ビッグ・マムの追手に一応警戒しながら再び海賊船で揺られること数日。私達はワノ国まで無事に帰ってきた。
いやぁ、四皇の看板は便利でいいね。海軍の軍艦と出会ってもしばらく周りをうろちょろされるだけで攻撃されることはないんだから。私としても被害無しの完全勝利で盛り上がっている船員達の士気を落とすのは嫌だったから助かった。
港に到着すれば船員達に今回の戦利品や新たに加わった人員の案内を任せ、私は船員の一人を連れて鬼ヶ島へ直行。カイドウに仕事の結果を報告する。
私の仕事ぶりはおおむね満足のいくものだったのか、カイドウは笑って私を労ってくれた。その後は新たに加わった船員達をどう扱うのかを聞き、酷い扱いにはならないことをしっかりと確認してからカイドウの仕事の邪魔にならない程度に初仕事の感想やらあの島にあったお菓子の美味しさなどを語り退室。その間ずっと毒入りお菓子を詰めた袋を担いでいたのだけど、カイドウは全く気にしていなかった。袋から微妙に甘い匂いがしていたから察していたのかな。
部屋の前で待機させていた船員には新たな船員達をどうすればいいのか伝えてワノ国へ返す。その際にカイドウから報酬として受け取ったお金を渡し、鬼ヶ島へ戻ってくる前にワノ国で今回一緒に島へ行った船員達や新たに仲間となった人達と楽しんできたら良いと伝えておく。渡したのは結構な大金だけど人数が多いので全員に均等だと自販機でジュースを奢るレベルのささやかな労りにしかならないが何もしないよりかはマシだろう。
これで後始末は終わったと思うので自由行動に入る。まずはお菓子の賞味期限が気になるので渡す相手であるヤマトを探したのだが、私が帰ってきたことをどこかで聞いたのかヤマトの方からやって来てくれた。
ヤマトは今回私が何をしに行ったのかは話を聞かされた場にいたので全て知っている。島を滅ぼすことには顔を顰めていたけど、避難勧告はすると言って譲らない私を見ていたので一応理解はしてくれていた。むしろワノ国の惨状を知っているので父親であるカイドウが避難勧告を行うことを受け入れてその程度の被害で手打ちとすることに驚いていた。
既に滅んだとはいえ私が行った島の話は聞きたい様子。そんなヤマトを落ち着かせつつお土産のお菓子を渡すと、ヤマトは渡された袋を嬉しそうに受け取ったのだが袋を開けると笑顔が固まってぎこちなく私の方を見た。
「ね、ねぇイブキ? これってお菓子なんだよね?」
「うん、お菓子だよ。私の毒がちょっと入っているけど」
袋の中には食欲をそそる色とりどりのお菓子が入っていたのだけど、私の毒が染み込んだのか緑一色になっている。でも私の毒は無味無臭なので袋からはお菓子の甘い香りしかしない。
「大丈夫、毒がまわってもすぐに解毒してあげるから‼︎」
「え、えぇ〜、流石にこれはちょっと……」
「おでんなら結果的に問題がないとわかっていたら食べてくれると思うんだけどなぁ〜」
「……ッ⁉︎」
危機感を感じたのかゆっくりと袋の口を閉じようとするヤマトにおでんならこうしたと言えばヤマトの動きが止まった。最近わかってきたのだがヤマトはおでんを引き合いに出すと結構動きを誘導出来る。私はヤマトのこれをおでんハンドルと名付けた。
ちなみに私はヤマトからしかおでんの話を聞いていないので、私のおでん像は本当のおでんではないヤマトの理想がある程度混入してしまった異物混入おでんである。まぁそのおかげでヤマトのおでんハンドルを握りやすいのだが。
「そう…だよね。おでんなら、食べるはずだ」
閉じかけた袋の口を再び開けたヤマトは口ではそう言いながらも顔はすごく嫌がっている。食べたくないと思っていることは誰が見ても明らかだけど、私はニコニコと笑顔を浮かべるだけで何も言わない。
私も最初はヤマトが嫌がるなら無理に食べさせようとはしないで自分で処理しようと考えていたのだが、原作でマゼランの毒から復帰したルフィが毒耐性を獲得したことを帰り道で思い出してしまったのだ。
なら解毒出来る私が近くにいる今、ヤマトに強力な毒をわざと摂取させて耐性を獲得させた方が良いのではないかと考えた。そのためにわざわざ毒液をお菓子に追加したんだからな。……そのせいでお菓子が緑一色になったのは計算外だったけど。
「じゃあ……いただくよ」
「うん、召し上がれ」
お菓子を口に近付けては離すを数回繰り返していたヤマトだったが、覚悟が決まったのか手に持っていたお菓子を口に放り込んだ。
「……あ、美味しい」
あの船員のようにすぐにダウンするかと思ったけど、意外にもヤマトは何ともなかった。むしろ美味しいと言う余裕すらある。
食べても問題ないとわかれば甘いお菓子というここでは珍しいものをヤマトは嬉しそうに頬張り始めた。心なしか目もハートマークになっており、私でも美味しそうに見える。
「美味しい!美味しいよイブキ‼︎ 僕こんなの──」
「あ、ダメだった」
平気で食べるものだからヤマトも中身はカイドウみたいな耐久力があるのかと思い始めた瞬間、ヤマトは口から緑の泡を吐いて仰向けに倒れた。でも目のハートマークは継続されており、お菓子を片手に握りしめて倒れている姿はどこか幸せそうに見える。あまりにも幸せそうな姿に緑の泡を吐いてなければ美味しさに気絶したのかと勘違いしそうだ。
とはいえこのままだとヤマトの命が危ないので人獣型に変身。ヤマトを持ち上げて尻尾を巻き付けることで固定。ヤマトの首を噛んで変身したことで形が変わった歯もとい牙を突き刺し、直接体内へ解毒効果がある液体を注入して投与する。
今までの経験からこれで大丈夫だと思うが、私の毒をこんなに食べたのはヤマトが初めてなので念のためヤマトの口からも解毒成分がある液体を飲ませておく。
「誰か来て‼︎ 急患一名‼︎」
症状が治まったヤマトだが、実は別の症状でしたみたいなパターンがあると怖いので大声で周囲にいる人を呼ぶと運良く近くに人がいたのかすぐに駆けつけてくれた。
「ヤマトぼっちゃん⁉︎ そんな幸せそうな顔で何があったんですか⁉︎」
「私の毒が入ったお菓子を頬張っていたら突然倒れて……。すぐに解毒はしたけど別の症状が偶然併発していたら怖いから……」
「心配しなくても間違いなくイブキお嬢の毒が原因ですよ‼︎ おい、担架を急げ‼︎」
「あ、それぐらいなら私が運ぶよ」
「おれ達を呼ぶ意味ありました⁉︎」
駆けつけた船員達にツッコミを入れられながらもヤマトを持ち上げ、私と駆けつけた船員達は仲良く治療室へ駆け込むのだった。
◆
案の定ヤマトは私の毒で倒れただけだった。数十分も経つと起き上がってきたのだが、流石に毒入りお菓子はもう嫌だったようでお菓子入りの袋を差し出したら逃亡された。なので予定通り私が残った全てを食べて処理することに。結果、私はお腹を下した。
……いやいやいや、なんでお腹を下す??? 確かに袋の底あたりは臭いがヤバそうなものもあった。冷蔵庫に入れてなかったから傷んでいた可能性が高いが、傷んだ程度で私の肉体が屈する訳がない。野生生活で猛獣を仕留められなかった日はそこらに放置された腐肉を食べていたし、その時もお腹を下すことなんてなかったんだぞ?
もしかすると傷んだお菓子と私の毒が奇跡的な組み合わせで新たな毒となってしまって私の免疫を貫通してしまった可能性がある。いや、流石にそれはないか。それなら前の日の深夜にお腹が空いてこれなら無くなっても大丈夫だろうとこっそりと食べた見た目と臭いがヤバイ生肉の方がまだ納得出来るぞ。
とまぁ、そんな感じで私はしばらくトイレの妖精となった。しかもそのタイミングでカイドウが大看板と飛び六胞全員を連れて行く遠征があったらしく、鬼ヶ島にある程度の船員を置いて行ってしまった。
本当は私も連れて行きたかったらしいのだが、私はこのザマなので仕方なく今回は見送りとなる結果に。というかキングから船のトイレに篭ってもいいから来いと扉越しで言われていたけど私がトイレの中から全力で拒否した。行けるわけねぇだろうが‼︎
幸いにも腹痛自体は一日で治まったのだが今更カイドウ達の船を追いかける気も出なかったので私は鬼ヶ島でヤマトと一緒に留守番をすることに。といってもやることは特に変わらない。修行をしたりヤマトと模擬戦をしたりして過ごすだけだ。
この日もヤマトと模擬戦をして遊び、汗を流すために温泉に入ってから解散。温泉で温まったばかりの身体で牛乳あたりでも飲もうと食糧庫を目指していると、対面から見慣れない集団が歩いてきた。
「あ、どうも。お邪魔しています」
「はい、ご丁寧にどうも。今はカイドウや幹部連中は軒並み留守だけどゆっくりしていってね」
テンガロンハットを被り、短パンを着用している上半身裸の男が頭を軽く下げて礼儀正しく挨拶をしてきたので私も頭を下げて挨拶をする。とはいえそこから話は続かず、私達はすれ違ってそれぞれの目的地を目指して歩く。
『えっ⁉︎ 初めて通じた⁉︎』
私が曲がり角を曲がって少ししたくらいで彼の仲間と思われる人達が何やら驚いていたが、被害はまだ出ていないので気にせず牛乳を求めて食糧庫へ直行。目的の牛乳を飲み始めた頃にあの集団が歩いて行った辺りで騒ぎの音が聞こえてきたが、まだ牛乳を飲み始めたばかりだし、あの人数だったら私が急がなくても島に残っている船員達かヤマトが対処してくれると思うので今回は任せることにした。
そして飲み終わった後に一応騒ぎの場所へ様子を見にいけば大変なことになってた。そこら中に船員達が倒れているわ壁に人は刺さっているわ火が出てるところがあるわで島は大混乱だ。
この島は海に接しているので消火作業は滞りなく進められているが船員の救助は後回しにされている様子。遠方ではまだ破壊音が聞こえており、無事だった船員が言うにはヤマトが交戦中らしいので私は先に船員達の救助を行うことにした。
相当派手に暴れてくれたのか倒れている船員はかなりの数だ。そのせいで治療室に全員は入りきらず、残った人達は廊下で治療を行うことに。しかも他人に治療を出来る船医が少ないので彼らの指示を聞いて私も手伝うことになり、全員の処置が終わる頃にはすっかり日が暮れてしまった。
戦闘音は既に止んでおり、ヤマトの無事を確認するために戦闘音が聞こえていた場所へ行けば背の高い岩の上で何故か襲撃者の一人が酒を飲んでいる姿を発見。どんな経緯でそうなったのかはわからないが、ヤマトがいないということはそういうことだろう。
金棒を握りしめて跳び、覇気を全開にして一撃で楽にするつもりで呑気に酒盛りをしている襲撃者に金棒を振り下ろすが、その一撃は後少しのところで気付かれたのか回避されて彼と場所の問題でさっきまで見えていなかったヤマトが座っていた背の高い岩を破壊するだけとなった。
「おいおい、いきなりかよ」
「わー!待ってイブキ‼︎ エースは敵じゃない‼︎」
「敵じゃないならなんなの? 」
まともに当たれば自分が死ぬかもしれない威力と気付いたのか襲撃者もといエースは軽口を叩きながらも私に対して警戒を強め、ヤマトはそんなエースの前に出て私を落ち着かせようとする。だが先にここを襲ったのはエースだ。対処出来るにもかかわらず自分の欲を優先して無視してしまった私も悪いが、無視出来ない被害が出てしまった以上はやらなければいけない。
「エースは僕の……と、友達なんだ‼︎」
しかしヤマトのその言葉で私は踏み出そうとした足を止めた。再審議をするからだ。
ヤマトはエースのことを友達と言った。表情や見聞色で見てもその言葉に嘘はないはず。ならここの被害は友達とのじゃれ合いで出てしまったものとして片付けることは出来なくもない。しかも今回が初訪問でヤマトにとっても初めての友達となる。
……私も初めて鬼ヶ島でカイドウとぶつかり稽古をした時は場所を考えずに暴れまくったせいでこれ以上の被害が出たから人のことはあまり強く言えないんだよな。案の定その後のぶつかり稽古は屋上でのみ行うことになったし。
うーん、ヤマトの初の友達であるエースを殺すのは流石にやりすぎか?よくよく考えたら結構な数いたのに一方的にやられる船員達の弱さも問題かもしれない。
「わかった。ヤマトの友達なら殺さない」
「イブキ……!」
「でも半殺しにはする」
「イブキ⁉︎」
色々考えた結果、やっぱり被害が大きいのでたとえヤマトが友達と遊んでこうなったと言ってもこの惨状を見たカイドウは確実に……というか若造にここまでいいようにされた時点で怒るだろう。だからカイドウの怒りが多少緩むようにエースは暴れるだけ暴れて去ったというよりか私にボコられて逃げ去ったという方向にしたほうが良いと判断。霧散した私の殺気を見て一瞬晴れやかな顔をしたヤマトがすぐに驚く顔になったのを眺めながらもう一度金棒を握りしめる。
「どいてろ、ヤマト」
「でもエース!」
「手を出すなよ? アイツにもなんか理由がありそうだ。さっきの話を聞く限り、アイツがヤマトの妹なんだろ? 心配しなくても手加減はしてやるよ」
「いや、イブキ相手なら殺すつもりでいったほうが良いよ‼︎」
「わかってる。殺すつもりでだな。……殺すつもりだと?」
「じゃあ行くぞー!」
ヤマトの言葉にエースが頷いた後、違和感を感じたのかヤマトの方へ振り返ったのでそのタイミングで私はエースに向かって駆けて金棒を薙ぐ。あまりにも大きな隙だったので当たったと思ったのだが、しっかりと認識はしていたようで完璧なタイミングで跳んで避けられた。だがまだ追える距離なのですぐに角度を合わせて私も跳ぼうとする。
「"火拳"‼︎」
そんな私にエースが巨大化させた炎の拳を放ってくるが、気にせず私は跳んで迫る炎拳の中へ突っ込んだ。炎の中を突き進み、エースのすぐ近くまでくると上半身だけ炎から出して構えた金棒を振り下ろす。
「何ッ⁉︎ ぐあぁ‼︎」
「エース⁉︎」
まさか自分の技を無防備で受けたくせにそのまま突き進んでくるとは思わなかったのかエースは私の金棒をマトモに受けた。地面へ叩き落とされたエースにヤマトは慌てた様子で駆け寄るが、エースはすぐに起き上がって私を睨む。
「成程な、殺すつもりでいけっていうのは本当らしい。これは手を抜くと死ぬな」
「そうだね。やる気のない抵抗なんてされたらうっかり殺してしまうかも」
「へっ、言ってくれるぜ」
私の攻撃でどこか切れたのかエースの頭から血が流れる。その血をエースは腕で乱雑に拭い、好戦的な笑みを浮かべた。私が好きな強くなろうとする者の顔だ。
……良いね。カイドウへの理由作りが主な目的だったけど、私も真面目に戦おうか。立ち上がって構えたエースに私も金棒を構えて彼に向かって走り出した。
◆
「ヤマト。お前の妹は強ェな」
「でしょ? オマケに髪もふわふわで一緒に寝ると気持ちいいんだ!」
戦いは数十分程続いたが、全身傷だらけで顔がコブだらけとなったエースが倒れたので終了。無傷な私を見て悔しそうにヤマトへ話しかけたエースにヤマトは嬉しそうな顔をする。
エースの腕や脚を使った物理攻撃は鬼ヶ島へ殴り込みをかけてくるだけあって私でもちょっとだけ効いた。効いたのだがカイドウに比べると遥かに軽い攻撃なので能力による再生回復が余裕で間に合っていたのだ。なので実質ノーダメージと言っても過言ではない。後はエースの特徴でもあるメラメラの実の能力が私に対してなんの効果もないということが大きかっただろう。
それでも即座に能力は効果なしと切り捨てるのではなく、何が効いて何が効かないかを模索する姿勢は良かったと思う。まぁ全部効果なかったけど。
「これで理由作りは大丈夫だから出来るだけ早くワノ国から去りなよ」
「……わかった、帰ってやるよ。酒を飲んでからな」
「……んん?」
「ヤマトと知り合えてその妹とも縁を結んだ上に酒もある。飲まない理由は無ェだろ?」
……あれ?もしかして私がボコった意味分かってない? 酒樽を持って再び飲み始めようとする二人に思わずそう考えてしまった私は悪くないはずだ。
しかもしれっと私も一緒に飲むメンバーに入れられている。戦いを通して分かり合えたとかそんな感じか?でも私はお酒が無理なんだよね。
なので私は二人から少し離れたところで無事だった船員達に指示を出したりしながら見守ることにした。途中でエースが私に酒を勧めて私やヤマト、無事だった船員達全員から反対されて戸惑う一幕があったがこれ以上の戦闘はなく、穏やかに時間が過ぎていくのだった。
夜が終わり時間は朝。結局この時間まで残っていたエースを私とヤマトは見送りに来ていた。
「……ごめん、ちょっと待って」
「どうしたヤマト? 言い忘れでもあるのか?」
「やっぱり、今なら出来ると思うんだ」
再び出会うためにヤマトが作ったエースのビブルカードを本人に渡し、いよいよ別れの時……となったタイミングでヤマトはエースに声をかけて引き留めた。
私とエースがヤマトを見るなか、ヤマトは覚悟が決まった顔で自身の両腕についた手錠を睨み付ける。
「少し前からコツは掴んでいたんだ。でも今はイブキがいるし、もしこいつを外した後の爆発で取り返しがつかない負傷をしたらと思うと怖かった。だけどエースの話を聞いて理解した。やっぱり僕は外に行きたい! 世界を見てみたいんだ‼︎」
だからと言葉を続けてヤマトは腕に武装色を纏い、手錠を握りしめる。ミシミシと鉄が軋む音が鳴り響き、手錠が形を変え始めたと思えば破壊されてヤマトを長年縛り付けていた枷が外れた。
「……ッ‼︎ やった!やったよ二人とも‼︎」
「ちょっ⁉︎ エース‼︎ 船を守って‼︎‼︎」
感極まった様子で外れた手錠を見るヤマトだが、そのせいで手錠を何処かに投げ捨てる様子が全くない。一度爆発までを体験している私は残り時間が無いと理解しているので、咄嗟の判断でエースに自身が乗っている船を守るように叫ぶ。その直後に手錠を中心とした大爆発が起きた。
「本当にごめんなさい」
私とヤマトは普通に無事。エースも私の言葉で反射的に能力を使ったのか船を含めて問題なし。しかしエースだから良かったものの、ここにエース側の船員が居たら死人が出ていたかもしれないと気付いたヤマトは先程の喜びから一転して落ち込んでいた。
「結果論だけどみんな無事だったから次から気を付けたらいいよ。切り替えて話を次に移そっか。ヤマトはこれからどうする予定なの?」
「僕はエースの船に乗って一緒に外へ行きたいと思ってる」
「おう、歓迎するぜ」
「えっと、良いムードのところ申し訳ないんだけど……。ごめん、それは許可出来ない」
「……えっ?どうして?」
ヤマトにこれからの予定を聞いて二人の間に仲間入りムードが流れているけど私はそれをぶった斬る。帰ってきたカイドウがどんな行動をとるのかある程度理解出来ているからだ。
「多分……、っていうかほぼ確実にカイドウはヤマトを連れ戻しにくるよ。ヤマトは船のみんなをカイドウから守れる?」
「おいイブキ──」
「エースも身体の硬さに戦闘力が私以上のカイドウ相手にみんなを守りながらダメージを与えて追い払うことは出来るの?」
私の言葉にエースはカチンと来たのか何かを言おうとしたけどそれに私は言葉を被せる。戦ったことで私の硬さを実感している以上、明確にダメージを通せるビジョンが見えないのかエースは黙り、私を睨み付けるだけだ。
「そんな……やっぱり僕は……」
私の言葉にヤマトは手錠が付いていた箇所を見て泣きそうな顔になっている。なんだか凄い悪いことをしている気分になるが、ヤマトは何か勘違いをしていそうだ。
「別に私はヤマトが外に行くことを反対していないよ。エースと一緒に行くのは彼らが危ないから止めているだけ」
「でも……!」
「仲間と一緒に海へ出たいんでしょ? だからヤマトには私がついていくよ」
「……本当⁉︎」
いつかは鬼ヶ島から出ていくつもりだったし、ここで世話になった分の仕事はしたばかり。ヤマトが手錠を外した今なら丁度良い頃合いだろう。っていうかヤマトを一人で外に出したら戦闘面以外で不安がある。そのうちの一つを例に出すなら男湯へ突撃するヤマトだ。
まさか私がついてくるとは思っていなかったのか、一気に元気となったヤマトは私を持ち上げてクルクルと回る。そんな私達を見たエースはニィッと笑みを浮かべると船を動かし始めた。
「話は纏ったようだな。だがイブキ、今は無理だがさっきの言葉をいつか取り消してもらうぞ」
「そうだね。その時が来たなら私は安心してヤマトをそっちに送れそうだよ」
「エース!またね‼︎ 今度は海で会おう‼︎」
「おう、ヤマトも元気でな‼︎」
エースの去り際の言葉に私は軽く笑みを浮かべて答える。島から離れていくエースにヤマトは私を抱きかかえたまま千切ったエースのビブルカードを持った手を振り続け、エースも振り返ることはないが軽く手を挙げてヤマトのそれに返事をした。
「僕達も早く行こう! 船はどれがいいかな?最初はどこを目指す? あー、楽しみで仕方ないよ‼︎」
「はいはい、落ち着いて。まずは準備だよヤマト。替えの服とか道中の食料とか……後はカイドウが勘違いしないように置き手紙も残しておこうか」
「わかった! 準備してくるからイブキも急いでね‼︎」
エースの姿が見えなくなるとヤマトは興奮した様子で私に問いかけてくるので一度落ち着かせ、準備を促すと猛ダッシュで建物の中へ戻っていった。その子どもみたいな姿に私は思わず微笑んでしまう。
「私も急いで準備しないとね」
あまり遅いとヤマトが待ちくたびれてしまうだろう。いつもより速く歩きながら私もヤマトを追いかけるように建物の中へ入るのだった。
オリ主……地味にエースのことを攻撃するまで思い出せてなかったが一度気付けば色々と関連する知識も思い出してしまい、取り消し発言のところでミームとなったアレが出てきた。
カイドウへの置き手紙↓
ヤマトの場合
『僕は自由だ‼︎‼︎‼︎』
オリ主の場合
『ヤマトが手錠を自力で破壊することができ、外の世界へ行こうとするので一緒についていきます。大変お世話になりました。また暇になったら遊びに来ますので、その時は遊んでくれると嬉しいです。
追伸、ここを襲撃した人物はボコボコにしましたが逃げられました。ごめんなさい』