【完結】Judgement Day:After the show 作:アームド
世界は変わった。1913年に世界は変わり始めた。1952年までに世界はかつてのそれとは分からない何かになってしまった。
ある人はそれを否定し、世界を元の姿に戻すことで希望を取り戻そうとする。
しかし絶望が通った跡には希望が待っていると、そう信じて別の人は進み続ける。その先に何があるかではなく、何をもたらせるかを見ながら。
その先に何があるのか、どちらが勝つかはまだ分からなかった。
かつての名はロシア、現在は大スキタイ国と呼ばれる国に生まれたリラは、真面目な田舎娘として育った。スキタイ政府の、そして国家の
「これが、今のロシアなのか?」
収容所に着いた初日、そう呟く捕虜の青年がいた。
極東でロシアの後継者を名乗る敵国があると、彼はそこの軍にいたロシア人兵士だと聞いた。リラは彼を説得して転向させてようと考え、その疑問に答えることにした。
「はい。私たちの歴史への答えが、このスキタイという国です」
「……これが?」
「はい。これが」
「こんなもののために……俺は」
「そんなものに価値があると人は判断しました。私もそれを受け入れてスキタイ軍にいます」
「……」
多少の問答をして少し黙った後、ロシア兵は質問する。
「君がスキタイを受け入れるのは理解できる。きっとスキタイで生まれ育ったんだろうし、自分の国の方を認めるのは当然だからな。だが、どうしてロシアに戻ろうとは思わないんだ?ロシアの再興に希望を持って戦った僕には分からないんだ、君もきっと……」
「ロシアで憎しみの連鎖が生んだ悲劇は理解しています。それはロシア人の問題で、スキタイがそれを克服してくれると信じています」
「ロシア人の問題だと……」
ロシア兵は驚いたような声でそう呟いた。そして考え込んだかと思うと、顔をあげた。
「僕の事は覚えなくてもいい。ロシア人はロシアにしかいない。そしてスキタイとロシアは別の国だと、君と話してそう思ったから」
「そうですね、きっと分かってくれると思っていました」
「……スキタイの人、名前を聞かせてくれるか?」
「私はリラ。姓はありません。ロシア人の先祖などは忘れることにしましたから」
「リラか……覚えやすいな。君がロシアに来ることがあれば会えるといいな」
「スキタイ軍の進撃がうまく行って、このまま戦争が終わればまた会えるかもしれませんね」
リラの言葉にロシア兵は少し肩を落としてため息をついた。
「君たちはロシアに戻りたくないのか、そうだろうな」
「そういう事でしょう、きっと」
この日の会話はこれだけで終わり、それからも互いに話しかけることはほとんどなかった。それからしばらくしてスキタイの戦線を越えて攻め込んだロシア兵との戦闘が増えてきたと知らされ、リラは劣勢な方面の前線に配置された。
ロシア人の捕虜はどうなったかわからない。
世界が変わっても争いは続いていく、国境を隔てて隣り合った国同士で互いに嫌悪と憎しみを募らせながら。
リラはこの時、それを知ることになった。