エンカウント率ぅ   作:フドル

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ワノ国編良かったなぁ……。


始まりの1カイドウ

 前世は日本に暮らす平凡男性。今世は角が生えた一般人より身体が強い少女。2度目の生ということもあり生まれた頃から私の意識はあったのだが、どうやら母親は私のことをよく思っておらず、ある程度私が成長したところで今の私では自力で帰ってこれない距離にある、島をいくつか経由した先の町の路地裏に私を捨てていった。

 

 育児放棄反対と言いたいが、頑張ったら1人で生きていける程度まで育ててくれただけ感謝すべきなのだろう。正直言って捨てられた理由なんてさっぱりわからないのだが、私は一度も見たことがない私の今世の父親が原因ではないだろうかと睨んでいる。

 

 だって私の母親に角なんて無いし。絶対これ父親からの遺伝でしょ?見た目にそぐわない怪力とかも。我が父は化け物だった?

 

 さて、そんな私個人ではどうしようもない理由で捨て子となった私だが不幸は続き、ある日島へ略奪をしに来た海賊に偶然近くにいたからとオマケ感覚で攫われたのだ。前世含めて私がここまでされることをしたかと文句を言いたくなる所業に、当然私も反発した。具体的には海賊船に乗せられて海のど真ん中に来たところで大暴れして海賊団を壊滅させた。

 

 なんて格好つけて言ってみたが、実際は暴れている最中に迫っていた大嵐がトドメとなった。多分私がここまで大暴れ出来たのは船員の大半が近付いてきていた大嵐の対処をしていてガキ1人ぐらいなら数人もいれば大丈夫と考えていたからだろう。

 

 当然次々と船員が私にぶっ飛ばされているので手が足りなくなるし、暴れている最中に船のあちこちを破壊してしまったので大嵐の対処が間に合わずに船は沈没。私も海に沈んだ。

 

 しかし私は生きていた。海に沈んで意識も失ったのに何故か生きていた。しかも誰かに助けられたとかじゃなくて普通に島まで流されていた。ここまで来たら耐久面でも輝いている父親の遺伝子にドン引きである。

 

 そんなこんなで上陸した島だったが、大きい癖に無人島で、島の中は猛獣とかが沢山。実は世界が転生者である私に死ねと言っているのかと本気で考えてしまったぐらいだ。

 

 いくら人外みたいな身体能力の私でも流石に大樹サイズの猛獣が相手だと不利みたいで、さっくりと簡単に狩ることは難しかった。……いや、普通に考えてそのサイズの獣を狩れる時点でおかしいか。

 

 そんな風に環境に適応して野生の人間として健気に生きていた私だが、ある日クソ不味い果物を食べてしまったことで身体を馬鹿デカイ蛇に変じることが出来るようになった。

 

 そこでやっと色々な点が線で繋がって気付いたのである。ここ、ONEPIECEの世界かよって。

 

 まぁ気付いたところで野生人の私に何が出来るという話だが。前世の父親が好んで購入していたので借りて読んではいたが、100以上の巻数に加え、気が向いた時に時々読む程度なので細かい設定なんかは覚えてすらないし、クソ不味い果物こと悪魔の実を食べたせいで最終手段だった泳いで島の外に出るという選択も取れなくなった。

 

 とはいえせっかくの悪魔の実。恐らく動物系を食べたのだからと能力の検証とか、ONEPIECEの世界にある覇気という力を猛獣達を相手に試したりして日々を楽しく前向きに過ごしていた。だが悪魔の実を食べてから5年ぐらい経った頃、唐突な出会いがあった。

 

 

 

 

 空から突然人が落ちてきた。人が、落ちてきたのである。

 

 能力で蛇になってぽけーと強風で荒れる海を眺めていたら視界の上から下をなぞるように落ちてきたのだから本当にビックリした。一瞬だけ頭に親方!空から〇〇が‼︎のフレーズが過ったが何とか振り払い、急いで下を見れば落ちたであろう人の形で出来た穴が出来ていた。穴は結構大きく、そして深いことから地面にぶつかった際の衝撃はかなりのものだと分かる。

 

「あ〜、死ねねェもんだなぁ」

 

 なのに平然と這い上がってきた。首をゴキゴキと鳴らしながら気怠けな様子で穴から出てきた大男は落胆した様子で周囲を見渡している。

 

「えっと、大丈夫?」

「…! お前、能力者か?」

「えっ? うん、多分?」

 

 突然のエンカウント。しかも相手が原作キャラということに驚きで声が出なくなっていたのだが、流石に目の前でこんなことをされて声をかけないのはおかしいと思い、絞り出すように声をかけてみた。すると大男……カイドウは厳つい顔を顰めながら私の方を向き、私の姿が目に入ると少し目を見開いて能力者かどうかを聞いてくる。多分私がいることには見聞色の覇気で気付いていたけど、その正体が能力者…それも馬鹿デカイ蛇だとは思ってなかったのだろう。

 

 そのままカイドウは島の外周を一周しても尚余る私の長い身体をしげしげと眺め、これは良いものを見つけたと言いたげな表情になる。その時点で少し嫌な予感を感じた私は、そろりそろりとある準備を始めた。

 

「ウォロロロ! お前、名はなんだ?」

「……イブキ。 あなたは?」

「おれの名前を知らねェのか? おれはカイドウだ! イブキ!おれと来い!おれの海賊団に入れ‼︎」

「えっ?嫌だ」

 

 突然のお誘いに、思わず反射でお断りすると和やかだった空気がピシリと凍りつく。上機嫌だったカイドウの様子がみるみるうちに不機嫌となり、彼の身体からは少量の覇気が漏れ始めた。その迫力は恐ろしく、島の木が揺れて鳥が一斉に羽ばたき、私達を狙っていた猛獣達の気配が遠ざかっていく。

 

 口に出してからマズイと思ったが、言っちゃったもんは仕方ない。そもそも私が野生人化した最大の原因が海賊なんだから、前世で知っているキャラの海賊団だとしても素直に入りますなんて言えるわけがない。

 

「……一応、理由は聞いてやる」

「私がここでこんな生活をしているのはあなたが口にした海賊って奴らのせい。正直ここに来てから辛いこともあったから入れと言われてもすぐに入るなんて言えないし言いたくない。まずはあなたの海賊団が普段何をしているのかとか、海賊団の雰囲気とか日々の業務時間とか休みの日は週に何日とか1日の休憩時間はどれぐらいあるのだとか、有給休暇をいつでもとっても大丈夫な場所なのかとかを教えてもらった後、1週間ぐらいは体験入団をさせてもらって私自身が海賊団の雰囲気とかに触れたいし、上司になるかもしれない人とコミュニケーションをとってこれから先問題無くやっていけるのかを確かめて……えーと、それから──」

「ウォロロロロ、細かいな」

 

 反射的に口を開きかけ、途中で私が自身のことを知らないと思い出したのか、カイドウは吐き出しかけた言葉を飲み込んで私に断った理由を聞いてくる。なので凄く簡単に私がここにいる経緯を伝え、仮に入る場合でも事前にこれは知っておきたいと思ったことをちょっと細かすぎるかと思いつつも妥協はしたくないと思いつく限りで伝えていくのだが、千を優に超える人数が所属している海賊団の船長をやっているだけあってカイドウから強制ストップが入ることは無かった。

 

 それどころか私の言葉や態度から入団には前向きだということを感じ取ったのか、カイドウの不機嫌だった機嫌が少し良くなった。

 

 まぁ、入るつもりは今のところ全く無いけどね。カイドウの海賊団こと『百獣海賊団』は強さこそが全てみたいな海賊団だ。そんな殺伐とした弱肉強食みたいな空気の場所に行ったら常に気を張っておかないと駄目じゃないか。

 

  NO一択だ。とはいえここでそれを素直に伝えたら怒ったカイドウにボコボコにされた後、彼の本拠地であるワノ国へ誘拐。入団おめでとうの未来が待っているだろう。原作を読む限り、百獣海賊団は入団するか否かはその人物の自主性を重んじてくれるので、多分向こうに誘拐した後でも入団するか否かはしっかり私に委ねてくれるはず。断る度に百獣海賊団のスカウトマンから"優しく誤解がないように"百獣海賊団のPRをされると思うけど。

 

 あー、ヤダヤダ。何故原作キャラの初エンカウントがカイドウなのか。ここがONE PIECEの世界って理解してから鍛えてはいるし、この身体に才能があるのか既に覇気とかは使えるけど、目の前のカイドウに勝てるなんて自惚れはしていない。なのでこうやって口先の言葉で丸めてカイドウから自主的にお帰りしてもらおうと頑張っているんだけど……。

 

「ウォロロロロ! 条件は細けェがまぁいいだろう。それでお前が入るなら向こうで説明してやる」

 

 ですよねー、カイドウからすれば向こうに私を連れて行ったほうが手間が少なくて済む。わざわざここに私を置いて帰ってまた訪れるなんて面倒なことをする必要なんて無い。

 

「ヤダ。私はここに残る。なんだかんだ愛着はあるし、海賊団に入団する条件を言っただけでまだ入るとは言ってない」

「……あァ‼︎⁉︎」

 

 うーん、前世から舌戦は得意じゃなかったからなぁ。ここら辺が潮時だ。カイドウも私が素直に入るつもりが無いって気付いたみたいだし。

 

「仕方ねェ、続きは心をへし折ってからするとしようか…‼︎」

 

 いつの間にか金棒を取り出したカイドウにやっぱりこうなるよなぁと現実逃避をしながら私も戦闘態勢に入る。どうやら手加減はしてくれるようで、覇気は感じられるけど能力を使うつもりは無さそうだ。

 

 捨てられ、攫われ、流されて、めげずに生きていたのに最強生物襲来とかもしかして私って常にファンブル引いてたりする? 実際この身体じゃなかったら私はもうこの世にいなかったよ? あ、でもこの身体のせいで連続する不運の初動をひいてるのか。ハハハ…はぁ…。

 

 もうやるっきゃ無いのでぶつかり稽古だと思ってボコボコにされる覚悟で攻めるしかない。原作通りならカイドウは攻撃をすれば真正面から受け止めてくれると思うので鎌首を上げてしっかりと狙いを定めて口を開く。

 

「"毒壊腐風(ヴェ・ポレス)"‼︎」

 

 前世の価値観のせいで恥ずかしいが、叫べば気合いが入るので羞恥に苛まれながら考えた技名を叫び、紫と緑が混じったブレスを放つ。ブレスはカイドウを飲み込んで地面にぶつかり、そこから扇状に島へと広がっていく。

 

 ブレスが通った範囲にいた猛獣は毒に侵されて瞬く間に肉体が腐り、骨すら残さず溶けていく。木々も枯れてチリとなって何も残らない。地面さえグジュグジュな泥のようなものへと変じてしまった。

 

 単純な毒のブレス。効果は凶悪で、当たれば無機物有機物問わずに毒に侵され溶けて腐って朽ちる。一応毒が原因なので解毒は可能だけど、それをする暇なんてまず無いだろう。

 

 そんなものが直撃したのだからカイドウだって無事では済まない……と思いたいのだけど。

 

 集中してカイドウがいた場所を見つめていれば、一瞬だけ影が通り過ぎた。即座にそれに反応して、視線をそれに合わせようとしたのだが──。

 

「"雷鳴八卦(らいめいはっけ)"…!」

 

 それよりも早く振り抜かれたカイドウの金棒が私の胴体にめり込んでいた。

 

「ぐぅおぇえ……!」

 

 内部に響く馬鹿みたいな衝撃に内臓を痛めたのか内部から迫り上がってきた血を吐き出す。

 

 覇気と能力を使って防御して、尚且つカイドウが手加減をしているのにもかかわらずこの威力。漫画やアニメなどにあるあまりの痛みで一瞬意識が飛ぶという経験をたった今した。

 

 そして理解した。私とカイドウの間にある見るのも億劫になる馬鹿みたいな差を。こんなのにルフィ勝てたの? 流石主人公としか感想が出てこない。

 

「ウォロロロロ、動物系でも気絶する威力で振るったがよく耐えた。あの触れると弾けた鱗のお陰か?」

「うぅぉえ、ふぅ、……"破鱗反毒(ヴェ・スタケ)"。鱗に接触する攻撃を軽減して……尚且つ近くにいる相手に毒で反撃する技だけど……当たったよね?」

「当たったさ。だがこの程度でおれは殺せねェぞ…?」

 

 金棒に付着した毒液を一度振るうことを払い飛ばし、再び待ちの態勢に戻るカイドウ。その様子から私の技を全て受け止めて反撃する方針にしたのだとわかる。

 

 さて、どうしようかな。やる前から分かっていたけど改めて勝ち目がないことは分かった。巨体を活かした突進は確実に受け止められてからの金棒殴打か接触する瞬間にカウンターを受けるかの2択だろうから却下。噛み付きからの呑み込みなんて私が苦しむ拷問になるだけだろうからこれも却下。一応島の全てを巻き込む大技と、毒とは別の周囲の環境をガラッと変えてしまう技はあるのだけど、大した効果が無いって理解出来るのに島の猛獣達を巻き込んでまで放とうとは思わない。よってこれも却下。

 

 とはいえこのまま何もしないとそれはそれで攻撃を受けるだろうし……今は動物系の回復力で多少マシになっているけど、それでも次の雷鳴八卦(手加減)を受け止めることは出来ない自信がある。あんなもん何度も受け止められるか。

 

 じゃあもう手はない……ってわけではない。今の油断しているカイドウになら通用する最後の技がある。カイドウと戦う前に始めていた仕込みもぶん殴られる前に終わっている。

 

 実行したらカイドウの性格的に怒りそうだけど、やらなきゃ百獣海賊団入りが確定するからなぁ。……よし、やるか!

 

「……今から行う技は私のお気に入り。そしてこの技を見た人はあっという間に私の姿を見失う。この意味は分かるよね?」

「……なるほどな、ウォロロロ、いいぜ。その技、受けてやる!」

 

 私の漲る戦意を受けたカイドウは一瞬の間を空けてから笑い、その身を龍に変えた。それが彼なりの敬意なのかはわからないが、その姿に今から行う行為を思い浮かべた私は彼に内心で多大の謝罪を込めた念を送る。

 

「とくと見るがいい。そしてごめんなさい! 私の最強技、"逃げるが勝ち"‼︎」

「…………………………はぁ?」

 

 私の技名を聞き、たっぷりと時間をかけてからカイドウが呆けた声を出す。龍の顔もポカンとしており、私が叫んだ技名を聞き間違えたのか疑っているようにも見えた。

 

 そうこうしているうちに、ぐんっと私の身体が異常な速度で後ろへと引っ込んでいく。

 

「おい‼︎ お前──」

 

 カイドウの大声も遠ざかり、龍の巨体すらもあっという間に豆粒になっていく。私を追いかけてはいるようだが、圧倒的に私のほうが速い。

 

 種明かしをするが私がやったことは単純で、ただ能力を解除しただけだ。ここでキモとなるのが、動物系の能力者は能力を解除した際に人の姿に戻る基点をある程度自分で決めることが出来ること。今回の私は自身の足を基点にした。

 

 この辺りは群島になっているのだけど、実はそれら全ては繋がっていて一つの超巨大な島になっている。原作でも存在した一定の時期だけ潮が引いて水位が下がることで陸続きになるタイプだ。そしてその時期以外はそこそこ距離が離れた場所に別の島が点々と存在している群島になるのだ。

 

 今は群島の時期なので、別の島の一つに長い私の身体の足辺りを伸ばしていたのがカイドウと戦う前から始めていた逃げるための仕込み。カイドウに伸ばした身体を見られた時はヒヤッとしたけど、特に気にする様子が無かったのは助かった。

 

 後は動物系の能力を解除した際の元に戻るスピードを利用した高速移動で逃げるだけ。アニメでも漫画でも動物系の形態移行はほぼ一瞬だ。これを私は逃亡に利用した。

 

「とはいえ早く隠れないと。多分っていうか確実に怒っているだろうし。技の事前説明に嘘は入ってないけどね?」

 

 先程までいた島の輪郭すら見えない距離にある島で完全な人型に戻るなり、急いで私は走り出す。目指すは地下にある隠れ家だ。

 

「……ふふっ、あなたの勝ちと私の勝ち。その条件を読み違えていたのがあなたの敗因だね」

 

 その最中にあのカイドウを出し抜いた実感が湧き上がり、元いた島の方角へビシッと指を差してドヤ顔をしながら少し決め台詞みたいなものを言ってみる。今夜は良い夢が見れそうだ。

 

 

 

 

 

 ……怒ったカイドウが私を炙り出すために1週間ぐらい休み無しでこの島含めた周囲の島で暴れ回ったせいで全く寝れなかったです。はい。




オリ主……強くなることには意欲的だけどいきなり最強が相手なのはおかしくない?

食べた悪魔の実はヘビヘビの実 幻獣種 モデル世界蛇
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