから椿さんが言ってくれて助かったよ」

「先生って距離感近くて接しやすいけどあんなのは困るよね~」

 

 どうやら星之宮のダル絡みを俺が時間の無駄だとバッサリ切り捨てたことが好評だったらしい。まぁ思春期のこの年代にあんなのはきついよな。もう少し時間が経って気の置けない仲ならまだしもな。

 

 それから昼休憩が終わるまで雑談に花を咲かせるのだった。

 

 

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