【完結】Judgement Day:After the show   作:アームド

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【挿絵表示】

主人公の少女『リラ』の見た目です。


第二話 Judgement Day:After the show

人生には死ぬよりも恐ろしい事があると、リラは思っていた。

まだ少女と呼べる年齢でありながら祖国の族長(ヴォシチ)の命令で兵士として動員された彼女にとっては、それは族長や国家の期待を裏切る事だった。

 

彼女が生まれ育った大スキタイ国はロシア地域の大部分*1を占める大国であり、数多の民族を有し族長が支配する多民族国家である。

国家の成立は十数年前の世界大戦前後、以来外圧に晒され続けていた。

数ヶ月前とうとうアジア大陸一帯に勢力を持つ汎アジア労働者連邦*2との全面戦争に突入し、戦争中であるからには彼女も祖国の為に戦う事を厭うことはなかった。だが彼女は戦場に出るには幼すぎたし、時の運はスキタイ軍に向いていなかった。労働者連邦軍の勢力拡大の前にスキタイ軍は敗退を続け、やがてリラの所属した部隊も戦線から取り残されて労働者連邦軍に包囲された。

敵を撃退しようにも部隊の装備は脆弱。部隊はあっという間に崩壊してリラは単独で行動する羽目になった。彼女には支給された拳銃と弾丸がある。

だが少女に銃は重すぎるし、弾丸も少ない。

そして何より汎アジア労働者連邦軍は精鋭揃いだった。

戦争はいきなりのことだったので、リラは動員されてから射撃訓練すら最低限のものしか受けていない。

 

リラは逃げた。ただひたすら逃げた。銃弾を確認すると最初から尽きかけていた。

追撃してくる労働者連邦の兵士達に見つかったら命はないだろう。

思わず溜息を漏らした時、背後から労働者連邦軍兵士の発する声が聞こえた。

振り返ると同時に拳銃を棄てた。睨み据えた目に映ったのは汎アジア労働者連邦兵士が構えた銃口だった。

兵士は銃を構えたまま、手を挙げて付いてくるように促した。

 

リラは捕虜にされ、労働者連邦軍の捕虜収容所に送られた。捕虜はスラブ人や中国人など様々な兵士が収容されていたが、それを見渡すよりも先に先ほどの兵士の声が聞こえてきた。

「よく生き延びたな。偉いぞ、お嬢ちゃん」

背が低く、やや猫背気味の男性はリラを褒めたが、リラは安心しなかった。

「すぐ死ぬことになる。こんなことになるなら半分死んだも同然です」

呟いて兵士を睨みつけたが、兵士は怯むことなく続けた。

「そうかもしれない。でも君は生きている。我々がそうだったように、生きているならまだ何かできる」

かつて労働者連邦の同盟国がヨーロッパにあった*3が戦争で滅んだという話を思い出したが、リラは答えなかった。兵士は肩をすくめて立ち去り、リラは孤独に収容所に残された。

戦争はスキタイの敗北で終わったと知らされ、労働者連邦軍の兵士達は捕虜を解放する準備を始めた。

リラは故郷の地域が族長(ヴォシチ)の指導を仰がなくなった*4というので帰ることができず、労働者連邦に滞在するしかなかった。

 

 

戦後もリラは故郷に戻ることはできなかった。族長(ヴォシチ)も労働者連邦国内では生死不明、所属していた部隊も全滅の扱いになっている。

彼女の人生に残されたものは何もなかったが、それでも生きることにした。兵士が「生きている限り何かできる」と言っていたのを、リラは信じることにした。

故郷が遠く離れてしまった今、戻っても居場所がない。スキタイは戦争に敗北した。国を失っても故郷を失っても、生きる道は他にない。生き延びたリラがそう考えるのに時間はかからなかった。労働者連邦は元々複数の国が結集した国家であり、様々な文化や民族が根付いている。リラが移住してきても拒まれることはない。

国家は敗れたが、リラは希望を失わなかった。生きていればできることがあると信じていた。

*1
沿海州には共産主義を掲げる国家『極東共和国』が存在する

*2
極東共和国の後ろ盾でもある

*3
かつて労働者連邦と同盟したが世界大戦に敗れたドイツやハンガリー

*4
スキタイ敗北後に登場した宗教国家『償還ルーシ』

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