走り続け、時々見かけた島で少しだけ休み、そしてまた走るを繰り返した私は新世界を文字通り逆走していた。
最初はとにかくあの場から離れようと考えての行動だったが、走っているうちに新世界ならどこにいても私の運だとカイドウが来るのではないかと気付いてからは
そのために私は走っている最中に見つけた海賊船を片っ端から襲い始めた。前半の海にある島を記録した
幸い永久指針は海賊船を5隻沈めたところで見つけることが出来た。指し示された島は魚人島。今の私にはどうやっても行くことが出来ない島だが、魚人島の前にはシャボンディ諸島がある。
シャボンディ諸島の近くにはマリンフォードがあり、そこには海軍本部が建っているので仮にシャボンディ諸島までカイドウが来ても大将がすぐに駆け付けてくる。一応人攫いやら人身売買を取り扱う店、天竜人がよく来るという欠点もあるが、多分私なら大丈夫だろう。
そのため途中までは魚人島を目指して走り、永久指針が下を向いたら後は体力に任せて走り回り、空からシャボンディ諸島を探すだけ。想像していたよりもシャボンディ諸島は魚人島より離れた位置にあったが無事に見つけることができ、私は無事にシャボンディ諸島へ到着した。
到着してからまず私がしたことは逆走している間は意図的に断っていた情報収集。天変地異と間違えてしまいそうなレベルでカイドウとサカズキが暴れていたのだ。事件になっていてもおかしくない。
幸い世間からしても大事件だったらしく、カイドウが突然海軍支部を襲撃した事件は新聞の表紙を飾っていたので見つけることは簡単だった。
新聞を買って読んでみると、どうやらサカズキは凄く頑張ったようで、黄猿が駆け付けるまでカイドウと戦い続けていたようだ。しかしその影響で基地は大炎上。この記事から発刊日が離れた最新の新聞を読んでも未だに火は消えていないと書かれている。
肝心のカイドウは黄猿の攻撃でサカズキから注意が逸れ、何かを探す仕草をした後に撤退。海軍は支部の一つが全壊し、大将赤犬が重傷を負う結果となった。
◆
「で、問題はこれだよねぇ…」
到着から数日が経ち、コチラでの生活に慣れてきた頃、あの新聞に混じっていた手配書を見て私はため息を吐く。
「500万ベリー。生存オンリーだけど、とうとう私もお尋ね者かぁ」
手配書に載っている私の姿は手書きでもしたのか、特徴は捉えているけど絶妙に似ていない姿だ。これを見てここにいる私と手配書の人物が同一だと即断即決出来るものはいないだろう。
まぁやらかしてお尋ね者になってもこうなるように狙っていたからね。そのために写真を撮る装置に絵描きが得意な人や電伝虫を避けたり潰したりしていたのだから。もし原作でサンジと間違えられたデュバルみたいに私の手書き手配書と激似な人がいたらごめんなさい。悪いのは全て海軍です。
「うーん、生存オンリーはまだ海軍も私がカイドウの関係者か判断出来てないからかな。あの時は私も本気で助けを求めていたし。それで私を捕まえて本当に関係がないならそのまま釈放。カイドウの関係者なら人質として使えるってところかな」
案外このまま海軍に出頭してカイドウとは本当に何の関係も無く、むしろストーカーされているって訴えれば保護してもらえるかもしれない。
でもなぁ、酔ったカイドウがサカズキになにか話してそうなんだよなぁ。それも私にとって不利になりそうなものを。その可能性がある限り楽観視して海軍に出頭するのはリスクが高すぎる。
「ま、手配書を見た時はついに来たかって感じで慌てたけど、これならいつも通りで大丈夫そう」
自身の手配書をグシャグシャと丸め、串焼きを焼く炎へ焚べる。そのタイミングでお客さんも来たみたいだ。
「いらっしゃいませ〜、メニューは──」
接客用の笑顔を浮かべ、メニューに手を向けたタイミングでお相手はピストルを発砲。見事なヘッドショットを私に決めた。しかし弾は私の頑丈な身体に弾かれて私は無傷だ。
「あ〜、スペシャルメニューですね。値段はお客様自身となります。覚悟しなよ?」
「あ、兄貴! このガキ直撃したのにピンピンしてますぜ⁉︎」
「チッ、噂は本当だったってことか」
シャボンディ諸島の土台となっているヤルキマン・マングローブの幹には番号が着けられていて、それが島の区画として使われている。その内の1番〜29番は海軍の手が入っていない無法地帯だ。
そして私の屋台はその無法地帯に含まれている5番のマングローブで開店している。理由としては武者修行として新世界へ向かう海賊達と戦いたいから。普通に買いに来る人には普通に対応し、私を侮ってタダで串焼きを貰おうとする海賊達や私を攫って売ろうとする人攫い達とは戦う。商売と戦闘を同時に出来ると良い考えだと思い付いた時は思ったが、これには一つ問題があった。
「うっ……」
「兄貴ィ……コイツ、化け、物」
どいつもこいつも弱い。奴らが振るう剣は薄皮一枚しか斬れず、槍はほんの少ししか刺さらず、弾は皮膚を貫かないで軽い青タンをつけるのがせいぜい。こんなにも前半と後半のレベルは違うのかと最初は愕然としたレベルだ。
あとは覇気。これを使える奴らも少ない。まぁこれはそもそも使える奴が私に勝負を挑んでこない。おかげでここに来てからの戦闘は雑魚をペシペシしばいてお小遣いを稼ぐ行為となりつつある。
「じゃあ行きますか」
「やめてくれぇ、謝るから……」
動けなくなった海賊二人の足首を掴み、私は歩き出す。目指す場所は職業安定所だ。別名は人間屋。
先に言っておくけど、最初は返り討ちにしても屋台の邪魔にならない場所に放り捨てるだけで売ったりなんてしてなかった。ただ、一度私の串焼きを一口食べてから吐き出し、残っていた分を地面に捨てて踏みつけてから滅茶苦茶に酷評したあと、私を売って得た金で許してやるとかほざいた馬鹿な海賊がいたから逆に売ってやったのだ。
その時に得たお金が結構な量でして……。うん、あまりに酷い海賊なら売ってもいいかなって思っちゃったわけ。決してお金に目が眩んだ訳ではない。
いや〜、今なら賞金首稼ぎをする人の気持ちがわかる。串焼き数週間分のお金が雑魚海賊一人を売るだけで手に入る!これを知ったら腕っぷしに自信があるやつ程真面目に働くのが嫌になるよ。
「毎度あり〜」
職業安定所の店主の声を聞き流して得たばかりの札束を懐に収めながら屋台の場所へ戻る。今さっき海賊を辞めたあの人が言っていた噂とやらのせいで最近は臨時収入が無かったのだ。
久しぶりにゲットした臨時収入。これはパーっと使うしかない。具体的には武器が欲しい。この身体、人獣型か獣型にならないとリーチが全然ないのよ。
なのでそれをカバー出来る武器が必要だと前々から考えていたのだ。まだ武器の候補は決まっていないのだが、出来れば長くて頑丈で使いやすいやつがいい。
「ん?……あ、待たせてたかな」
そんな都合のいい武器があるのかと頭の中で太刀やら大剣やらを思い浮かべていると、置きっぱにしていた屋台とその前にたむろする海賊っぽい装いをした数人の男の姿が見えてきた。盗みを行っている様子は無く、買った串焼きをすぐに食べられるようにと設置している椅子に大人しく座っていたので私は駆け足でその場へ向かうのだった。
◆
「えっと、私と戦いに来たってことでいいんだよね?」
「あぁ、あんたはとても強いって噂を聞いたからな。8800万ベリーの賞金首であるこの俺、ナメドクが新世界でやっていけるかのテストに使いたいわけよォ」
「それは構わないけど……戦えるの?」
「へへっ、戦えるに決まっゴフゥ……」
「「船長〜⁉︎」」
キリッとキメ顔をしている海賊ことナメドクだが、時々口から血を吐いて部下に介抱されている時点で全部台無しだ。
私も驚いたよ。なんか悪人みたいに持っていたナイフの側面部分を舐めたと思えば血を吐いて倒れたんだから。
「船長! お待たせしました!解毒剤です!」
「あぁ、お前ら悪いな。店主さんも驚かしてすまねェ。最近ナイフに毒を塗ってみたんだが、ナイフを舐める癖が抜けなくてつい舐めてしまうんだ。ちなみにこれで5回目」
「あなた結構馬鹿でしょ?」
5回も失敗するならもうメイン武器のナイフ以外に塗れよ。そう思わずにはいられない。
呆れた目でナメドクを見ていると、彼は部下に投与された解毒剤が効いてきたのか立ち上がった。そして数回ナイフを振った後、私に向けて先端を構える。その立ち姿は先程まで自滅して痙攣していた男とは別人に見えた。
このまま戦う気なのだろうと察することが出来たので、私も屋台から離れて彼の前に立つ。彼の部下達が購入した私の串焼きを食べて見守るなか、ナメドクが目配せをしてきたので頷いて返事とする。
速攻と言わんばかりにナメドクが突進してくる。初手はナイフでの突き。覇気も込められてないただの毒付きナイフなのでいつもみたいにノーガードで受け止めてもいいのだが、今回はナメドクが舐めていたので却下。普通に蹴り飛ばすことにする。
タイミングを合わせ、下から掬い上げるように蹴り上げる。私の蹴りはナメドクの手首に当たり、彼は思わずといった風にナイフを離した。
後はナイフが地面に落ちる前に遠くへ蹴っておしまい。ここから無手で戦闘を継続するかは彼次第だが、彼はその場で座り込んだので今回はこれで終わりだ。
「ははは、店主さんは強いな」
「あなたも──」
『ぎゃあ〜〜‼︎ 空からナイフが降ってきたえ!痛いえ‼︎』
この後はいつもみたいに少し話して…なんて思っていたのだが、少し離れたところで耳障りな叫び声が響く。ナメドク達と一緒にその方向へ向くと、この世界で一番関わりたくない集団がそこにはいた。
「誰か天竜人に喧嘩を売ったのか。馬鹿な奴らだな」
「あの人達もこんな無法地帯に来るなって話だけどね」
四つん這いの奴隷から転げ落ちて暴れる男を見ながらナメドクが呆れと恐れを混ぜたような声を出す。それに私も同意しつつ、ここにいると巻き込まれそうな気配を感じたので撤収準備に入る。
『ゴフッ、なんだえ?苦しい、え』
『いやぁ〜〜‼︎‼︎ お兄様が血を吐いたアマス!』
『このナイフ、毒が塗られているぞ⁉︎』
しかし彼らの言葉で私達の空気が凍る。なんか似たような症状を私はついさっき見たような気がするんだ。
チラッとナメドクの方を見れば、彼も心当たりがあるようで大量の冷や汗が出ていた。
「大丈夫、世界にはこんな言葉がある。【バレなきゃ犯罪じゃない】と」
「そ、そうだよな。バレなきゃいいんだよな」
『あの無駄に装飾された無駄しかないナイフ……。アイツだ!ナメドクのナイフだ‼︎』
「さて、私は巻き込まれる前に逃げますか」
「待ってくれ! 元はと言えば店主さんがナイフを蹴り飛ばしたからって力強ッ‼︎」
たかがナイフ。この世界だと探せば何処にでもある。だというのにナメドクは個性を出すために装飾をしていたらしい。
知らない海賊によってあっさりと天竜人襲撃の犯人が特定されてしまった。今なら私はまだ逃げれるのでナメドク達を見捨てて逃げようとしたのだが、ナメドク達は私の腕や脚に縋り付いてくる。
ええい!は・な・せ‼︎ お前は海賊!私は市民‼︎巻き込むんじゃねェ‼︎
大の大人を手脚や背中にくっつけて歩く私の姿はさぞかし目立つようで、私達の存在に気付いた天竜人の護衛が走ってくる。
そして槍を向けてきた彼らにナメドク達を引き取ってもらおうとしたのだが、彼らが最初に攻撃してきたのは私だった。
反射で殴り倒してしまったが、やってから頭を抱えることになった。これで確実に私も巻き込まれた。殴り倒した瞬間を周りの海賊や天竜人に見られてしまったので言い逃れは不可能だ。
これならナメドク達をさっさと制圧して天竜人に差し出して……いや、アイツらの前に姿を出した時点で嫌な予感がする。
「はぁ、バラけて逃げるよ。こうなった以上、私も同罪だろうし」
「あ、姉御……! 一生ついていきグフゥ‼︎」
「しばくぞ」
「もうしばいてます姉御!」
私と航海を一緒にしたいなら突然落ちてくるカイドウから自力で逃げられる実力をつけてから言え。
頭にタンコブが出来たナメドクを睨みつつ、私は走り出す。見聞色の覇気でナメドク達の様子を見れば、しっかり私の言うことを聞いて別の方向へ逃げていった。
まぁ、大変なのは彼らの方だろう。天竜人に直接攻撃したのは彼らだと思われているだろうし。天竜人を攻撃したらやって来る海軍や大将は向こうに行くはずだからナメドク達が頑張っているあいだに私はここからオサラバだ。海兵はともかく、大将が来るにはまだ時間があるだろうし、さっさと私物を纏めてここから離れよう。
そう考え、荷物を置いているホテルに向かって走っている最中。私の行き道を封鎖するように何かが落ちてくる。
空からの飛来物に苦手意識を持っている私は無駄に飛び退いて距離を離したが、その直後に飛び退く前の私がいた場所にも大量の溶岩が落ちてきたのでこの行動は間違いではないのだろう。
でもさぁ、溶岩っていえば心当たりが一人しかいないんだけどさぁ、まさか……ねぇ?
「久しぶりじゃのう……!」
アァァァァァァア‼︎‼︎ もうこんなパターンばっかぁぁぁぁ‼︎‼︎
グツグツとマグマを煮上がらせて現れた赤犬に対して、私は心の中で思いっきり叫び声を上げるのだった。
◆
「私は!普通の女の子で!市民‼︎」
「普通の女子は空を走らんし生身で六階の部屋に飛び込みはせんじゃろうが‼︎」
「それはそう‼︎」
赤犬の溶岩で出来た拳と人獣型となったイブキの武装色を纏った拳がぶつかり合い、周囲に衝撃波が走る。飛び散った溶岩はヤルキマン・マングローブに火をつけ、辺りは既に火の海だ。
「お前とカイドウがどんな関係をしちょるのか、たっぷりと牢屋の中で話してもらうからのう」
「私とアイツは今のところ無関係! はい、終了‼︎ 無罪確定‼︎」
「どちらにせよ、天竜人襲撃に加担したんじゃァ、罪人であることに違いはない」
「うっわ、元から逃がすつもりないってことじゃん」
赤犬の言葉にイブキはゲンナリ顔だ。似顔絵手配書なら見つかる心配はないとタカを括っていたが、イブキ本人の顔を見た人物が来るとは想定していない。
しかもカイドウとの繋がりを疑っている。イブキは一般市民で押し通そうとしているが、普通に考えて普通の市民が空を走ってカイドウから逃げつつ六階の窓ガラスを割って飛び込んでくるはずがない。誰でも何処かのエージェントかそれに類似した何かだと考えるだろう。
「あァ〜〜、もどかしいのう。カイドウの傷がなければとっくに捕まえちょるというのに……!」
「じゃあ休んでてよ。怪我の治療に専念しよ?」
「アホぬかせ。わしが休めばつけ上がった悪がのさばるじゃろうが」
赤犬がマグマに変化させた腕でイブキに掴み掛かるが、容易く回避されたことに苛立ちを込めた言葉を漏らす。実際にカイドウとの戦闘で負った傷が赤犬の動きに多大な制限をかけており、それがさらに苛立ちを大きくしていた。
「"斬尾・三連"…!」
「ぬぅ!鬱陶しい‼︎」
「自然系が一番タフじゃない? なんで生きてるの?」
苛立ちで隙が出来た赤犬に嵐脚をアレンジしたイブキの尾で放つ斬撃が襲いかかる。それによって胴体と首を斬り裂かれ、片腕は斬り落とされたが、マグマが赤犬の背後に飛び散るだけですぐに流動して元の姿に戻る。
そんな不死身と勘違いしてしまいそうな赤犬の姿にイブキは再びゲンナリとした表情をする。既に戦闘が始まってから30分が経過しているが、先程からこれの繰り返しなのだ。
「(……やはりおかしい。奴は何故焼けん?)」
しかし赤犬側はイブキの姿に違和感を覚えていた。あまりにもイブキが頑丈すぎるのだ。それだけなら動物系の耐久力や回復力で説明が出来る範囲なのだが、赤犬のマグマだ。あのカイドウでさえ火傷を負っていた火力を持っている。
イブキも最初は攻撃を掠った際に火傷を負っていた。だが徐々に…徐々にだが攻撃が掠っても火傷を負わなくなっている。イブキの肉体が赤犬のマグマに適応するかのように耐性を得ている。
「放置は出来んのう」
「放置してよ。私は無害だって」
イブキの言葉を無視した赤犬はカイドウとの繋がりというもののために生存させる方が危険だと判断し、イブキの殺害を決定する。
「"流星火山"‼︎」
「うわっ!」
マグマに変化させた両腕を空に掲げ、噴出させたマグマがイブキの周囲に降り注ぐ。ある程度撃てば今度は赤犬自身がイブキの元へ確実にトドメを刺すために駆ける。
「っ…‼︎
流石にこれは無理だと考えたのか周囲に赤犬以外いないことを確認したイブキの身体から毒ガスが噴き出すが、赤犬は覇気で身を守りつつそのまま毒ガスの中へ突っ込んだ。
毒ガスで前は見えないが、見聞色でイブキの位置は把握している。苦し紛れの斬撃が飛んでくるがそのまま赤犬は一直線でイブキに近付き、マグマの腕で掴みかかった。
「"
「あっっっつい!」
「やはりか‼︎」
本来なら掴んだ部位をマグマの熱で溶かすことが出来るのだが、掴んだイブキの頭が溶ける様子はみられない。それどころか接触し続けていることで急速に適応しているのか、少しすると焼ける音や匂いすらしなくなった。
「いい加減に……しろォ‼︎」
「ぐぅ…⁉︎」
掴み続ける赤犬に流石のイブキも怒ったのか赤犬の指の隙間から見える瞳には怒りを宿し、武装色を纏った尻尾を掴み続ける赤犬の腕に巻き付けてそのままへし折った。
簡単に折られた腕の痛みに赤犬がうめき、怯んだ隙に解放されたイブキは赤犬の身体に巻き付き、そのまま力一杯締めつけつつ、さらに両腕を構えて赤犬の顔を殴り始めた。
「大体!私だって迷惑してるの!いっつもいっつも目の前に落ちてきて!仲間になれなれ言われて!断ったら金棒で殴られて!」
「……ッ‼︎」
「逃げてるだけなのに‼︎この分からず屋‼︎頑固親父‼︎」
イブキが赤犬の顔を殴打する度に衝撃が突き抜ける。しかし赤犬も黙って殴られて続けるつもりはないようで、折られた腕とは別の腕を使い、力尽くで巻きつきの一部を緩めさせ、自由となった腕でイブキを殴り返す。
「だったら早く海軍に来て保護を求めれば良かったじゃろうが‼︎」
「ぐっ…‼︎」
「解決する力を持つ者に助けを求めず!周りを巻き込んで被害を増やし!被害者面をするお前は『悪』じゃろうが‼︎」
「助けを求めてきたのにネズミ扱いしてきた大将が言うことじゃないでしょうが‼︎」
「空を走って六階の窓を割る奴が素直に助けを求めてくるとは誰も思わん‼︎」
「……親子喧嘩?」
二人のノーガード殴り合いにナメドク達を拘束し終えた海兵達が駆け付けるも近付けない。お互いの後方を突き抜ける衝撃波を見てどれだけの力で殴り合っているのか想像も出来ず、海兵の一人がイブキと赤犬の言い合いを聞いて思わず言葉を漏らす。
側から見たら自分の考えを崩さない頑固な父に怒る娘にしか見えないのだ。体格差も合わさって余計にそう見える。この場が戦場でなければ海兵達は二人のやりとりにハラハラしつつも内心はほっこりしていたことだろう。
長く続くと思われた殴り合いだが、海兵として長く戦い続けてきた赤犬と比べたらどうしてもイブキは様々な面で劣るのか、先に崩れたのはイブキだった。
赤犬の殴打に怯んで隙だらけとなったイブキの頭を赤犬は再び掴み、力強く投げ飛ばす。投げ飛ばされたイブキは地面に数回接触しても止まらず、そのまま建物へぶつかり、その奥へと消えていく。
さらに追撃を加えようと赤犬が身体をマグマに変えてイブキの元へ駆けるが、建物に突っ込む前に復帰したイブキがその手に金棒を持って出てきた。チラリと赤犬は建物の看板に視線を向け、武具屋であることに内心で舌打ちをする。
「(似た姿に似た金棒。傷が疼くのう)」
治りかけている傷口を押さえて苦い顔をする赤犬の心情を知らないイブキは構えを取りながら金棒に多量の覇気を込め始めた。その量は途轍もなく、金棒からはゴロゴロと雷のような音が鳴り始める。
「"雷鳴──」
イブキが構えたまま赤犬へ駆け出す。そのスピードは先程までとは桁違いに速く、赤犬は無意識にイブキと重なるカイドウの姿を幻視した。
カイドウの幻影が迫り、赤犬は先の戦闘の記憶から咄嗟に頭部へ防御を固めた。しかしカイドウが金棒を振るっても幻影の金棒は赤犬の頭部を通り抜けるだけ。
当たり前だ。見様見真似のイブキの攻撃に練度なんてものはない。当然、スピードも本物よりも遅い。
「──八卦"‼︎‼︎」
「……ゴフゥ‼︎」
それに赤犬が気付いたと同タイミングでイブキが迫り、ガラ空きの腹部へ金棒をめり込ませた。ミシミシと腹部にめり込む金棒。その威力に赤犬は吐血し、吹き飛ばされる。
『サカズキ大将⁉︎』
吹き飛んだ先にあるマングローブへめり込んだ赤犬に海兵達が驚愕の声を上げた。数名はすぐに救助するべくマングローブへ駆け寄ったが、それよりも早くマングローブからマグマが溢れて赤犬が姿を現す。
「……逃げたか」
先程まで自分がいた場所にイブキはおらず、見聞色にも反応がない。イブキは空を走ることが出来るため、恐らくそれで逃げたのだろうと赤犬は判断を下した。
「必ず捕まえちゃるから覚悟しとけよ。カイドウの娘ェ…!」
「鎮火だー!鎮火を急げー‼︎」
イブキが聞けば顔を横にブンブンと振って必死に否定することを赤犬は呟き、海兵達の鎮火作業を横目にしながら治療へ向かうのだった。
オリ主……天竜人に攻撃しちゃった。でもまだ加担しただけで直接手を下していないと思われているからギリギリセーフ。ナメドクが口を割ったらアウト。咄嗟に手に持った武器が金棒だったので、見様見真似で雷鳴八卦して勘違いされた。
赤犬……まだ怪我が治っていないのにオリ主と殴り合って金棒でぶっ飛ばされても動いてます。頂上決戦の時も思ったけどこの人だけ耐久力凄くない?
世界蛇の幻獣種としての能力は異常な再生力と適応による属性の無力化となりました。
ヨルムンガンドは大いなる精霊→精霊は属性を持つ→属性を扱う精霊ならその属性に耐性を持つよねって感じの連想ゲームです。一応属性限定なので打撃とか斬撃はどうしようもない感じ。あと白ひげのグラグラの実とか衝撃波も無理です。
解釈不一致コメが怖え……。けどこれでいかせてください。