意外と掲示板の評判が良くて驚きました。次にやるとしたら最終話付近かなぁ……。
あ、今回は全て戦闘です。
世界に数ある島、その内の1つである群島。そこでは現在激しい『遊び』が行われていた。
『遊び』の参加者であるカイドウとイブキは一定の距離を保ちながら同じ方向へ走り続け、お互いに攻撃のタイミングを探り合う。そして両者の間に大きな岩が挟まった瞬間、イブキが仕掛けた。
片脚を地面に突き刺し、強引に方向転換してカイドウへ突っ込む。障害物である岩を金棒で粉砕し、その破片をカイドウへ飛ばしながら攻撃のために金棒を構える。
そんなイブキの攻撃を見聞色で把握したカイドウは自身の金棒でイブキを迎撃。真っ直ぐに突っ込んでくる岩の破片やイブキを丸ごと金棒で薙ぎ払おうとした。
しかしイブキはカイドウの金棒を姿勢を低くすることで躱す。岩の破片を粉砕しながらイブキの頭上ギリギリをカイドウの金棒が風切り音を伴いながら通り過ぎ、風が吹き荒れる。
迎撃をやり過ごしたイブキは一気にカイドウの眼前へ迫るため、脚に力を込めて跳び上がろうとする。だがイブキは何かに気付くとすぐに跳ぶことを諦めて金棒を盾のように自身の眼前へ構え、直後に覇気を纏ったカイドウの拳がイブキの金棒を殴りつけた。
拳の威力をマトモに受ければ受け止めきれずに後方へ飛ばされると本能で察したイブキは咄嗟に金棒の構え方を変え、足を駆使して自身の立ち位置を変更することでカイドウの拳を受け流す。それによってすぐ近くの地面へカイドウの拳が叩きつけられるが、それを確認することなくイブキは受け流した勢いを維持したままその場で回転し、その間に金棒を構えて攻撃直後で隙だらけのカイドウの脇腹へ回転の勢いを加算した金棒を叩きつけた。
「うごぉ⁉︎」
武装色と覇王色を纏った一撃には流石のカイドウもノーダメージではいられず、カイドウは脇腹から伝わってくる痛みに顔を顰めるが、最強生物と恐れられるカイドウの肉体に致命的な損傷はなく、並の人間なら全身の骨が砕けるであろうイブキの攻撃を数歩よろける程度で受け止めた。
「ウォロロロロ! やるじゃねェかイブキ‼︎」
「ぐっ‼︎」
良い一撃を貰ったことにカイドウは笑みを浮かべ、どうせカイドウなら耐えるだろうと考えて次の攻撃に移っていたイブキを自身の金棒で殴り飛ばす。体重の軽さ故に簡単に殴り飛ばされたイブキは地面と並行に飛ぶが、しばらくしてから金棒を地面に突き刺すことでブレーキをかけて強引に停止。
そんなイブキの周りに影が差し、イブキが真上を向くと空からカイドウが金棒を頭上に構えながら飛び込んできた。今から回避は難しいと素早く判断したイブキは地面に突き刺した金棒を引き抜くなり全力でカイドウ目掛けて投擲する。
まさか自分の武器を投げるとは思わなかったカイドウは攻撃の出鼻を挫かれ、しかたなく命中コースだったイブキの金棒を弾き飛ばす。そしてその直後に金棒を追うように月歩で上がってきたイブキに真下から顎を蹴り飛ばされた。
イブキの蹴りによって空中で仰向けとなったカイドウ。そのお腹にイブキは着地し、すぐさま跳躍してカイドウが弾いた金棒を回収。しっかりと握り直した後、月歩で位置を調整して先程のカイドウが行おうとした金棒の振り下ろしをカイドウへ繰り出した。
腹部にイブキの金棒がめり込み、勢いよくカイドウが地面へ落ちて衝撃で土煙が舞い上がる。それなりの手応えを感じたイブキは追撃はせずに土煙の範囲外にある岩の上に着地し、いつでも動けるようにしながら土煙の中にいるカイドウを注視する。
「ウォロロロ、準備運動はここら辺でいいだろう」
「そうだね。身体は温まった?」
「あぁ、充分だ」
土煙の先にあるカイドウの影が立ち上がり、グルグルと肩を回す。今までの攻防を準備運動と言い切ったカイドウにイブキは少し苦笑いをしつつも、その両目はしっかりとカイドウの影を見ていた。
「"
「……っ‼︎‼︎」
だというのに、カイドウの攻撃を察知出来たのは自身の眼前に金棒が迫ったタイミングだった。
咄嗟に腕を挟んでイブキは防御するが、んなもん知るかと言わんばかりにカイドウは両手で握りしめた金棒を振り切る。その結果、先程以上の速度でイブキは地面を水切り石のようにバウンドしながら転がっていき、その先にある山へ勢いよく突っ込んだ。
準備運動は終わりと宣言したカイドウはそのままイブキへ追撃するために跳ぶ。だが突如現れた大きな蛇の尻尾が跳んだカイドウを叩き、カイドウが向かった方向とは逆方向へと弾き飛ばした。
地響きが島全体を襲い、カイドウが立ち上がったタイミングで獣型となったイブキが山頂から顔を覗かせる。そしてイブキがカイドウの姿を捉えると、尻尾で遠方に聳える大きな岩山を破壊した。
破壊された岩山は多数の岩石となって飛び散り、土煙を尾に引きながらカイドウがいる周辺へそれぞれの軌道を描いて飛来する。
「おもしれェ……‼︎」
最小のものでも自身と同じサイズはある岩石が雨霰と降ってくる光景に、カイドウは口角をあげて自身の金棒を力強く握りしめる。しかしその直後、島全体を再び大きな振動が襲いかかった。
カイドウは初めにイブキを確認した。獣型のイブキは動くだけで大きな揺れを周辺に撒き散らすからだ。だがイブキは山から動いておらず、ジッとカイドウの様子を見ている。
とはいえイブキは地面に潜行出来るため、恐らく何かを仕掛けようとしている。そう判断したカイドウはイブキに意識を向けつつも一旦降り注ぐ岩石を対処するために視線をイブキから岩石群へ向けようとし、そのタイミングで視界に飛び込んできた光景に目を見開いた。
イブキが座す山の中腹。そこからいきなりマグマが噴き出してきたからだ。それを皮切りに別の箇所からもマグマが噴き出し、下り坂に沿って流れ始める。
次に遠方の地面が爆発したかのように土煙をあげ、イブキの尻尾が現れた。そしてその尻尾にマグマがこびりついていることをカイドウが視認したところでカイドウはイブキが何をしたかを理解した。
「ウォロロロロ‼︎‼︎ 寝ている火山を叩き起こしたか‼︎」
イブキが突っ込んだのはただの山ではなく、活動を停止させていた火山だった。そんな休眠状態の火山にイブキは自身の尻尾で衝撃を与え、活性化させた。それがカイドウが出した結論だった。
叩き起こされた火山は不満を表すようにマグマを噴き出し続け、カイドウの立ち位置からでは気付けなかったイブキが顔を出している火口からも勢いよく噴火した。
火山灰が灰の中でプラズマを巡らせながら空へ舞い上がり、マグマがイブキを下から照らす。相手を見下ろす姿は獣型のサイズも相まって、正体を知らぬ者が見たら完全に島の主か怪物のどちらかと勘違いするだろう。
モタモタしているとマグマが迫り、足場がなくなる。ここは群島なのでこの島は捨てて別の島で『遊び』を再開するのが賢い選択だ。
自身の頭に一瞬だけ浮かんだその安全策を、カイドウは即座に切り捨てた。なんならそんな案を一瞬でも浮かべてしまった自分自身をカイドウは嫌悪した。イブキがカイドウと楽しむために選んだ遊び場とギミック。ならば誘われた側の自分はそれを真正面から捻じ伏せるべきだろう。
「ウォロロォ‼︎‼︎」
両脚に力を込め、カイドウがイブキ目掛けて跳んだ。そんなカイドウを歓迎するのは大量の岩石と、火口から打ち上がった火山弾。それらをカイドウは金棒で砕き、時に足場にし、時に掴んで他の飛来物へ投げつけながらイブキへ迫る。
流石に能力未使用で正面突破してくるのは想定外だったようで、イブキは目をパチクリとさせる。とはいえカイドウ自体がこれを突破してくるのはわかっていたのかイブキは慌てることはなく他の岩山を尻尾で破壊して岩石を追加でカイドウへプレゼントしながら次の行動に移った。
「"
イブキから吐き出された毒のブレスがカイドウへ迫るが、カイドウは真横に飛来した岩石を蹴り付けて横へ回避。その時点でイブキは一度ブレスを止め、再度狙いを定めてカイドウへ放つ。
今度はフェイントを混ぜたブレスだったためか、回避した先でカイドウはブレスに飲み込まれた。しかし同時に獣型となったのか、巨龍となったカイドウがイブキのブレスを突き破った。
カイドウはその場で塒を巻き、回転することで巨大な竜巻を複数生み出す。それにより飛来した岩石や火山弾は巻き上げられ、巨龍となったカイドウでも通れる道を作り上げた。
安全となった道をひとっ飛びでカイドウはイブキまでの最短距離を突っ込む。対してイブキはカイドウを視界に収めながら大きく息を吸い込んだ。
大きく、さらに大きく空気を取り込むだけで攻撃をしてこないイブキをカイドウは訝しむ。だがここまで接近すれば何かをするにしても自分の方が早いだろうとカイドウは噛み付くために大口を開きながらイブキへ襲いかかる。
その瞬間、イブキの口端に覇気の雷が漏れた。
「"
「────っ⁉︎」
咆哮。
大量の空気を燃料とし、覇気で強化した喉を経由してイブキの口から放たれた覇気が混ざった『音』はそこらの爆弾では比較にならないレベルの破壊を周囲へ無差別に撒き散らす。
音が空気の壁を押し出し、可視化出来るようになった衝撃波が島の外周まで駆け抜けた。破壊力も強大で、爆心地近くの火口は崩れて口径が大きくなり、火山全体にもヒビが入ってそこら中からマグマが滲み出る。
そんなものを至近距離で受けたカイドウは硬直。音が身体の内部外部問わずに揺るがし、さらに衝撃波によって獣型にもかかわらず島の外周付近まで吹き飛ばされた。
地面を転がり、止まったところでカイドウは立ち上がろうとする。しかし音によって与えられた振動が身体の平衡感覚を著しく狂わせているのか上手く立ち上がることが出来ずに地面へ倒れ込んだ。
そんなカイドウへチャンスだと言わんばかりにイブキは尻尾を叩きつける。回避が出来ないカイドウはイブキの尻尾をマトモに受け、地面へ叩きつけられた。
そこへ更に追加でイブキは尻尾を何度も叩きつける。地面にヒビが入り、土煙でカイドウの周囲が見えなくなっても何度も何度も。
だが叩きつけが2桁を越えようとしたタイミングでイブキの尻尾が逆に打ち上げられた。それでも構わずイブキは尻尾を叩きつけようとしたが、それよりも早く土煙を突き破って飛び出してきたカイドウが──イブキの眼前に迫った。
「──っ⁉︎」
「"雷鳴八卦"ェ‼︎‼︎」
現れたカイドウは先端が紫色に変色した六本角と獣型同様に長大な尻尾が生え、全身が青い鱗模様に覆われた姿となっていた。それがカイドウの人獣型だとイブキが理解する前に、振るわれた金棒がイブキの顎を捉えてイブキの頭部をカチ上げた。
「"
「う、ぐっ」
イブキの身体に着地し、カチ上げたことで無防備となったイブキの喉へカイドウは連続突きの乱打を繰り出す。1発1発に多大な威力が込められており、その全てを受けているイブキの身体は傷付いていき、イブキはたまらず吐血した。
「"
「流石にそれは受けれない……ね!」
「ぬぅ⁉︎」
最後にトドメと言わんばかりに覇気を纏った金棒を上空で振り回した後、イブキへ叩きつけようとしたカイドウだったが、それが命中する前に猛攻で喉が潰されかけているイブキも人獣型へ変身。
目の前の巨大な標的がいなくなったことでカイドウの攻撃は空振り、その隙に変身ついでに背後へ回り込んだイブキは自身の尻尾をカイドウの両脚に巻き付けて縦に回転。
大車輪のように捕まえたカイドウと共に回転しながらイブキは急降下し、マグマが流れている火山の中腹へ勢いそのままカイドウを叩きつけた。
「ごほ、げへ、流石に、貰いすぎた、かな?」
火山にカイドウがめり込むことで出来たカイドウの形の穴へマグマが流れ込んでいくのをイブキは眺めながら口の両端から垂れる自分の血を手の甲で拭い取る。しかし綺麗にした直後にまた吐血してしまったことで、現在進行形で喉は治ってきているけど今は拭いても無駄だと悟ったのかこれ以上は何もせずにカイドウが沈んだ穴へ意識を向けた。
「ウォロロロロ、自然のマグマに入るのは初めてだな」
「湯加減はどう?」
「ぬるいな。これなら赤犬が用意したマグマ風呂の方が気持ち良いぜ」
「そうなんだ。……いや、なんで耐性無いのに素で耐えてるのさ? マグマだよ、マグマ」
マグマ溜まりから腕が生え、次にカイドウがマグマから上がってくる。身体に付着したマグマを手で払いながら風呂上がりのおじさんみたいな反応をするカイドウにイブキは一瞬納得した顔をしたが、少ししてから治りつつある喉を使ってその場から動かずに片手でビシッとカイドウへツッコミを入れた。
とはいえイブキのツッコミは届かなかったのか、続きをしようとカイドウが金棒を握る。そんなカイドウにイブキはツッコミをスルーされたことにちょっと不満なのか唇を尖らせたが、すぐに応じて自分の金棒を握り直した。
両者が睨み合い、火山が噴火したタイミングで仕掛ける。共に人獣型となっているためか、攻撃に込められた威力も、回避などの動きも人型の時とはガラッと変わっている。
カイドウが金棒を薙ぎ払い、イブキはそれを寝そべって躱す。だが下半身が蛇となったイブキのスピードが衰えることはなく、這うようにカイドウの背後を取り、お返しに金棒を振るった。
金棒はカイドウの背中を強く叩き、衝撃がカイドウの胸から飛び抜ける。カイドウの重さでも吹っ飛ぶ威力が込められているというのにカイドウは持ち前の防御力で耐え、吹き飛ぶのも一歩前に脚を踏み込んだだけで堪えた。
すぐさま反撃としてカイドウが放った裏拳はイブキの頬を捉え、イブキは血を吐きながらも蛇の下半身を活かしてその場で回転。ダメージを最小に抑え、さらに尻尾で高さを調整しながら回転の勢いを維持した状態で裏拳で振り返ったカイドウの顔面へ金棒を叩きつけた。
流石にコレは効くのか、カイドウは鼻血が垂れた顔を押さえて数歩下がった。逆に言えば人間の顔面なんて簡単に粉砕する威力をそれだけで済ませることがおかしいのだが、カイドウ家ではそれが普通なので両者とも全く気にしてない。なお、ヤマトがいたらそんなわけないと全力で首と手を横に振っていたことだろう。更にエースがいれば、ヤマトにお前も充分アッチ側だとツッコミをしていただろう。
そんな耐久力がおかしい一家の大黒柱であるカイドウへイブキが更に迫るが、顔から手を離したカイドウは大きく口を開いており、口から高火力の熱線を放つ。
熱に耐性を持つイブキには効果がない攻撃だが、カイドウの狙いはイブキではなく、彼女が振おうと構えた金棒だ。
狙い撃ちをされたイブキの金棒は最初こそ拮抗していたが、徐々に熱線の勢いに負けて後方へ弾かれる。金棒を持つイブキの両手も金棒に引っ張られる形で上に引っ張られ、カイドウを前にして無防備な胴体を晒すこととなった。
それを見逃すカイドウではなく、イブキの胴体へ横薙ぎに振るわれたカイドウの金棒がめり込む。クリティカルヒットとも言える一撃にイブキの顔は歪み、一瞬だけ堪えるがすぐに大量の血を吐き出した。
金棒を振り切り、イブキを殴り飛ばすカイドウ。だがイブキは尻尾をカイドウの腕に巻き付けることで吹き飛ぶことを阻止するどころか、カイドウの眼前で今度こそと頭上に金棒を掲げた。
「"
「ぐぬぅ⁉︎」
振り下ろした金棒はカイドウの頭頂部を捉え、巨体を地面に叩き伏せた。このチャンスを逃さないとイブキは追撃を仕掛けに行くが、ここで先程受けたダメージによって再び吐血。これではカイドウに有効打となる攻撃は繰り出せないと判断し、少しでも回復するためにカイドウから距離を離した。
「ふぅ……」
「ウォロロロ、こんなにもダメージを受けたのはいつぶりだ……?」
「ねぇ、カイドウ」
「なんだ?」
「楽しい?」
「……このおれの顔を見れば分かるだろ?」
起き上がったカイドウの顔には笑みを浮かべている。それだけでイブキは余計な質問だったかと表情を緩めた。
「本当ならもっと殴って殴られてを体力の限界まで繰り返したいところだけど、せっかくこんな舞台を邪魔なく用意出来たんだし、派手なことをしたいよね。ってことでそろそろ大技を繰り出そうと思うんだけど、カイドウはどう思う?」
「構わねェ。受けて立つぜ」
自分に残った体力などを考えて、ここらで大技のぶつけ合いをしようと提案するイブキ。対するカイドウの返事はいつもと全く同じだった。ただし、込められた期待はいつも以上だ。
イブキもカイドウも既に息が切れており、このままギリギリまで殴り合うのも良いが、それなら鬼ヶ島でいつでも出来る。だったら鬼ヶ島では使えない大技を全力でぶつけ合う方が楽しいだろうというのが両者の出した結論だった。
結論が出たところでイブキは金棒を構えるのをやめ、待ちの体勢になったカイドウから距離を離す。そして獣型になると、全身から勢いよく毒液を噴出させ始めた。
どんどんと毒液を噴出させるイブキ。その毒液へ覇気を纏わせ、獣型である自身が纏う巨大な身体を作り出す。
そして完成した姿の名を、イブキは静かに告げた。
「"
この群島全てを囲える巨体を誇る毒の蛇。吐く息や全身から常に噴き出す毒ガスによって『毒底の世界蛇』が現れた途端、この群島一帯は毒に耐性を持つ存在以外は生存出来ない空間となった。
イブキが鎌首を上げ、毒液で構成した身体を通して豆粒サイズのカイドウを見つめた。その視線に込められた意味を理解出来ないカイドウではない。
「ウォロロロロォ‼︎ おれに二言は無ェ、受けて立つぜイブキ‼︎」
心底楽しそうにカイドウは獣型へと変身、そして勢いよく口から炎を放出し、イブキと同じように纏うことで獣型よりも何倍も巨大な炎の龍となる。
「"
炎の龍が存在するだけで熱波を放出し、毒ガスが充満した空間を焼き焦がす。しかし毒の世界蛇も常に毒を噴出しているためか、両者の間で熱と毒が拮抗する結果となった。
「行くよ、カイドウ!」
「来い! イブキ‼︎」
毒の世界蛇の身体が大きく動き、上半身を天に伸ばす。その巨体もあって頭部はすぐに雲の上まで行ってしまった。
カイドウは地上に残る毒の身体に視線を向けるが、そこにイブキ本体はいない。なら攻撃しても大した効果は得られないだろうとすぐさま意識を上に向け、雲の向こう側から薄らと見えてきたイブキへ技を繰り出した。
「"
「"
火山灰で更に濃くなっていた雲を突き破り、炎の龍を噛み殺そうと迫る毒の世界蛇を炎の龍は空を駆け昇って迎え撃つ。
覇王色を纏う世界蛇と龍は触れ合うことなく衝突し、周囲一帯へ覇気を撒き散らした。その衝突の勢いで島を覆っていた黒雲や火山灰は吹き飛び、波は大きく荒れ狂う。
副産物で飛び散った熱波と毒ガスは情報を取得して遠方で両者の衝突を監視していた複数の海軍の軍艦にまで届き、あまりの熱で海兵達は汗を流し、数人の海兵が毒にやられて動けなくなる。咄嗟に覇気を纏うことで無事だった監視の指揮官はこれ以上の監視は危険だと判断して撤退を選択した。
「まだまだアゲれるよね‼︎ カイドウ‼︎」
「ウォロロロロ‼︎ 当たり前だァ‼︎」
そんな被害なんて知る由もない2人は拮抗している状態で互いにブレスを吐き出し、更に被害を広げていく。
だがカイドウはともかく、イブキに蓄積していたダメージは無視出来るものではなかったのか、徐々に世界蛇の身体が泡が弾けるように消滅していく。消滅を阻止するためにイブキが能力の維持をしようとすれば、そちらに意識がいってしまって拮抗している状態からカイドウ有利にまで押し込まれていく。
これは無理だと素早く見切りをつけたイブキは世界蛇を構成する身体の大半を放棄。その代わり残ったほんの少しに全ての力を込めて最後の悪足掻きを実行する。
緑の毒液で構成された世界蛇に濃い紫色の模様が追加され、更に頭部付近から自身の後方へ向けて毒ガスを勢いよく噴射することでブースターとする。
それによって拮抗どころか逆にカイドウの炎の龍を押し返し始めた。と、同時に炎の龍も先程のイブキと同じように身体の各所が弾け始める。
それでもと互いに攻撃を続行。結果、2人が纏っていた毒と炎は同じタイミングで弾け散り、本体が飛び出した。
空中で2人の視線が交差し、何も言わないまま2人は人獣型へ変身。ここで全てを吐き出す勢いで覇気を纏う金棒を振るった。
「"
「"
金棒が触れることなく触れて、先程以上の衝撃と覇気が周囲を襲う。しかし拮抗はほんの一瞬で、先に限界が来たイブキの金棒がカイドウによって弾き飛ばされた。
イブキの視線が金棒を追い、その間にカイドウが頭上に金棒を振り上げる。それを見たイブキは目を閉じ──。
「まだまだァ‼︎‼︎」
直後に目を見開いて血を吐きながら叫ぶ。そんなイブキへカイドウが金棒を振り下ろそうとするが、脇腹に凄まじい衝撃が襲いかかったことで中断を余儀なくされた。
カイドウの脇腹にめり込んでいるのは弾き飛ばしたはずのイブキの金棒。何故コレがここにあるとカイドウは金棒へ視線を向け、持ち手の部分にイブキの尻尾が巻き付いていることに気付く。
つまりイブキは長い尻尾で弾き飛ばされた金棒を回収、すぐさま反撃に出たわけだ。後はトドメを刺すだけと少し油断していたこともあり、この不意打ちによる一撃はカイドウに大きなダメージを刻み込んだ。
「あーあ、届かないか」
だというのに、不意打ちで大きなダメージを与えた側であるイブキは悔しそうに顔を顰めた。
確かにカイドウへ大きなダメージを与えた。カイドウは血も吐いた。だけど頭上に構えた金棒はそのままだった。そしてカイドウにはそれを振り下ろす余力が残っている。
「"降三世引奈落"‼︎」
「ぐ──っ‼︎」
振り下ろされた金棒は力を振り絞って回避行動を取ったイブキを正確に捉え、地面へと叩き落として大きな土煙をあげた。
攻撃を受けた際に離してしまったイブキの金棒がクルクルと回転しながら落下し、人獣型を維持出来ずに人型に戻り、大の字で倒れるイブキのすぐそばに突き刺さる。その直後にカイドウがイブキの傍に着地した。
「楽しめたぜ、イブキ」
「そ……か、それ……は、良……った」
まだイブキに意識があると見抜いたカイドウは正直に今回の『遊び』の感想をイブキに伝えた。それを聞いたイブキは未だにピンピンしているカイドウに悔しいような顔を向け、楽しんでくれたことに少しだけ口角をあげた後、気絶した。
「……ぬ、ぐぅ」
イブキが気絶したことを確認した後、カイドウはその場で片膝をついた。そして荒く呼吸を繰り返し、失った体力を取り戻そうとする。
カイドウも『遊び』でしっかりとダメージを負っていた。それをイブキの前に出そうとしなかったのは、親としてのプライドだ。
「ウォロロロロ、イブキ。お前ならいつかおれを倒せるかもな」
何歳も歳下の、それも自分の娘にそれなりに追い込まれたというのにカイドウは嬉しそうな顔で気絶したイブキを見つめ、問題なく動けるようになるまではその場で体力の回復に努めるのだった。
イブキVSカイドウ。 勝者、カイドウ。
オリ主……気絶した後なので、カイドウが膝をついたことは知らない。そのため全っ然、実力が届いてないと考えており、かなり悔しい。
獣型の切り札である『毒底の世界蛇』は言うまでもなくカイドウの『火龍太炬』の影響を受けている。とはいえそれを本人に言うつもりは全くない。しかしそっくりな技なので、余裕で察せられている。
原作のカイドウか強すぎて協力ならともかく、敵として戦うとなれば一気に描写が難しくなる……。
あと三人称にしてしまうと途端に文が淡々になっちゃうねやっぱり。でも今話は三人称でやりたかったんだ……。