エンカウント率ぅ   作:フドル

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誤字脱字報告ありがとうございます‼︎

今回は少し長め。


原作ならきっと解説役として登場してるね!

「(なんで……なんでこんな大物が辺鄙な無人島なんかにいるのよ⁉︎)」

 

 船長と狙撃手の二人を放り投げ、威圧的な笑みを浮かべる存在にナミは内心で悲鳴のような疑問を吐き出した。ルフィとウソップを挟んだ向こう側にいる存在……イブキに慌てて武器を構えたものの、勝てる要素は全くない。

 

「(彼女は女性だからサンジ君は戦えないし、ゾロとロビン、フランキーは無人島の中! ルフィ達も気絶しているから……戦えるのは私とチョッパーだけ⁉︎)」

 

 冷静に状況を整理するナミだが、しなきゃよかったと考えてしまう程度に状況は絶望的だ。傷一つ負わずにルフィを倒したと思われる存在に自身とチョッパーで太刀打ちできると考えられる程楽観的な思考をナミは持っていない。サンジが本格的に参戦してくれれば勝率0%が0.001%ぐらいにまで上昇するかもだが、エニエス・ロビーの一件から参戦してくれても盾ぐらいにしかなってくれないだろうなとナミは早々に結論を出していた。

 

 こんな奴がいるなら異変を感じれば戻ってくるロビンやフランキーはともかく、迷子になって戻ってくるのが遅くなりそうなゾロは残しておけば良かったとナミは今更ながらに後悔する。

 

「ナミさん。おれがあのレディーから話を聞いてみる。気絶させたルフィとウソップをわざわざここまで連れてきたんだ。何かしらの要求はあるはずだ」

「……わかったわ。戦うにしても逃げるにしても二人を回収しないと始まらない。任せたわよ、サンジ君!」

「おう!この男サンジに任せてくれ。ナミさん‼︎」

「サンジ、どんな結果になってもウソップだけは回収してくれ。ここから見ても傷が酷いから早く診てやらねェと……」

 

 イブキの威圧感のせいか、相手が女性というのにいつものようなメロメロ状態じゃないサンジがイブキには聞こえない小さな声でナミに提案し、ナミはそれを承諾する。

 

 チョッパーがまるで痛め付けられたかのような傷を負うウソップを心配そうに見つめるなか、サンジは一歩踏み出して笑みを浮かべながら不思議そうに顔を傾けていたイブキへ話しかけた。

 

「一つ聞かせてもらうが、一体何の用でウチの船長達に手を出した? 何が望みだ?」

 

 サンジの声は少し固いが、あの威圧感の中で堂々と質問出来るのは凄いとナミとチョッパーは感心した。自分達があの場に立てば身体の震えでまともに質問すら出来なくなるはずだから。

 

「お金だよ。10万ベリー。それさえ払ってくれたら文句はない」

「10万ベリー? 随分とみみっちい要求だな」

 

 サンジの質問に意外と律儀に答えてくれたイブキの目的を聞いてナミとサンジは意外そうな顔をするが、そんな反応は心外だと言いたげにイブキはジト目をサンジ達へ向ける。

 

「私がやっている屋台の今日一日分の売り上げ金」

「……うん?」

「せっかく準備したのに全部食べたのなら支払う義務はあるはずでしょう?」

「え、ちょっと待って!」

 

 こっちが準備していたものを全部食べたのだからその分を払えとイブキが言えば、ある程度事情を察したのか青い顔をしたナミがサンジを押し除けながらイブキの前へと出てきた。

 

「つまり、ルフィ達はあなたが売るつもりだった商品を全部食べた……ってこと?」

「そうだよ。在庫全部に加えて追加で仕留めた奴も全部。追加分の金額計算が難しかったから格安にしてあげたのに食い逃げしたから追いかけて倒した。でも金目のものを持っていなかったから同じ仲間のあなた達に請求しにきた」

 

「「うちの馬鹿共が本当にごめんなさい」」

 

 片手を差し出し、はよ金払えとジェスチャーしてくるイブキに対して全てを理解したナミとサンジは同時に頭を下げ、全く同じ言葉でハモリながらイブキに謝罪する。そのあまりのシンクロ具合にイブキは思わず感嘆してしまう。

 

 対してナミは内心で泣きながら悲鳴をあげていた。知らないうちに船長と狙撃手が虎の尾どころか龍の尾を踏んでいたからだ。しかもこちら側に非がある形で。

 

「ちょっと待ってて‼︎」

 

 幸いなことに踏まれた尻尾の持ち主が優しかったのでまだ猶予がある。謝罪を済ませたナミは急いでサニー号の女性部屋に飛び込み、自分のスペースからお金を取り出し始めた。ロビンを政府から奪還した後の宴やサニー号の代金などで麦わら海賊団用の資金は限りなく0に近いが、ナミ個人が貯金しているお金はまだある。……それも出発する前の買い物で散財したからかなり危ういが。

 

 ルフィとウソップはこの先数ヶ月はお小遣い無しと決めつつ、祈るようにナミは取り出したお金を数え、10万ベリーがあることに安堵した。イブキがこれを受け取った後に暴れる可能性があるためまだ一味が助かる保証はないが、ルフィ達を殺さないで連れてきた時点でこの線は薄いと見ていいだろう。

 

 とりあえず急いでこのお金を渡そう。こういう場合は急いで準備したという誠意が必要なのだとナミは走って戻る。だがその先で見た光景に目玉が飛び出るほど驚くハメになった。

 

「ギア…"2(セカンド)"‼︎ "ゴムゴムのォ─」

「おい待てルフィ⁉︎」

 

 ナミが船の端に着いたタイミングで気絶から目覚めたルフィはイブキの姿を視界に捉えるなり構えを取った。するとルフィの全身に赤みが差して蒸気が噴き上がる。誰が見ても戦うつもりのルフィに気付いたサンジが慌てて声をかけるも聞こえていなかったのかルフィは加速してイブキに立ち向かう。

 

「─JET銃(ジェットピストル)"‼︎‼︎」

「んー?」

 

「いやぁぁぁぁぁ‼︎ ルフィィィ‼︎‼︎」

 

 尻尾を踏むどころか本体を殴り出した船長の姿にナミはとうとう内心だけではなく大泣きしながら両手で頭を抱えて叫び声をあげた。

 

 今更だがナミはイブキが世間でどんな扱いを受けているか知っている。その首にかけられた懸賞金も。起こした騒ぎも。彼女の後ろに誰が立っているかも。

 

 あ、今度こそ終わった。流石にこれは許されないだろうと足から力が抜けたナミは船にもたれかかる。そうしているうちにルフィを叩き潰す音が……響かず、不思議に思ったナミは顔を上げてルフィ達がいる場所へ視線を向けた。

 

「何したいの? くすぐったいのだけど?」

 

 そこには心底不思議そうな顔でルフィを見つめるイブキの姿があった。

 

「嘘……。確かに当たってたわよね?」

 

 ルフィの攻撃が当たった瞬間をナミはしっかりと見ていた。なのにイブキは平然とその場に立っている。強がっているようにも見えず、パンチを受けた頬には痣すらできていない。

 

 あまりにも信じ難い光景だが、今はそれに救われているとナミは気付いた。ルフィの攻撃をイブキが攻撃と扱っていないため反撃されていないのだ。

 

 ならまだ希望はある。サニー号から飛び降りたナミはルフィが再び何かをする前に走る。が、それは少し遅かった。

 

「サンジ!チョッパー! ウソップを連れてここから逃げろ‼︎ コイツの相手はおれがする‼︎」

「待ってルフィ‼︎ 駄目ェ‼︎」「だから待てってルフィ‼︎ うおっ⁉︎」

「"ゴムゴムのォ! JET銃乱打(ジェットガトリング)"ッ‼︎‼︎」

 

 JET銃のダメージがないと見るなりルフィは振り返らずに背後にいるサンジ達へ叫ぶように指示を出す。戦わなくて大丈夫と知っているサンジとサニー号から戻ってきたナミは焦りながらルフィを止めようとするが、仲間を守るのに夢中で二人の声が届いていないルフィは再びイブキへ攻撃を仕掛けた。

 

 咄嗟にサンジがルフィを蹴ってでも止めようと動くが、ルフィから気絶したウソップを投げ渡されたことで失敗。何故かルフィよりも傷だらけなウソップをその場に投げ捨てることも出来ず、そっと寝かせる手間を挟んだためルフィの行動を許してしまうことに。

 

「うぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎‼︎」

 

 雄叫びを上げながら絶えず攻撃してくるルフィを流石に鬱陶しいと思ったのか、イブキはゆっくりと握りしめた拳を構えてこれから殴るぞと態度で知らせる。ルフィとイブキの距離はそれなりにあるが、一度の行動で届く程度の距離だ。

 

 イブキの姿がブレたと思えばガトリングをノーガードで受けながらも次の瞬間にはルフィの眼前へ。少し前に見たCP9の者達が使用する剃以上の速度で動いたイブキにルフィは反応出来ず、ルフィ視点だと突然イブキが目の前に現れたように見えたため当然反応も間に合わない。

 

 このままだと歯を食いしばって拳を繰り出しているルフィの頬にイブキの拳がぶち込まれる結果となったのだが、そうはさせないとイブキの拳がルフィの頬にめり込む前に水色の棒が割り込むように入り込んだ。

 

「アホぉーーー‼︎‼︎」

「ブヘェーー‼︎⁉︎」

 

 ルフィがいる場所に辿り着くなりナミが背後から全力で天候棒(クリマタクト)を叩き込んだのだ。そのまま天候棒を振り抜くと、ルフィは錐揉み回転をしながら吹き飛んでいった。まさか仲間がそんなことをするとは考えていなかったのか、イブキは殴りかかる姿勢のまま急停止してパチクリと目を瞬かせる。

 

「ごめん、ちょっと待っててもらえる?」

「あ、うん。ごゆっくりどうぞ」

 

 ルフィを止めることに夢中だったため、いつの間にか至近距離にいたイブキにナミは本日何度目になるかわからない悲鳴を上げそうになるが、ルフィへ向けた怒りがイブキに対する恐怖に勝ったのか初エンカウント時にイブキが作ったものとそっくりな笑みをイブキへ向ける。

 

 別に聞いてやる義理なんてイブキにはないのだが、イブキの攻撃理由はルフィを静かにすること。勝手に向こうでやってくれるならそれで良いやと納得したのか、殴りかかった姿勢を元に戻すとそっと初期地点まで距離を離した。

 

「ナミ! いきなり何すんだ⁉︎」

「…………」

 

 イブキから許可を得たと判断したナミは地面から上半身だけ起き上がらせたルフィが殴られた箇所を押さえながら行う抗議を無視してルフィへと距離を詰める。明らかに様子がおかしいナミを見てルフィは形だけの怒りを引っ込めて素早く周囲に視線を向け、ナミを怖がるチョッパーとタバコを吸いながらやっちまったなと言いたげなサンジ。そして冷静になった今、敵意のカケラも感じられないイブキを見て自分が何かマズイことをしていたと気付く。

 

「ナ、ナミ! なんだか怖いぞ!」

 

 とはいえもうどうにもならない。近付いてきたナミを見上げるルフィだが、逆光のせいでナミが今どんな表情をしているのかがわからない。それでも感じる今までのものとは比にならない怒りのオーラに無意識に後退りをするが、運が悪いことに少しだけ進んだところでルフィの背後に岩があったせいで逃げ場もない。

 

「あんたの……あんたの早とちりで危うく一味が壊滅する危機だったのよ‼︎‼︎」

「ま、待て‼︎ 話せばわかる‼︎」

「わからないわよすっとこどっこい‼︎」

「ぎゃあぁぁぁ‼︎‼︎」

 

 ナミが繰り出す覇気が込められていないただのビンタ。しかし何らかの補正が入っているのかルフィに大きなダメージ入る。だがそれだけでは気が済まないのか、ナミはルフィの胸ぐらを掴むと連続ビンタを繰り出した。それはナミの気が済むまで行われ、その間ルフィの悲鳴が止むことはなかったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「食゛い逃げし゛てす゛ぴまぜんでした‼︎」」

「うん、ナミから代金は受け取ったからもう大丈夫だよ。それよりルフィ達の方は大丈夫なの?」

「「大丈゛夫でず‼︎ 痛゛くな゛いでず‼︎」」

「そ、そう?」

 

 場所は変わってサニー号の甲板にて。イブキの目の前には正座したウソップと、何故かある狭い吊り籠の中に押し込まれたルフィが誠意を込めた謝罪を彼女に繰り出していた。ウソップとルフィの頭上には仲間達によって作られたタンコブタワーが乱立しており、ルフィは更に追加で顔面がパンパンに腫れている。対して謝罪を受けたイブキは既にナミから10万ベリーを受け取っていたからか、彼らの姿と勢いのある謝罪に少し引きつつも朗らかに笑って許していた。そんな彼女の姿を見てナミはホッと息を吐く。

 

 あの後改めて謝罪と共に10万ベリーを渡すと、イブキの雰囲気はガラリと変わった。威圧感のある恐ろしい存在から街を歩けばそこら辺で見かける女の子へ。威圧感のある姿はこうでもしないと馬鹿がいつまでも調子に乗るからと笑って言うイブキにナミは今度こそ助かったと確信した。

 

 その後は貰うものは貰ったしと帰ろうとするイブキを引き留め、自己紹介を済ませてからお金だけでは申し訳ないからサンジの料理をご馳走すると言ってナミはイブキを少々強引にサニー号へ招待した。

 

 普段のナミならしない行動だが、お金を払う前のイブキはともかく今のイブキの感性はナミ達寄りだし、それを抜きにしても可能な限りイブキに麦わらの一味は良い奴らだと好印象を持って帰ってもらいたいのだ。

 

「心配しなくても親にチクったりしないよ」

「うっ、見抜かれてる」

 

 とはいえその企みは余裕で見抜かれていたが。

 

 まぁ、それを抜きにしても新世界の海で生き残っているイブキの話にナミは興味があった。が、その話を聞き出すのはイブキに料理を差し出してもてなしてからと決めている。料理が届く前にあれこれ聞くとイブキが呆れて帰ってしまう可能性があるからだ。

 

 しかしイブキが甲板にあがってからかれこれ20分。イブキがリクエストしたのはデザートのため、サンジの腕なら既に出来ていても不思議ではないのだが、デザートが出てくるどころかキッチンからは何の音も鳴っていない。

 

 もてなすと言っときながらこの体たらく。我慢の限界を迎えたナミは歩き出すが、その先はキッチンではない。

 

「サンジ君!イブキを待たせているんだから早く来てよ‼︎」

「待ってくれナミさん‼︎ だいぶ進んでいるんだ‼︎ だからもう少しで……いける‼︎

「一歩も進んでないわよ‼︎」

 

 サニー号からナミが顔を出すと、陸地でサンジがイブキの金棒を持ってそこにいた。

 

 イブキが甲板に上がる際に荷物を受け取るとサンジが言ったはいいものの、イブキの金棒が想像以上に重かったせいで受け取ったサンジは動けなくなってしまったのだ。

 

「おぉー、サンジのやつ、まだ頑張ってんのか」

「ウソップ! 少し手伝え‼︎」

「悪いが無理だ。っていうかイブキも重かったら適当な場所に置いといていいって言ってたぞ」

「レディーから受け取った大切な荷物‼︎ 落とすくらいならおれは……腹を切る‼︎」

「おれ、サンジのそういうとこは尊敬するぞ」

 

「言ってる場合か⁉︎」

 

 金棒を落とすまいと踏ん張りながらキメ顔をするサンジをウソップは素直に称賛するが、直後に彼の後頭部へナミのツッコミが炸裂した。結果として渋々ウソップも手伝いに行かされたが、ナメクジの速度がナマケモノの速度になっただけだ。

 

 このままだとイブキが帰ってしまう。今はチョッパーが話し相手になって時間を稼いでいるが長くは持たないだろう。かといってサンジが折れて金棒を置くとも思えない。

 

「あら? サンジ君にウソップ、その金棒はなあに?」

「あ? エロコックにウソップ、何してんだ?」

「お前ら重そうなの持ってんな!」

 

 そのため丁度良いタイミングで帰ってきてくれたロビン達にナミは思わず感涙するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、それにしてもちゃんとナミがお金を渡してくれて助かったよ。私としてもエースの弟に手を出すのは申し訳なかったし」

 

 裏でゾロに借りを作ってしまったと落ち込むサンジをゾロが煽ったことで二人が争っているが、そんなことを気にせずにイブキはサンジが出してくれたパフェを小さな口でモグモグと食べていた。どうやらお気に召したようで、顔には出てないもののパフェを食べるイブキの口角は少し上がっている。

 

「エースを知ってるのか⁉︎」

「知ってるよ。なんたって私と彼は熱い戦いを繰り広げた仲だからね!」

 

 エースという言葉を聞いて吊り籠の中でしくしくと泣いていたルフィが反応する。やはり弟として兄のことは気になるのか、兄の話を聞きたいと言わんばかりにイブキ側に身体を寄せ、イブキも自慢したいことがあるのかムフンと小さな胸を張った。

 

「そ、その戦いって……?」

「ふふん、その名も!姉弟自慢対決‼︎‼︎」

 

『(話のレベルが一気に下がったな)』

 

 ゴクリと唾を飲みながらルフィが問いかけると、イブキは自慢気にその戦いの名を発表した。そしてその名を聞いたルフィを除く一味の思考が奇跡的に一致する。

 

「へー、イブ()には姉ちゃんがいるのか」

「いるよ。腹違いだけどね。あと私の名前はイブキ」

 

 イブキはルフィの言葉に嬉しそうに肯定しつつも、直後にため息を吐いた。

 

「ヤマト……私のお姉ちゃんだけどね。おでんが好きでとにかくおでんおでん〜って言いながら突っ走っちゃうの。悩むことは多いけどこれって決めたら今度は頑固になるし、困った人はほっとけないタイプだからトラブルに巻き込まれることも多いし、他にも──」

 

『(成程、ルフィと似たタイプ)』

 

 嬉しそうな態度から一転し、今度は姉の愚痴を言い始めるイブキ。その内容にルフィとロビンを除いた一味は再び思考を一致させる。それぞれの脳裏に浮かぶのは肉がおでんになった女版ルフィだ。

 

 唯一ロビンだけは一度だけ新聞に小さく載っていたヤマトのことを覚えていたので正しく姿形を思い浮かべることが出来たが、脳内に浮かんだ構図は他のメンバーと同じだった。

 

 

◆◇

 

「くしゅん‼︎」

「おいおいヤマト、風邪か?」

「いや、違うと思う。カイドウかイブキが僕のことを噂してるのかも」

「あんま無理すんなよ。いるかどうかわからねェが今からティーチを見たってとこに行くんだからな」

「でもエース、白ひげさんを待たなくていいの?」

「あぁ、急がねェと逃げられるかもだからな」

 

◆◇

 

 

「あー、そういえば聞きたいことがあるんだが。おれ達を倒した時、イブキはルフィにダメージを与えてたよな。あれって何をしたんだ? やっぱり何かの能力者なのか?」

 

 あれからしばらくイブキの姉自慢などが続き、イブキが周りから姉好き認定をひっそりと受けるなか、ふと思い出したのかウソップは疑問だったことをイブキへ素直に質問した。

 

「ん?あぁ、私が能力者なのは確かだよ。でも──」

「あっ!そういえばルフィのじーちゃんが愛ある拳は防ぐ術が無いって言ってたぞ‼︎」

「えっ?」

「じゃあ愛が関係してる能力か……」

「いや、ちょっと?」

 

 素直に答えてあげようとしたイブキだったが、チョッパーが凄いことに気付いたと言いたげに割り込んできたため話が変な方向へ向かい始めた。

 

「んー、ラブラブの実のラブリー人間とか?」

「いや、アイアイの実の愛情人間じゃねェか?」

「ラブリーでも愛情でもイブキちゅわんは素敵だぁ〜‼︎」

 

「あんたら全員しばいてやろうか???」

 

 どうだ?なんて言いたげな視線とクネクネしながらハート目で全く関係のないことを言う一人にイブキは青筋を立てるが、ため息と共にイラつきを逃した後で手の平をルフィ達へ向けた。

 

「私が使ったのは"覇気"。その中でも武装色の覇気を使ったの」

「ハキ? 聞いたことがねェな」

「……よく今まで海賊出来ていたね。自然系の能力者に会っていたら何も出来ずに壊滅しててもおかしくないよ」

「自然系……クロコダイルやエネルのことね」

「なんだ、会ったことがあるんだね。それで生きているってことは弱点を見つけたんだ。まぁ、それはどうでもいいけど。じゃあそうだな……自然系の能力者で光人間に出会ったらどうする? 光の速度で動くからあなた達だと逃げることはまず不可能。戦うしかないよ。ちなみに実在する人物だから」

 

 イブキからの問題に数人が真剣に考え込む。

 

「光だから……暗闇か? だったら夜に……いや、駄目か」

「うん、光そのものだから暗闇にしても意味ないね。他には?」

「……少なくとも簡単に用意出来るものでは思いつかないわね」

「その時点であなた達は全滅だよ。あ、その光人間は海軍大将の黄猿だからいつかあなた達も対峙するかも」

『大将⁉︎』

 

 さらっとぶちまけられた情報に、ルフィ達は青雉の姿を思い浮かべた。考えることは一つ、青雉と同格の相手と対峙して果たして自分達は勝てるのかという疑問のみ。

 

「……もしかして、あなたが言う覇気ってものが突破方法になるのかしら?」

「察しが良いね。ほぼ正解だよ。武装色の覇気は能力者の特性を無視して攻撃出来る。つまり、自然系の流動する身体にもダメージを与えることが出来る。こんな風に」

「痛ェ⁉︎」

 

 イブキが立ち上がり、吊り籠の中にいるルフィへデコピンをするとルフィはその箇所を押さえ込んで痛がる。それはルフィのゴムの性質を無視している証明であった。

 

「注意点としては覇気は海楼石じゃないから能力者は能力を使える点だね。それと覇気は武器や弾丸にも纏うことが出来るからそこも注意。さっきのルフィみたいに打撃が効かないからって無防備で受けているとそのうち痛い目をみるよ」

「その覇気ってものはおれ達でも使えるのか?」

「まぁ人類全員が使えるって言われているし使えると思うよ。新世界の海賊はメンバーの誰か一人は覇気使いだから」

「成程、それが新世界の常識か。おもしれェ」

「一味全員が使えるようになれとは言わないけど、船のトップ3までは覚えておいた方が安心。じゃないといつか目の前で大切な誰かが死ぬことになるよ?」

 

 イブキが話を終えると、シンと船が静まり返る。その中で最初に動いたのはゾロで、一人踵を返してトレーニング室へ歩き始めた。

 

「おいゾロ。どこに行く気だ?」

「見りゃわかんだろ。トレーニング室で覇気とやらを習得するんだよ。そいつもこれ以上教えるつもりは無さそうだしな」

「まぁね、流石にダメージにもならないパンチの詫びにこのデザートは貰いすぎだと思ったから喋っただけだし」

「じゃあもっとご馳走すれば──」

「残念だけどその前にお客さんだよ」

 

 ナミからの提案を断ったイブキの言葉に全員が疑問符を浮かべたタイミングでサニー号のすぐ近くに水柱が立つ。明らかに攻撃とわかるそれにナミ達が確認へ向かうと、海から三隻の海賊船がサニー号に大砲を向けており、その後ろには海軍の軍艦の姿が見えた。

 

「フランキー! 船を出して‼︎ このままじゃ的になる!」

「おう!スーパー任せろ‼︎」

 

「……これも覇気とやらの力か?」

「ふふっ、教えなーい。それとも…欲張ってみる?」

「いや、今この場で出せる対価がねェ。やめておく」

 

 突然の襲撃にそれぞれが配置につくなか、ゾロが面白そうにそれを眺めていたイブキへ問いかけた。それに対してイブキが試すような笑みを浮かべるが、ゾロは食い付かずに話を切り上げて持ち場へ走る。

 

「じゃあ私もお暇しますか。その前にお客様の出航は見送るけど」

 

 よいしょと声を出しながらイブキは立ち上がり、甲板に置かれていた金棒を回収してからサニー号から無人島へ戻った。

 

「イブキ⁉︎」

「ナミ、私とはここでお別れだよ。ナミ達はお金を払ってくれたから正式なお客様だ。だからアイツらの掃除もサービスでしとくよ」

 

 イブキが飛び降りる瞬間を見ていたのか、ナミがサニー号から顔を出す。そんなナミにイブキは手を振り、気にせずに行けとナミへ伝えれば、ナミは頷いてからサニー号に引っ込んだ。

 

 ライオンの爪を模した碇が上がり、帆が張られてサニー号が緩やかに発進する。そして目の前にあったサニー号が退いたことで、イブキの眼前に敵の姿が映り込む。そんな敵船の姿を視界に捉えつつ、イブキは金棒を構えて力を込めた。

 

「"雷蛇咆哮(ロ・ダスア)"」

 

 振るわれた金棒が空気を殴って衝撃波を打ち出す。衝撃波はサニー号へ向けて放たれた大砲の弾を破壊しながら突き進み、敵船の船首から船の中央までを粉々に粉砕した。

 

 距離が離れていたにも関わらず無惨な姿となった仲間の船を見て、周りの海賊達は慌て始める。そんな彼らに追い討ちをするかのように、イブキは再び金棒を構えた。

 

「"雷蛇咆哮"」

 

 そして再度放たれた衝撃波は進路を変更しようとしていたもう一隻を同じように破壊した。最後の一隻は即座に撤退を決めたようだが、雷蛇咆哮の射程内に入っている時点でどうしようもなく、回頭したことで再度放たれた衝撃波が船の横腹を貫く形になってしまい、真ん中が吹き飛んだことで前後が真っ二つとなりそのまま沈没していった。

 

 そこまでやったタイミングでイブキはサニー号から視線を感じ、そちらを向けばサニー号からはルフィ、ゾロ、サンジの三人がイブキのことを見ていた。

 

 ならこれはサービスだとイブキは金棒に覇気を込めて構えた。狙いは海賊船の奥にいる海軍の軍艦。奴らは沈んだ海賊達を追いかけていたようだが右側に無人島があるせいで動きが制限されているサニー号を見つけると、チャンスと思ったのか海上に浮かぶ海賊達を無視して攻撃を始めたためイブキの掃除サービスの対象に入ってしまった。

 

 バリバリと覇気の雷が金棒から漏れ始める。久しぶりに放つ全力の一撃にイブキは笑みを浮かべ、力のままに金棒を振るう。

 

「"雷蛇咆哮"‼︎」

 

 先程より二回り程大きくなった衝撃波が進路上に浮かんでいた海賊を吹き飛ばしながら軍艦へ迫る。当然動きの遅い船にそれを躱す手段などなく、威力が増したことで船首から船尾までを粉々に粉砕した。

 

 その範囲内に弾薬庫でもあったのか、軍艦からは爆発が起き、なんとか船に残っていた海兵達を海へ叩き落とす。

 

 炎を吐いて沈んでいく軍艦をイブキは静かに眺め、完全に沈んでから踵を返して森へ戻る。そんなイブキの姿を見届けた麦わら海賊団の三強は、現在の位置から何段も上のステージを見てそれぞれの考えを持ちながら他の一味の元へ戻るのだった。




オリ主……カイドウの雷鳴八卦より遅いルフィのJET銃なんて怖くない。覇気が込められてないので痛くもない。なので全てノーガードで受けていた。しかし銃乱打は金棒の錘があっても身体が浮くので鬱陶しい。
 個人的にはちょっと強キャラムーブが出来てご満悦。サンジのパフェも美味しく、ウタがいた時のコラボ料理の迷走を思い出しつつ、痛くも痒くもないパンチの対価がこのパフェなのはちょっと貰いすぎかなってなったので覇気の存在を小出しした。

ナミ……取り立てモードじゃないオリ主って意外とノリが良いのでこっち側(ナミ、チョッパー、ウソップ組)なのでは? なんて考えてるけど、もしあの場でお金払ってなかったらどうなってたのー?みたいな質問をしていたらその幻想は粉々に砕け散っていた。
 ちなみにオリ主の返答は「取り立ててから船を破壊する。その場にいた一味も同じ末路」です。

サンジ……一見子どもに見えるオリ主だが、鍛えられた観察眼は子どもではない成人したレディーと見抜いたため、敵対が解除されればメロメロ状態になった。過度な接触はNGだが、タッチ程度なら気にしないオリ主なのでガルチューぐらいなら許してくれていた。でもそれをした場合オリ主がカイドウとの定期連絡時にサンジとガルチューしたと話す未来がある。





 レディーに伸ばし棒は必要ないと思うのだけど、原作でサンジがレディーと言っていた描写があり、個人的にもレディーの方がしっくりきたのでレディーにしています。




 最近絵を描くのに興味を持って上手く描ければ今作のオリ主画像を貼れるかなってアイビスペイントを入れてみたのですが、指で描くには初心者の筆者には難易度が高すぎたよ……。ならペンで描けば良いじゃんと棚の奥底に眠っていた3DSのタッチペンを持ってきたけどiPhoneが反応してくれない悲しさ。

 やはり対応するペンを買うしかないのか……? でも買ってまでしたいかというと練習する時間などを考慮してウーンってなるというね。絵描きアドバイスの動画を見て絵が上手くなった気分になっている私に神絵師の腕を恵んで欲しいなぁ。
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