【完結】Judgement Day:After the show   作:アームド

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読者の皆さん、お久しぶりです。アームドです。読者の皆さんが本作の原作にあたる「Judgment Day」第二次デモ版のリリースを楽しみにしていたのはこのアームドと同じかと思います。
しかしそのリリースの日は一向に来ない。
そこで「もう小説側だけで独自に終わらせてしまおう」と考えました。
改めて、約半年ぶりの本作の更新となります。
今回のまえがきは投げやり気味ですが、内容は最終話として力を入れているので何卒ご容赦ください。原作の更新楽しみに待ってたのにな……。




最終話 引金

極東共和国 首都ウラジオストク 内務省施設

「旧スキタイ陸軍所属、女性、16歳、名前はリラ……、あ。君、苗字ないのか」

リラの顔と書類を見比べるうちに、役人の顔が凍る。大スキタイ国の滅亡に伴ってリラを含む旧スキタイ国民は極東共和国住民の新たな国民として登録されることになったが、リラのようなスキタイ陸軍に参加していただけの若年者では書類上の項目がそれぞれの者固有の事情で埋まらないこともよくあった。

「ごめんなさい」

「いや、そういう人もいるだろ。何があった?」

「両親はスキタイに抵抗して死にました。私は2人の名前を捨てて、スキタイの戦士になりました。けど、その役目も……」

「……………そうか、すまない。俺、気の利いたこと言えなくて。……ああ、じゃあここ、居住地はどうする?家族とか頼れる人とか居るか?」

「家族も知り合いもいません。この国のお金も持ってません」

「苗字がないことと合わせたら、このままじゃ身元を保証できる奴が誰もいないってことになる。それはまずいな。そうだ、軍時代の上官とか同僚とかで誰か連絡先を知ってたりしないか?とりあえず彼らの下に……」

「無理です」

「なんで」

「全員殺されましたから」

「…………やめるか。こんな仕事」

「それこそなんで!?」

リラは絶望した。この役人がリラの境遇への対処の難しさに絶望して仕事を投げ出しでもしたら国籍も得られない。終わりだ。戸籍を得てこの国の一員として生き延びなければ。彼女は必死で役人を口説こうとした。

「なんでもします、どんな生活でも大丈夫です。お願いします、この国に置いてください」

「うーん、俺に言われてもな。本部に確認は取ったんだよ。そしたら決定権は与えるから後は何とかしろってさ、全く……そうか、ああ。方法はある」

「なんですか!?」

「お前、こっちの仕事の方に就職しないか?」

「この国に尽くせば、私を拾ってくれるんですか?」

「……まぁ、そういうことだ。人手が足りないから選考もないぜ」

リラは即答する。スキタイが滅んだ今、選択肢はなかった。

「なります。もう一度私に生きさせてください」

「そうか。これからよろしく頼むぜ、新人」

役人は立ち上がって右手を差し出す。リラはその手を握り返した。

「はい!!」

こうして、リラは再起した。

 

数日後 ウラジオストク 内務省 秘密警察チェーカー詰所

「新人、ここでの仕事は分かっているだろう」

役人改め同僚の男性が質問する。リラは答えようと口を開けるが、

「わかりません……」

「おい、大丈夫か……、いやいいんだ仕方ない。あー、俺達が役人と兼務するのはこの国の秘密警察の所属。これはこの国の社会主義体制を守るために存在している」

「社会主義?」

「そうか、そこからだよな。いいか。国家にはそれを支配する主義主張があるんだ。40年以上前に始まった労働運動に端を発する運動によって社会主義者が支配者となるロシア共和国が建設された」

「それが今のこの国ですか」

「そうだ。だが現在においても我々の敵が内外に残っていてな、今日も部下たちを派遣して取り締まりに当たらせている。そして、そういった敵勢力と交戦して死傷することもある。わかるよな」

「はい。最悪の場合、死ぬことになりますね」

「その通り。しかし今回はどちらかというと死なせるのが目的だ」

リラは怪訝な顔をする。それでは目的が逆ではないか。

「今回の任務はクーデター作戦でな。一斉に蜂起して現政府を決戦で叩きつぶすつもりだ。もちろん失敗は許されないが、その分我々が死ぬ確率は少ないぞ」

「安心しました。でもそんなことが上手くいくのでしょうか」

「その為の準備を既に進めている。そうでなくてもやるしかないんだ」

同僚は頭を押さえる。彼としても任務を選ぶ余地はないらしい。

リラは目を瞑る。何があろうと、ここ以外に自分の行くところはない。

「……わかりました。それで私の仕事は?」

「政府のリーダーの側近に接触してほしい」

「なかなか難しいですね……」

「何か手段が思いついたら、随時報告してくれ。上には話を通しておく。……まぁ、最初は簡単なことを任せたかったんだけどな」

 

同日 ウラジオストク 政府庁舎

「あれがこの国の……」

リラは自らが狙うターゲットを見る。政府の側近を狙うとなれば、その困難さも容易に想像できる。

「どうしようか……」

正直に言えばリスクが高い作戦であるが、それでも、もう始めなければ。

彼女は息を吸い込んだ。

次の瞬間、リラの銃弾は放たれた。

 

数時間後 ウラジオストク 内務省庁舎

「成功したか?リラ」

リラは微笑んだ。 「計画通り、射殺しました。私が帰るまでに政府要人は一人として生き残れませんでした」

「すごいな……」

「あとこれ、持ち出せました」

リラは血塗れの銃弾を見せた。

「遺体から剥ぎ取ったのか……、怖いな」

「殺す以上、しっかりやってるかどうかは確かめないと」

「……よくやった、リラ」

「ありがとうございます……!」

リラは笑みを浮かべる。これでまた一歩、生き延びることができた。後は革命の成就を待つだけだ。そう考えると自然と身体は軽くなった。

 

極東共和国クーデターより数年後 

「いやぁ、リラの働きによって俺たちは新秩序の樹立に至ったよ。」

元同僚、スーツを着た中年男は称賛する。新秩序とは革命の実行を宣言してからしばらく使われ続けたスローガンだった。

「私は革命について、そんなふうに考えたことないですよ。ただ、その革命によって多くの人間が幸福になった。そのことは間違いありません。それには私の協力が必要でしたから……」

「いや、君自身の功績で十分じゃないか」

「そうですかね……。でも、やっぱり感謝すべきはあの時の自分です」

「それはどういう意味かな」

「革命の日の朝、私の中の恐怖を殺してくれたのは自分です。だから、私はこの結果を生み出した自分を認めています」

「そうか。ところで君の新しい身分証だけどね。この国の名前を苗字にしたよ。どうだい」

「嬉しいです。私を認めてくれたのが私だけでなく、この国そのものだったということですから。……ありがとうございました」

「こちらこそだよ、リラ同志」

2人は握手して別れた。




これで完結です。
一回きりの予定だったエピソードでしたが、予想外に筆が乗って全3話となりました。お読みくださった方、感想や評価をくださった方、本当にありがとうございました! この物語が少しでも楽しんでいただけたなら、これ以上の喜びはありません。

作中で登場したクーデター作戦は原作でも設定上に存在するもののようですし、第二デモ版などで実行されたり言及される日も来るかも知れません。その際に「そういやこれを元ネタにした二次創作があったなぁ」と思い出してくれたら嬉しいです。
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