エンカウント率ぅ   作:フドル

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誤字脱字報告いつもありがとうございます‼︎

自動変換でたまーに凄い誤字をしている時があるし、それを投稿前の最終チェックで見逃す自分に驚くよ……。


褒美だって!褒美‼︎ ……褒美とは?

「ウォロロロロ、やるじゃねェか」

 

 連れてきたほぼ全ての船員が地面に倒れ伏し、死屍累々のような光景を見ながらカイドウは愉快そうに笑みを浮かべた。手元に酒があればこの光景を肴に一杯飲んでいたかもしれないが、それをした場合少々手間が増えるので今回は自重している。

 

 相手にされず残った僅かな船員達が行動不能となった船員達を助けている光景から目を離し、この惨状を作った者達へカイドウが視線を向ければ、背中に大きな黒翼を生やした黒ずくめの大男と頭部に2本の角がある小さな少女が足の踏み場がないほどに火の手が広がっているフィールドを駆けて刀と金棒をぶつけ合っていた。二つの武器が衝突するたびに衝撃波が発生し、周囲の炎が散っていく。

 

 大男ことキングの多彩な攻撃に対して少女ことイブキは覇気を全開にした状態で立ち向かっている。その表情には笑みが浮かんでおり、側から見ても楽しそうだ。

 

 状況はイブキがキングの種族であるルナーリア族の、背中の炎が燃えている限りダメージがほぼ入らないという出鱈目な体質(ルール)を理解したのか、炎が消えた隙を突いてキングの片腕を折っており、キングもイブキの頑丈な身体を突破して多数の傷をつけている。カイドウ譲りの頑丈さを持つイブキの胴体をキングの刀が貫いた時はカイドウも感嘆の声を漏らしたほどだ。既に傷はイブキの能力による異常とも言える再生力で完治しているが、流れた血は戻ってこない。着実に削られているだろう。

 

 相性を加味しても自身の右腕であるキングと互角に近い戦いをしているイブキもカイドウからしたら高得点だ。目を離すと知らぬ間に野生に帰っていることと、親とはいえ異性に裸を見られても恥じらうどころか全く動じないという問題点を見つけてしまったが、もう一人のバカ息子()に比べればこの程度は些細なことだろう。

 

 強くなることにも貪欲なので、たまに様子を見に行くのもカイドウの最近の楽しみになっている。口では嫌そうにしながらも見聞色で覗いてみれば結構乗り気なパターンも多い。今もカイドウがイブキの内心を覗いてみれば、楽しいやら勝ちたいやらこの状況を作ったカイドウへの好意など、とにかくプラスな感情で溢れている。

 

 唯一プラスではない感情はキングが貂自尊皇(テンプラウドン)を放った際に叫んだ昔のプテラノドンの狩りはこうするというものに対し、プテラノドンって本当にそんな狩りをするの?という疑問のみ。悪魔の実の能力で実際にプテラノドンになれるキングがそう言っているのだから認めるしかないのだが、イブキは何故か疑問に感じている様子だった。

 

 壊れかけていた金棒代わりにプレゼントした金棒もあの様子から見て気に入っているようだ。まぁ、カイドウはあの写真を見たのでとっくの昔にわかっているのだが。

 

 そんな二人の戦いをもう少し見ていたいカイドウだったが、今回はイブキにも言った通り別件帰りのついでなので時間に余裕がない。それはキングもわかっているので、勝負を決めるためにキングはイブキから大きく距離を離した。

 

 距離を確保したキングは一気に飛び出す。背中の炎を一時的に消し、耐久力を落とす代わりに身体を加速させることでキングの身体はすぐさま自身が出せる最高速度に到達。イブキでもキングの速度には目で追い付くのが精一杯なようで、最初はキングへ何かアクションを起こそうと頑張っていたが、無理だとわかるなり目を瞑って金棒を頭上に構えた。

 

 明らかにカウンターの構え。すぐ横を通り抜けても一切反応しないイブキの潔い姿勢にキングは興が乗り、あえてイブキの一点狙いである正面から行くことを決めた。

 

 最高速度を維持したまま、キングは姿勢を変えてイブキに飛び蹴りを放つ。狙いは頭部で、直撃すれば実力者でもタダでは済まない一撃。

 

 それをイブキは避けずに受け止めた。ならばそのまま蹴り飛ばしてやろうとキングは更に脚に込める力を強めたが、それとは逆に何故か速度は緩まっていき、やがて完全に停止した。

 

 イブキが速度の乗ったキングの蹴りを受け流すことすらせずに全て受け止めたのだ。地面にはイブキの脚が地面を削って描いた2本の長い直線が出来ており、この蹴りの威力がどのようなものだったのかを物語っている。

 

「何ッ⁉︎」

 

 キングは驚愕で思わず目を見開いた。一番マシな結果でも顔面の骨が砕け、頭部を支える首の骨が折れていてもおかしくない威力がこの飛び蹴りには込められていた。なのにキングの靴からはみ出して見えるイブキの口の端は上がり、やっと攻撃範囲に入ってきたキングを歓迎するように笑みを浮かべている。

 

「しまった…‼︎」

「"雷鳴蛇衝(ボ・ネク)"‼︎‼︎」

 

 イブキの頭上に構えられた金棒から覇気が漏れ始め、キングはやっと我に返った。急いで背中の炎を点火しようとするがそれよりも早くイブキの金棒がキングへ振り下ろされる。

 

 金棒がキングにぶつかり、キングの身体は地面へ叩きつけられた。金棒に込められた威力はキングの身体越しに地面へ伝わり、小さなクレーターと共に蜘蛛の巣のようなヒビを作り出す。

 

 訪れた最大のチャンス。それを見逃すイブキではなく、すぐさま金棒を頭上に振りかざしてマスク越しに吐血しているキングへ向けて覇気を漲らせた金棒を振り下ろす。

 

 キングの身体の半分が地面にめり込み、ヒビ割れた地面が今度は砕けた。だがイブキに手を緩めるつもりはないらしく、再び覇気を漲らせた金棒を持ち上げて頭上へ振りかざす。

 

 イブキの無慈悲な追撃の構えに様子を見ていた百獣船員達はキングがこのまま負けてしまう姿を幻視した。しかしそのタイミングでキングの背中に炎が点火。無敵とも言える耐久力が戻ってくる。だがキングの背中が完全に地面に埋まっているため炎が点火したことに気付いていないイブキはそのまま金棒を振り下ろした。

 

「良かったな、大当たりだ」

「……ッ⁉︎」

 

 腹部目掛けて振り下ろされた金棒。それがキングの身体に接触した瞬間、服の内側に仕込まれていた何かのスイッチが入った音が響く。

 

 その直後にキングを中心として大爆発が起きた。かなり強力な爆薬だったのか島は揺れ、爆風に煽られた百獣船員の数名が踏ん張り切れずに吹き飛んだ。

 

 そんな爆発のすぐ近くにいたイブキは攻撃直後だったことに加えて体重も軽いので簡単に吹き飛んだ。しかしコロコロと転がっていく百獣船員とは違い、空中で体勢を立て直して難なく地面に着地する。

 

 すぐさまイブキは金棒をその場で薙ぎ払うことで作り出した突風で爆煙を散らしたが、その先にいるはずのキングの姿がない。

 

 どこに行ったのかとイブキは注意深く周囲に視線をやるが、そのタイミングで天気が曇りでいつもより薄暗かった上空が明るく照らされる。空へイブキが視線を向ければ、そこには炎で描かれた大きな二重丸が出来ていた。

 

 二重丸の中心点で刀を構えたキングは、刀からマグマのような炎をイブキに向けて放つ。火龍皇(かりゅうドン)だ。

 

 放たれた炎は空中で龍の姿に変わり、更に枝分かれして多頭龍となる。火龍は生物のようにそれぞれが独自の動きをしながらイブキへ襲いかかるが、イブキに動きはない。炎に適応したイブキには避ける必要がないからだ。それでも視界を塞がれるのは鬱陶しいのか、金棒が届く距離まで来た火龍は叩き潰している。

 

「これで終わりだ…! "御守火龍皇(おおもりかりゅうドン)"‼︎‼︎」

 

 そんなイブキの姿を見たキングは叫び、イブキへ突貫。その途中で自身に火龍皇の火龍よりも更に大きな火龍を纏う。火龍が放つ炎の光に島は明るく照らされ、その馬鹿げた光景に船員の救助作業をしていた者達は作業を中断して慌てて船に逃走する。

 

 火龍を纏って突貫してくるキングに対し、イブキは地面が割れる威力で踏み込んで迎え撃つように空へ跳んだ。金棒を頭上で振り回した後に身体を反らす勢いで金棒を構え、覇気を撒き散らしながら火龍へ果敢に挑みかかる。

 

 小さな黒い星が火龍に呑み込まれた刹那。凄まじい覇気の衝突が火龍の口内で発生したと思えば、火龍の首が折れた。

 

 折れた火龍は進路を変えてカイドウの方へ落ちていく。それを見ていたカイドウだが、その場から立ち上がるだけで逃げようとはせず、何かを受け止めるような形で片腕を構えた。

 

 その直後に火龍がカイドウを呑み込んだ。火龍に触れた木や草は灰すら残さず焼き尽くされる。

 

「……ごふ、カイドウ、さん」

「良くやった。キング、おれの娘は強かったか?」

「ふっ、初めて会った頃のあんたの姿が思い浮かんだよ」

「ウォロロロロ…! そこまでか! だがキング、お前も良くやった。少し休んでおけ」

 

 火龍の影響で周囲が真っ黒に焦げた地面のみとなった大地に無傷で立つカイドウは片腕で受け止めた自身の右腕であるキングを労う。

 

「歩けるか?」

「何とかいける。最後の瞬間、力を抜かれたからな」

 

 カイドウから離れ、キングは自力で歩いて残っている木にもたれかかるように座り込んだ。そんなキングへ救急箱を持った船員が駆け寄るが、種族の特徴である褐色の肌を見せたくないのか治療を断っている。

 

 その姿を見てからカイドウは同じ黒焦げの大地に立つイブキへ視線を移した。流石に体力バカのイブキでも数が多い船員を相手にした後でキングと連戦になるのはキツかったのか、身体に纏った覇気は消えてイブキ本人も金棒を支えにしながら何とか呼吸を整えようとしている。いつものように逃げる元気も無さそうだ。

 

「イブキ、よくぞおれの右腕を倒したな。正直に言うが、まだお前には無理だと思っていた」

「なら、褒めてくれても、いいんだよ?」

「あぁ、褒めてやる。良くやった。これは褒美だ」

 

 カイドウが金棒を構え、イブキの前で初めて覇王色の覇気を纏わせた。直感的に今までの武装色とは違うと気付いたイブキは目を見開いて咄嗟に人獣型へ変化しようとするが、その頃には全力を出したカイドウが真横に来ており、金棒が振るわれる直前だった。

 

「"雷鳴、八卦ェ"‼︎‼︎」

「お、ごぉ⁉︎」

 

 イブキの胴体にカイドウの金棒が直撃し、小さな身体が金棒にくっつくように曲がる。構わずカイドウが金棒を振り切ると、イブキの身体が吹き飛んでいき、吹き飛ぶ先の木々や岩を破壊しながら島の奥へと姿を消した。

 

「おい、アイツの治療を急げ」

「は、はい‼︎」

 

 今のイブキならあの一撃で気絶しているだろう。そのためカイドウは唖然としている百獣船員を急がせた。

 

 カイドウのイブキへの褒美。それは覇王色を体験させること。本当なら覇王色を浴びせるだけの予定だったのだが、イブキがキングを戦闘不能にまで追い込んだことで浴びせるだけでは褒美としては足りないだろうと考え直し、直接ぶち込むスパルタ褒美へとランクアップした。

 

 もう一人の息子()が見ていれば金棒の一撃と共に絶縁状を叩きつけてきそうな行動だが、月歩の件からカイドウはイブキにはこれでいいと確信している。しかし今更ながら覇気の使いすぎで疲弊している娘にする行動ではなかったかと内心で不安になり始めた。

 

 そんなカイドウの不安を消し飛ばすように、イブキが吹き飛んでいった方向から覇王色の覇気による威圧がこの場を襲う。その覇気を身体に浴びたカイドウは背後にいる船員達が気絶して倒れていく音を聞きながらも自身の口の端が上がっていくのを抑え切れなかった。

 

 治療に向かわせた船員を引き摺り、森の奥から覇王色の覇気を放ちながらイブキが姿を現した。既に金棒を担ぐ気力もないのか片手で引き摺り、能力で再生が始まっているものの殴られた際にカイドウの金棒についたトゲによって作り出された傷口からはまだ血が流れている。

 

 それでもイブキは鋭い目付きでカイドウを睨んでいる。泡を吐いて気絶している船員を投げ捨て、金棒を握りしめてから一歩、また一歩とカイドウへ歩を進めていく。

 

「ウォロロロロ‼︎ イブキ!お前なら覇王色を持っていると──」

 

 そんなイブキを歓迎するようにカイドウは金棒を構えたが、直後にイブキの身体が前のめりに傾いた。その姿にカイドウは握りしめていた金棒を捨てて手を差し伸べれば、そこへ収まるようにイブキが倒れ込んでくる。

 

 様子を見れば今度こそ完全に気絶している。むしろ今さっきまで動けていたことがおかしかったのだ。見聞色で聞こえるイブキの『声』は消えていないので死んではいないだろう。

 

「治療を急げ」

「了解です。あの、手錠はどうしましょうか?」

「コイツには必要ない。負けたとわかれば暴れはしねェだろ。 野郎ども!撤収するぞ‼︎」

 

 駆け寄ってきた船医にイブキを預けたカイドウは、目的を達成したため船員達に撤収を命令するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………負けた」

 

 目を開いた先に広がる知らない天井を見て、直前の記憶を思い出した私は苦い顔をしながら呟いた。

 

 ベッドから起き上がって身体を見れば、包帯があちこちに巻かれている。しかし能力の再生で大半の傷は既に治っているので、まだ治っていない腹部のもの以外は動きにくいのでさっさと解いてゴミ箱に放り込んだ。

 

「多分ここって船の中だよね?」

 

 周囲を見渡し、大まかな当たりをつける。ベッドのすぐ近くに私の金棒が置いていたので回収し、部屋のドアを開いて外へ出てみるとすぐ近くに船員がいた。

 

「イブキお嬢⁉︎ まだ寝ていないとダメですよ⁉︎」

「怪我ならもう大半治ったから大丈夫。それよりカイドウはどこ?」

「治ったの⁉︎ じゃあいいのか? えーと、カイドウ様ならここから突き当たりの部屋にいます」

「ん、ありがとう」

 

 駆け寄ってきた船員にカイドウの場所を聞き、お礼を言ってからその場を離れる。っていうか船員に滅茶苦茶怯えられていたのだけど、私が暴れると思っていたのか。

 

 流石に負けたのだからしばらくは従うよ。不本意だけど。連戦だからなどと我が儘をいうつもりもない。

 

 でもあの雷鳴八卦は酷いと思う。褒美って聞いて喜んだ直後だったからね? 久しぶりに走馬灯を見たような気がするぞ。

 

 すれ違った他の船員達にギョッとされながら歩き進め、カイドウがいるとされる部屋に辿り着いたので一度深呼吸をしてからドアを数回ノックする。

 

『誰だ?』

「イブキだよ。入っていい?」

『ちょっと待て……いいぞ』

 

 キングの許可が扉越しに聞こえ、入ってみると部屋の中にはキングとカイドウがいた。ゴソゴソと部屋に入る前にマスクをつける音が聞こえたので、さっきまでキングは素顔でいたようだ。

 

「それで何の用だ?」

「褒美と聞いて喜んだ隙に金棒を叩きつけてきたことについて何か一言」

「得るものはあっただろ?」

「うん、それはもう滅茶苦茶凄いやつ」

 

 なんせ覇王色だ。カイドウが父親の時点で持っている可能性はあると考えていたけど、本当に持っていたとは。これは早く纏う練習をしなければいけない。

 

 会話をするにしてもとりあえずどこかに座ろうと考え周囲を見渡すが、この部屋はカイドウとキング以外使う人がいないのか椅子が二つしかない。机に座るのは行儀が悪いし、床に直で座るのは抵抗がある。

 

 ……よし。こうしよう。

 

「……おい」

 

 金棒を床に置き、キングの膝にちょこんと座ってみれば後ろから怒りにも似たキングの声が聞こえてくる。てっきりノータイムでぶん殴られると思っていたが、案外許容されるようだ。

 

 まぁ、怒っていることに変わりはないし私も冗談のつもりで乗ったので、さっさと膝から退いて金棒を椅子変わりにしようとすれば、その前に後頭部をキングの大きな手で鷲掴みにされて持ち上げられる。そのまま持ち運ばれたので部屋の外へ投げ出されるのかと思い、それはそれでいいかと抵抗せずに身体をぷらーんとさせていればキングが何を思ったのか知らないが、カイドウの膝の上に私は置かれた。

 

 ……何で???

 

 カイドウもカイドウで何も言わない。結局私はカイドウの鋼鉄カチカチ腹筋を枕にして彼らが席を立つまで部屋に居座るのだった。

 

 

 

 

 

 それから船旅をすること数日。船員がしっかり回収してくれていた屋台を甲板で開いたり、新たに加わった覇王色を纏わせる練習をしたりと忙しなく日々を過ごしていれば、この船の目的地が見えてきた。

 

 カイドウ率いる百獣海賊団の本拠地がある国、ワノ国である。




オリ主……褒美と聞いて喜んだ瞬間、カイドウの金棒から威圧感のある覇気が溢れ出したことでアレ?ってなるが、その直後にぶっ飛ばされた。結果的に覇王色が目覚めたので喜んだが、ふとした瞬間にやっぱりあれを褒美と言うには無茶があるんじゃないかと考えてしまう。





 勝負を急がないといけない理由があるにしても、オリ主に負けたことでキングの強化フラグが立ちました。
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