別の続き作っていたらかなり日が開きましたね。
カイドウが海軍へ特攻しようとするので太い彼の腕を引っ張ることでなんとか阻止し、張り合おうとするヤマトも人獣型の尻尾を巻き付けて回収して逃走を開始。
しかし敵前逃亡はプライドが許さないのかカイドウは腕にくっつく私を引き剥がしてから海軍の方へ特攻してしまった。引っ張ると言っても私の身体では両腕がカイドウの太い腕を挟んだ向こう側には届かなくてただくっついているだけだったのでカイドウからすると引き剥がすのは簡単だったのだろう。雑に扱っても私は頑丈なので怪我とかしないし。
一応カイドウが突っ込んでくれたおかげで海軍の目が私達から逸れたので、その隙に有り難く逃走させてもらおう。とはいえ何もしないで逃げるのは少し申し訳ないので獣型に変身。今回の戦闘でへし折れたヤルキマン・マングローブに尻尾を巻き付けて根っこごと木を引っこ抜き、根っこに絡みついている瓦礫やらをそのまんまにして海軍がいる方向へとぶん投げてやる。
残念ながら投擲したヤルキマン・マングローブは海軍の軍艦へ届く前に様々な攻撃によって粉砕されたが、良い援護にはなっただろう。マングローブを引っこ抜いた際の感覚的に全力でやればシャボンディ諸島の一区画を丸ごと放り投げることも可能だと思うけど、ただの援護で他人の家や店がある土台ごと放り投げるのは申し訳ないので自重させてもらった。
というわけで私が手伝えるのはここまでだ。これ以上やればカイドウを無視して被害が大きくなったとしても私を仕留めないといけないって海軍が覚悟を決めてしまいそうなので、とっととこの場から逃げよう。
私に負けてはいられないと気合の入ったカイドウの"熱息"が直線上に並んだ4隻の軍艦の船体を撃ち抜いたのを尻目にひっそりと私達はシャボンディ諸島から逃げ去るのだった。
ウタがいなくなったことで移動中に聴いていた歌も無くなり、少し寂しく感じながら私とヤマトは再び目的地の無い旅をする。屋台で資金を稼ぎ、模擬戦や悪い海賊や海兵狩りをして、たどり着いた島独自の文化を楽しむ。そんな旅だ。ぶっちゃけ海兵狩りをするつもりなんてなかったのだけど、加盟国じゃない島で生活している島民の資産を適当な罪状で奪っていく、お前本当に海兵か?みたいなことをしている海兵に怒ったヤマトが突っ込んでいくので仕方なく手を出している。
もちろんヤマトは毎回言葉で解決しようとしているのだけど、それに対する海兵の返答が逮捕や銃撃などの攻撃ばかり。いちいちそこまでのやり取りを聞くのも面倒臭くなったので完全に海兵が悪いと私が判断したら即座に金棒でぶん殴ることにした。
ちなみに海兵が持ち出す罪状は島から海賊が出た罪ね。その海賊が生まれ故郷の島に財宝を隠しているだろうから我々が回収しますみたいな言い分だ。それで本当に埋められた金銀財宝を掘り出して回収するだけなら何も言うつもりなんてないのだけど、あれも財宝これも財宝、全部財宝と島民の家に押し入って色々と奪う。これで島民が文句を言えば海賊を庇った罪を適用させてくるのだからどうしようもない。場合によっては文句を言った島民へ発砲する。
ここまで酷いやつなんて今まで全然見ていなかったのに、いきなり増えた印象だ。彼らをそこまで増長させた原因がどこかにあるのだと思うのだけど残念ながら私にはさっぱりわからない。
まぁ知ったところで私達ではどうしようもないことだと思うけどね!
◆
悲報、原因の一端が私達にもあった。なんでもシャボンディ諸島で最後にカイドウが暴れまくったせいで怪我人が続出し、海軍の指揮系統に乱れが出ている模様。それを知った力の弱い海賊や海賊になりたての人達は今が勢力拡大のチャンスと言わんばかりに暴れ始め、当然それを押さえるために海軍は動くしかない。そのせいで乱れた指揮系統が更にゴチャゴチャになる悪循環に陥り、末端まで目が届かなくなる。そのせいでこれぐらいならと秩序側である海兵までもが悪さを始める始末。
「それ、本当なの?」
「わざわざ嘘なんてつかねェよい」
偶然通りかかった白ひげ海賊団の船にお邪魔して、この情報を届けてくれたマルコに確認を取るが、マルコの言った通り私達に彼らが嘘をつく必要なんてない。
うーん、カイドウを呼んでウタを見守るシャンクスを引き摺り出す作戦は上手くいったけど、その後のことは正直全く考えていなかった。私はカイドウの悪名をまだ甘く見ていたようだ。
やっちまったなぁ、これ。もう私達だけでどうにか出来るレベルじゃないし、せいぜい通りかかった島で悪さをしている奴らがいたら殴り倒すくらいしか出来ない。海軍の指揮系統が回復するのを待つしかないか。
「……あれ? ヤマトは?」
「イブキの姉ならあそこだよい」
関係ない者達まで巻き込んだことに後味は悪いけど仕方ないと割り切ったところでいつの間にかいなくなっていたヤマトを探せば、マルコがとある方角を指差した。そちらを見れば、ヤマトがとある人物と楽しそうに会話している最中だった。
「何やっているのさ、ヤマト」
「あっ、イブキ‼︎ これ見てよ‼︎ この子が──」
「おい待てヤマト‼︎ そこから先はおれに言わせろ‼︎」
ヤマトに声をかければ、私に気付いたヤマトが興奮気味にとある手配書を持って私に迫る。しかしその言葉は途中でヤマトの頬を押して割り込んできたエースに中断された。
そう、実は既に白ひげの船にはエースがいた。っていうか彼がいたから私達は白ひげの船にお邪魔することが出来たのだ。初めて私が乗った時のようにカイドウの娘かもしれないじゃなくて確実にカイドウの娘だと判明しているからね。しかも二人。面倒なことになるのなら最初から船に乗せない選択のほうがいい。
エースが白ひげ海賊団に入る時期はハッキリと知らなかったけど、かなり長い期間私達はエレジアにいたのでその時に色々とあったのだろう。つい最近になって二番隊の隊長になったらしく、すっかり白ひげ海賊団に馴染んでいる。
そんなエースが自分の友達だと白ひげに直接言ってくれたことで私達に監視ありで乗船許可が出た。いやぁ、ありがたい。
「イブキ、こいつは誰だと思う?」
「んー、エースがぶち殺したくて仕方ない人?」
「ぶっ⁉︎ そんなわけないだろ⁉︎ 相変わらずだなイブキは!」
エースが見せてきた手配書を見て、ハズレているとわかっていながらも間違えた答えを言えば、エースは吹き出して出会った時と同じ態度の私を見て笑う。
「こいつはだな、おれの弟だ‼︎」
「へぇ〜、確かに……似ているね」
「だろ? まぁ、血は繋がってないけどな」
エースが手配書を私に見せながらニッと笑って答えを言う。手配書に写る男の名はモンキー・D・ルフィ。この世界の主人公であり、いずれカイドウをも倒す男。賞金額は低いので指名手配されたばかりなのかもしれない。
ルフィとエースを見比べて、正直に思ったことを言えばエースは心底嬉しそうに笑った。
「それで? わざわざ見せたってことは私達がエースの弟と出会った時に何かして欲しいことでもあるの?」
「どうもしなくていいさ。アイツにはアイツの仲間がいるだろうからな」
「ふーん? つまりただ弟を自慢したかったってこと?」
「そういうこった」
ふむ。なるほど、完璧に理解した。これはコチラも応えねば無作法というもの。
そのためにヤマトを手招きして隣に呼ぶと、彼女は不思議そうな顔をして私の隣に歩いて来た。
「エース、私のお姉ちゃんは可愛い」
「えっ、イブキ⁉︎」
「おいおい、いきなり何を──」
私が突然褒め始めたことにヤマトは慌て、エースは何を当たり前なことをと言いたげな顔をしていたが、電流が走ったかのように身体を一瞬だけ硬直させた後、私の意図を理解したのかニヤリと笑ってルフィの手配書を構えた。
「ルフィはよくおれ達の後ろを付いてきてな──」
「お姉ちゃんは今でも私が寝る布団に──」
突然大声で話し始めた私達に他の船員達の視線が集まり始めるが、しばらく内容を聞いて私達が何をやっているのか理解した人達から離れるか観戦かに分かれた。
そう、これは姉弟自慢勝負。当然負けるわけにはいかない。
「ね、ねぇイブキ? これって僕がやる側なんじゃ……?」
「私にお世話されているもんなんだからヤマトは自慢される側でしょ‼︎ そういうことはせめて布団やお風呂に紛れ込んで来ないようになってから言うべきだよ‼︎」
「えぇー⁉︎」
精神年齢を考えたら実際私の方が歳上なので間違いではない。つまりヤマトは姉であり、妹なのだ。
「まぁ、姉妹にもいろんな形があるんだ。イブキなりにヤマトのことを慕っているのは外野のおれ達でも分かるから気にすることはないよい」
「ぼ、僕はイブキの兄なのに……」
「そうだよな。でも妹の我儘を聞いてやるのも兄の……ん? 兄?」
ヤマトがいれば彼女の姉ムーブ自慢と妹ムーブ自慢が同時に出来る。そんな私が負けるわけないでしょうが‼︎
◆
私とエースは熱い戦いを繰り広げ、やがて決着した。結果は引き分けだ。しかしそれは相手の良いところが同じ数だけあったのではなく──。
アイツのあんなところが良いよな?
わかる、良いよね……。
みたいな共感による理解で終了した。私とエースは分かり合えたのだ。
そのまま意気投合した私達はしばらく白ひげの船にお邪魔する流れとなったのだが、そこで一悶着が発生した。流石に四皇の船にお邪魔することはカイドウに連絡する必要があると判断し、スパイ的な目的ではないことを証明するために白ひげに事情を話して彼を含めた船員達のど真ん中でカイドウへ白ひげの船に滞在する旨の連絡をしたのだが、白ひげの船に乗るのは許可出来ないのかカイドウからは滅茶苦茶反対された。
戦争も辞さない態度でカイドウは怒るし、そんなカイドウにヤマトが反発するしで大変だ。あまりにもカイドウが怒るから白ひげがダメ元でカイドウに理由を聞けば──。
『ニューゲート‼︎ てめぇのところは男所帯だろうが! おれの娘達に何かあればどう責任を取るつもりだ‼︎』
すっごく至極当然な拒否理由が返ってきた。これには思わず私達全員が黙り込み、怒るカイドウ電伝虫を見つめるしかない。
カイドウの言う何かとは、まぁ男女の何かだろう。私とヤマトは既に成人しているので……うん。ヤれば出来るかもしれない。
チラッとヤマトを見れば、ヤマトは様々な感情が混じり合った複雑な表情をしている。
私は……元男で現女なのでどっちの性別がいいとかは特に無い。強いて言うなら10年以上猛獣達と弱肉強食の世界で生きていたから私に勝った私より強い人がそういうことを望んでくるなら別に良いかなみたいな感じだ。……それをこの場で言えばさらに空気が混沌になりそうだから黙っておこう。
しかし自分の前で息子達がそういうことをする奴らだと判断されたのが許せなかったのか、今度は白ひげがキレた。
「アホンダラァ‼︎ おれの息子達がそんなことするわけねェだろうが‼︎ 本当にやったのならカイドウ‼︎ テメェにおれの首をくれてやる‼︎」
「オ、オヤジ……‼︎」
白ひげの言葉に電伝虫越しにカイドウが息を呑んだ。そして先程までの怒気が急速に萎み始める。白ひげがそこまで言い切ったことを信じるつもりにでもなったのだろうか。
結論的には乗船の許可が出た。ただし、定期報告の回数は増やされた。まぁこれはカイドウを不安にさせないための処置として納得するしかない。別に襲われても海楼石が無い時点で私が獣型になれば船もろとも沈むんだから心配する必要なんて無いのにね。
そんなこんなで白ひげの船にお邪魔した私達だけど、やっぱり白ひげの船は居心地がいいね。渡された仕事さえ終わらせれば基本的に自由だし。
ヤマトはエースにベッタリで私もヤマトの近くに基本的にはいるので、監視の役目は自然とエースが行うようになっていた。まぁエースは普通に私達と仕事したり遊んでいたりするだけだけど。
しかし船員達が身体を拭いたり、風呂に入り始める時間帯になるとマルコが監視に来る。何故ならお邪魔した初日に私達が早速やらかしたからだ。
ふっ、エースの前で服を脱いだだけでこれだよ? マルコはなかなか厳しいね。
なんて言えばオヤジの首がかかっているのにそんなことしてんじゃねェよいって頭を叩かれた。仕方ないじゃん。桶にお湯を入れて目の前に持ってきてくれたら早速拭こうとするでしょ? 別に見られても困らないんだからさぁ。
ちなみにヤマトも私と同じタイミングで服を脱いだので同罪である。なのに一度彼らの前で似たようなことをした私の方が説教が長かった。解せぬ。
◆
更に数日経ち、ヤマトがすっかり白ひげ海賊団に馴染んだ頃。私は用意されたヤマトと共用の部屋の中で頭を抱えていた。そんな私の前にあるのは新聞だ。やっと見る覚悟が出来たので号外をばら撒くニュース・クーから受け取るだけ受け取って目を通していなかった新聞を開いたのだが、内容は予想通りだった。
「やっぱり事件になっているよねぇ……」
そこに載っているのはシャボンディ諸島のあれこれ。私が天竜人を金棒でぶん殴ったこと、ウタがシャンクスの娘で赤髪海賊団に戻ったこと、シャンクスとカイドウの娘自慢対決など、様々なことが書かれていた。
しかし娘自慢だけは世間一般のシャンクスとカイドウからかけ離れていたからか、それともこの記事を担当した筆者が理解出来ていなかったのか。何かの暗号かと疑っている文章だった。
当然こんな騒ぎを起こしたのだから私の懸賞金も上がっている。懸賞金って簡単にポンポン上げていいものなのか? つい最近まで10億だったのに16億になっちゃったよ。
あとはウタも賞金首になっていた。こっちは8億。初回にしてはかなり高めなのでシャンクスの娘ということを考慮したのかトットムジカを知っている人がいるのかのどちらかだろう。
最後にヤマトだけど、ヤマトはそんなに変わっていない。まぁ覇海を撃った以外ヤマトは特に何もしていなかったからね。
これもそれも全部天竜人が悪いんだ。アイツらが来なければライブ終了と共にカイドウ登場、観客は避難、ウタのピンチにシャンクスが颯爽と登場、ウタとの感動の再会、カイドウとシャンクスの戯れ、お別れ、みたいな感じで終わらせることが出来たのに‼︎
やっぱり一度だけでもカイドウからの流れ弾の盾に使っておくべきだったかと行き場のない怒りを間抜けヅラした二人の天竜人へ向けていると、突然船が揺れた。この船は大型なのでこんなに揺れることは攻撃された以外にほぼ無い。つまりこれは──。
『海賊の襲撃だァーー‼︎』
誰かの声が部屋にいる私まで届く。これで相手が海軍だったら百獣と白ひげの間に何か繋がりでもあるのか?という疑いを持たれるのはマズイと私とヤマトは部屋に引き篭もるのだが、海賊なら参戦出来る。
今回は丁度良いタイミング。私も暴れたいと思っていたところなのだ。部屋の片隅に立てかけてあった金棒を握りしめ、私は四皇相手に喧嘩を売った海賊と戦うべく甲板へ向かうのだった。
戦闘は何事もなく終わり、後処理に入る。白ひげ海賊団の料理長であるサッチから横取りする形で海賊の相手を引き継いだ私は思う存分身体を動かした後で海賊を叩きのめし、現在は海賊が溜め込んでいた財宝をせっせと船に運んでいた。
身体も動かせてスッキリしたし、気分はまさに絶好調。そんなルンルン気分でいくつか積み重ねて纏めて運んでいた宝箱を船の甲板に置くと、その際の衝撃で小さな宝箱がコロリと落ちる。咄嗟に掴もうとするけど間に合わず、甲板に落ちた時に蓋が開いたのか宝箱の中から渦巻き模様の果物が転がり落ちて私の足元まで転がってきた。
「お、イブキ! それって悪魔の実じゃねェか?」
やっちまったと思いつつ、どこか既視感がある果物を手に取って傷が入っていないかを確かめていると丁度その場面を見ていたサッチが私に声をかける。すると悪魔の実というワードに反応したのか周囲の船員の視線が一斉に私へと集まった。
「ちょっと待ってろ、図鑑を取ってくる!」
船員の一人が船の中へ入っていき、彼が帰ってくるまでみんなでワイワイと悪魔の実を見てどんな実なのかを予想する。そんな時だ、視界の端でワナワナと手を震わせるティーチの姿が見えた。
その表情は目的の物をやっと見つけたと言いたげだったが、私が手に入れてしまったことでどこか焦りもある。そんな感じだ。
……なんかこの実が何かわかったような気がするぞ。冷や汗が垂れ始めた私の前に先程引っ込んだ船員が図鑑を持って現れ、私が手に持つ悪魔の実と図鑑に視線を交互に行き来させ、やがてこの悪魔の実の正体を突き止めた。
「あった! ヤミヤミの実だ‼︎ スゲェな、
きゃぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎ やっぱり厄ネタの実だぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎
オリ主……白ひげの船は優しいお爺ちゃんの家に遊びに行った時の感覚。監視付きなんて言われたけど全然監視されているとは感じないし、滅茶苦茶居心地がいい。
しれっとあの量の海軍から捕まっていないカイドウに少し引いてる。
ヤミヤミの実……来ちゃった。
カイドウはオリ主達が海軍の索敵範囲外まで逃げた時点で帰ってます。ボロボロのシャボンディ諸島や天竜人を気にしまくって海軍は戦闘に集中出来てないし、強い奴らもガープ以外は守り一辺倒だから白けたみたいな感じで。