アンチ・ヘイトよりキャラ崩壊をつけた方がいいのではないかと思う今日この頃
シャンクスが乱入してから戦闘はさらに激化し、覇王色の激闘で天が割れるし海は荒れるし大地は揺れるしで移動しながら戦う彼らが通り過ぎた場所は天災が通り過ぎた後のような様相となっていた。
「あーあ、シャボンディ諸島が沈みそうな勢いだけど大丈夫かな」
二日酔いで弱体化しているとはいえ四皇幹部が戦闘の余波からウタを護衛するついでに私とヤマトも守ってくれているので私達からすると正直言ってこの状況はさっきよりも楽だ。なのでこの世の終わりみたいな光景を生み出している戦闘を二日酔いで苦しむ幹部連中に水を渡しながら観戦する余裕がある。
戦闘は実質カイドウ対シャンクス&大将二人で、最初はそれぞれバラバラに戦っていたけどカイドウが絶好調の一強状態だったので二日酔いシャンクスと傷だらけな大将だとどうしようもなく、放っておくとカイドウによって全滅もあり得たので止めるために自然と手を組んだ形だ。
上手く止めることが出来れば今度は海軍が私達を捕まえようと動くはずだけど、あそこまで傷を負った大将達に私達を捕まえる余裕なんてないと思うので頑固親父の赤犬はともかく黄猿は素直に撤退を選ぶだろう。残った赤犬が暴れても今の赤犬なら誰かの手を借りなくても余裕で逃げ切れるのでこの時点で私達の逃亡成功は確定しているといっていい。
だからもう戦闘をする意味なんてあまりないのだが、カイドウが楽しそうだし別に止める必要はないか。余波は危ないけど。
外れて飛んでくる赤犬と黄猿の攻撃は怖くないけど、カイドウのブレスと壊風は毎回ヒヤヒヤする。特に壊風は無防備で受けてしまうとほぼアウトの殺傷力があるし。
「おどれェ……、カイドウゥ……」
「こりゃ〜、イカンねェ〜」
まだまだ戦闘は続くのかなと思っていたが、カイドウの"
「悪いな、おれの娘が見ているんだ。人死には無しで頼む」
「甘ったれたこと言ってんじゃねェぞ赤髪ィ‼︎」
「おいおい、怒鳴るなよ。頭に響く」
そこへシャンクスが割って入った。攻撃を阻止した理由にカイドウは怒るがシャンクスは眉を顰めるだけで怯まない。その間に黄猿は赤犬を連れて二人から距離を離した。
「海軍、悪いがコイツをおれに譲ってくれないか?」
「そんなふざけたッ……!」
「サカズキ〜、無理はイカンよォ〜」
シャンクスの提案に赤犬は激昂したが、傷が痛むのか言葉は最後まで出なかった。そんな赤犬とは違い、黄猿はシャンクスに任せようと動き始める。
「正直わっしらも限界でねェ〜、それでも最低限の仕事はしないと面目が立たないのよ」
「……イブキといったか? 天竜人を海軍に返してやれ」
「えー、せっかく防壁代わりにしてたのに」
黄猿がチラッと私の方を見れば、言いたいことがわかったのかシャンクスは龍となったカイドウの"
……はぁ、天竜人がいれば海軍から攻撃が来なくなるから便利だったんだけどなぁ。赤髪海賊団に囲まれている今なら渡すのを拒否しても結果は変わらないだろうし、サッサと渡して好感度を上げておいた方が良いだろうね。
シャンクスの視線を受けて、私はカイドウが落ちた穴からわざわざ掘り出して海軍に対する牽制として使っていた二人の天竜人をため息を吐いてから黄猿に向けて投げ渡す。そいつらを狙ってカイドウが壊風を放ったが、流石にそれはシャンクスに阻止されたようだ。
私が投げた天竜人を受け取った黄猿はシャンクスの覇王色で気絶していた海兵達を叩き起こすと素早く撤退を開始。赤犬はふざけるなと最後まで抵抗していたけど黄猿を振り解くほどの力も残ってなかったようでそのまま連れて行かれた。とはいえ遠くから私達を観察する視線は感じるので監視役はどこかに潜んだままだろう。ならこれは撤退と言うよりか別の海兵と交代すると言った方がいいかもしれない。
「あとはカイドウ、お前だけだが?」
「ウォロロロロ……‼︎ おれが退くと思ってるのか?」
カイドウが笑ったと思えば戦意を漲らせながらシャンクスに金棒を振り下ろした。不意打ちとも取れる神速の攻撃だったがシャンクスはそれを見切り、最低限の動きで回避。二日酔いとは思えない動きで攻撃終わりの無防備なカイドウの胴体をカウンターで斬り裂いた。
「ぬぅ⁉︎」
「何度でも言うが今回はおれの娘が見ているんでな、情けない姿は無しだ」
「二日酔いの時点で情けないも何もなくない?」
「……今から情けない姿は無しでいかせてもらう」
斬られた箇所を押さえて数歩後ろへ下がったカイドウに剣先を突きつけ、決め台詞を言ったシャンクスに私がボソッとツッコミを入れると聞こえていたのかシャンクスは即座に言葉を言い直したのだった。
◆
シャンクスとカイドウの攻撃がぶつかり合い、周囲に衝撃波が巻き起こる。外野が目で追うのも一苦労な速度で剣と金棒をぶつけ合い、時に拳や蹴りを混ぜ込む戦闘。
「ウタは小さい頃は頻繁に手伝いをしてくれてな。特におれにはよく懐いていた…!」
「ぐぅ⁉︎」
しかしこれを四皇同士の戦いと呼ぶには不純物が混じっていた。それは娘が自分に何かをしてくれた自慢である。他にも娘のどんなところが可愛かった、どんな行動が嬉しかったなども混ざっており、要はタダの娘自慢だ。
そんなシャンクスのことなど黙ってぶっ飛ばせばいいのだが、残念なことにカイドウにも娘が二人いるので娘自慢が出来てしまう。なら最強生物としてこの戦いは受けて立つべきだとシャンクスの自慢を勝手に勝負と認識してしまったカイドウはシャンクスの娘自慢勝負の土俵に上がった。
だが今はシャンクスが優勢だ。シャンクスのウタ自慢は現在幼少期。それに対してカイドウは幼少期にヤマトのことでシャンクスの娘自慢を凌駕できるレベルのものが無い。何故なら危ないからとヤマトに手伝いなんて一切やらせなかったからだ。イブキに関しては所在すらわかっていない。
「んぐー‼︎ むぐぐごー‼︎‼︎」
「ウタがあそこに行っても巻き込まれて死ぬだけだからやめときなって」
しかしシャンクスの娘自慢は娘本人からしたら尊厳を破壊する諸刃の剣。幼少期のこととはいえ他人であるカイドウにおねしょの話をした時は顔を真っ赤にしてウタは戦場へ乱入しようとしていた。そのため今はヤマトに羽交い締めされながら歌えないように口を手で押さえられ、イブキに両脚を持ち上げられて拘束されている。ウタは必死に拘束を解こうとしているが、残念なことに彼女では二人のフィジカルに勝てないようだ。
唯一シャンクスを止めることが出来るウタがご覧の有様なのでシャンクスは滅茶苦茶喋る。たとえカイドウに勝ててもその後が地獄になることを確定させるレベルで喋りまくる。だがウタと一緒に風呂へ入った話題になるとカイドウの瞳がギラリと光った。
「ウォロロロロ‼︎ おれの子どもは今でもおれと風呂に入ることが出来るぞ‼︎ 勿論タオルは無しだ‼︎」
「何ッ⁉︎ ぐあぁ‼︎」
『お頭⁉︎』
カイドウの言葉に信じられないとシャンクスが目を見開いた隙に金棒の一撃が命中する。吹き飛んでいくシャンクスに船員達は叫びつつ、視線はカイドウの娘である二人の元へ向いた。真偽を確定させるためだ。これで嘘だったらカイドウは娘にこうして欲しいという願望を口にするほら吹き野郎のレッテルを貼られて劣勢となるが、真実なら今でも裸の付き合いが許されるほど好感度があるということでカイドウは一気に優勢となってしまう。
「別に見られて困る身体付きじゃないし」
「僕はおでんだ‼︎」
結果として片方は怪しかったが二人は肯定。しかも二人とも全く恥ずかしがっていないので赤髪海賊団に衝撃が走る。まぁイブキは言葉通りでヤマトはおでんは男だから云々で気にしないという理由なのだが、そんなことは動揺した赤髪海賊団にはわからない。
この話題で逆転するためには今のウタが父親であるシャンクス"達"と風呂に入ることを肯定する必要があると赤髪海賊団は考え、ウタへ期待の視線を向けたが当のウタはその視線に気付くなり首を必死に横へ振って否定している。それに赤髪海賊団はガッカリしたが、それと同時に普通はそんな反応だよなと安堵した。
「どうした赤髪ィ‼︎ お前の娘自慢はその程度か⁉︎」
勢いづいたカイドウはシャンクスへ怒涛の攻撃を仕掛ける。普通の戦闘ならシャンクスも負けじとやり返すが、これは娘自慢という真剣勝負に全く関係ない不純物が混じった勝負だ。風呂の話題が出るまでは攻勢に出なかったカイドウに倣い、シャンクスもここは耐え忍ぶ。だがここからシャンクスは一気に不利となる。
「ウタは頬や額にキスをしてくれた──」
「んー、頬と額だったらやってもいいかな」
「手を繋いで買い物──」
「別に身長が届けば大丈夫」
「一緒に寝たこと──」
「潰されないか心配だけど、それも大丈夫かなぁ」
シャンクスの娘自慢をイブキが全て今でもやっていいと言うのだ。もしかしてカイドウを勝たせるために嘘をついているんじゃないかとシャンクスとついでにカイドウも見聞色でイブキの内心を覗いたが、まさかの全て本心。どれもこれも恥じらい一つ無い。
「なら何をされたら嫌なんだよ⁉︎」
「相手からベタベタされることかなぁ。頬擦りみたいな感じの。されたくなったら勝手に近寄るからそれまではベタベタしないでほしい」
「猫か⁉︎」
「……にゃぁ〜ん」
「猫だ‼︎」
だがそのウェルカムな姿勢にカイドウは嬉しく思いつつもここまで来たら今度は頭を抱えることに。頬や額にキスなんて唇をくっつけるだけでしょと考えているイブキに少しは危機感を持てと内心でツッコミを入れ、突然増えた心配の種をどう処理するべきかと悩む。言い方的に相手からされるのはどれも嫌みたいだが自分からでもキスは普通嫌になるだろ。おでんを名乗るヤマトでさえイブキの言葉に驚いている姿を見た時は思わずカイドウは安心してしまった。
「お頭‼︎ もうやめよう‼︎ この戦い方じゃあカイドウには勝てない‼︎」
イブキという娘自慢での強敵登場。ホンゴウによってイブキがウタより歳上ということも判明しているのでまだ子どもだからそんなことを言えるという言い訳も使えない。そのため赤髪海賊団はシャンクスに普通に戦うように進言するが、シャンクスは父親として退けないのかその進言を聞き入れない。
「駄目だ! お頭が意地になってる‼︎」
「……なぁ、カイドウはお前らの幼少期の話題を全然出さなかったが、なんでなんだ?」
「んー、小さい頃のことはあまり覚えてないからなんとも言えないけど、僕は8歳の頃から最近まで外へ出られないように鬼ヶ島に閉じ込められていたし、その時から父と喋ることなんて滅多になくなったから……」
意地になったシャンクスに一部のメンバーが頭を抱えるなか、ヤソップはシャンクスの援護になればと二人に疑問を投げつけた。そしてこれは逆転の芽が出るほどの有意義な情報を引き出すことに成功した。
鬼ヶ島に閉じ込める。即ち監禁。発覚した時点で強制的に負けとなっても良いレベルの娘自慢における禁忌とも言える行いだ。しかもカイドウは顔を顰めるだけでそれを否定しない。つまり本当のことなのだろう。
攻勢に出たシャンクスにこれは勝ち目が出てきたかとウタがジト目になっていることに気付かないまま赤髪海賊団は勢いつき、ヤマトでこれならイブキにも何かあるだろうとダメ押しの一手を加えるために期待の視線を向けた。
「私の過去? 別に話してもいいけど──」
だがこれは悪手…‼︎ イブキから語られる本人の幼少期。無人島からのことしか知らなかったヤマトやある意味自分より酷い人生を送っていたことを知ったウタは驚き、途端にイブキにベタベタし始める。
「──それでカイドウが来て外に出ようって思えたから……まぁ、今になっては嬉しかったかなって」
当時のことを思い出しているのか、ベタベタくっついてくるウタとヤマトを引き剥がしてからイブキは照れ臭そうに視線を逸らしながら語り終えた。
あ、負けた。ウタを除いた赤髪海賊団は誰一人違わず理解した。これはカウンターだ。ヤマトの過去で誘い込み、攻め込んできたところをイブキの過去でブン殴る。
よくよく考えたらヤマトを閉じ込めたことも決して悪ではない。シャンクス達だって他の海賊団と戦っている時は自分達の海賊船の中で一番安全な場所にウタを隠していた。なので赤髪海賊団より悪名高いカイドウが拠点にヤマトを隠しておく選択をしたことにも理解出来る。出来てしまう。特にイブキを迎えに行ったカイドウならそうする方が自然だ。
まぁ実際は三回目でやっとカザミに似てないかとカイドウの思考の端っこに引っかかる程度でその時はどっちも自分達が親子の関係だとは思っていないし、イブキはカイドウから逃げるために島を出たのだが、そこまではイブキも話していないのでシャンクス側は誰も真実に気付けなかった。もしイブキが語っている最中に嫌そうな顔をしていたらベン・ベックマン辺りの察しの良い人物が何かあると気付けたかもしれないが、長くカイドウと付き合って心境の変化があったのか初エンカウントはイブキの中では懐かしい思い出として処理されており、それによって嫌な顔もしなかったので誰も気付けなかった。
「"雷鳴八卦"‼︎」
「……ッ‼︎」
「シャンクス⁉︎」
娘からの援護を受けたカイドウの雷鳴八卦がシャンクスにまともに当たり、ダメージが溜まったのか初めてシャンクスが膝をついた。痛みか二日酔いかわからないが頭を押さえており、苦しそうなその姿にウタは思わずシャンクスの名を叫ぶ。
そんなウタの声を掻き消すようにカイドウがシャンクスに迫る。纏う覇気は大きく、確実にシャンクスを仕留めるつもりだろう。
「これで終わりだ赤髪! "
筋肉を肥大化させ、武装色と覇王色を纏ったカイドウが迫る。
「シャンクス‼︎ 負けないで‼︎ 情けない姿は無しなんでしょ⁉︎」
そんな時、シャンクスの負ける姿を見たくないウタの応援が周囲に響く。声が聞こえるとシャンクスの覇気が普段の時と同じくらい大きくなった。
能力も何も使っていないただの声援なのに娘の応援は一番効くと言いたげにシャンクスは立ち上がり、カイドウへ向かって跳んだ。この戦闘での最高速度に攻撃のタイミングをずらされたのかカイドウは思わず目を見開く。
「行けー!ウタのお父さん‼︎ カイドウなんてぶっ飛ばせー‼︎」
「…………」
さらにそこへヤマトがシャンクスを応援する始末。しかしイブキが声には出していないが内心でカイドウの負ける姿は見たくないと思っていることを見聞色で読み取ったカイドウは即座に崩れた攻撃のリズムを立て直す。
「──雷鳴八卦"‼︎‼︎」
「"
「ん?うわぁ⁉︎」
「えっ!イブキどこ行くのォ⁉︎」
「私に聞かれてもわからないよォ⁉︎」
今までのとは比にならない衝撃が周囲を襲い、四皇二人を中心に大地は破壊され、巻き起こった暴風が一番軽いイブキを吹き飛ばした。
「ウオォォォォ‼︎‼︎」
「ハァァァァァァ‼︎‼︎」
金棒を持っていなかったせいでコロコロ転がっていくイブキをヤマトが助けに向かおうとするが、四皇二人の攻撃は拮抗しており下手に動けば吹き荒れる暴風にヤマトも吹き飛ばされてしまう。そのため遠ざかっていくイブキを見送るしかなかった。
しかしその時、イブキの背後に現れた老人がイブキを受け止めた。老人はイブキの様子を確かめてから未だに拮抗している四皇二人へ覇王色を放つ。その圧にカイドウとシャンクスの意識は逸れ、互いに技を中断して距離を離して茶々を入れてきた老人へ視線を向けた。
老人の正体にシャンクスが最初に気付き、驚きと喜びが混じった表情に。次に気付いたカイドウは驚きと何故コイツがここにいると警戒を露わにした。
「レイリーさん‼︎」
「レイリー‼︎ 何故お前がここにいる⁉︎」
「ただの娘自慢なら何もするつもりは無かったが、先程のは流石に見過ごすわけにはいかないのでね。邪魔させてもらった」
イブキを立たせた老人、元ロジャー海賊団副船長の伝説の海賊である『冥王』シルバーズ・レイリーは穏やかな口調だが、咎めるような視線で四皇の二人を見つめるのだった。
オリ主……しれっと天竜人を盾に使用していたが、海軍に対しては本当に優秀な盾となるので便利だと気付いてしまった。しかし今回は盾が二つもあったので金棒を持っておらず、後の衝撃波に吹っ飛ばされた。気が向いた時じゃないと基本的に相手からベタベタ触られるのは嫌な人。
オリ主に積極的にベタベタしにいくと嫌な顔をして離れていくので忍耐強く耐えましょう。するとそのうち自分から近寄ってくるので見聞色で内心を読み、大丈夫だと判断してから思う存分ベタベタしましょう。
ベタベタしたいけど見聞色が使えないからタイミングがよくわからない? それならさりげなく視界に入り込んで来るようになるのでそれが合図です。短時間で5回以上入り込んできたらベタベタしましょう。
……おかしいな、いつの間にか娘自慢になってた。元から書くつもりだったけどもっと軽めに娘自慢させて、主軸は戦闘の予定だったのに。
これキャラ崩壊してないよな(カイドウを見つつ)