エンカウント率ぅ   作:フドル

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誤字脱字報告ありがとうございます‼︎


いらっしゃいませ4カイドウ、お出口はあちらです。

「な、なんだ?」

「何か落ちてきたぞ」

 

 私の屋台の前に突如として落ちてきて出来た大きな穴に周囲の人達は騒めきながら集まってくる。対して私は目の前の穴を見る気にはなれず、思わず空を見上げたが、見えたのは屋台の天井だった。

 

 いや、まだ希望を捨ててはいけない。まだ穴を作った犯人の姿が見えないので、もしかするとうっかり空島から落ちてしまったゲダツかもしれない。もしゲダツだったら扉絵のように様付けで呼ぶからゲダツであってほしい。出てくる確率を上げるためにゲダツコールでもしておくか。

 

 ゲっダツっ様‼︎ ゲっダツっ様‼︎ そのお姿をお見せくださいな‼︎

 

「また死ねなかったか……」

 

 はぁ〜、ですよね、知ってた。

 

 祈りは届かず穴から出てきたカイドウに私は大きなため息を吐いた。もうね、4回目となると人は慣れるもんなのよ。というか何で私の目の前にいつも落ちてくるんだよ。どんな運してるの? やっぱり私からなんか出てる?

 

「「「か、か、カイドウだぁ〜〜〜‼︎‼︎」」」

 

 諦めの目で穴から出てきたカイドウを見つめる私とは別に、周囲に集まっていた民衆は叫びながら散らばっていく。

 

 私?私は手遅れだよ。もう視線が交差しているし。ほんとこの強制エンカウントを誰かどうにかしてくれないかな?

 

「ウォロロロロ、久しぶりだなァ、イブキ」

「うん、久しぶり。何か食べる?」

 

 もう屋台を続けられる状況ではないが、今日のためにせっかく下準備した食材が無駄になるのは勿体ないのでダメ元でカイドウに尋ねたところ、意外なことにカイドウは大人しくメニューに目を通し始めた。

 

「……じゃあこの魚のやつをくれ。在庫全部だ」

「はいはい、今から焼くから隣の席で待ってて」

 

 早速注文された魚を焼き始めると、カイドウは言われた通りに屋台の隣に設置された椅子に座った……のだが、カイドウの身体が大きすぎて普通の人サイズの机と椅子ではおままごとみたいな感じになっている。

 

 その姿がシュールで笑いそうになるが、気合いで耐えて魚を焼き上げる。最後の仕上げに毒でも仕込んでやろうかと一瞬悩んだが、食材をそういう目的に使うのは拒否感が勝るのでやめた。どうせカイドウには効果がないだろうし。

 

「はい、取り敢えず最初の分。続きはまだ焼くからこれ食べて待ってて」

「おい、この魚は皮も食えるのか?」

「皮どころか可能な限り骨も取っているからあなたなら丸ごといけると思うよ」

「ウォロロロロ、そりゃあいいな」

 

 私の言葉に上機嫌で魚を食べ始めたカイドウ。わざわざ聞いてきて食べれると知って上機嫌になるってことはカイドウは魚の皮が好きなのか?

 

 カイドウの好みを知って何になるって感じだが、一応頭の中には入れておいて次の魚を焼き始める。

 

「酒が飲みてェな。無いのか?」

「酒屋ならこの先に行って一つ目の道を曲がったところにあるよ。看板もあるから見たらわかると思う」

 

 せっせと魚を焼きつつカイドウの質問に答えると、ズシズシとカイドウは私が教えた道を歩いて酒を取りに行った。少しすると酒屋のある場所辺りから破砕音が響き、カイドウが酒が入った樽を二つ持って戻って来たので迷うことはなかったようだ。

 

「木のコップならあるけど必要?」

「いや、いらねェ」

 

 コップを取り出しながらカイドウに聞いてみれば、カイドウは樽の蓋を外してそのまま豪快に飲み始めた。口端から酒が溢れようがカイドウが気にする様子はない。

 

 どうせ酒屋にお金は払ってないんだろうなぁとは思うが、ほぼ確実にこの後ここら一辺はボロボロになるだろうから気にするだけ負けか。

 

 まぁ、ここら辺の人達は既にみんな逃げただろうから都合はいいんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 今日分の在庫が尽きるまで魚を焼き続け、カイドウはその魚を食べながら酒を飲む。その結果──。

 

「ウィ〜〜、ヒック‼︎ うぉぉぉ〜ん‼︎‼︎ おれァ、ダメな奴だァ! ガキ一人仲間に誘えねェ‼︎ ヒック‼︎」

 

 カイドウはすっかりと出来上がっていた。私も既に在庫が無くなったのでやることがなくなり、かといって逃げると即戦闘開始なので仕方なくカイドウの対面に座って話を聞いているのだが、目の前で号泣する酔っ払いの姿を見ていると前の酔っ払った私はこんな風になっていないよなと不安になってくる。

 

「ねぇ、カイドウ。カイドウって"月歩"を知ってる? ほら、空を走るやつ」

「"月歩"ォ〜? なんだ、使えねェのか? ヒック…!」

 

 かれこれ30分くらい続く酔っ払いの愚痴が辛くなってきたので、私に何か得をするものはないかと話を聞き流しながら考えていると、そういえばこの世界には空を走れる便利な技があることを思い出した。

 

 月歩を使えるようになれば行ける範囲も増えて、リスクを抱えて獣型で海を渡る必要も薄くなる。習得しておいて損はない。というか習得したい。

 

 カイドウならやり方も知っているだろうと軽い気持ちで聞いてみれば、返ってきた反応は悪くない。なのでカイドウの言葉に素直に頷いてみる。

 

「ウィ〜〜、"月歩"は空気を蹴って足場にする技だ。お前の脚力なら出来るだろ。やってみろ。ヒック…‼︎」

「やってみろって、ここで?」

 

 私の言葉にカイドウは彼からしたら小さな机に肘を置き、拳を頬に当てて完全に見物の構えだ。言葉通り見てやるからやってみろということだろう。

 

 空気を蹴るという概要だけを説明されてもチンプンカンプンなのだが、やってみるしかないのだろう。屋台の前にある少し開いた場所へ移動した後、試してみるべく片脚を上げて空気を蹴ることを意識しながら脚を踏み込んだ。

 

 しかし脚は空気を蹴ることなくそのまま地面を踏みつけた。脚に込めた力は地面へ移り、足裏を中心に周囲一帯へ破壊を撒き散らす。

 

「「…………」」

 

 ヒビ割れた地面からめり込んでしまった脚を戻し、思わずカイドウの方を見る。恐らく今の私はさぞかし間抜けな顔をしていたのだろう。酔いが入っていたことも手伝い、カイドウの口から息が漏れたかと思えば──。

 

「フヒヒ……アヒャヒャヒャヒャ‼︎‼︎」

 

 大爆笑を始めた。その姿にムッときて、意地でも成功してやるともう一度脚で空気を蹴ろうとするが、やはり脚は空気を蹴れないまま地面を踏みつけてしまう。

 

 なら成功するまで右脚左脚と交互に入れ替えて挑戦するが、ズドンズドンと地面を砕く音が周囲に響くだけ。これって側から見れば地団駄を踏む子どもなんじゃないかと気付いてからは恥ずかしさやら何やらで顔に熱が溜まる。

 

 とうとう手で膝を叩いて爆笑し始めたカイドウを思わず涙目で睨むが、私程度の睨みなんてカイドウからすると可愛いものなのだろう。全く気にしていない。

 

「フヒヒヒ、そう怒るな。基礎は出来てる。後は実践だ」

 

 一通り笑うと満足したのかカイドウは立ち上がり、私の元に来たと思えば指で器用に私の服の襟首を掴み─。

 

「えっ?ちょ──」

 

 空へぶん投げた。しかも海の方向へだ。飛ぶ勢い的にこのままいけば確実に海へ落ちるので、月歩が出来なければ私は溺れる。

 

「何でいきなりスパルタにィ〜‼︎⁉︎」

 

 突然のスパルタ指導になるようになれと慌てて脚で空気を蹴れば、先程までのは何だったのかと言いたくなる程に簡単に空気を蹴ることが出来て私は陸側に移動することが出来た。

 

「……えっ?」

 

 あまりにも簡単な習得に私自身も驚きの声が漏れた。一度出来たらコツを掴むのは簡単で、細かに空気を蹴って空中を移動してカイドウの方へ戻る。

 

「……ありがとう」

 

 やり方に不満はあるしあの爆笑も許したくないけど、教えてもらったのだからと素直に礼をカイドウに伝える。恐らく私は月歩を既に出来るだけのスペックはあったがやり方が悪かったのだろう。だからカイドウはどんなやり方をしても必ず空気を蹴ることができる空へ私をぶん投げた。

 

 さらっと命の危機だったが、何はともあれ月歩を無事に習得出来たので、もうそろそろ今回はどうやって逃げるかを考えようか。

 

 幸いカイドウは酔っている。それで性能が落ちるとは到底思えないが、今のカイドウは私から見ても隙がいつもより多そうに見えた。

 

「ウィ〜〜、欲しいものが手に入って気は済んだだろ。そろそろおれの海賊団に来い、イブキ。ヒック……!」

「え、やだ」

 

 あ、しまった。条件反射で拒否してしまった。

 

 いつものように黙り込んだカイドウを見て、これは戦闘開始のゴングが鳴るぞと身構えた。だが──。

 

「うぉぉ〜ん‼︎‼︎ おれのところに来てくれよぉ〜〜ん゛♡」

 

 私の想像とは違ってカイドウは泣き始めた。……と思えば甘ったるい甘え声を出し始めた。想像すらしていなかったカイドウの反応に私の思考が止まってしまい、その隙を突いたカイドウが距離を詰める。

 

 しまった。なんて考える時間もなくカイドウに掴まれた私は、投げ飛ばされるか地面に叩きつけられると予想して防御態勢を取ろうとするが、それよりも早くカイドウに頬擦りされた。

 

 ……? 頬擦り…? 頬擦り⁉︎

 

「……はっ‼︎ ちょっ⁉︎ 離れ…て‼︎ 酒臭い!」

「寂しいこと言わないでくれよぉ〜ん゛♡」

 

 たまらず思考停止していた私だが、何とか再起動して私の頬に頬を擦り付けてくるカイドウを頬から離すために両手で彼の顔を押すが、この最強びくともしねぇ!

 

 ぬぅがぁ‼︎髭がジョリジョリするし酒臭い‼︎ 前世でも酔っ払いに似たようなことをされて嫌がる子ども達を見たことあるけど確かにこれは嫌だわ!

 

「そこまでだ!百獣のカイドウ‼︎」

 

 こうなったら獣型で無理矢理引き剥がすしかないと考え始めたそのタイミングで、建物の陰から海軍が姿を現しカイドウに銃を構えた。月歩を教えてもらった頃あたりから近くで誰かがこそこそしていたと知っていたけど、私達を囲むように海兵がいることから包囲をしていたようだ。

 

「海軍だとォ? お前ら……うぉぉ〜ん‼︎ おれとイブキの邪魔をしないでくれよぉぉん‼︎」

「泣いた⁉︎ あのカイドウが⁉︎」

「それほどあの子と仲良くなりたいのか?」

「じゃあ、邪魔するのってやめておいたほうがいいよな?」

 

「はやく助けてよ‼︎⁉︎ どう見ても厄介な酔っ払いに絡まれてる少女でしょうが‼︎」

 

 囲んだ癖に何故か静観の構えに入ろうとした海軍へ私は堪らずツッコミを入れる。こっちは一刻も早くカイドウから解放してほしいのだ。このままだと酔いの勢いに任せて私の頬にキスでもしてきそうなんだぞ。

 

「でもなぁ、俺には親子の団欒に見える」

「ははは、大きいお父さんに構われているのを見られて恥ずかしいんだな」

「通報で駆け付けたが、いたのは父と子の親子で団欒中。邪魔するわけにはいかないので俺達海兵は撤退。ヨシッ!」

 

「アホかァ⁉︎ あなた達の目ん玉腐っているの⁉︎ 四皇相手に戦いたくないだけでしょ⁉︎」

 

 離せカイドウ‼︎ 私はアイツらをしばく! なんかいい生贄がいるからアイツ一人でカイドウに帰ってもらおうぜ。みたいなふざけたことを考えているであろう腐った思考のアイツらを矯正してやる‼︎

 

 そんな私の気迫が伝わったのか、海兵達は渋々と銃をカイドウに向けた。そう、それでいいんだよ。

 

 海兵達のやる気を感じたカイドウはやっと私のことを解放してくれた。カイドウなら私を持ったままでも余裕で戦えそうだったので、掴んだままなら途中で人獣型になって逃げるつもりだったが、これは好都合。

 

 腑抜けた海兵達の邪魔にならないようにさりげなくカイドウから距離を離す。そしてカイドウが金棒を構え、海兵へ飛びかかるタイミングで習得したばかりの月歩で空気を蹴って空を駆け上がる。

 

 真下ではカイドウの金棒による破砕音と腑抜けた海兵達の悲鳴が聞こえるが、ザマァ見ろと思いながら私は空を走り出す。行き先は特に無い。とにかくカイドウから逃げるのに集中だ。

 

「おれから逃げないでくれよぉ〜ん゛♡」

「ゲェ⁉︎ もう来たの⁉︎ っていうかそろそろ酔いから醒めてよ! これならいつものカイドウの方がマシ‼︎ キモイ‼︎」

 

 あの海兵達は弱かったのか、秒で倒したカイドウは龍の姿で逃げる私を追いかけてくる。はぁ〜、海兵使えねぇ‼︎包囲する数いるんだから一分はもってよ!破砕音三回しか聞こえなかったぞ⁉︎

 

「ウィ〜〜、これでも自分の匂いや身嗜みには気を付けているんだぜェ……?」

「なんか落ち込み始めた! スピードも落ちてる? よし、もっと落ちこめ!そのまま海に沈め!」

「"熱息"‼︎」

「ギャァァア⁉︎ 危ない‼︎」

 

 私の罵倒に効果があったのか、いきなり落ち込んで速度を落としたカイドウ。かと思えばカイドウの熱息が私の真横を通る。落ち込んで低下していた速度もすぐに元に戻ったのでこのままだと確実に捕まる!カイドウに効くかはわからないけど試すしかない!

 

 空を走りながら人獣型に変形。いつもは下半身だけど今回は上半身を変形させる。そして毒液を生成するなり後ろを向いて毒を吐き出した。

 

 霧吹きみたいな感じで細かく散った毒液がイカ墨みたいにその場で滞留する。龍となったカイドウは私の毒を見ても構わず私との最短距離を保つために毒煙に突っ込み、直後に大きくのけぞった。

 

 よし!流石に目潰しは効果ありか! 粘性を持たせた毒だったので突破時に目を瞑っても拭わないで目を開けば瞼に付着してたやつが目に入る。相変わらず毒の効果は出ていないみたいだが、足止めが出来ればそれでいい。その間に私は逃げさせてもらう。

 

 とはいえカイドウを何処かに押し付けないと完全な逃亡は難しいと言える。置きっぱの屋台も回収したいので、どうにか時間を確保出来ないかと考えながら走りつつ、カイドウの様子を見ればカイドウは龍の姿でとぐろを巻いていた。

 

 直後にカイドウは回転。風を巻き上げ、その場でいくつもの竜巻を作り上げる。規格外なその能力に本来は驚くべきなのだが、カイドウならやりそうと思えばすんなりと受け入れられた。

 

 ただ、何故あんなところで竜巻を作ったのかという疑問は残る。しかしそれは竜巻に顔を突っ込んだカイドウの姿を見て解決した。

 

 恐らく顔についた毒を取り除こうとしているのだろう。確かに竜巻レベルの風なら毒も飛ぶかもしれないが、それなりに時間がかかるはずだ。

 

 だからカイドウから隠れる時間は確保したと思っていたのだが、竜巻が海水を巻き上げ始めたことでその考えは改めることになった。

 

 まさかのダイナミック洗顔である。塩とかで目を痛めるだろと思ったが、カイドウからすると海水の塩なんてダメージにもならないのだろう。

 

 流石に粘着性があっても強風と海水によって洗濯機みたいになった場所で洗顔をされるとどうしようもない。これは本格的にヤバイぞと冷や汗が私の頬に伝い始めた頃、まるで救いのようにそれは見え始めた。

 

 海軍の基地。規模はそこまで大きくないので別の基地へ物資を輸送する中継点的なことが主な仕事なのかもしれない。その基地が見えた時、私は悪い顔をしていたのだろう。

 

「よし、押し付けよう」

 

 すぐさま考えをまとめ、基地の方向へ進路を変更する。そんなタイミングでビリビリとした強い覇気が私の背中を叩く。

 

「イブキィ‼︎ おれの酔いが醒めるだろうがァ‼︎」

 

 ひぃぃぃぃ‼︎⁉︎ 過去に類を見ないレベルで怒ってるゥ‼︎

 

 カイドウの叫びに恐れながらも脚をフル回転させて基地へ走る。今のカイドウは怒りで強い覇気を放ち続けているから背後を見る必要もない。先程よりも遥かに速い速度でカイドウが私に迫ってくるが、洗顔にそれなりの時間を使っていたからか私が基地に突っ込む方が早かった。

 

「お邪魔します‼︎」

「いきなりなんだ⁉︎」

 

 腕を顔の前にクロスで構え、両脚も曲げつつ基地の窓ガラスを割ってダイナミックに侵入する。侵入した先にあった机の上を転がり、そこに置いてあったであろう書類を飛ばしながら体勢を立て直し、周囲を見渡すとどうやらこの場所は会議室だったようで、階級が高そうな海兵が数人いることから会議中だったのかもしれない。

 

 現在室内にいる海兵を順に見ていき、一人の海兵に思わず視線が止まった。3メートルを超える長身にがっしりとした体躯。眉間を中心に無数の皺を寄せた厳つい顔は私という侵入者がいるからか更に厳つくなっている。

 

 高級感のある赤色のスーツと派手柄のシャツを着ている男は片手に持っていた書類を自身の能力で焼き尽くし、立ち上がって私を睨み付けた。

 

 ゲェー‼︎赤犬⁉︎ 何で赤犬がここにいるの⁉︎

 

「ネズミ一匹、単身で来る度胸は認めちゃる。だが──」

「急に来たことはごめんなさい‼︎ でも後ろ見て!後ろ‼︎」

 

 赤犬ことサカズキの言葉を遮って彼の背後、私が入ってきた窓の外を指差す。

 

「そんな子ども騙しがわしに効くと思うちょるんか?」

 

 来てるんだって!カイドウが‼︎ 竜巻を身体に纏って全速力で‼︎

 

「サカズキ大将‼︎ 後ろ見てください後ろ‼︎」

「……はぁ、どいつもこいつも後ろ後ろと──」

 

 私の言葉には聞く耳を持たないサカズキだったが、私の言葉を聞いて窓の外を確認した味方も同じことを言うからか、一応確認はすることにしたようだ。しかしそれはあまりにも遅く、サカズキが後ろに振り向く時にはカイドウが基地に直撃する直前だった。

 

「ぎゃぁ〜‼︎‼︎ 龍が突っ込んできたァ⁉︎」

「青い龍じゃと……⁉︎ カイドウか‼︎」

 

 窓どころか壁を破壊して破片を撒き散らしながらカイドウが部屋に無理矢理入ってくる。その口は大きく開いており、噛みつきの構え。すぐさま龍の正体を見破ったサカズキがその場から横に跳んで離れたためカイドウの前方にいるのは私だけなのだが、私も私でサカズキが視線を後ろに逸らしたタイミングでこの部屋のドアを目指して走っている。

 

 かなりギリギリだったが私が部屋を出る方が早く、ガチンと私のすぐ後ろでカイドウの口が閉じる音がした。噛みつきは回避したがカイドウに諦めるつもりがないらしく、ドアがついた壁を更に破壊して自身も通路側に顔を出し、通路を逃げる私を見つけると勢いよく突っ込んでくる。

 

「ぐぅぉおおおお⁉︎」

 

 かと思えば、いきなり苦しそうな声を出して引っ込んでいった。恐らく部屋にいたままのサカズキや海兵達から攻撃を受けたのだろう。

 

「ハァ、ハァ、よし!押し付け作戦成功‼︎」

 

 彼らのいる部屋からカイドウの叫び声とサカズキの怒声が響き渡るなか、私は息を整えるためにその場で座り込む。普段はそんなことをしないのだが、今回の足止め相手はあのサカズキなので信頼してもいいだろう。

 

『痛ェ〜!痛ェからァ〜〜、やめてくれよぉ〜ん♡』

『ふざけちょるんかァ‼︎‼︎』

 

 ……もうちょっと離れたところで休憩しよう。なんか酔っ払いを押し付けて申し訳なくなってきた。

 

 その後、情報隠滅のために監視カメラ的な電伝虫を潰しながら基地の外へ出ると、そこにはマグマと竜巻が入り混じる天変地異みたいな光景が広がっていた。

 

 しかし私に出来ることは何もないのでそそくさとその場から去り、島に戻って島民に救助されている海兵達を尻目に屋台の回収をしてから三つ目の島を去るのだった。




オリ主……最強を海軍に嬉々として押し付けるゲス野郎。屋台を片付けて島を出る前に常連客に挨拶をする余裕すらあった。





少し前まで本気で六式の存在を忘れてました。はい。
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