エンカウント率ぅ   作:フドル

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誤字脱字報告ありがとうございます‼︎


四皇は多分みんなステルス能力を持っている

「"毒壊腐風(ヴェ・ポレス)"」

 

 黒ひげ陣営の参戦に戦場にいた者達はそれぞれの反応をするが、一番最初に行動した者はイブキだった。

 

 少しの溜めを経て放った緑色のブレスは毒の息ではなく、毒液。液体を激流のように吐き出しているだけとはいえ、命中すれば大抵のものは破壊する威力を秘めており、イブキは初手からブレスで出せる最大火力をもって黒ひげ陣営を仕留めにかかる。

 

 獣型の巨体もあってブレスは処刑台を丸ごと飲み込んでもまだ余裕がある太さ。最早毒はオマケだと言わんばかりの一撃に白ひげと会話していたティーチが気付くと目を見開いて顔からは大量の冷や汗が浮かび上がる。

 

「ゼハハハハ‼︎ それは駄目だろうが⁉︎」

 

 焦りの感情がSMILEの副作用で笑いに変換されたティーチは爆笑しながらもブレスが到達する前に受け身を考えない全力の投身で処刑台から離脱。ティーチの後を追うように彼の仲間が飛び降り、直後に毒ブレスが処刑台へ直撃。水圧で全てを吹き飛ばしてその先の地面をも穿つ。

 

 これで回避成功……なんて言えればいいが、このブレスはイブキの息が続く限り吐き出せるものであり、反動もイブキなら押さえつけることが出来る。つまり、このブレスはイブキがその気になれば曲げることが可能。

 

「おいおいおい‼︎ 待て待て待て待て⁉︎」

 

 イブキが頭の角度を下げることで、ブレスが飛び降りたティーチ達を追いかけるように迫ってくる。ティーチが手に入れたヤミヤミの力もここからではイブキには届かないため、早くもティーチ達は絶体絶命の危機に陥ってしまった。

 

「これ以上は見過ごせないねェ〜」

 

 しかしこのままブレスが進めば黒ひげも死ぬだろうが無視出来ない数の海兵も巻き込まれて死ぬため、黄猿がイブキの顎を下から蹴り飛ばすことでブレスを強制中断。無理矢理閉じられた口にブレスが直撃したことでイブキの牙が砕けて毒液が大量に撒き散らされたが、地面に降り注ぐ前に赤犬がマグマでイブキを攻撃するついでに丸ごと蒸発させる。

 

 とはいえ熱耐性を獲得しているイブキにダメージはない。頭にかかったマグマが垂れ落ちることでできた隙間から見えるイブキの瞳がティーチから二人の大将へ向けられた。

 

 イブキの身体が動き始め、白ひげの能力とは関係ない地響きがマリンフォードを絶えず襲い始める。イブキが二人の大将を排除しないとティーチに行けないと判断して本格的に動き始めたからだ。

 

 突如巨体が動き出したせいでイブキの進む先で奮闘していた海兵の内、退避の判断が遅れた者達が巨体の下敷きになり、運悪く身体全てを潰されず即死出来なかった海兵の悲鳴が響く。その声を聞きながら動くだけで攻撃になるイブキに改めて面倒臭さを感じ取った大将二人は顔を顰めた。

 

 イブキを無力化しないとマリンフォードが毒に沈み、白ひげの対処に向かわないとマリンフォードが海に沈む。白ひげが死ねばイブキが毒を放つ可能性が高まるのに、白ひげに行こうとすればイブキが邪魔をする。大将としてこんな面倒臭い相手は片手で数えられるぐらいだと黄猿と赤犬は確信した。

 

 そんな面倒な者を相手している最中に現れた何をしにきたかわからない黒ひげの対処も必要だ。エースを処刑したいのに面倒なのがポンポン湧いてくることに赤犬は内心怒り狂っているが、行動に影響が出ないようになんとか気持ちを落ち着かせる。

 

「あ、そうだ。ねェ、赤犬」

「あァ? なんじゃ、大人しく死ぬ気になったか?」

「所詮海軍は権力には頭を下げる軟弱者じゃけェ」

 

 なのに少し気持ちが落ち着き始めたタイミングで放たれたイブキの挑発とも取れる言葉。いつもなら冷静に受け取り言い返すことすら出来る赤犬だったが、タダでさえイラついているのに加え、権力がどれのことを指して言っているのか優秀な頭脳が導き出してしまったのでとうとう怒りのリミッターが振り切れてしまった。

 

「うわっ、本当に顔面マグマになった」

「オー、落ち着きなよサカズキィ〜」

 

 少し前にイブキがエースに言った予想は的中し、怒りでマグマを撒き散らす赤犬の姿を見たイブキは笑う。その笑い声によって更に怒りゲージが増加する赤犬を流石にマズイと考えた黄猿は落ち着かせようとするが、効果が薄いと判断するなりさっさと諦めて巻き込まれないように少し距離を離した。

 

「貴様は極刑じゃあ! イブキィ‼︎」

「やってみなよ。本気で抵抗してやる」

「巻き込まれるから実力に自信のない海兵は下がりなよ〜」

 

 次の瞬間にはぶつかり合いそうな二人にどうすれば良いのかわからず様子を見ていた海兵達は、それに気付いた黄猿からのありがたい指示を受けて自分達が出せる全速力で逆走を始めるが、待ちきれない赤犬がマグマを撃ち出し、そのマグマを突き破ってイブキが赤犬を喰らおうと口を開けながら突っ込んだ。

 

 イブキが地面に激突したことで起きた振動を四つん這いで耐えながらも海兵達は必死に逃げ場を探す。しかし処刑台の左にはセンゴク達が。右には白ひげと黒ひげが。沿岸部全域には黄猿と赤犬の大将二人と巨大蛇イブキが。上空にはマリンフォードからはみ出たイブキの身体が檻のように展開されており、足場にされるのを嫌ってか身体を纏うように毒ガスが出ているので近付けない。さらに尻尾の先端が獲物を探すようにゆらゆらと揺れており、いつ自分目掛けて落ちてくるかわからない恐怖が常に付き纏う。

 

「ど、どこへ逃げたら良いんですかァァァァァ‼︎⁉︎」

 

 どこへ逃げても何らかの余波が飛んでくる状況に、海兵達の本心を代弁するかのように一人の女海兵が叫ぶが、返答は無情にも全ての箇所から同時に飛んできた戦闘の余波だった。

 

「いやァァァァ‼︎ もうお家に帰りたぁぁぁい!!!」

 

 奇跡的に生き残った女海兵は余波の爆風に吹き飛ばされ、コロコロと転がりながら赤犬が聞けば制裁に来そうな自分の本心を叫んでしまったが、幸いにもその声は破壊音に紛れたことで誰の耳にも届かないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とっととティーチをぶっ殺しに行きたいのに大将二人が滅茶苦茶邪魔をしてくる件。隙を見てはティーチ達にブレスや尻尾の叩きつけを試みているんだけど、攻撃範囲に多数の海兵がいるからか毎回妨害されて上手くいっていない。

 

 無視したくても黄猿の蹴りは痛いし、赤犬の溶岩を纏ったパンチも威力が高い。再生能力で誤魔化しているけど、多分再生出来なければもう数回は戦闘不能になってる。そんな火力を保持する大将が二人もいるのに、遠距離からチマチマとレーザーを撃ってくるパシフィスタも厄介だ。黄猿の攻撃を模倣した兵器だけど原理が違うからか奴らの放つレーザーは私の鱗を滑らずに直撃する。まぁ貫通はしないけど。

 

 後は地下を通って私のボディブロックをすり抜けて白ひげ船員を襲う海兵達の対処も必要だ。地下通路の出入り口を見つけるなり尻尾で叩き潰しているのだけど、後手の対応になるのでどうしても海兵を何人か通してしまう。

 

「あ、そうだ。地下ごと潰そう」

 

 もう全部無視してティーチのもとに行きたいけど、後ろは任せろと言った手前、ティーチをぶっ殺したいので約束破りますは違うよなぁなんて考えつつパシフィスタや地下通路の出入り口を見つけるなり尻尾で潰していたのだが、地下通路自体を丸ごと潰せば誰も先に行けないじゃんと思いついたので早速行動へ移す。

 

 頭を地面に突き刺し、無理矢理掘り進める。その最中に黄猿や赤犬が何かを叫びながら私に攻撃してくるが我慢して地下を潜り続け、ある程度潜ったところで出鱈目に身体を動かして地下を破壊する。

 

「うわぁぁぁ‼︎」

「落ちる……⁉︎ 誰か助けてくれェー‼︎」

「手を離すなよ‼︎」

「落ち、落ちるガネェェェ‼︎‼︎」

 

 結果、マリンフォードは地割れでも起きたかのように割れた。動き回っていた際の振動で逃げ遅れた海兵もチラホラと割れた地上から滑り落ちて来て……ん、ガネ?

 

「はぁー、助かったガネ。って巨大蛇の上だガネェェ⁉︎ 何にも助かってないガネ⁉︎」

 

 なんか特徴的な語尾の奴が割れた地上から偶然地下にいた私の頭上に落ちてきたようで、ギャーギャー一人で忙しなく騒いでいる。

 

 んー、確かいたよね? 原作でこんなキャラ。語尾がガネ……ガネ……。あ!Mr.3だ‼︎

 

 名前を思い出せたことで、芋蔓式に彼の活躍も思い出した……んだけど、私って彼の活躍の舞台を思いっきり壊しているね。しかも多分処刑台に置き去りにしてたわ。

 

「わわわ! 動くガネ⁉︎」

 

 今のところ友の為にここまで来たのにルフィの覇王色をくらって気絶してただけというのがこの世界のMr.3だ。なんか少し申し訳なさを感じたので彼をここから逃がしてあげようか。

 

 一先ずここから出ようと私の鱗にしがみついているMr.3を頭に乗せたままゆっくりと地割れから身体を出せば、地面に潜る前よりも何故か空が明るい。頭上のMr.3を落とさないように注意しながら空を見上げれば、多数の火山弾が私目掛けて降り注いでくるところだった。

 

「ぎゃぁァァァァ‼︎⁉︎ 火山弾だガネェェェ‼︎⁉︎」

 

 別にあれは受けても大丈夫な部類だけどMr.3に当たると彼は死ぬだろうから迎撃を選択。降り注ぐ多数の火山弾、その中心辺りを狙ってブレスを放つ。

 

 毒液のブレスが火山弾に命中し、良くて粉々、悪くても火山弾を押し返す。そんな威力のブレスを吐きながら頭を左に向けて左側の火山弾を排除した後、今度は一気に右を向いて残りの火山弾を纏めて薙ぎ払う。ついでに毒液を黄猿や赤犬の真上に降らせるオマケ付きだ。

 

「@/#&☆$%*‼︎‼︎⁉︎」

 

 そんな光景を私の頭上で見ていたMr.3は言葉になっていない何かを大声で叫んでいる。でもここにいると絶対に死ぬというのは理解出来たのか、蝋でソリのようなものを作ると器用に私の背中を滑って逃げていった。

 

 とはいえ大将二人+αと戦っている最中なので彼が安全に滑り終わるまで待てる余裕はない。だから適当なところで身体を動かして彼を白ひげ船員達がいる場所へ吹き飛ばす。その結果、耳に残る悲鳴は聞こえたけど無事に辿り着けたようだ。偶然にも海楼石の解錠に手間取っているマルコの前に落ちたので自身の価値を示すことも出来るだろう。

 

「よそ見はイカンよォ〜」

「ぐっ……⁉︎」

 

 それを見届けて黄猿達に視線を戻す……前に、加速を得た黄猿の蹴りが私に突き刺さる。よそ見をしていた私が悪いとはいえ、受け身が間に合わないのでその場でたまらずダウンしてしまった。

 

 そこへ走ってくるのは巨人族の海兵二人。彼らは私の首に腕を絡めると全力で締め上げてくる。私の首が太くて彼らの腕が届いていないので私からすると多少苦しいぐらいだが、彼らの本命は時間稼ぎだろう。

 

 だって彼らに遅れて一人の巨人族が大きな鎖を引っ張りながら走って来てるもん。もしあれが海楼石の鎖なら巻かれてしまうと人型に戻されてしまう。

 

 それは面倒だから私を押さえつける奴らを振り払うために暴れようとしても赤犬が拘束に参加しているので全然動けん。何そのマグマで出来た両腕。初めて見たんだけど。

 

 尻尾で叩き潰そうとしても黄猿に全部蹴り飛ばされるし、毒ガスを撒いても覇気を纏って耐えてくる。

 

 ……まぁ、全然ピンチでは無いんだけどね。

 

 どうせ人型に戻るのならとタイミングを見計らって自分から獣型を解除する。元の姿に戻るので、当然私は巨人族の腕からすっぽ抜ける。赤犬はすぐに気付いてマグマの手を閉じようとしたみたいだけど、私が元の姿に戻る方が圧倒的に早い。

 

 そして再び獣型へ変身すると、目の前には密集している巨人族がいるではありませんか。そんなん見せられたら攻撃するしかないよね。

 

「……えっ?」

 

 大口を開け、私を押さえつけていた巨人二人の上半身を纏めて噛む。当然噛めば牙が刺さるので毒を仕込み、今度はぺっと解放。私の口から落ちて地面に倒れた巨人二人はしばらくすると立ち上がったが、その顔は殺意に満ちていた。

 

「悪いけど少し寝てなよ〜」

 

 巨人二人を戦力に出来た。なんて喜ぶ間もなく巨人二人は黄猿に蹴り飛ばされて転がっていった。出オチである。……こんなことになるならセンゴクみたいに意識を覚醒させ続ける毒も入れておけばよかった。

 

 とはいえ下手に手を出せば駄目というのはわかったようで、残った巨人は気絶した二人を引き摺ってこの場を離れてくれた。置いといてくれれば後から意識覚醒の毒を注入出来たのに。

 

 ……さて、パシフィスタもかなり破壊したので状況は実質最初の頃の私対大将二人に戻ったけど、そろそろ時間稼ぎも疲れてきた。言ってないだけでかなりボコスカ殴られたり蹴られたりしてるからね? でもこれだけ時間を稼いで後続も潰したのだから大抵の白ひげ船員は逃げていることだろう。

 

 半数以上が逃げていれば上々だなんて考えながら期待を込めて白ひげ船員達の様子を確かめてみたが、なんと!船は出ているのに大多数は離れてないのである‼︎

 

 ……船の近くに尻尾落としてやろうか??? あれ絶対白ひげの最期を見届けたいとかそんなやつだろ! その気持ちを否定する気はないけれどもうちょっと……せめて黄猿の攻撃が届かない場所までは逃げろよ馬鹿どもが‼︎ こっちの再生も無限じゃねェんだぞ⁉︎

 

 でも逃げない理由に私を信頼しているとかもあるんだろうなぁ。側から見たら何度攻撃を受けて怪我してもすぐに再生して復活しているように見えるだろうし。実際は再生能力がガリガリ削られているけどな!

 

 そのことを素直に言えば彼らも逃げてくれるだろうが、将来的に敵対する可能性が高い奴らに言うのは嫌だ。そんな感じで大将二人と攻防を繰り返しながら一人勝手に悶々としていれば、一隻の船からマルコが飛び立った。真っ直ぐと白ひげの場所ではなく私の方向へ飛んできているので、援護でもしてくれるのだろう。

 

「やっちまえ‼︎」

 

 でも今はタイミングが悪い。白ひげがティーチ達から総攻撃を受けている最中だからだ。原作と違って海兵達のついでに黒ひげ陣営も白ひげによってボッコボコにされていたが、結末は変えられないらしい。尻尾を割り込ませようにも黄猿に蹴られるし、白ひげからもおれはいいから自分の身を守れと言いたげな睨みが飛んできていたので私は黒ひげ陣営の総攻撃を妨害しなかった。

 

「ぎゃぁぁぁぁ‼︎⁉︎」

 

 が、白ひげによって船員数人が倒されているので総攻撃の火力が足りず、黒ひげ達はかなり痛い反撃の一撃を受けていた。しかしここまでのようだ。白ひげは死にかけとは見えない立ち姿で周りに何かを語りかけている。そして最後に大きく息を吸い込み、誰の耳にも聞こえる大きな声で──。

 

「"ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)"は……実在する‼︎‼︎」

 

 ──そう言い切った。

 

 マリンフォードが静まり返る。ここにいる全員が白ひげの言葉を飲み込むのに時間がかかったからだ。

 

「オヤジィ……‼︎」

「マルコ……悲しんでいるところ悪いけど、大将の相手をお願い」

 

 私の頭上に辿り着くなり白ひげの死に際を見ることになってしまったマルコが泣きそうな声を出しながら手で目を覆っているが、そんなマルコに言いたいことだけ言って返事を待たずに私はティーチを狙って彼の真上から尻尾を突き刺した。

 

 てっきり白ひげを仕留めて油断していると思ったが、残念ながら私の不意打ちは回避されてしまった。だけどそれは別にいい。予想通り、ティーチだけを狙った一撃なら黄猿は妨害しなかった。

 

 つまり今、ティーチのすぐ近くには私の一部がある。そして大将の相手を出来るマルコも来てくれた。なのでここから私が離脱しても大した問題にはならない。

 

 ティーチが尻尾を見てから私の方を向き、ニヤッと笑って何かを言う前に変身を解除。その際に尻尾を基点として元の姿に戻る。

 

 シュルシュルと猛スピードで身体が縮み、元の姿へ。目を開けば、巨大蛇だった私の頭があった場所を未だに見ているティーチの姿が間近にある。

 

 その姿は隙だらけ。なら私がすることは当然攻撃一択。金棒を構えて力を込めたタイミングでティーチは私に気付いたが、奴に出来たのは鼻水を垂らして目を見開くことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「"雷鳴…八卦"‼︎」

「ごほぶへェ‼︎⁉︎」

 

 金棒が無防備なティーチの横腹にめり込む。命中したことで覇気を撒き散らし、骨を砕く手応えが金棒の取手を握る私の手に伝わってくる。そのまま金棒を振り切れば、ティーチはボールのように吹っ飛んでいった。

 

 しかし命を潰す感触はなかったので生きているだろう。まぁこの世界の人物はどいつもこいつも身体が頑丈なのでショックはない。

 

「ゼハハハハハ‼︎ クソッ! 痛ェ‼︎ 笑うせいで骨に響きやがる…‼︎」

 

 ティーチを追いかければ、ティーチは痛いと言いながらも大爆笑していた。

 

「ハァ…、ハァ…、ゼハハ、久しぶりだなァ! イブキ‼︎」

「正直来るなんて思ってなかったけど、何しに来たの?」

「ゼハハハハハ‼︎ オヤジの能力を奪いに来たのさ‼︎ 世界中を探すのは骨が折れるからなァ‼︎」

 

 ふらつきながらも立ち上がったティーチへダメージの度合いを確かめるために適当な質問をすれば、ティーチは案外素直に答えてくれた。うーん、モロに入った割には平気そう? 普通なら立つことも出来ないと思うのだけど。

 

 ティーチがどうせなら私の能力も奪ってやるなんてペチャクチャ喋っているのを聞き流しつつ、次はどんな攻撃をしようか考えていれば、ティーチが何かに気付いたように私の足元を見た。

 

 そこに何かあるのかと私も周りからの不意打ちに気を付けつつ足元を見れば、ドフラミンゴに斬首された白ひげ船員の頭が落ちていた。

 

「ゼハハハハハ‼︎ なんだ、死んだのか! 色々と情報を流してやったのに残念だ‼︎」

 

 笑っているせいで残念と本当に思っているのか疑問だが、気になるワードがチラホラと出てきた。

 

「コイツはな、オヤジを慕うのと同じくらいおでんさんのことを慕っていたんだ。だからちょっと演技をすれば簡単に操ることが出来た‼︎」

「ふーん」

 

 これは聞くべきだろうと思い、私はティーチへ問いかけようとするが、それよりも早くティーチが勝手にネタバラシを始める。元白ひげ船員で現在生首船員の名前や過去、そしてどれくらいおでんを慕っていたなんて話はどうでもいいのでさっきと同じように聞き流しつつ、知りたいところが出てくるのを待つ。

 

「──だがコイツもヤマトの優しさに気付いた。ここで使い物にならなくなるのは計画を立てたおれも困る。そこで──」

「ホホホ、私の出番です。といっても私は彼に催眠術をかけただけですが。彼の心の奥底に眠る憎しみを増大させる催眠術をね」

 

 話が長いな〜。要約するとおでんのことが大好きだった生首君に個人で電話をかけ、カイドウ関連で焚き付けながら上手いこと使って白ひげ側の情報の横流しをしてもらってたけど、だんだん言うことを聞かなくなってきたから適当な理由をつけてこっそり出会い、その際に催眠術をかけた。

 

 といってもそこまで強いものではなく、更にワノ国やカイドウに関係するワードを出さないと発動しないものらしい。

 

 エースとティーチが戦っている際にワノ国の話をしたのは生首君の憎しみスイッチをオンにするためか。それで憎しみが増大した生首君は我慢出来ずにカイドウの子であるヤマトを狙ったと。

 

 じゃあ私はなんで攻撃されたの? 白ひげ船員の癖に私の毒の対処方法を知っているのは百獣にいたティーチが情報を流したからと仮定しても、生首君が私を襲ったのはティーチが来る前だ。ワードを出した覚えも……もしかして『カイドウ』もワードだったりする?

 

 ……まぁ、どうでもいいか。知りたいことはしれたし、ティーチを殺そう。だけど操られた彼も不憫なので少しだけ手伝ってあげよう。

 

「あァ? ゼハハ、何をする気だ?」

 

 足元に転がる頭を手に取る。そんな私を見てティーチは怪訝な顔……SMILEのせいでニヤニヤ顔で私に問いかけてくる。

 

「いくよ。"度し難ヘッド、仕返しシュ〜ト"」

「ブヘェ‼︎⁉︎」

 

 それに対して私は生首君を全力でティーチに投擲することで返答とした。まさか私が生首を投げてくるとはティーチも考えてなかったのか、アニメ化されていたら三カメラに分けて放送されそうなくらい綺麗にティーチの顔面へ生首がめり込んだ。

 

「ゼハハハ‼︎ テメェ! 何しやがる⁉︎」

「"度し難ボディ、仕返しシュ〜ト"」

「おぶふ⁉︎」

 

 次に残っていた身体の両足を掴み、ジャイアントスイングで振り回してからティーチへぶん投げると、回転しながら飛んでいった生首君の身体がティーチの顔面を綺麗に蹴り飛ばした。

 

「"雷鳴──」

「"闇穴道(ブラック・ホール)"!」

 

 最後に追撃でティーチを殴ろうと金棒を構えたが、流石にそれは通してくれないようで駆け出す前にティーチの足から地面に広がった闇に足を取られてしまった。残念。

 

 

「ゼハハハハハ‼︎ これで自慢のスピードも使えねェな!」

「これくらい能力を使えば……」

「おおっと、それはさせねェぜ! "黒水"!」

 

 笑うティーチを見ながら獣型になろうとするが、ティーチの手のひらに闇が出現すると変身を始めていた身体が勝手に変身を中断した。毒なども試してみたけどうんともすんともいわない。

 

 成程、これが能力を抑制される感覚。しかし私の能力では闇も属性判定のようで、足元が闇に覆われていることもあって急速に適応が進められている。

 

「ゼハハハハハ、百獣にいた頃に聞いたぜ? おでんさんは頭を撃たれて死んだってな」

 

 徐々に闇が効かなくなっていることに気付いていないティーチはおでんの話をしながら銃を取り出し、銃口を私に向けた。それでトドメを刺すつもりなのだろう。

 

 ここから金棒を投げれば対処は可能だろうけど……適応の方が早そう。もう闇穴道で私が沈んでいないことにティーチは気付いて…ないね。完全に無力化してると思ってそう。

 

 まぁそれも仕方ない。百獣でも私の適応能力のことを知っている人は限られる。大抵はカイドウ譲りの耐久力って勘違いしているからね。

 

 だからその場で人獣型に変身してやれば、ティーチはとっても驚いてくれた。……ん? なんでSMILEを食べたのに驚いているんだろう? 笑うんじゃなかったっけ?

 

「油断したね。"雷鳴八卦"」

「ぼふぅ‼︎⁉︎」

 

 疑問が頭に浮かんだが、これから仕留めるつもりの奴にそんなことを考えても仕方ないと浮かんだ疑問を消し、ティーチへ金棒を振るう。

 

「"雷鳴八卦"」

「ぐぅあぁ⁉︎」

「船長⁉︎」

 

 上手く防御したようだけど、吹っ飛んだ先に素早く回り込んで再び金棒を振って殴り飛ばす。これから始まるのが一回だけの技じゃないことに気付いた黒ひげ陣営の誰かが叫ぶが、もう間に合わない。

 

 覇気を全開状態へ。空へ殴り飛ばしたティーチを追いかけて彼を中心点として周囲を跳びまわりながら四方八方から金棒で殴りつけて更に上空へと運ぶ。私に闇が効かなくなった今、空を飛べないティーチは殴られ続けるしかない。

 

「なんでだ畜゛生゛⁉︎ "解放(リベレイション)"‼︎」

「足場ありがとう」

 

 焦ったティーチは闇穴道で取り込んでいた瓦礫を吐き出して攻撃してくるが、利用出来るものはありがたく利用させてもらってそれ以外の邪魔になるものは砕いて地上から攻撃してくる黒ひげ陣営がいる場所へ落としておく。解放が有効打にならなかったティーチは諦めずに覇気で防御や反撃をしてくるけど、その場しのぎの抵抗なんて簡単にねじ伏せることが出来る。

 

「ん、ここら辺でいいかな」

 

 すぐ真上に大きな雲が見え、地上のマリンフォードが小さく見える場所でティーチを殴るのをやめれば、ティーチは重力に引かれて自由落下を始める。

 

 勿論これは前準備だ。落下死なんてこの世界だと一番期待値が低い。なので確実にトドメを刺す一撃を今から放つ。

 

 落ちていくティーチを見ながら力強く跳び、雲の上へ。そして何故かいる龍姿のカイドウと目が合って……目が合って?

 

 うん、カイドウが空にいるのは普通だもんね。カイドウが……。カイドウ⁉︎

 

 目が合ったカイドウから視線をティーチに向け、ここにカイドウがいるわけないと再びカイドウを見て、でもいるもんなぁとティーチへ視線を戻しながら結論が出かけたところでなんでいるのかとやっと私は驚愕することができた。

 

「なんだ、やらねェのか?」

「いや、やるけど」

 

 三度見してから驚く私にカイドウはティーチを見ながらそんなことを言う。その姿に思いっきりツッコミを入れたいけど、今はティーチが先だと自分に言い聞かせてからティーチのもとへ全力の月歩をしながら向かう。

 

 突然のカイドウエンカウントに緩みかけた覇気を全開に戻し、金棒には込められるだけの武装色を。更に両腕の筋力を増強し、今出せる私の全身全霊をこの技に込める。

 

「"降雷覇蛇(フラス・ユグ・)─」

「ヤ゛ベロ゛ォォォ‼︎‼︎」

「─怒海破(ドラス)"‼︎‼︎」

 

 命乞いをするかのように手をひらを私に向けて叫ぶティーチに構わず振り下ろした一撃は彼の胴体にめり込み、覇気を撒き散らす。一度目の雷鳴八卦以上に様々なものを砕く感触と共に金棒を振り切れば、ティーチは弾丸のように加速してマリンフォードにぶつかり、着弾地点を中心に大きな蜘蛛の巣状の破壊痕を刻み込んだ。

 

「ふぅ…! ふぅ…! ふぅー」

 

 ティーチを空まで運ぶための連撃や今の一撃で消耗した体力を取り戻そうと身体が荒い呼吸を繰り返す。ある程度息が整い始めたタイミングで体内に篭った熱を吐き出すように息を吐けば、白い息が口から漏れた。

 

 流石に仕留めたと思いたいがモロに入った割には感触が変だったため、ティーチのしぶとさならまだ生きている可能性がある。そのため確実に仕留めるために私も地上へ向かい、先程と同じように覇気を込めた金棒を振りかぶってティーチが埋まっている穴に狙いを定める。

 

 後はこの一撃を放てばいい。そんなタイミングで、この場に似合わない美しいと思える歌が私の耳へ届いた。

 

「……なんのつもりかな? ウタ」

「シャンクスの指示だからね。イブキを止めにきたよ」

 

 金棒で砕いたのはマリンフォードの地面ではなく、巨大な音符。そんなことを出来る人物を私は知っていたので名前を呼びながら気配を感じる方を向けば、シャンクスの指示ということで少し張り切り気味のウタが音符に乗って私を見ているのだった。




オリ主……大将二人の足止めは流石にキツイのに、白ひげ船員達が思ってた以上に逃げてなかったのでそれなりにキレてる。再生限界が近付いてきていたのでマルコが来たタイミングで強制バトンタッチでティーチのもとへ。そして大技を放つために空へ向かったら雲に隠れていたカイドウを見つけちゃって宇宙猫になった。

白ひげ……最初あたりで生首船員のことをティーチに聞かされて怒り状態へ。その後に一度原作通り黒ひげ陣営から総攻撃を受けるが、スクアードによる傷が無く赤犬によって顔半分を溶かされてないので元気一杯で反撃した。しかし黒ひげ側もしぶとく、オリ主が見ていた二度目の総攻撃を受けた際に限界が来て死亡した。

生首船員……ある日ティーチから電伝虫で連絡を受け、カイドウが白ひげを殺そうとしていると教えられる。急いで白ひげに伝えに行こうとするが、既にスパイのヤマトがいるだろと言われたことで断念。おれとお前でオヤジを救おうぜというティーチの言葉に海賊らしくないヒーロー感を得てしまい、原作みたいにティーチがサッチを殺していないことで敵視もなかったためティーチに協力することを決める。
 しかし敵視していたヤマトの優しさを見ているうちに、本当にヤマトはカイドウからのスパイなのかと疑問を抱くようになり、それから電話の度にティーチへヤマトは敵じゃないのではないか、百獣を抜けたティーチに代わって二重スパイに出来るのではないかと言うようになった。それを疎ましく感じたティーチにある日ヤマトがスパイという決定的な証拠を見せてやると言われ、一人で来いと指示された場所に補給ついでに寄った際に黒ひげ達に拘束されてラフィットに催眠術をかけられた。
 催眠術をかけられた一連の流れは忘れているが、ヤマトを攻撃してしまったのは覚えていたため、白ひげだけには報告済み。自身はあの場でティーチとエース達が戦うなんて何も聞かされてなかったので、エースが海軍に引き渡された時に今更ティーチにハメられたと気付いた。





 ちなみにルフィはエースが船に戻った来た際に安堵し、緊張の尾が切れたのでテンションホルモンも効果が切れ、一気に危険な状態になってました。船医達が力を尽くすも何故こんな傷で動けていたのかわからないほどボロボロで、設備が足りず応急処置しか出来ないって時に原作通りローがやって来て彼の船にエースとジンベエが付き添いで乗って戦場から一足先に離脱しています。でも赤犬に胸を抉られていないので原作に比べれば余裕で軽傷です。
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