朝鮮総連本部(現・RJ臨時本部)
薄暗い部屋に、重苦しい空気が漂う。壁には「RJ」の旗が掲げられ、かつての朝鮮総連本部が新たな目的のために占拠されていた。
「すいません、本物が容疑者リストから外れました。申し訳ございません」
一人の男が恐縮しながら頭を下げると、部屋の奥に座る影が低い声で応えた。
「そうか、まあいい……國鉄分割民営化なら良いが、我が将軍様のためにも何か尽くさねばならぬ!」
「ハッ!」
部下が敬礼する中、影の男は不気味な笑みを浮かべた。
「邪魔者らは徹底的に叩きのめしてやる! 國鉄だろうと、警察だろうと、自衛隊であろうとな! ふふふふ、あはははははははははは、あはははははははッ!!」
哄笑が部屋に響き渡り、窓の外に漏れ出す。RJ――鉄道改革派を名乗るこの集団は、単なるデモ隊ではない。彼らの目的は、武智乙哉をスケープゴートに使い、混乱を煽りながら、もっと大きな野望を達成することだった。
「(本物が外れたなら、偽物を仕立て上げればいい……)」
男の目が暗闇の中で怪しく光り、新たな策略が動き始めていた。
國鉄本社ビル 会議室
神長香子が無線機を手に、捜査の進捗を確認していた。
「捜査は順調に進んでいるか?」
捜査員Aの声が、少し焦った調子で返ってくる。
《それが……刑事部の報告で一からやり直しと》
「わかった。あとで連絡する。引き続き捜査を続けろ」
無線を切ると、走り鳰がニヤリと笑った。
「振り出しに戻ったんっスね」
「ああ……だが、あいつがやっていない事が確かに判明した」
「武智さんの事っスか?」
「……剣持なら何とか持ちこたえてくれるだろう。あいつは武智のお守係みたいなモンだからな」
「その言葉、剣持さんの前で言ったら何て言うんっスかね?」
「多分、怒るだろうな」
「ふふ」
「何を笑っている?」
「いやいや、神長さんもたまにはまともな事言うんっスね」
「私はいつもまともな事言っているが?」
「そうっスかね~?」
その時、再び無線が鳴り、捜査員Bの声が響いた。
《神長管理官》
「どうした? 報告しろ」
《東京地下通路に襲われた被害者と上野駅に襲われた被害者についてですが》
「早く話してくださいっス」
鳰が急かすと、捜査員Bが慎重に続けた。
《武智乙哉の犯行にしては何かおかしな点がありまして》
「それがどうしたというんだ!?」
《科学捜査研究所によれば、やはりこの二つの事件は彼女の犯行としては不自然。つまり指紋が不一致なんです》
「そうか……やはり何者かが裏で彼女に冤罪を着せようとする連中がいるわけだ」
《恐らく、間違いないかと》
「情報源はどこからだ?」
《犬飼って言う女性から証言を……》
「犬飼……あいつまだ稼業を続けているのか?」
「決まりですっスね」
「ああ……連中をこのまま見過ごす訳にはいかないからな」
香子は目を細め、無線を切った。会議室に静寂が戻る中、彼女の頭には新たな敵の影が浮かんでいた。武智乙哉をスケープゴートに使う裏の勢力――その正体を突き止める時が来た。
To be continued