「……ごくっ…」
息を呑んだ。
この水晶がどれだけ光るか、それでこの異世界での
そんな気がした。
間違いでは、ないだろう。
事実、桐原くんや聖さん、十河さんなんかは貴重なS級ということで他の生徒よりも余程丁寧に扱われている。
つまり、その
ランクが低ければ、雑に扱われるという可能性を孕んでいる。
事実、三森くんや他の生徒のランクを調べた際に低いランクであればあるほど女神様のコメントや扱いが、目に見えて雑になっていた。
おそらく女神様にとって、低ランクの勇者は
不安を抱えながら、水晶に手を伸ばした。
(僕は……強くなりたい、強く在りたい!!)
そんな願望に応えるかの様に────水晶は、変わった反応を見せた。
────最初に声を上げたのは、女神様の横に居た黒ローブの男だった。
「むっ……!!めっ、女神様!!これは────!!」
「そうですね…昔、同じ反応がありました。暗黒の勇者と呼ばれた、最強の男と同じ反応です……」
モクモクと黒い雲の様なモノが、水晶を染めていく。
どうやら良い結果だった様だ。
暗黒の勇者、最強の男だと次々と言葉がとび出てくる。
「あなたはA級です」
「…くひっ…」
女神様にランクを伝えられた時、気持ちの悪い笑みがこぼれた。
自分でも気持ち悪いと思うが、仕方がないだろう。
だって────A級勇者だぞ?
聞けば、勇者には六つのランクがあって、A級は上から二番目。
相当のあたりだ。
これほどの力があれば────三森くんを
ずっと────三森くんの様に他人に手を差し伸ばす事のできる人になりたかった。
元居た世界ではなれなかったけど────ここなら。
この異世界ならできるんじゃないか?
他よりも優れた力を持ったこの世界なら。
途中僕が同じランクだということを不服に思った小山田と喧嘩になりかけたが。
僕らの間に女神様が割って入り、止めた。
「せっかくのA級勇者同士で諍いなど勘弁してください。口げんか程度であれば多少は看過しますが、本気で勇者同士が戦うことは許しません」
と、言うことらしい。
速い、いつ走ってきたのか。
分からなかった。
「A級勇者は、貴重な人材なのですから」
怖い。
なんだが、特別な威圧と言うか。
絶対に勝てない存在と言うか。
一歩後退りした。
(三森くんを守るとか、偉そうなこと言えないなぁ……)
威圧されて、後退りした自分をそんな風に自虐した。
「もう大丈夫ですね? では次に、この世界における力の使い方などをお教えしましょう」
◼︎
「ステータス!!オープンッ!!」
「おぉぉ…これで自分のステータスを確認できるんだな!!
なんかアニメで観たVRMMOみてぇだ!!」
「ちょっと、私アニメとか詳しくないんだから、後で教えなさいよ」
わいわいとはしゃぐクラスメイト達。
女神様が説明する。
「皆さまに馴染みのある形で補助システムを構築し、かつ、効率的に最適化させていただきました。私は女神ですので召喚元の世界に色々合わせることができるのです」
だからこんなゲームの様なつくりなのか。
これなら分かりやすい。
本来であれば全く知らない異世界の言語でも、僕達は日本語と同じ様に読み、聞くことができる。
これも女神様が最適化してくれた影響なのだろう。
「これは――【
「なんと! タクト殿はもう固有スキルが使用可能状態にあるとは! し、しかもLV1とは思えぬステータス!」
「よくわかんねーけど……俺、またなんかすごいのか?」
「LV1から固有スキルが使用可能な勇者など遡っても数えるほどしかおりませんぞ!」
「ふーん。ま、オレとしては別に感動も何もねぇけどな。普通だろ、こんなの」
「おおッ!!ショウゴ殿もすごい!!ステータスが他の勇者より頭一つ抜けていますな!ショウゴ殿はLV1で体力が+500とは」
「あッ!アヤカ殿のスキルツリー!これは初めて見る形ですぞ!特殊ツリーですな!」
「と、特殊ツリー?」
「元の世界に戻る方法があるのなら、この不思議なシステムを利用して元の世界への帰還を目指すのが当面の目標になりそうね。自由に動ける様になったら、まずは情報を集めましょう」
「アタシは馬鹿だから姉貴の言うとおりにするよ」
「あの二人、近づけませんぞっ!?……」
「不思議な威圧感があるというかっ……こ、これもS級とA級だからですかなぁ……」
……そろそろ僕も自分のステータスを確認したくなってきた。
「ステータス…オープン」
他の皆んなの見よう見まねでそう言ってみる。
────あ、出た。
僕のステータスは────
【トモヒロ・ヤス】
LV1
HP:+500
MP:+500
攻撃:+400
防御:+400
体力:+300
速さ:+400
賢さ:+250
【称号:A級勇者】
おぉ!!なんか全体的に────満遍なく高い感じ!!
特に防御と速さとMPが一つ抜けて高い!!
「あら、あらあら♪」
「うわっ!?」
気づけば女神様が後ろから覗いていた。
いつの間にいたんだ?
「あ、あの僕のステータスって────」
「ええ、とても素晴らしいステータスですよ、それにほら【固有スキル】まで♪」
「え?」
────あ。
【固有スキル】が、有る。
【固有スキル:
「A級の中でも素晴らしい才能を持っているみたいですねー、期待してますよ、トモヒロさん♪」
女神様が、ニッコリと微笑む。
「あ…ありがとう、ございます?」
女神様はそのまま、上機嫌そうに去っていった。
なんと、言うべきか、
何か────裏がある。
失礼かもしれないけど、そう思ってしまった。
◼︎
「こ、これは…」
「ああ、自分でも情け無いと思う…」
僕は今、友達であり三森くんのステータスを一緒に見ている。
それがこれだ。
【トーカ・ミモリ】
LV1
HP:+3
MP:+33
攻撃:+3
防御:+3
体力:+3
速さ:+3
賢さ:+3
【称号:E級勇者】
なんか。
全体的に低い。
全体的に高い僕とは対照的だった。
「はぁ…俺、この異世界でやっていけんのかな…?」
「だ、大丈夫だよっ!!」
咄嗟に、大きな声が出てしまった。
恥ずかしい。
「み、三森くんは、えっと、虐められてた僕に手を差し伸べてくれるくらい、優しいし、勇気あるし、確かにステータスは低いけど、いやっ!?…その違くて、三森くん弱いって言ってるんじゃなくて、だから、その」
脳内で組み立ていた言葉が、うまく口から出ていかない。
なんで僕はいつもこうなんだ。
でも、これだけは言いたい────
「────いざとなったら、僕が守る!!どんだけ強い魔物からも、大魔帝って奴からも、守る────守ってみせる」
……言ってしまった。
なんて偉そうな事を言うんだ、僕は。
「────かっこいい」
「…え?」
「かっこいい事言うな、安、ありがとよ」
三森くんはそう言って、優しい笑みを浮かべた。
僕の言葉に、
「そんじゃ、異世界では安に守って貰おうかな」
「────うん!!任せて」
あの日、手を差し伸べてもらった様に、今度は僕が手を差し伸べる番だ。
「あ、でも、ほらッ!!三森くんの【固有スキル】欄、一つあるよ!!」
「ん、あ────本当だ」
三森くんの【固有スキル】欄。
その中に一つ。あった。
【固有スキル:状態異常付与/使用可能】
◼︎三森灯河
異世界に転移し、ステータスが低く少し不安に思っていたが安に勇気付けられた。
安の優しさが────自分をあの環境から救ってくれた叔父夫婦のように感じて────有難いと感じている。
◼︎桐原拓斗
異世界に転移したが、変わらず、自分のステータスや【固有スキル】を特別なものだとはそれほど感じていない。
ただ安がA級認定されたのは流石に予想外
◼︎小山田翔吾
2ーCの産廃こと安が、自身と同じA級である事に不満を感じている、女神ヴィシスに止められてなければ速攻で殴りかかっていた。
◼︎十河綾香
異世界に転移し、何がなんだが分からないが、クラスメイト全員を守ろうと決心している。
◼︎女神ヴィシス
今回の召喚が大成功でご満悦。
特にA級とS級の勇者に重きを置いていて…?
◼︎高雄姉妹
何を考えているか分からない姉妹、情報収集をしようとしている。