生存報告として恥ずかしながら帰ってきました。
いきなりぶっちゃけるが、服を選ぶセンスなんてものは私には無い。そのため普段着は無地のTシャツとスカート一択で、状況や環境に適した服装になる時も誰かがこれを着てくれと前もって服を用意していないなら半袖になったり長袖になったり、たまにヘソ出しスタイルになるぐらいのバリエーションで留めている。
昔は動きやすさを求めて2年後のナミみたいな感じで上が水着で下はスカートスタイルになっていた時もあったけど、あれは巨乳かつ抜群のスタイルを持つ者に許された格好で、貧乳の私には荷が重かった。あとバリバリに殴り合いをする私の戦闘スタイルとあっていない。紐一つ切れたら即ポロリなんて致命的すぎるぞ。ポロリを見た人は記憶が無くなるまで金棒で殴ったけどさ。
まぁそんな過去のことはさておき、私には服のセンスがないし、ウタとは身長や胸の大きさなどのあらゆるものが違うので、どんな服がウタにピッタリなのかサッパリわからない。となればやることは一つだろう。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。財力に物言わせてとりあえずウタに合うと思ったものを買いまくればいいのだ。
「ふぅ、これだけ買えば何着かは当たりがあるでしょ」
現在地はシャボンディ諸島にある喫茶店。バルコニーの席で注文したコーヒーを飲みつつ、近くに今回の買い物で買った服達が入った袋を入れた風船みたいなシャボン玉をくくりつけて私は休憩していた。
この休憩が終われば後は帰るだけなのだが、ちょっと張り切って買いすぎたのでこの服達を纏めてシャボンディ諸島外まで持ち帰るのは私の短い両腕だと少々難しい。だから服を入れることができる大きめのリュックか何かを調達する必要がある。
長く滞在するほど誰かに見つかるリスクが増え、私を狙う者達が来るだろう。なので本来ならコーヒーを飲んで一休みなんてしていないですぐにリュックを買って帰るのがベスト。
しかしながら私は今まで色々な島を訪れたが、仮面をつけてさえいれば誰かに気付かれることはなかったし、バレるパターンはいつも誰かが何らかの騒ぎを起こし、その場に運悪く私がいたことで巻き込まれる感じだった。つまり私から騒ぎを起こしたことは一度も無いのだ。多分。
だからこうやって大人しくしておけば、この場所がいつもなんやかんや起きているシャボンディ諸島であっても騒ぎなんて起きるわけがない。
ふふふ、私はただの市民だからね。海賊みたいに理由もなく自分から暴れるわけがないのだ。私から溢れる市民オーラのおかげで仮面をずらして素顔を晒していても周りの人は私がイブキだと気付いていない。
そんなことを考えながら優雅にコーヒーを口に含む。その直後だった。
「海賊だァー‼︎」
近くの誰かが叫び、辺りがいきなり騒がしくなる。騒ぎは起きないよ〜というフラグ回収があまりにも早かったことで思わず吹き出しそうになったコーヒーをなんとか飲み込み、人が行き交っていた通りに視線を向ければ遠方から数人の人物が走っている姿が見えた。
その後ろにはさらに大量の海賊と思わしき者達が雄叫びをあげながら走っている。んー、見たところ何処かの集団が他の海賊に狙われて逃げているって感じかな?
それならここを通り過ぎるだろうし、気にする必要はないだろう。そう判断を下した私は彼らから意識を逸らして再びコーヒーを口に含んだ。
「待てやナメドク‼︎ テメェをここで倒しておれの名を知らしめてやる‼︎」
「誰が待つか馬鹿⁉︎ こんなところで騒げば海軍が来るだろうが⁉︎」
「ブゥーーー⁉︎」
しかし聞こえてきた名前に今度こそ私はコーヒーを吹き出した。口端から垂れるコーヒーを拭かないまま再び彼らの方向を見れば、先程よりも近付いていたおかげでハッキリと前方を走る彼らの姿を視認出来た。
ナメドク⁉︎ ナメドクなんで⁉︎ お前ら魚人島経由で新世界に行ったんじゃないの⁉︎
困惑のままに彼らを見つめるが、どう見てもナメドクである。偽物じゃない。
っていうかこれ、ナメドクが私のことに気付いたら絶対にこっちに来るよな? そうなればこの騒ぎに巻き込まれるのは確定じゃん。
慌てて仮面を付け直し、椅子の向きを変えて走っているナメドクに背中を向ける形にする。これで一先ず大丈夫──。
「あれェ〜⁉︎ イブキの姉御じゃないですか‼︎」
「ちょっ、おまっ⁉︎」
「イブキ……? 龍の子イブキか⁉︎」
──じゃなかった。
走っている姿勢のまま器用に急ブレーキをかけたナメドクとその一味は即座に方向転換をして私がいる喫茶店へダッシュしてくる。
そうなれば当然彼らを追いかけている海賊達も追いかけてくるわけで。しかもナメドクが大声で私の名前を叫んだせいで仮面をつけているのに周りに私のことがバレる始末。
知らんぷりしようかと一考するが、ナメドクがコッチに走っている時点でどうしようもないので潔く仮面を外してから彼らの方向を向くように椅子の向きを調整。そして脚を組み、目を細めながら肘掛けに右肘を置いて頬に右手の拳を添える程度にくっつける。
ハンコックの見様見真似だが、正しく出来ていれば今の私は機嫌が悪い女王様みたいに見えることだろう。そのお陰か元気いっぱいに走ってきていたナメドク達のスピードは急速に落ち、話すには少し遠い位置で彼らは動きを止めた。
「ねぇ、ナメドク?」
「う、うす! 何でしょうか⁉︎」
「そいつら、何?」
質問は簡潔に。顎でナメドクの更に後方で固まっている奴らを指すと、ナメドクは冷や汗を浮かべながらなんと答えるべきかと目を泳がせる。
ナメドクからすると私のことは天竜人関係で少しだけ接したことがある程度の人間だ。その時に助けたことで懐いてくれたのかそれから私のことを姉御と呼んでいるけど、仲が良いかと聞かれるとナメドク自身も首を傾げることだろう。
その程度の仲の奴が面倒ごとを持ってきた。なので私がナメドク達を巻き込む形で後ろの奴らを蹴散らすような攻撃をする可能性があることにナメドクは気付いてしまったのだろう。さっきからジリジリと私と後ろの海賊達に挟まる今の立ち位置から逃げようとしているし。まぁ、私にナメドク達を攻撃するつもりはないけどさ。
「はぁ、心配しなくてもナメドク達は攻撃しないから早く教えて」
「はい‼︎ 後ろの奴らは人売りです‼︎ 天竜人を手にかけた海賊を売れば金になるという理由で──」
そこまで聞いた時点でアイツらは敵だと判断したので、ナメドク達や島民を巻き込まないように注意しながら覇王色を放つ。ほぼ不意打ちで私の覇王色を受けた海賊達は続々と気絶していき、1人だけ残して全滅となった。
っていうか1人耐えたのか。荒い呼吸をしながら胸を押さえて顔は汗まみれ、まさに気絶する一歩手前みたいな姿だけど、耐えられたのは少しショックかな。
「場所を変えよっか。残った1人はナメドク達でキチンと処理。それとちょっと荷物運びを手伝って」
「……お、オス! 野郎どもォ‼︎ ささっと片付けて姉御の荷物運びをするぞォ‼︎」
『おぉォ‼︎』
椅子から立ち上がり、退店する準備を始めた私を見てナメドクは無駄しかない装飾がついたナイフを鞘から抜き取りながら部下達へ素早く指示を出す。
覇王色を耐えた1人は頑張って抵抗していたが、多対一は無理だったようで部下達を隠れ蓑にして繰り出したナメドクナイフが身体に掠ってしまい、傷口から入り込んだ毒で動けなくなって決着となったのだった。
◆
「それで? なんでナメドクはここにいるの? 魚人島から新世界に行ったんじゃなかったの?」
場所を変えて観光地から無法地帯のグローブに移動した私は雛鳥みたいについてきているナメドク達へ早速頭に浮かんでいた疑問を投げかけた。
「聞いてくれるんですか姉御。おれ達の山あり谷ありの冒険を」
「よいしょっと……。そんなに聞いて欲しそうな顔でそわそわしてたらね」
「じゃあ早速! おれ達は姉御に見送られて魚人島へ向かって──」
近くのマングローブの根に腰を下ろして聞く体勢になった私にナメドクは目を輝かせながらこれまでの冒険を話し始める。
魚人島の人魚が可愛かったこと。天竜人を殺したニュースが魚人島へ届いて以降、荒くれ者の魚人達から滅茶苦茶褒め称えられることになったこと。英雄扱いに鼻が伸びそうになったが、日に日に怪しくなっていく魚人達からの視線が怖くなってしまい、ネプチューン軍の助けを借りて夜逃げ同然に魚人島から出航したこと。
そして新世界へ行き、偶然出会ってしまった百獣海賊団に大敗したこと。
「あの時は死んだと思いましたね。んで、おれ達を倒した奴が言ったんです。カイドウ様の傘下になれ、と」
「ふーん、それでなんて答えたの?」
「へへっ、おれ達に命令出来るのはイブキの姉御だけだって言ってやったんです。そしたらアイツら急に慌て始めて、おれ達をほったらかしにして電伝虫で何処かに連絡を取り始めやがった」
あー、なるほど。前にかかってきたカイドウからの電話に納得がいった。このナメドクの発言の真偽を現場判断で処理するのは難しかったからその場のトップの奴が上の立場に連絡し、連絡を受けた奴がまた上の立場に〜を繰り返してカイドウまで連絡が届いたのか。んで、カイドウから私に真偽を聞いて私が肯定してしまったと。うーん、百獣の風通しって結構良いんだね。大看板で止まらないでちゃんとカイドウまで連絡が行くなんて。
「連絡が終われば奴らが急に優しくなってですね。おれ達を全員治療してから新世界はお前らには早いからってこっち側まで送ってくれたんです」
「誰も死んでないんだ?」
「幸いって言うのはダサいですが、おれ達が弱くてすぐに制圧されたのでそのままだと失血死するはずだった仲間の治療も間に合いました」
後頭部を掻いて照れ臭そうに俯くナメドク。ぶっちゃけそのまま百獣の世話になれよと思ったが、ナメドクが言った私の部下だとも取れる言葉をカイドウが変な形で汲み取ってくれたのだろう。
けど言わせてほしい。ナメドク達は別に部下でも何でもないと。一度助けたぐらいの関係だぞ? 懐いてくれるのは……まぁ、嬉しいけど、ここまで来たらむしろなんでそこまで好かれているのか不思議になってくる。私にカリスマなんてものは無いから余計に。
「ま、ナメドク達の今まではわかったけど。ナメドクはこれから──」
どうするの? そんな質問をしようとしたが、野生で鍛えられた私の索敵範囲に突然強大な何かが飛び込んできたことで言葉は途切れた。
弾けるように頭を上げ、周囲に視線を巡らせてここに来る敵を探す。いきなりそんな反応を私がしたことでナメドク達は不思議そうな表情で私を見つめていた。
「姉御? どうしま──」
「ナメドク、そこから絶対に動かないで」
ナメドクの質問と私が敵を発見したのは同時だった。強大な敵は遠方に生えるヤルキマン・マングローブの枝に着地、そこから一度の跳躍で私達の頭上へ到達する。
「ぶわっはっはっは‼︎ ようやく見つけたぞ‼︎ どれ、まずは小手調べじゃ‼︎」
私達の真上をとった人物。海軍の英雄であるモンキー・D・ガープは私達を視界に捉えると、大きな笑い声と共に膨大な覇気を込めた拳を引き絞るように構えた。
周囲に響く彼の笑い声と青褪めるナメドク達の表情。シャボンディ諸島に来たら何故こうも原作キャラにエンカウントするのかと私は文句を喚き散らしたくなったが、そんな余裕はないのですぐさま意識を戦闘に切り替える。
でもこれだけは言わせてほしい。
あなたこの時期は警備のために故郷へ帰ってませんでした⁉︎ いつ帰ってきたんだよ‼︎‼︎ 畜生めぇ‼︎‼︎‼︎
「"
「"
上空から放たれたガープの拳の余波が私達を押し潰すように迫る。それに対抗するために私からも覇気を込めた金棒から衝撃波を下から上へと打ち出すが、ある程度拮抗してからガープ側の余波が私の衝撃波を飲み込んだ。
「"
とはいえ拮抗中に威力はかなり減衰したので、金棒を振り下ろして私達に降り注ぐ余波だけを払う。そのついでに金棒の棘を利用した斬撃をガープへ飛ばしたが、ガープは拳を横薙ぎに払って斬撃の側面部分を叩くことで無力化。そのまま遠くの地面に力強く着地した。
「ナメドク、私の荷物を持って先に自分の船に行ってて。後で取りに行くから」
「でも姉御! 相手が英雄ガープじゃ……!」
「言い方を変えるね。邪魔だから離れろ。余波で死にたいなら残れ」
「……ウス‼︎ 俺達は魚人島へ出発したあの時と同じグローブで待っていますのでちゃんと来てくださいね! こんなフリルがついた服なんておれ達は誰も着ませんから‼︎」
「友達のやつだから私も着ないよ」
「えー! 勿体無い! 絶対似合いますよ‼︎」
「そうでっせ姉御‼︎ 一度だけでいいので着ましょうよ‼︎」
「うおっ、この下着は攻めすぎ」
「ファッションショーしましょ! ファッションショー‼︎」
『ファッション! ファッション!』
「余裕か⁉︎ 早く逃げてよ‼︎‼︎ あと下着うんぬんを言ってた奴は後で雷鳴八卦するから縛っといて」
勝手に服を漁り、取り出した服を頭上に掲げて騒ぐナメドク達を怒鳴りつけてから逃す。下着を持ったまま私に命乞いをしようとした仲間を素早く拘束した後、取り出した服の感想を言い合いながらナメドク達がドタバタと離れていくのを気配で感じつつも、視線はガープから離さない。何かしてくるかと警戒は続けているがガープは身体をほぐすように肩をグルグルさせているだけだ。
「このままだとアイツらは逃げるけど、いいの?」
「構わん、わしの目的はお前だけじゃ」
あのガープが黙ったままなのは気味が悪くて声をかけるが、あまり嬉しくない返答が返ってくる。まぁ優先度が高いのは私だろうなと少し前の頂上戦争のことを思い返していると、やっとナメドク達が私の気配探知範囲から離脱していった。
これで一先ずは安心。後は無事に彼らが船に辿り着くことを願うだけだ。いや、仮に無事じゃなくても私が買った服だけは守ってほしい。買い直すの面倒だし。
「ふー、やっと行ったか」
そうやって私が服の安否を気にしていると、ナメドク達が走り去った方向を見ながらガープは溜息とも取れる息を吐く。そして己の肩にかかっている『正義』のコートを脱ぎ捨て、その場でドカリと座った。
「何、やってるの?」
「龍の子イブキ。お前のやったことに対して言いたいことは山程ある。じゃがこれだけは先に言わせてもらう」
既に戦闘態勢に入っている私を前にして、座るという隙だらけな行為。攻撃を誘っているのかと悩むが、ガープはあぐらをかいてどっしりと座っているのですぐに立ち上がるのは無理な状態だ。
隙だらけな姿勢で真っ直ぐに私を見つめるガープの瞳に何を狙っているのかと困惑する。しかしその困惑は一瞬だった。
「エースを助けてくれて……ありがとう‼︎‼︎」
そう言ってガープが私に深々と頭を下げたからだ。
「……っ⁉︎」
息を飲む。これは本心で言っている。なんとなくわかった。
「それは……いいの?」
「……構わん。ここにいるのは家族も守れんただの老いぼれ1人。恩人に頭を下げて失うものなんて何もないわい」
頭を下げたままのガープからガープが脱ぎ捨てた『正義』のコートへ視線を移す。それを見てガープは今、海軍の英雄ガープではなく、ただのガープとして私に礼を言っているのだとわかった。
だからなのか自然と身体に入っていた力が抜けていく。ただ礼を言いにきた人に戦意を保つのが馬鹿らしくなったからだ。
「ふぅ、わかった。礼を受け取る。まぁエースは友達と思っているから……ね」
友達の親から些細なことでお礼を言われているような気分になり、むず痒い気持ちを感じたため、それを誤魔化すために視線をガープから外してポリポリと片手の指で頬を掻く。
それに頭を下げてお礼を言われるなんて思ってもいなかったので、なんとなく居心地が悪い。ガープならもっと軽い感じでお礼を言ってくれたほうが私も受け取りやすかったのに。
「用件はそれだけ? それならナメドク達を待たせているから私は帰るね?」
「……いや、まだある」
個人的にはもう戦う気もないし、とっとと帰ろうと静かにガープから離れようとするが、ガープが立ち上がって先程までの本気で感謝を伝える澄んだ瞳は何だったのかと言いたくなるぐらいギラギラとした瞳で私の方を見たため止まらざるを得ない。
っていうかガープさん? なんでそんなにニッと笑っているんですか? その拳に纏った覇気はなんですか? 私の見間違いじゃなければ、戦う気満々に見えるのですが?
「わしなりに何を返せば満足してくれるのかと考えてみたんじゃが、さっぱりわからんかった‼︎ てなわけで"コレ"で遊ぶことで恩返しとさせてもらう‼︎」
「いやいや、いらない。本当にいらない。それ以前にお礼に拳って誰が喜ぶのさ⁉︎ 今からでも遅くないから煎餅の詰め合わせとかにしようよ。ね?」
「まぁそれは建前で、あの時センゴクを寄越したお礼がまだじゃったからな。受け取ってくれ」
「センゴクがそっちに行ったのは偶然だからね⁉︎」
「では行くぞォ‼︎」
「話を聞けェ‼︎‼︎」
踏み込み一つで馬鹿みたいな加速を得たガープがあっという間に懐に飛び込んでアッパーパンチをお見舞いしてくるので咄嗟に身体を反らせて躱す。貧乳つるぺたボディなのでどこかに引っかかることもなくガープの拳は私の顎先ギリギリを通り過ぎて風が巻き起こる。
間髪入れずに迫る振り下ろすような二撃目は金棒で迎撃。人の拳と衝突したとは思えない音が周囲に響き渡る。
私の力に片腕で拮抗するとかガープさんどんなパワー⁉︎ なんて内心で驚愕しつつもルフィの銃乱打みたいに繰り出されたガープからのラッシュを金棒で迎撃し続ける。しかし両手で握りしめた金棒を振るう私とは違ってガープは両手をそのまま武器にしているため、攻撃の頻度はガープのほうが多い。
金棒で捌き切れないものは立つポジションを変えたりして躱していたが、再び振るわれた渾身の力を込めた下からのアッパーを金棒で迎撃した時にガープの膂力を受け止めきれなかったのか私の身体が空中へと打ち上げられた。
ダメージはないけど、パワータイプが相手だとやっぱり体重が軽いのはキツイなぁ。そんなことを考えているうちに高度はどんどん上がり、ガープの姿が小さくなっていく。しかしガープが下から跳び上がったことで、点にしか見えなかった姿が再びガープの形となって私の眼前へと迫った。
「ぶわっはっはっは‼︎ 残念じゃが遊びは終わりじゃ‼︎」
反撃で振るった金棒を掴んで受け止められ、覇気を込めながらガープは掴んだ金棒ごと私を地面へ投げようと振り被る。
このままだと不味いかと思い、金棒を離して別の攻撃を繰り出そうとしたが、それを読んだのかガープがチラリと私を見る。
その視線に敵意はなく、どちらかと言えば信じてくれと言っているよう。そこでそういえばいきなりだったけど先程の攻防に真剣勝負なら必ず混じる相手を打ち倒す意志がガープの拳には篭ってなかったなぁと思い出し、まぁ一度なら信じてみるかと私は金棒を離さないように力強く握りしめた。
「"
グンッと金棒に引っ張られる形で私は地面へとぶん投げられる。しかし名前をつけた技の割には威力がショボい。この威力なら普通に受け身を取れるし、それをしなくても地面にめり込む程度だろう。私の耐久力ならダメージにもならない。
あのガープが繰り出した技としてはあり得ない威力。ならこれは別の意図があるのだろうと考えていると、遠方からここをめざして走ってくる海兵の姿が見えた。
この手加減とも取れる技、遊びは終わりという言葉、ここに集結しつつある海兵。
「あぁ、そういうことね」
情報を纏め、ピンっときた私は人獣型へ変身。その後は抵抗せずに地面へ落ち、めり込んだ勢いそのままに地面を掘っていく。
『ガープさん! 龍の子は……⁉︎』
『……スマン! 逃げられた‼︎ ぶわっはっはっは‼︎‼︎』
地面に潜っていても聞こえるガープの大きな笑い声と海兵達の驚く声を聞きながら、私はナメドク達と合流するためにここから離脱するのだった。
オリ主……自称市民。周りが聞けば無理があるだろうとツッコミを入れるが、本人は頑なに認めない。
ガープの家族発言に「いや、ダダンのほうが……」なんてことが頭をよぎったが、なんとか飲み込んだ。
ガープとの戦闘も殺し合いというよりか手合わせみたいな雰囲気だったので自分も技を出すことはしなかったが、ガープが知らない技ばかり出すので滅茶苦茶困惑していた。
ナメドクと合流した後は下着野郎の顔面に目隠しみたいに件の下着を貼り付け、原作カイドウみたいに金棒で(死なない程度に)雷鳴八卦した。