RAILJACK   作:マブラマ

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臨時司令部

國鉄本社ビル、会議室。警官Bが室内を見渡し、威圧的な声で宣言した。

「ここは警備部第一課と公安部と共同で使用することになった。関係者以外はここから立ち去りなさい」

会議室は一瞬にして慌ただしくなった。國鉄職員がバタバタと退出する中、机や折り畳み椅子、ノートパソコン、コピー機、シュレッダー、電話回線などが次々と運び込まれ、臨時司令部が形作られていく。

数時間後――

「神長警視、準備完了であります」

警官Cが報告すると、香子は冷静に頷いた。

「各所轄の警察官や鉄道公安隊全員、できるだけここへ集合しなさい」

「了解です」

警官Cが敬礼して去ると、背後から妙に軽い声が響いた。

「いや~張り切ってますっスね」

香子が振り返ると、そこにはワザとらしい笑顔を浮かべた走り鳰が立っていた。

「!走りか!? 何の用だ」

「またまたぁ~相変わらずっスね。ウチら二人は親友同士でしょ?」

走り鳰。かつてとある学園のクラスの裁定者であり、理事長の側近だった女。だが、なぜここに? 恐らく理事長のコネを使って警視庁に潜り込んだのだろう。香子は眉をひそめた。

「走り、お前に言う義理はないと思うが、それに私は既に暗殺者は辞めている。普通の道を進むために先輩の意思を……」

「分かってるっスよ。神長さんが暗殺から手を引いたことも、警視庁に入庁して普通に生きる道を選んだことも」

「分かれば、それでいいんだ」

その時、警官Bが慌てた様子で戻ってきた。

「神長警視、鉄道公安隊全員連れてきましたが、一部の者がまだ来ていません」

「来てない? 誰だ!?」

「東京中央鉄道公安隊第四警戒班の高山直人、桜井あおい、小海はるか、岩泉翔の4人です」

「ヤバいっスね~っ。早く来てもらった方がいいじゃないんですか?」

鳰がニヤニヤしながら言うと、香子は無言で目を細めた。

「神長警視、ご決断を!」

警官Bが急かす。

「……」

「神長さん、時間ないっスよ」

鳰がさらに煽ると、香子は一瞬沈黙した後、静かに口を開いた。

「すぐにその4人を呼び出し、ここへ連れてこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上野警察署、会議室。捜査事件本部が設けられ、室内は張り詰めた空気に包まれていた。船越英一郎警部がホワイトボードの前に立ち、事件の概要を説明する。

「一人目の被害者は身元が判明した。女性、23歳、國鉄新橋駅改札口駅員。東京駅地下通路で終電5分前、何者かによって殺害された。次に二人目の被害者、同じく女性、32歳。國鉄新橋駅運転区職員。この被害者も同様の手口で殺されている」

船越は一枚の写真を手に持つ。そこには血に染まった解剖鋏が写っていた。

「凶器はこの理科実験用に使われる解剖鋏だ! 奴はこの鋏で女性二人を切り刻み、殺害した」

「警部、犯人がその女性二人を殺す動機は?」

捜査員Aが緊張した声で尋ねると、船越の目が鋭く光った。

「恐らく快楽殺人、すなわち……」

一瞬の間を置いて、船越はためらうことなくその名を口にした。

「21世紀の切り裂きジャック。武智乙哉だ」

会議室が一瞬ざわついた。捜査員たちの間に緊張が走る。

「武智乙哉……10年前に当時29歳だった女性会社員を切り刻んで殺害した張本人ですね」

捜査員Bが低く呟くと、船越が頷いた。

「当時の事件を担当していたのは、小松川警察署刑事組織犯罪対策課の藤田修二巡査長だ。彼が武智乙哉を逮捕し、数々の証拠をつかんだ。俺は確信した。こいつが真犯人だ!」

船越の声が怒りに震え、会議室に響き渡る。武智乙哉の名を言い放った瞬間、彼の拳がホワイトボードを叩いた。

「では、その武智乙哉が真犯人……ということですか!?」

捜査員Aが息を呑んで確認すると、船越は静かに、だが力強く答えた。

「刑事としての俺の勘だ」

「武智乙哉の逮捕状を取りましょうか?」

捜査員Bが提案すると、船越は即座に決断した。

「なるべくそうした方が早いな。全捜査員に告ぐ。武智乙哉を探し出し、見つけ次第逮捕しろ! どんな手段を使っても構わん。全員確保に回れ!」

会議室が一気に動き出した。捜査員たちが席を立ち、電話を手に取り、武器を点検し始める。船越は一人、ホワイトボードを見つめたまま拳を握り潰さんばかりに力を込めた。

「(武智……お前を逃がさん)」

彼の瞳には、刑事としての執念が燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、上野駅での緊迫した現場を後にした高山直人と桜井あおいは、急いで東京駅へと戻っていた。だが、二人が駅に着いた瞬間、予想外の報せが飛び込んできた。

「ええっ、警視庁から呼び出し!? どーいうこと!?」

あおいが目を丸くして叫ぶと、直人が慌てて小海はるかに確認した。

「本当に警視庁から呼び出しされたんですか? 小海さん!」

「分からないけど、すぐに國鉄本社ビル会議室に来いって、警備部の管理官が言ってたわ」

はるかが冷静に答えると、直人は一瞬硬直した後、勢いよく頷いた。

「とにかく、國鉄本社ビル会議室に行こう! 詳しい話はその後だ!」

「あおい、急げ!」

直人が走り出すと、あおいがムッとした顔で追いかけた。

「分かってるわよ! 何!? この急展開!?」

二人の足音が東京駅のコンコースに響き渡る中、彼らの頭には疑問符が飛び交っていた。警視庁からの呼び出し――それは、連続殺人事件と何か関係があるのか?

 

To be continued

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