登場人物多すぎて全然キャラを動かせねぇ……。
周りの反応は納得いかないが、何はともあれ海軍陣営の頭脳は機能停止させた。これで白ひげ陣営はかなり動きやすくなる筈。
暴れているセンゴクは向こうからしても厄介極まりないだろう。様子を見た限り、ガープと老婆の海兵……おつるだっけ? そして青雉が制圧に向かったのは確認出来た。確かおつるは洗う系の能力者だったと思うので、青雉の氷で動きを止めてその間に何とかして解毒するつもりなのだろう。
まぁ凍りついても強引にセンゴクが動くので上手いこといってないみたいだけど‼︎ 深く凍らせたら無理矢理動くセンゴクの身体が壊れちゃうから青雉も大変だねぇ。
「さて、再会に喜んでいるところ悪いけど、ルフィにちょっとお願いがあるんだ」
「ん、なんだ?」
暴れるセンゴクに対処する三人を他人事みたいに眺めていた視線を外し、私はエースが無事なことに喜ぶルフィへ話しかける。どうやらルフィの中で私はエースを助けた恩人枠に入っているのか、私からの提案という言葉に悪い反応はしていない。
「ルフィの身体ってゴムだったよね? それでエースをぐるぐる巻きにしてもらってもいい?」
「なんでだ?」
「緩衝材にしたい。ウソップが言ってたよ。あなたに打撃は効かないって。だからエースにルフィが巻き付いて、それごと私が運ぶ。そうすれば私はエースに気を遣わなくてよくなるからある程度全力を出せる」
私が正真正銘の本気で動くなら毒込みになるから毒が効かない味方以外は私の周囲から退散しないといけない。でも身体能力だけならルフィが協力してくれれば全力を出せる。
「そっか。でもその心配はいらねェぞ! エースの手錠の鍵は持ってる!」
「……えっ? 持ってるの?」
「ハンコックがくれたんだ!」
ニシシと笑いながらルフィはズボンのポケットから鍵を取り出した。それを見て私達の護衛をしていた白ひげ船員達から控えめな歓声が上がる。対して私は周りに気付かれない程度に少しだけ顔を顰めた。
うーん、喜ぶべきなんだろうけど、この後のことを考えるとぶっちゃけエースって邪魔なんだよね。白ひげやルフィのことになると煽り耐性が極端に落ちるというか。
どれだけ順調に進んでも白ひげを馬鹿にする挑発が耳に入れば取り消させようとするだろうし。それなら動けなくしといたほうが絶対に楽。
かといってここで妨害するのもなぁ。原作みたいに黄猿が鍵を破壊してくれたら嬉しいのだけど、白ひげと戦っていてコッチを見てないし、見ても私がエースの近くにいるせいなのか白ひげに隙を見せてまで此方側へビームを撃つ気はなさそう。
どうしよっかなぁ。なんてグダグダ考えている間にルフィはエースの手錠を解錠してしまった。そのことにため息を吐きたくなるが、自由の身となったエースを見て心底嬉しそうな表情をするルフィの姿に私は吐き出そうとしたため息を飲み込んだ。もしエースがヤマトでルフィが私だったら同じ反応をしただろうと簡単に想像出来たからだ。
しょうがない。エースがつまらない挑発にのったらその時は私が守るか。元からその予定でここまで来たんだし、大将の誰かと戦うのも覚悟していた。なんなら今から赤犬に喧嘩を売りに行くか?
どうせ戦うなら今でもいいやと周囲を見渡してみるが、私が知覚できる範囲には赤犬らしき姿がない。っていうかドフラミンゴとクロコダイルかなり近いな。そんなに近くで戦っていたのか。
ニヤニヤ顔のドフラミンゴと何故か怒っているクロコダイル。意外と接戦だなぁと二人の戦いを観察していれば、視界の奥で外輪船が動き出して広場を走り出した。船首には白ひげを刺そうとしていたスクアードが乗っており、戦意マシマシで雄叫びをあげている。
誰が見ても決死の殿をしようとするスクアード達だったが、それを白ひげが止めた。そして白ひげは家族に最期の船長命令を下した。
「お前らとおれはここで別れる‼︎ 全員!必ず生きて無事に新世界へ帰還しろ‼︎」
その声は良く響いた。聞き逃しはないだろう。聞きたくないみたいな船員は多いみたいだけど。
「エース‼︎」
「……」
船員達を逃すためにマリンフォードを海に沈めようと本気で暴れ始めた白ひげをエースはしばらく眺めた後、彼の元へ駆け出した。そして邪魔と言わんばかりに白ひげの周りにいる海兵達を自身の炎で薙ぎ払って場所を確保すると、今までの感謝をするかのように土下座する。
「ルフィ、先に船まで逃げといて。その身体、もう限界でしょ?」
「でもイブ
「心配しなくても私が連れて帰るよ。それにエースはルフィより強い。そんないつ限界が来るかわからない身体で残られて急に倒れられたりしたらそれこそ周りに迷惑でしょ」
「麦わらボーイ! ここは彼女の言うことを聞くっキャブル‼︎ ヴァナタは本当にいつ倒れてもおかしくないっチャブル‼︎」
「ルフィ君! わしも同意見じゃ…! エースさんが解放された今、ルフィ君は生き残ることだけを考えるんじゃ‼︎」
エースと白ひげが最後の別れをしている間に私はルフィへ先に船に行ってろと言っておく。改めて見てもなんでコイツこんなに元気に動けてんだ? ここまで傷を負えばヤマトでも動きが怪しくなるレベルだぞ。能力って凄いなぁ。
私の指示にルフィと共に行動していたイワンコフと元王下七武海のジンベエも賛同してくれる。ルフィが嫌って言うと面倒だが、幸いにも自分の現状は分かってくれていたのか私に向けて頷いた後、素直に船を目指して走ってくれた。
「これでエースを見殺しにしたら死ぬまで恨まれそうだな。いや、ルフィはそんなことしないか」
思い浮かんだ"もし"を即座に否定しつつ、周囲を見渡す。他の白ひげ船員達は最期の船長命令を聞いて船に走っており、私の周囲には海兵しかいない。
「じゃあ……ちょっと本気で戦おっか。"
尻尾、両腕、両頬を覆う鱗の隙間から毒ガスを噴出させる。緑色の毒ガスは目立つからか私に向けて殺到していた海兵の内、先頭を走る者はすぐに異常に気付いて足を止めて急ブレーキをかける。しかし後ろの海兵は前の海兵が視界を遮っているのであまり前方は見えていないし急には止まれない。そのため先頭の奴が急に止まるとは思っていない後方の海兵は止まった前の海兵に勢いよく衝突して突き飛ばした。結果、突き飛ばされた海兵は私が出した毒ガスの中へと足を踏み入れることに。
「いらっしゃい、可哀想な海兵さん」
「ぐっ……‼︎ ゴホッ、ゲホッ、なんだこれ? 血?」
毒ガスを吸い込み、咳き込んだ海兵は
咳は止まらず、彼の鼻や目からも血が流れ始めた。生き残りたい彼は自身を突き飛ばした海兵へ助けを求めて手を伸ばすが、仲間である海兵達は痛みにもがく彼の姿を恐れて後退りする。
「酷いねェ、助けてあげなよ? 仲間でしょ?」
「しまっ……⁉︎」
悍ましい姿の仲間に意識を向けてしまった彼らは、毒ガスの発生源である私の接近に気付かなかった。発生源の私が移動したことで彼らも毒を吸引し、もがく彼と同じ症状が現れて倒れ込む。
「駄目だ!退がれ‼︎ 奴に近付く──ぐぅあぁぁぁぁ‼︎⁉︎」
「今みたいに遠距離も大丈夫だけど……今回は近接戦でいっか。何人生き残れるのかな?」
「フッフッフ‼︎ 無茶苦茶しやがる‼︎ ……ここも危ねェな」
「チッ、そのようだな」
私が吐き出した毒液を顔面に受けたことで肉が溶けて頭蓋骨を露出させながら倒れた海兵。彼の無惨な姿に周りの者達が怯んだのでその隙に私は突撃する。そんな私を見たドフラミンゴとクロコダイルは各々の能力を使って素早く距離を取るが、無能力者で剃を使えない海兵達は間に合わない。次々と私の毒ガス範囲に入れられて、虫みたいにもがくだけ。
「やめろォ! グフッ、正気に戻れ⁉︎ ゴホッ、頼むから‼︎」
「ハッハッハ‼︎ おれは正気さ! ゲホッ、あぁ!前からお前を殺したいと思っていたんだ‼︎」
倒れた海兵の数人は噛んで凶暴化と破壊衝動だけの毒を仕込んでおけば毒によって湧き上がる破壊衝動のままに海兵が動き出し、血を吐きながらも殺すために倒れてもがく仲間を殴り、同じ凶暴化状態の海兵と殺し合いを始める。
私を攻撃してくる可能性もあるにはあるが、怖くて仕方ない私より日頃の小さな恨みが積み重なった仲間に矛先が向くのは当たり前。壊したくて仕方ないのに壊せそうにない私よりか今にも壊れそうな仲間を狙った方が良いと本能でわかるのだろう。
「貴様ァ‼︎ 誇りはないのか⁉︎」
「えっ、誇り? 生きるか死ぬかの戦いにそんなものが必要なの?」
私の背後で拡大していく惨状を見て海兵の誰かが誇りが云々と怒りを込めて叫ぶが、馬鹿なのかコイツは。
「私にとって正義も悪もどうでもいいよ。生きるか死ぬか。殺し合いの戦いで必要なのはたったそれだけ」
生き残りを賭けた戦いに誇りも卑怯もない。不意打ちも毒も死んだふりも罠も人質も全てが許容される。少なくとも野生で生きている猛獣達との戦いはそうだった。
「怖いなら逃げなよ。生き残りを賭けた戦いで逃げ切れればそれは勝利だ。正面から勝てないなら不意打ちしなよ。それで相手を殺せたらそれも勝利だ。誇りなんてもので勝手に縛りプレイをしといて卑怯なんて叫ぶのはみっともないよ」
私は選べる強さを手に入れたけど、昔みたいに選ぶ余地が無いならなんでもするぞ。今は白ひげ船員がいるから自重してるけど、ピンチになれば獣型になって暴れるつもりだ。勿論毒も撒く。それでも無理だったら逃げる。
だから本当に不思議で仕方ない。コイツら一度全員猛獣蔓延る無人島へ放り込んだ方がいいんじゃないか?
「ぐっ、狂ってる! お前は狂っている‼︎」
「面白いこと言うんだね? これは野生の常識だよ。じゃあサヨナラ」
言葉を吐き捨てる海兵の首を掴んで持ち上げ、毒ガスの中へ投げ捨てる。受け身を取った彼は素早く立ち上がったが、偶然横にいた凶暴化海兵に殴り倒され、他にも集まって来た海兵達によって集団リンチをされ始めた。
今は呼吸を止めているようだが、そのうち彼も息が続かなくなって呼吸ついでに毒を吸って死ぬだろう。興味も失せたので正気に戻れなんて諦め悪く仲間に向かって叫び、直後に顔面へ蹴りを受けた彼から視線を外して別の海兵を探し始めた私だったが、私の死角から一人の人間が走ってくるのを見聞色で感知した。毒ガス範囲に入っても立ち止まることなく進んでいることから対策はしているようだ。
まぁ毒ガスだからガスマスクをつければ対処は出来るし、私の毒は何故か覇気を纏えば効き辛くなる。常に私の死角に入って距離を詰めてくるのは評価するが、気配は捉えているので相手が攻撃のために飛びかかって来たタイミングで振り向いてやる。そうすれば海兵の驚く顔が──。
えぇ……? こいつどう見ても白ひげ船員じゃん。
◆
えー、取り敢えずぶちのめそうとはしました。私に攻撃して来たからね、仕方ない。でも私が攻撃する前に男の首に糸が絡みつき、男はスパッと斬首されてしまった。
コロコロとどこかへ転がる男の頭を見送ってから糸がどこから伸びているのかを目で追えば、逃げたはずなのに意外と近くにいたドフラミンゴが私を見ていた。
「フッフッフ! 白ひげ海賊団に嫌われているようだな!」
「心当たりは……あぁ、あるわ。コイツ、ヤマトに攻撃した奴か」
笑いながら毒の範囲外ギリギリで立つドフラミンゴの言葉に、私はすぐに心当たりを思い出した。この戦いが終われば探し出してこっそり殺すつもりだったけど、自分から来てくれたので探す手間が省けた。自分の手で処理出来なかったのは残念だけど。
「白ひげ海賊団がいるからあまり大声で言うつもりはないけど、感謝しとくよ」
船に向かって走る白ひげ船員に聞こえない程度の声でドフラミンゴにお礼をしつつ、足元まで移動させた尻尾の先端をドフラミンゴからも見える位置で動かしてテシテシと石畳を叩く。
「……! あぁ、構わねェよ」
通じるかなと心配しつつ、テシテシ、テシテシとリズム良く石畳を叩き続けていれば尻尾の意味にドフラミンゴは気付いてくれたようで、返事を返しつつもコツコツと足で同じように石畳を叩き始めた。それはキチンと私の伝えたことに返事するような内容だったので、私は会話をしつつも尻尾で叩くリズムを変えた。
私達が今やっているのはモールス信号に近い。百獣でたまに使われているものを興味があって覚えたものだ。伝えている内容は『この参戦は私の独断であり、カイドウは関係ない』『今の行動は良い意味でカイドウに伝えておく』といったものだ。それを聞いて以降ドフラミンゴの額から流れていた冷や汗らしきものが止まったので、多分安心したのだろう。
口ではこの場に適した会話をしながらお礼にエースやマルコ以外で殺したい白ひげ船員がいるなら糸で操られたフリをして殺してあげようかと音で提案してみれば、即行で拒否された。えぇー、絶対に良い案だと思ったんだけど。ぶっちゃけヤマトを攻撃した奴がここで私にも攻撃して来た場合、この方法で殺害する気満々だったし。
「んで、どうする? 戦う?」
「フッフッフッフ‼︎ 馬鹿言うなよ。お前と戦えばカイドウに喧嘩を売るのも同然だ。遠慮しとくぜ」
「何ィ⁉︎ 何故だ⁉︎ ドフラミンゴ‼︎」
伝えることは伝えたので戦うかどうか聞いてみれば、ドフラミンゴは敵意がないことを伝えるために軽く両腕をあげて私から距離を離した。その姿に様子を見ていた一人の海兵は怒りながら叫んだが、ドフラミンゴが指を動かすと彼は糸に操られて私の毒ガスに突っ込んでいった。
「おいおい、おれは白ひげと戦うことは了承したが百獣と戦うなんて一言も言ってねェぞ? 他の
あ、そうなんだ。ぶっちゃけミホークの相手は嫌だったから助かった。アイツがいると獣型になっても両断される心配があったんだよね。
これで獣型になるのを躊躇する理由が一つ減ったぞ。そんな私にとって耳寄りな情報をくれたドフラミンゴは笑いながら白ひげ海賊団の船団がある方へ歩いていった。キチンと自分の仕事はやるつもりなのだろう。……話し始めた時よりテンションがあがっているので追撃を楽しむタイプなのかな。
あまりにも自然なフェードアウトに海兵達は絶句しながら去るドフラミンゴを見送った。その姿は隙だらけなので背後から攻撃してやろうとこっそり近寄るが、遠くの方で逃げるエースに向けて何かを話しかける赤犬の姿を見てしまったので方向転換を余儀なくされた。
「"白ひげ"は所詮、
「ハァ…ハァ…、敗北者…? 取り消せよ…! 今の言葉…‼︎」
もぉー‼︎ 見てない少しの間になんでお前は赤犬の挑発にのるんだよぉ‼︎⁉︎
白ひげ船員を巻き込まないために毒の放出を遮断し、急いでエース達のもとへ向かう。その間にもエースと赤犬は言い合いを続け、激昂したエースが炎の拳を構えた。
「"白ひげ"は敗北者として死ぬ‼︎ ゴミ山の大将にゃあ誂え向きじゃろうがァ‼︎」
「"白ひげ"はこの時代を作った大海賊だ‼︎‼︎ この時代の名が‼︎ "白ひげ"だァ‼︎‼︎」
うぉぉおお‼︎‼︎ 間に合えェェ‼︎‼︎ 取り敢えず尻尾を巻き付けてエースを保護して……って別にエースじゃなくていいじゃん。
気付きと共に尻尾の向かう先をエースではなく赤犬の片脚へ変更し、尻尾を彼の脚に巻き付かせるなり力一杯引っ張る。流石に赤犬でもこの場面で自分に触れるかつこんな妨害をしてくるとは考えてなかったのか、非常に間抜けなズッコケを周りに披露した。
そんな赤犬を彼が立て直す前に持ち上げ、処刑台の方へぶん投げる。まぁ処刑台を通り越して要塞まで飛んでいってしまったが些細なことだ。
「イ、イブキ?」
「ふん‼︎‼︎」
「ブヘェ‼︎⁉︎」
こけたことで地面に向けられた赤犬の攻撃。その影響でマグマ溜まりが出来た石畳の上を通り、その先にいる拳のぶつけ先がいなくなって呆然としているエースの頬へそれなりの力を込めて怒りのビンタをお見舞いする。ビンタをモロに受けたエースは吹っ飛び、地面を数回バウンドした後でやっと止まる。
「な、何すんだイブキ⁉︎」
「グーの方が良かった?」
「よくねェわ⁉︎」
何故か乙女みたいに叩かれた頬を押さえて上半身を起き上がらせたエースを見下しながら私は拳を鳴らす。最初はビンタされたことに怒っていたエースだったが、私の怒気の方が大きいことに気付いたみたいで徐々に怒りが引っ込み、冷静になったことで怒りの視線が私の様子を窺うような視線に変わっていった。
「エース」
「はい」
「私はあなた達の海賊団に所属していないから白ひげを敗北者と赤犬が言ったことに怒る気持ちは正直わからないけど、それは今も命を燃やして戦っている船長が下した最期の命令を無視してまで訂正させないといけない程なの?」
「…あぁ、アイツはオヤジの…おれ達の誇りを侮辱した‼︎」
しかし私の言葉に怒りが再燃したのか、私を睨み付けてくるエース。視線はそこを退けと語っており、そんな姿に私はため息を吐き出した。このまま素直に退いたら逆走して赤犬のところまで行きそうな勢いだ。だからエースは脱出するまで手錠をかけたままにしたかったんだよ。
「エース、考え方を変えよう」
「考え方?」
「ガキがそのまま育ったような天竜人にペコペコ頭を下げてご機嫌伺いしてるアイツの言う正義とか云々って、実に空虚じゃない?」
ニタァと笑う私にエースを含めた周囲がギョッとしているが、この場は雰囲気に任せてゴリ押した方が良さそうなのでそのまま続ける。
「天竜人の行いを見て見ぬフリをしている時点でアイツの正義はゴミクズだ。ゴミクズの誇りを掲げて私達を非難する赤犬は私からすると滑稽だね」
ぶっちゃけ海兵にどれだけ酷い罵倒をされようが、コイツらみんな天竜人には逆らわないしなぁと思えば何にも感じなくなる。
「赤犬が戻って来たら言ってあげようよ。所詮海軍は権力には頭を下げる軟弱者じゃけェって。滅茶苦茶怒って顔面マグマになるよ絶対」
くすくすと笑って言いながら周りに目配せをすれば、察してくれたようで周りの白ひげ船員達も大声で笑い始めた。いきなり笑い始めたみんなにエースはポカンとしていたが、彼の口角も徐々に上がっていく。一先ずこれで大丈夫か。
赤犬も天竜人のことは歯痒く思っていそうだけど、私の立ち位置は白ひげ側なので今回は悪く言わせてもらおう。
「それにこの戦いはどちらかが全滅するまでの戦いじゃなくてエースを取り戻す戦いだよ。つまり今のエースは護衛対象! あなたが逃げないと白ひげ海賊団のみんなはあなたを守るために傷付くから早く逃げなよ。それにほら、ルフィも見てる」
「ルフィ…!」
みんなが笑うことで赤犬が白ひげに向けた罵倒は捨て台詞みたいなものでオヤジの威光を何一つ傷付けるものではないと判別したのか、エースの怒りはとりあえず落ち着いた。そのタイミングでエースの意識をルフィへ向くように仕向ければ、エースは再び逃げるために走り出した。
それを追うように周りの白ひげ船員達も走り去るのを見送った後、改めて周囲を見渡せば分かる範囲だが広場に自力で走ることが出来る白ひげ船員の姿は無い。
「出航ゥー‼︎ 出航だァー‼︎ 所属はどうでもいい!船を出せ! 今はみんなで新世界に向かうのが最優先事項だ‼︎」
「空きはないか⁉︎ 重傷者がいる‼︎」
「こっちはまだ乗れるぞ!」
青雉がセンゴク鎮圧にかかりっきりなので海も凍らされてはおらず、そのため新世界へ向けて満員になった船から続々と出航を始めている。
「イブキ! お前はどうすんだ⁉︎」
「私? 私は白ひげを見届けるよ」
恐らく最後尾と思われる白ひげ船員に返事をしながら来た道を戻って私は白ひげのもとへ。白ひげは黄猿の攻撃で傷付きながらも海兵を薙ぎ払い、私の姿を見るとフンッと鼻を鳴らした。
「話は聞こえていた。エースが世話になったな」
「別に。それより本当に船に乗らないの? あなたの息子達は偉大な大海賊"白ひげ"の背中より、オヤジである"白ひげ"の別れの言葉が必要だと思うけど」
「グラララララ‼︎‼︎ 悪いがおれにそんなしみったれた別れは似合わねェ。それにそれをすれば語らいすぎて息子達全員に言葉を届ける前におれの寿命が尽きるだろうが‼︎」
心底愉快だと言いたげに豪快に笑いながら能力で近付いて来ていた海兵を丸ごと吹き飛ばす白ひげ。その姿は元気が有り余っているように見えるが、確実に弱っている。仮に帰れても本人が言ったように長くはないだろう。
「わかった。もう私からは何も言わない」
これ以上は白ひげの覚悟に水を差すだろうと思い、後ろへ下がって距離を取ってから獣型へ変身する。
「後ろは任せて。物理的な壁になってあげる」
船員達と海兵を遮るように身体を置きながら白ひげに殿をしてやると言えば、返事はないが白ひげから逃げた船員を気にするような気配がなくなった。任せてくれたのだろう。
それに応えるために頑張りますか。手始めに広場で横転している外輪船に尻尾を巻き付けて持ち上げ、海へ浮かべる。そしてその次は逃げる海賊船を追いかけて砲撃する軍艦を真上から叩き潰し、そのまま海の底へ送り込む。
「尻尾が落ちてくる……」
「逃げろ! 退避ィ‼︎ 退避ィィィ‼︎‼︎」
「無理だ……。あんなサイズ、逃げ場なんてない……」
「ンン〜〜、それは困るねェ〜」
最後に白ひげを巻き込まない範囲の海兵を尻尾で叩き潰そうとしたのだけど、それは流石に黄猿によって阻止されてしまった。
蹴り上げられた尻尾に少し身体が引っ張られたが、ダメージはない。それどころかここで黄猿を引っ張り出せたのは嬉しいな。ある程度空を飛べる黄猿に船を追われるのが一番面倒だったから。
そんな黄猿を警戒していると、地面を割りながら何かが地中を掘り進んでいるのが目に入った。このままだと私の身体ブロックもスルーして先に行きそうなので、その進行先に尻尾を突き刺して周囲の地盤ごとそいつを掘り起こす。
「あァ〜、鬱陶しいのうカイドウの娘ェ‼︎」
「ふん、行かせないよ。白ひげの首が取れるのだからそれで我慢しなよ。最低限の面子は保てるでしょ」
「それで保てるほど海軍の面子は安くないねェ〜」
掘り出された赤犬は身体の大半をマグマにしながら私を睨みつけ、黄猿は自然体だけどいつでも私を攻撃出来る状態だ。
なので私も毒が滴る牙を見せつけながら鱗から毒ガスを威嚇程度に放出して彼らを牽制する。白ひげがここで死ぬとわかっている今、私の毒放出を躊躇わせるものがないと理解しているのか大将二人は対応のために足を止めるしかない
「クザンはまだ来んのか? コイツの相手はアイツが適任じゃろうが」
「相手はあのセンゴクさん。手助けがあっても時間がかかるのは仕方ないねェ〜」
後は何か切っ掛けがあれば互いに攻撃を始めるような一触即発の空気が辺りを包み込み、それに当てられた周りの海兵が無意識に動きを止めて私達を見守る中、その声は突如響いた。
「おい!処刑台のところに誰かいるぞ‼︎」
海兵の誰かが叫んだその言葉に新たな勢力が現れたのかと私達は確認のために一斉に視線を処刑台へ向けた。
「ゼハハ、ゼハハハハ‼︎ 久しぶりだなァ!オヤジ‼︎ 会いたかったぜ‼︎」
囚人達を引き連れて処刑台の上で大笑いするティーチの姿が見えた時、サカズキはティーチの背後にいるのがインペルダウンにいるはずの囚人だと気付いて青筋を立て、黄猿は感情が読み取り辛い表情を浮かべ、私は笑みが浮かびあがるのを抑えられなかった。
…………見〜つけたぁ。
オリ主……引き続き足止めを継続中。センゴクが暴れていることで海兵達のコマンドが突撃一択になっているので非常にやりやすい。エースが赤犬とラップ勝負を始めた時はキレかけたが、現在は黒ひげを見つけちゃったので満面の笑み。
置いていかれたMr.3……盛大に置いていかれてるガネーー‼︎⁉︎ このままだと捕まって監獄行きだガネ、早く船に……うぉお⁉︎ 蛇の身体が落ちてきたガネ⁉︎ 仕方ない、鱗を登って……へ、蛇を殴った海兵の腕が溶けたガネェー⁉︎ わぁぁぁぁ‼︎‼︎空から巨大な尻尾が落ちてくるガネェェェェ‼︎‼︎⁉︎
おつるさんの名前は『つる』ですが、オリ主は『おつる』と勘違いしてます。原作でもおつるさんって呼ばれてるからね、仕方ないね。ちなみに筆者も調べるまで本気でおつると思ってました。
途中で斬首された船員さんですが、キチンと彼にも事情があります。まぁヤマトに攻撃した時点でオリ主から敵認定されているので、たとえ誤解だとしても初手雷鳴八卦をどうにかして攻撃を続けてくるオリ主にそれを伝えないと止まってくれませんが。
失敗して死んじゃったらオリ主がドフラミンゴに操られていたんですぅ〜って言うのでドフラミンゴは『⁉︎』になりますし、カイドウからなんでオリ主操ってんの?って取引の際に聞かれる未来が待っていました。つまりドフラミンゴは知らぬ内に自分でファインプレーをしていたのです。