【固有スキル:状態異常付与/使用可能】
それが三森くんの固有スキルみたいだ。
しかも、よく見てみると薄っすらではあるが、線が伸びている。
上ではなく、
他のクラスメイトが上にスキルツリーが伸びていることもあって、すぐに気づけなかった。
スキルの情報ははっきりとでている。
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「み、三森くん!確か固有スキルが最初から使えるのって、結構凄いことなんじゃなかったっけ?」
桐原拓斗のスキルを見たローブの男が、そんなことを言っていた。
「…確かに、後で女神様に聞いてみるか」
そう言う三森くんの顔には、少しの喜びが混じっていた。
やっぱり凄いと言われると、嬉しいみたいだ。
────さて、周りを見渡してみれば、いつもとは違った2ーCの様子があった。
今まではクラスカーストという基準によって構成されていた2ーC
それが今は、変わっている。
例えば、担任の柘榴木。
柘榴木もさっき水晶の測定を受けた。
ランクはDランク。
女神様が言うには、二十代を超えた大人は低ランクになりやすいらしい。
逆に、十代の学生などは高ランクの勇者になりやすいと言う。
だから僕らの様な学生が召喚されるみたいだ。
ランクがD級だったせいだろうか。
明らかにクラスメイトから軽んじられていた。
例えば、あそこの二人の男子生徒達。
名前は確か、広岡くんと、佐久間くん。
二人はいつも一緒に居た、友達という訳ではなく、逆に嫌な関係。
いじめ、と言うには
それが今は、違う。
関係が、広岡くんは佐久間くんをよくイジっていた。
今は、逆、広岡くんはD級。佐久間くんはC級だと測定された。
だからだろうか。
イジりイジられる関係が、逆転していた。
今や、佐久間くんが、広岡くんをイジっている
つまり、この異世界ではクラスカーストではなく。
測定されたランクによって構成されていく。
言うならば、
この異世界にて、S級は三人。
────十河綾香
────桐原拓斗
────高雄 聖
この三人が、これからの2ーCの中心になっていくだろう。
それから、A級も三人。
────小山田翔吾
────高雄 樹
そして僕、安 智弘
S級には及ばないが、A級も相当な影響力を持つ存在。
レベルと言う概念がある以上、それを上げれば、強くなれるのだろう。
強くなれれば…ランクカーストからも三森くんを守れるかもしれない。
(…頑張れ、僕!!全ては僕の頑張りにかかってるんだ…!!)
「勇者の皆さーん、隣の部屋へ移動をお願いいたしますよー!」
この2ーCの中で唯一のE級。
────そして、僕の友達。
そんな三森くんのことを守ると、改めて決心しながら────僕は女神様の指示に従って、歩を進めた。
◼︎
隣の部屋は、前の部屋とは随分様子が違った。
前の部屋が綺麗な神殿の中、と言うのであれば、こちらはファンタジーの砦の中、と言った感じ。
石で出来た壁に松明が付けられている。
地面を見てみれば、魔法陣の様な模様が描かれている。
「これから名前を呼ばれた方はそこの魔法陣の中央へ進んでください。あ、これさえ終われば皆さんも少し落ち着ける時間ができますよ〜」
魔法陣の様な、ではなく本当に魔法陣だった様だ。
女神様の言葉を聞いて、クラスメイト達の顔に安心の二文字が浮かぶ。
思えばこの異世界に転移してから休み無しで行動していたのだ。
ようやく一息つけると、クラスメイトに安心した空気が流れる。
(女神様はここで何をするつもりなんだろう…?)
小山田が挙手して質問する。
「つーか、この部屋で何すんだよ?」
「儀式です」
儀式?
なんの? そう思っていれば、次は桐原拓斗が口を開く。
「儀式?また召喚でもするのか?」
ぱん
女神様が軽快そうに手を鳴らす。
まるで、ずっと待ち侘びていた様な、やっと出来るといった様な、そんな笑みで、女神様はその名を呼ぶ。
「とにかく、まずは名前を呼びますね? では――トーカ・ミモリ君、魔法陣の中央へと進んでください」
「え?」
三森くんが、疑問の声を上げる。
────なにか、嫌な予感がする。
「さっさと行け」
「……ぐぅ…」
いつの間にか、三森くんの後ろにいた兵士が持っていた剣の鞘で背中を押し。
魔法陣の中心に立たせる。
三森くんになにをさせようとしているんだ…?
「あ、あの女神様!!」
「はい?」
「何が始まるんです?なぜ…俺が最初なんですか?」
「トーカ・ミモリ、この2ーCの中であなたは最低ランクの勇者です」
それは、僕も知っている。
三森くんのステータスを一緒に見たのだから。
問題は、その先。
そんな三森くんに、何を…
「過去を遡ると、最低ランクの勇者は役に立たないどころか……大抵は上級勇者の足を引っ張る存在でした。ですのでE級にあたる勇者は、ある時から――」
女神の目もとが妖しく弧を描く。
「廃棄することになったのです」
「……え?」
「……え?」
僕は三森くんと同じ様な声を上げる。
廃棄?
廃棄って言ったのか?
それって、つまり。
「ですが、いきなりその場で処分となると今まで関係性のあった他の召喚者が処分される光景を見てショックを受けてしまいます。意外とそのショックを長く引きずってしまうのですよね〜。それを避けるため、城の牢に移動させてから殺したこともありましたが……その話があとあと上級勇者たちに漏れて揉めたケースもありました。そこで私たちは――」
慈悲を湛え、両手を広げる女神。
「最低ランクの勇者にも再起のチャンスを与えることに、決めたのです!」
再起の、チャンス?
「そこにある転移魔法陣で、最低ランクの勇者をとある遺跡へと転移させるのです」
「そこから生きて地上へ出られた場合は、もうその者に干渉しないという取り決めをしています。アライオンはその者に、自由に生きる権利を与えます」
「き、危険な遺跡なんですか?」
「さあ? 私が答える必要がありますか? ただ、過去に危険度大と判断された罪人などの大半はその遺跡へ送り込まれていますね〜」
なんだ、それは。
そんな危険な遺跡へ、三森くんを追放しようと言うのか。
生きて帰すつもりなど、毛頭ない。
そんな遺跡へ。
沢山いるのだろう、危険な魔物たちが。
「そうですね〜では特別に、遺跡の名前くらいは教えてあげましょうか。────名は、通称────」
「廃棄遺跡」
どうすればいい?
どうすれば、────三森くんを助けられる?
こんな時、どうすれば。
────あ。
一つ、ある、三森くんの
「め、女神様!!」
「はい?なんでしょう────トモヒロさん?」
その固有スキルを、話す。
「LV1の状態でスキルを使える勇者は、す、凄いんですよねっ!?」
「A級以上のスキルなら」
「なっ、なら三森くんには────【固有スキル】が有ります!!【状態異常付与】ってスキルで、麻痺や毒なんかを付与できる────」
「トモヒロさん」
女神様の、威圧が増す。
「この世界において、状態異常系統の術式は総じて存在価値がないのです」
…え?存在価値が、無い?
「まず最初に総じて成功率が低すぎます。中級の魔物どころか、下級の魔物相手でも滅多に成功しません。仮に成功しても効果が薄く、持続時間も短すぎます。過去、例外はありません」
「そ、そんな」
「要するに、ハズレスキルなんです、ハズレ枠にあたるスキルなんですよ。彼の【固有スキル】は────お分かりですか、トモヒロさん♪」
ニッコリとする女神様。
……ッ!!
すかさず三森くんの側に寄って、声を荒げる。
「だからって…こ、こんなの間違ってます!!使えないから廃棄するなんて、そんな────」
「ちっ!」
部屋に響くのは、一際大きい舌打ち。
「見苦しいやつだよな、おまえって」
舌打ちの主は桐原拓斗。
その見苦しい奴ってのは────僕だろう。
「お前如きが貴重な時間を消費させるなよ。ったく、それになんだよ、貴重なA級勇者の安に自分を庇わせるなよな…」
あ、ちが、違う。
三森くんは庇わせてなんかない。
僕が自分の意思で庇ったんだ。
「ていうか、もういいよ……さっさと終わらせてくれ。みんな終わるの待ってんだよ。特に女子とか疲れてるだろうしさ。かわいそうじゃん」
「きっ────桐原くん」
一人の女子が色めき立つ
この流れは、
「ヤバい! マジ優しい!」
「さすがだよね!」
「空気読めすぎっていうか、桐原って気遣い溢れすぎ!」
「逆に三森ウザすぎ! 何様なわけ!? 空気読めっての!」
「あいつ自身が空気なんだから、空気とか読めるわけないじゃんっ」
「プークスクス! 言われてみればそうだわっ! ウケる〜!」
「てゆーか安優しすぎー!あんなの庇うとか心広すぎー聖人じゃん」
「安くん、学校では冴えない男子かと思ってたけど可愛い系の顔してんじゃん…ちょっとタイプかも」
「それなー!それにほら、A級勇者だもん!!」
「ダダ捏ねんなよ!」
「さっさとしろよ!」
「こちとら疲れてんだよ!」
「うぜーよ! 往生際悪すぎ!」
次々と飛び交う罵詈雑言。
だれか、いないの?
だれでもいい。
三森くんを助けられる────だれか。
「待ってください!」
ずっと待ってた言葉、ふとそこに目をやると、2ーCのクラス委員長。
十河綾香さんが、そこにいた。
「こんなの間違っています! 三森君はクラスメイトなんですよ!?」
「わーわーっ! な、なに無礼なこと言ってるんだ十河ぉぉおおおお!」
声を上げた十河さんを、止めようとする柘榴木。
「柘榴木先生も担任なんですからしっかりしてください! どんな時でもあずかる生徒を守るのが教師の役目ではないんですか!?」
「じ、状況が違うんだ! 聡明なおまえならわかるだろ!? 仕方ないんだよ! み、三森だって悪い! E級だったんだから!」
「三森君だって望んでE級になったわけじゃないでしょう!? こんなこと許されるはずがありません! 彼を廃棄遺跡とやらに送るのを、今すぐやめさせ――」
僕もそうだそうだと声を上げようとした。
その瞬間。
「アヤカさんですか、ふぅ、では仕方ありませんね」
いつの間にか、十河さんの背後に立っていた女神様が手刀を繰り出した。
咄嗟に身体を捻って避ける十河さん。
「悪いですけど、私はそう簡単にやられ、────ぐぅ!?────」
「最初の手刀はフェイントです。あんなものが本命なわけないでしょう」
十河さんの腹に拳をめり込ませた女神様が、そう笑顔で言った。
意識をなくし、倒れる十河さん。
「────さて、さてさて」
「…ひっ…!」
女神様が僕を一瞥する。
品定めしている様な、仕留めようとしている様な。
そんな瞳。
────それだけで僕は、戦意を失ってしまった。
怖い。
怖すぎる。
あんなに三森くんを守るって、偉そうなこと言ったのに。
守れない。
立ち向かえない。
いつの間にか、目尻に涙すら浮かんでいた。
「う、ぐ、はぁ…三森、くん ごめ────」
「────いいんだ」
「…え゛?」
浮かべているのは、笑顔。
今にも張り裂けそうな、ボロボロな笑顔。
「ありがとう、安。もう十分おまえは俺を守ったよ」
なん、で。
僕に────感謝するんだ?
「なんで、三森、くん────僕は────」
「あのーもう、良いですか?E級の勇者がいると、貴重なA級やS級の勇者が迷ってしまいます」
最後に聞いたのは、女神様のそんな声
首に何かがぶつかる感触と共に。
僕は意識を失った────
◼︎
目が覚めると、知らない部屋だった。
豪華な内装をした、中世風の部屋。
直ぐそばにいたメイドの様な人に事情を聞いたら、全てを話してくれた。
僕が気絶して、この部屋に運ばれたことも。
明日からレベリングのための魔物討伐が行われることも。
そして────三森くんが、廃棄遺跡に飛ばされてしまったことも。
◼︎
────メイドさんもいなくなった真夜中。
僕は一人ベッドにうずくまって涙を流した。
女神様が怖かった、三森くんを平気で排除しようとするクラスメイトが怖かった。
あれだけ守ると言ったのに、守れなかった自分が情けなくて、腹立たしくて。
なにより────三森くんがもういないことに、酷く心が傷んだ。
なにも、できなかった。
僕のせいで、あんな顔をさせてしまった。
僕は、変われなかった。
なにが勇者だ。
なにが、A級だ。
なにが、なにが、────
◼︎安 智弘
友達の三森くんが廃棄遺跡に飛ばされてしまったかわいそうなA級勇者
今一番曇ってるのが彼
◼︎桐原拓斗
安が気絶した後は原作通り、三森のパラライズが女神に弾かれ、自身の固有スキルの【金色龍鳴波】を放ち確認した。
安のことは十河と同じ様に、混乱したのだろうと考えている。
◼︎2ーCの面々
原作通り
ちなみにキャラの見た目はアニメ版準拠です。