エンカウント率ぅ   作:フドル

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ネタバレになるかもだけど、今回はそこそこ胸糞描写があるよ。


酒は蛇に特攻効果を持つ。神話にもそう書いてある

「……や、やっと島が見えた」

 

 海に飛び出してから数日後。ぼんやりと見え始めた島の輪郭に丸太の上に座る私は思わず呟いた。

 

 いくら体力バカの私でも島から島への移動は疲れた。しかも移動中の私に噛み付いてくる魚がいるんだよ。特にヤバイのが海王類で、噛み付いたまま海へ引き摺り込もうとするからタチが悪い。

 

 幸い奴らは噛み付いた際に常時展開している破鱗反毒(ヴェ・スタケ)の毒で死んでくれたし、死ねばすぐ近くまで浮かんでくるから道中のご飯になった。

 

 なのでヒヤッとするがまだ問題ではなかったのだ。寧ろ私の毒は海王類にも効果があると知れて嬉しかった。

 

 じゃあ何が問題なんだというと、丸太の上に座っている私という状態でわかってもらえると思うが、今の私は人獣型だ。海を渡れる全長を持つ獣型じゃない。

 

 でもトラブルがあったわけじゃない。ご飯を食べてちょっと休憩しようと思っただけなのだ。けど海に浸かった獣型だと脱力感がキツイ。なら人型になって丸太の上で休憩すればいいじゃんって閃いたんだ。

 

 で、ここからが問題なんだけど、休憩が終わって獣型に戻ろうとしたタイミングで気付いたのだ。あれ?これ戻れなくね?って。

 

 いやいやそんなことはないだろと何回かチャレンジしてみたのだが、完全な獣型になる前に丸太が大きくなると共に増える私の重さに耐え切れずに沈むのだ。当然丸太が沈むタイミングではまだ私の身体は海底に届くほど大きくなっていない。届いてないから頭も当然海上に出せない。

 

 ……はい、海のど真ん中で獣型の使用が禁じられました。しかも自分のポカで。それを理解した時、思わず頭を抱えてしまった。やらかした〜って感じで。

 

 そこからは2本の丸太を人獣型の尻尾で纏めてその上に座り、残った丸太を持ちやすいように真っ二つに割ってからオール代わりにして必死に漕いでここまで来たのだ。

 

「よし、あと少し、頑張ろう」

 

 ここまで来る数日間、全く寝ていないので精神面も辛いが、ゴールが見えたなら幾分かマシになる。安堵したことで増した眠気を自分の両頬を手で叩くことで覚ましたあと、島に向けて丸太2本の頼りないが私をここまで運んできた船を漕ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

「ふぉーー‼︎ 人がいっぱいいる!生活してる!すごい‼︎」

 

 島の砂浜に到着するとすぐさまその場で爆睡し、目が覚めるなり人の生活圏へ向かった私は、久しぶりに見る人の生活に思わず興奮した声を上げてしまった。

 

 側から見れば今の私は完全に不審者だろう。服はボロボロで鼻息荒く周囲を見渡す女の子って感じか? これでも服は無人島に漂流する前から着ていたものだからボロボロだということを除けば周囲から浮くようなものではないはず。少なくとも無人島生活の時に着ていた自作の毛皮服よりかはマシだろう。そのために隠れ家に保存していたこの服を引っ張り出してきたんだから。

 ……なんで5年以上経っているのに着れるのかって? 身長が伸びてないんだよ言わせんな悲しくなる。

 

 まぁ、そんなことは置いておいて、今はこの街を楽しもう。そう考えてまずはいい匂いを出している屋台に近付いたのだが──。

 

「なんだテメェ、ガリガリじゃねぇか!食え食え‼︎」

「……いいの?」

「おう!沢山食って大きくなれよ!」

 

 厳つい店主からタダで串焼きをもらえた。一応自分が無一文だということをポケットの中をひっくり返して知らせたのだが、店主は別に構わないと串焼きを押し付けてくる。

 

「ありがとう!」

 

 これ以上断るのは失礼だと思い、有り難く串焼きをいただく。串に刺さった肉を口に頬張ると、空腹も相まって余計に美味しく感じる。肉に染み込んだ何かのタレも肉汁と合わさることで肉の旨みが増し、ピリッと舌にきて非常にジューシー。

 

「ご馳走様です!美味しかったです!」

「……お、おう。また来いよ!」

 

 肉を食べる私の様子を店主がヤケに気にしていたので感想待ちかと思い、笑顔で美味しかったことを伝えると何故か店主は引き攣った笑みを浮かべていた。

 

 その姿に少し違和感を覚えたが、わざわざ問い詰めることでもないと考え店主と別れた。その後は服屋とか八百屋とか色々と見て回るのだが、みんな私にニコニコと笑みを浮かべて特別扱いしてくる。その親切心は海賊が蔓延るこの世界だと少し不用心じゃないかと思うほどだ。

 

 もしかして私が可愛いからか?ほら、前世でも可愛かったら割り引きしてくれる店主がいるアニメとかあったから。

 

「おーい、そこの嬢ちゃん」

 

 流石にそれは自惚れがすぎる。でも今世の自分は可愛いしなぁ……なんて考えていると、道の横から声がかかる。反応してそちらを見れば、何かの店のベランダ席に座る海賊だとわかる2人組が私に向かって手招きしていた。

 

 一応自分を指差して確認してみると、彼らはそうだと頷く。島の人とは違って彼らは海賊なので警戒しつつ近付けば、片方の男が私に肉を渡してきた。

 

「どういうこと?」

「いやぁ、嬢ちゃんがあちこちで飯を貰っているのを見ていると俺らも餌付けしたくなってな」

 

 知らない海賊ということもあり、警戒心全開の私の問いかけに彼らはニヤニヤ笑いながら答えた。確かに私の食べ歩きはここら辺を中心にしていたので彼らが見ていてもおかしくはない。でも海賊の彼らが私に肉をあげるなんて怪しくない?

 

「俺らは後で新しいのを島民から貰えるからな。逆に嬢ちゃんは海賊じゃないって分かればさっきみたいな好待遇はなくなるぜ?」

「そうなの?」

「そうさ、この島の住民は俺達海賊に優しくすることで自身の身を守っているんだからな」

「それって逆に海賊側が調子に乗ってあれこれ要求しない?」

「なかなか辛辣だな。けど嬢ちゃんの言う通り、確かにそうする奴らもいるだろうさ。でもそいつらは安全に補給出来るここを潰されると困る海賊側に攻撃されることになる」

「……成程、海賊を使って海賊から身を守るんだ」

「そういうこった! ちなみに俺らは守る側な。だからこんな大っぴらに飲んでても誰も嫌な顔をしねェ」

 

 へー、そんな理由があったんだ。海賊から語られたここの島民達の親切心の理由を聞かされて納得する。そして周囲を見れば、確かにこの海賊達の姿を見ても誰も嫌な顔をしていない。寧ろニコニコと微笑ましそうに私と海賊達の姿を見ている。

 

 それなら海賊達が私に肉を渡した理由も嘘ではないのだろう。匂いを嗅いでも怪しい匂いはしないし、本当にただの肉って感じだ。

 

「おいおい、そこまで怪しまれると流石に悲しいぞ」

「んー、じゃあいただきます」

 

 彼の言う通り、善意でくれたのにここまで怪しむのは失礼かな。なのでありがたく肉に食いつくと、先程の店主がくれたものよりもピリッとくる味付けだった。

 

 なんだか塩胡椒をかけすぎた肉って感じ。だけど塩辛いのが好きな私としては普通に美味しい。そんな肉だった。

 

「ご馳走様です」

「お、おう。いい食いっぷりだったな」

「味付けが好みだったから。ピリッときて美味しかった」

「そ、そうか。渡してからちょっと俺ら好みに香辛料をかけ過ぎたと思ってたんだが、気に入ってくれたならよかった」

 

 素直に味の感想を言うと彼らも島民達と似たような反応をする。もしかしてこの島の味付けって全体的に辛いのか? 実はこの辛さに初見の人が驚くのを見て笑うのが一連の流れだったりする?

 

「おい、麻痺毒って入れたよな?」

「確かに入れたぞ。でもラベルを見てなかったからもしかすると遅効性の方を入れたかもしれん」

「何やってんだバカ‼︎」

 

 私に背中を向けてコソコソと話す2人の姿を見ながら一連の流れを悉く無視してしまったであろう自分のミスを心の中で嘆く。もしかしたらこの2人はノリが悪い私を見かねて辛さを増した肉を渡してくれたのかもしれない。にもかかわらず私がペロッと食べちゃったから今こうしてコソコソ相談しているのか。

 

「じゃあ私はここで……お肉ご馳走様でした」

「ちょ、ちょっと待て嬢ちゃん」

 

 なんだか居た堪れない気持ちになったのでその場から去ろうとしたのだが、それに気付いた海賊の片割れに止められた。

 

「嬢ちゃん、時間があるなら……どうだ?飲んでいかないか? 今食べた肉も沢山あるぜ?」

 

 なんと。彼らはこんな私にまだチャンスをくれるようだ。これに乗らないのは彼らの優しさに泥を塗る行為だろう。それはいけない。

 

「いただきます‼︎」

 

 食い気味に返事をした私に彼らはニタァとした笑みを浮かべ、自分達が座っていた椅子から立って店の扉を開ける。どうやら店の中は酒場だったようで、彼ら以外の海賊達が思い思いに酒を飲んでいる。

 

 そんな所に私と彼らは共に踏み込む。貰ったチャンスを不意にするつもりはない。見てろよ、今の私は絶好調だ。あまりの辛さに口から火を吹くリアクションぐらいはやってみせるさ。

 

 

 

 

 

 

 イブキが酒場に連れ込まれてから数分が経った頃、1人の海賊によって島民達が街の広間に集められていた。

 

「テメェら、あのガキに俺らが渡した毒をちゃんと仕込んだのか?」

「やったさ!でも効かなかったんだ‼︎ アンタも自分でやって効果が無いのは見てただろ⁉︎」

 

 イブキを酒場に連れ込んだ片割れの問いかけに、串焼きの店主が叫ぶように答えた。だがその言い方が不味かったのか、直後に腹部をサーベルの柄で殴打される。

 

「ゴッ⁉︎」

「誰に物を言っているのか理解しろよ? あぁ、それとも娘を売ってもらいたいのか?自慢の愛娘なんだ、良い値段で売れるだろうなァ?」

「……っ‼︎ それだけは…ハァ…やめてくれ…!」

 

 痛みにたまらず蹲った店主へ海賊はニヤニヤと笑いながら店主へ問いかけ、店主は腹部を押さえながら懇願するように頼み込む。そんな店主の姿を他の島民達は痛ましそうに見ながらも抵抗する様子はない。

 

 この島は人売りを財源にしているとある海賊団に占拠されている。島に住む若い女性や子どもなどの金になりそうな者は全員彼らに捕まえられ、売り手がつくのを待っている状態だ。

 

 ただ、海賊団は島民達にチャンスを与えた。その内容が「この島に訪れる人間を捕まえろ」というもの。それが出来たらそいつを先回しに売って、テメェらの大切な奴らは後回しにしてやる。そう彼らは島民達に麻痺毒を渡して面白そうに伝えた。

 

 守られるかわからない約束だ。それでも自分達の大切な者を守るにはやるしかない。それが例え自分達の子どもと同い年くらいの相手でも。

 

「テメェらは運が良い。今回のガキは当たりだ。あれなら天竜人にも売れる。あぁ、でもあのガキには不幸かもな。あの天竜人の奴隷になるかもしれないんだからな!ギャハハハ‼︎」

 

 罪悪感で目を伏せる島民達の姿を海賊は笑う。だがいつまでも被害者面をする島民達を嘲笑う彼の笑い声はすぐに止むこととなった。

 

 何故なら酒場の壁をぶち破って気絶した海賊が彼のすぐ隣まで飛んできたからだ。初めての異常に海賊の笑みは消え、酒場の方を見ればちょうど他の仲間達が大慌てで酒場から出てくるところだった。

 

「どうした⁉︎」

「最悪だ!あのガキは能力者──」

 

 大声で問いかけた彼に仲間が答えようとした瞬間、酒場の建物を破壊して巨大蛇が現れる。しかしそれだけでは収まらず、蛇はドンドンドンドン大きくなり──。

 

「……はぁ?」

 

 島を余裕で一周出来るほど巨大となった。突然現れた蛇の出鱈目な大きさに島民と海賊含めた全員が上を見上げたまま口を大きく開けて驚愕する表情になり、海賊の持っていたサーベルが無意識のうちに手から滑り落ちて静かになった状況に音を鳴らす。さらに──

 

「アヒャヒャヒャヒャ‼︎‼︎ 大きくなっちゃったぁ‼︎ ヒック…!」

 

 巨大蛇ことイブキは何故か酔っていた。何が面白いのか大きくなった自分の姿に大声で笑い、動きもデロデロと覚束ない。

 

「おい、おいおいおいおい‼︎ これヤバ──」

 

 その動きの最中に身体の一部が地面について擦れながら海賊の一団に向けて迫る。建物を薙ぎ倒しても止まる様子が全くないイブキの身体に彼らは慌てて逃げたりピストルなどで攻撃するがあっという間に追いつかれ、そのまま轢き潰された。

 

『に、逃げろぉぉぉぉお‼︎‼︎』

 

 潰れた海賊達の姿を見て残った海賊か。それとも島民か。もしくは両方か。誰かが叫んだその言葉に全員が慌ててイブキから逃亡する。

 

「逃げるったってどこに逃げたらいいんだよ⁉︎ 逃げ場なんてどこにもねェぞ‼︎」

「どこでもいいから逃げるんだよ‼︎ 隠してた俺達の船を船長達が取りにいってるから、それまではどうにか──」

 

 島を一周出来る大きさのイブキに逃げ場がわからず、揉み合っていた2人の海賊を潰すようにイブキの尻尾が落ちた。汚れを落とすように地面を擦りながら尻尾が離れると、彼らがいた場所には赤い塊とシミだけが引き摺られるように残っていた。

 

「きゃっ‼︎」

「掴まれ! 急いで避難所に逃げるぞ‼︎ そこならこれもやり過ごせるはずだ‼︎」

 

 そんな哀れな2人の末路を見た島民達は自分達がそうなる可能性にゾッとしながらも協力し合い、動き続けるイブキによって地震のように揺れる地面の上を走り、今みたいな時のために海賊達から内緒で作っていた地下の避難所へ続々と駆け込んでいく。

 

「ウィ〜〜……ヒック‼︎ 1番イブキ!火吹きやりま〜す!火吹き‼︎ "毒多雨林(ヴェ・ペルレイン)"‼︎」

 

 そんな眼下の出来事に気付かないまま、イブキは楽しげな様子で口を開いて真上を向いた。その状態で吐き出されたのは大量の毒液。真上に向かって放たれた毒液は噴水のように少し空へ向かってから、重力に従って広範囲に降り注ぐ。

 

「ぎゃぁぁぁあ‼︎ イテェ‼︎ なんだ…これ……?」

 

 火じゃねェじゃん!なんてツッコミを入れる余裕もなく、降り注ぐ毒液に触れてしまった海賊の一人が毒液が付着した箇所から発生する痛みに叫び、転げ回る。しかし途中で声が弱くなり、ピクピクと痙攣するだけになった。

 

「おい…、これって俺達が使っている麻痺毒なんじゃ……?」

 

 普段から使用しているが故にその効果も知り尽くしている麻痺の症状が降り注ぐ毒の雨に加わっていることに気付いたのか、血の気が引いた様子で他の海賊が呟く。そんな彼の視線の先にいる海賊は麻痺で動けなくなっているので降り続ける毒から逃れることが出来ず、次々と身体に毒液が付着。付着箇所からは煙と共に緑の斑点が発生し、酸の成分も混じっているのか服や装備を溶かしてその先の人体すらも侵食して溶かしていく。

 

「絶対に毒液に触れるな‼︎ 一滴でも触れるとそのまま溶けて死ぬぞ⁉︎」

「ダメだ‼︎建物も溶けて毒が入ってくる‼︎」

「どこに逃げたらいいんだよォ〜‼︎」

 

 痺れて声すら出せずに絶命した仲間の姿に海賊達はパニック状態だ。逃げようにも外は毒の雨。建物に籠っていても建物を溶かして毒が入ってくるし、それ以前に酔って暴れるイブキの身体がいつ建物を破壊してくるのか分からない。一か八かでイブキにサーベルで斬りかかった海賊もいたが、直後に斬った場所から噴き出した毒液によってもがき苦しんでから死亡した。海賊達全員が持っているピストルなんてダメージがないどころか自分の位置を知らせるゴミ装備となっている。

 

 打つ手なし。駆け込んだ家の窓から外を見れば、街は瓦礫だらけだ。仲間達の姿も見当たらず、既に残っているのは自分達だけの可能性が高い。空を見上げれば、楽しそうに毒液を吐いて大笑いしている巨大蛇の頭部がある。

 

 その巨大蛇の顔が、ついに自分達の方へ向いた。窓越しに視線が混ざり合ったと目が合った海賊は確かに感じた。

 

 巨大蛇が尻尾をこれみよがしに持ち上げ、ゆっくりと自分達の建物に近付けてくる。

 

「ふざけんなよ……。こんな、こんな終わり方が……あってたまるかァァァア‼︎‼︎」

 

 自分達の終わりを理解出来た海賊は納得出来ないと大声で叫んだ。しかし彼の叫びは酔ったイブキには届かず、無情にも尻尾が建物を押し潰した。

 

 

 

 

 

 

 

 残っていた最後の建物を潰したイブキだが、未だに彼女の酔いが醒める様子はない。だがいつの間にか人が居なくなっていることには気付いているようで、ぐでぐでになりながらも頭を高く上げ、残った人を探しているのか周囲を見渡している。

 

 そんなイブキの頭はさぞかし狙いやすかったのか、遠方より飛来した大砲の弾が命中し、爆発を起こした。

 

「ヒック…! 何ィ?急にさぁ?」

 

 頭を張ることで爆発の煙を払ったイブキが弾の飛んできた方向に視線を向けると、海に一隻の海賊船が浮かんでいる。甲板に大砲が並べられていることから、あれが犯人なのは間違いない。

 

 海賊船に乗っている人物達は今さっきイブキが壊滅させた海賊達の仲間と船長だ。彼らは飛行能力を持たない動物系の能力者なら海に出て距離さえ離せば一方的に攻撃出来ると考えた。

 

 しかし彼らはミスを犯した。仮に攻撃するにしても、彼らはもっと距離を離すべきだった。沖に出たばかりの距離だとイブキならまだ届く。

 

「ウィ〜〜、せっかくの〜〜、楽しい気分がぁ〜〜」

 

 続けて飛んでくる大砲の砲撃をものともせず、イブキが身体を伸ばして自分と相手の距離を測りながら尻尾を高く持ち上げ──

 

「醒めるでしょうがァ‼︎‼︎」

 

 ──振り下ろした。迫る尻尾に距離を見誤ったと船長が気付くが既に遅く、彼らが何か行動を取る前に尻尾は船を叩き潰してその勢いで海面に衝突。大きな水柱をあげた。

 

 沈んだ海賊船をイブキは酔ったまま眺めていたが、尻尾から下半身にあたる部位まで海に浸かったことでそこそこの脱力感がイブキに襲いかかる。酔っていたこともあり、イブキはその脱力感に抗わないで瓦礫の山となった元建物の中から丁度いい高さのものに顎を置いて瞼を閉じた。

 

 しばらくすると、周囲にイブキの寝息が響き始める。暴れるだけ暴れ、満足したら寝る。とんでもなく傍迷惑なイブキだったが、寝ている顔はとっても幸せそうであった。

 

 

 

 

 

 

「……んあ?」

 

 目を覚ますとやけに見通しがいい景色が眼前に広がっている。視線だけで上を見れば雲一つない青空がある。

 

 はて?私はいつ外で寝ていたんだ?確か気の良い海賊達と酒場で盛り上がって今世では初めてのお酒を飲んで……飲んで……飲んでから何だっけ?全くその後の記憶がない。

 

 しかも何故私は獣型になっているのか。もしかして酔っ払って勝手に能力を使った? もしそうなら確実に酒場は潰れているぞ。

 

 うおおおお、見たくない。背後に残っているであろう建物の被害を見たくない。でも自分でやったのだから最低でも謝らないとなぁ。

 

 無一文だから賠償とかは出来ないけど、タダ働きなら出来るぞ。そんな気持ちで枕にしていた"岩"から頭を上げて背後を見たのだが、視界に飛び込んできたのは私の予想を余裕でぶった斬るほど酷い光景だった。

 

 

 建物がいっぱい建っていた場所に広がる〜、瓦礫の山‼︎

 

 人通りが多かった通路にチラホラとある〜、潰れた赤い塊と赤いシミ‼︎

 

 島全体に確認出来る〜、見覚えのある巨大な何かが暴れた痕跡‼︎

 

 勧められたからと酒を飲み〜、それ以降の記憶が全くない私‼︎

 

 

 うわぁぁあ‼︎ やっっちまっったぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎‼︎




オリ主……ONE PIECE世界なのにロリ体型なのでボインの未来が無いし、今回の被害で宴でも酒を飲めなくなった。


呪いみたいな高いエンカウント率があるってあらすじで書いているのに早速原作キャラと出会わない話を作ってしまってすまない……。でもあくまでも高いエンカウント率だから出会わない時もあるよね!(一応ルールみたいなものは考えているけどまだ説明出来るほど話が進んでないんです‼︎ごめんなさい!)



 ところで手加減込みでも四皇の攻撃に耐えることが出来る耐久力と自分だけで破城槌の役割と広範囲殲滅技を持っていて敵陣地に押し込みさえすれば多大な被害を確定させるオリ主は好きですか?って聞けばカイドウは頷きそうだよね。
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